2018年4月20日 (金)

四月歌舞伎座昼の部

414日 四月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)

昼の部は長いなあとおそれをなしつつ観劇したが、案外長さは感じなかった。夜の部もそうだったが、一幕一幕が1時間前後だったのとその割にブツブツ切れる感じがなかったのがよかったと思う。
「西郷と勝」
西郷の3つの感動に共感を覚えた。
雪の富士を見た時。日本人に生まれてよかった。現在の私でさえ富士山が見えると日本人でよかったとの感慨を覚えるのである。鹿児島の西郷さんが富士を見ての思い、どれだけのものだったろうと胸が熱くなった。
御殿山から江戸の町を仰ぎ見た時(「仰ぎ見る」と言ったと思うけれど、聞き違いかも)。図面の上だけで、こことこことここから攻撃すると決めたのは間違いだった。江戸の町の広大さ、そこには人が住んでいる。そうだ、図面からは人の息吹は感じられない。目の前に町を見てこそだ。
イワシ売りと長屋の住人の喧嘩を見た時。政治のことなど何も知らない無辜の人たち、五十文にこだわって家族の生活を支えている人たちが明日は火の海に巻き込まれる。恐ろしいことを考えたものだ。
「実に戦争ほど残酷なものはごわせんなあ」(正確なセリフじゃないかも)には思わず拍手が起きる。
などなど、長い西郷(松緑)のセリフには説得力があった。涙が出た。しかし一方で、慶喜に対する評価には首をかしげた。敵前逃亡については現代でも色々言われていて、なるほどと頷ける説もなくはないけれど、西郷のこの評価はどうかなあ。
松緑さんの中に垣間見える陰影が西郷の豪快さに深みを加えて、とてもいい西郷だったと思う。
私の勝手な想像として勝は鋭さがあると思っていたんだけど、錦之助さんは鋭さというよりは鷹揚で包容力がある感じだった。染五郎×亀治郎の「竜馬がゆく」では、錦之助さんが西郷だったんだなあと懐かしく思い出しつつ。

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2018年4月12日 (木)

四月歌舞伎座夜の部

48日 四月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)
最初に見たのがあの地震の6日前、お芝居自体のインパクトに公演中止となったことが相俟って強烈な印象が残っている。そして1年後の4月公演はなんと3度もリピートしていたから(それは忘れていた。しかし6年前はまだ元気だったんだなあ、私も)、今度で4回目となる。
「絵本合法衢」
今までの2回(一応1公演を1回として)に比べて面白さが増したような気がしていたが、自分の感想を読み返すと2回とも今回に劣らず面白く興奮していた。お話自体はとにかく人が死ぬ。これでもかこれでもか、というほど善人側のほぼ全員が大学之助と太平次の手にかかる。大学はどうしたらいたいけな子供さえも平然と手にかけるような冷酷・残忍な人間になったのか。人面獣心と言うが、獣よりひどい。生まれた時はかわいい赤ん坊だったろうに。何があったら人間こうなるのだろう(「悪の種子」だろうか。この本、父の蔵書にあったが、読みそびれたので、タイトルだけから想像)とついつい考えてしまう。それに、あの場面はどうしても好きになれない。だけど、こんなに面白い、また一幕一幕が短い割には堪能できるのは、ひとえに仁左様の<悪の華>の魅力に尽きるのではないだろうか。というか、あんな物語、主人公が魅力的でなければ成り立つわけがない。その魅力を楽しめばいいのだ、多分。

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2018年4月 6日 (金)

名残

180406tram
数日前の写真ではありますが…


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2018年4月 3日 (火)

「黒蜥蜴」へ、そして本公演へを期待したい「怪人二十面相」

41日 「怪人二十面相~黒蜥蜴二の替わり~」千穐楽(サンシャイン劇場)
三越劇場で見た新派の「黒蜥蜴」が面白かったし、緑郎・貴城けい夫婦の初共演(夫婦になってからの初。ちなみに結婚前の初共演の芝居も見ている)という超ミーハー的興味でチケットを取った。
以前はキャラメルの芝居をよく見に行っていたが、改装されてからは多分初めてのサンシャイン劇場は私にとって都電東池袋四丁目がとても便利(JRからくるとサンシャインの一番奥だから)こんなに近いと思わなかった。しかし劇場の二階席は遠かった。8段ほどの階段を8回。
座席は最前列だったが、手すりは他の劇場に比べて邪魔さ加減が緩かった。ただ、傾斜がきついので後列のほうが案外見やすかったかもしれない。

幕が開くと、貴城さんがレビューのトップスター花菱蘭子として登場。さすがの華やかさで、歌もダンスも宝塚ファンならずとも楽しくて嬉しい。セリフもレビューのスターらしく宝塚的で独特のオーラがあった。しかも、蘭子はただのスターではない。なんと黄金仮面だったのだ。男役はもちろんカッコいい。ほんと素敵。ここに警官が突入し、風紀を乱すと言って蘭子たちと乱闘、ひとまず幕。
そして緑郎さん扮する講釈師・悟道軒円玉が登場、この講釈師がうまくて感心した。メリハリきかせ物語をユーモアたっぷりに、生き生きとわかりやすく伝える。もう一役、メインの明智小五郎はもちろんカッコいい(夫婦でカッコいいね)。優しさと正義感は緑郎さんぴったり。この物語は「黒蜥蜴」につながっており(ということが最後にわかってびっくりした)、こちらの明智は「黒蜥蜴」より若い。緑郎さんも若々しい。新派にとって久々の若手(と言っていいよね)二枚目だし、三枚目も講釈師のような役もできる演技の幅が広い役者さんは本当に貴重だとあらためて思った。
大河原美弥子の雪之丞さんは、悲しい過去が彼女を強くし、それでいて過去から逃れられぬ謎の女を好演。雪之丞さんでなければ出せない雰囲気をまとっていた。明智に語る彼女の過去は、傍観者である明智の前で芝居として繰り広げられる。若いつらい弱々しい時代と今の堂々たる存在を雪之丞さんはうまく演じ分けていた。
美弥子にひどい仕打ちをするお鉄婆の伊藤みどりさんの怪演が効いていた。
春本由香さん(河野不二子)はお嬢さんから脱皮して二十面相の世界へ入っていく変化を<らしく>演じていて好感がもてた。
自主公演ではあるが、面白い脚本でテンポよく、しっかりした演技に裏打ちされたレベルの高い面白い芝居で、ぜひぜひ本公演での上演も期待したい。


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2018年4月 2日 (月)

六月歌舞伎座演目・配役発表

昼の部は
 三笠山御殿 
 文屋 
 野晒悟助
 
夜の部は 
 夏祭浪花鑑
 巷談宵宮雨

團七の吉右衛門さん、倅市松が和史クン、お梶が菊之助さんっていうだけで泣けるわ。

三笠山御殿はあまり好きな演目ではないけれどこの場での時さまのお三輪は初めて。
野晒悟助と巷談宵宮雨は演目自体初めて。
というわけで六月もまた楽しみです。

詳細は→ココ



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2018年4月 1日 (日)

今年も桜

180401sakura1
やはりマイベストは千鳥ヶ淵。
180401sakura2
意外によかったのが六本木。
180401sakura3
久しぶりに訪れた音無親水公園。ここも好き。

歳を重ねると、今年も桜を見ることができた、とほっとする。毎年毎年、桜は思い出になる。

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2018年3月31日 (土)

寛永の雅

328日 「寛永の雅」(サントリー美術館)
何を期待とか予想して行ったわけではないのだが、美術展のタイトルからイメージした内容とはずいぶん違った。
後水尾院を中心とした宮廷文化、遠州の美意識、仁清、探幽の作――日本の雅、知識はなくても静かな世界に触れることができた。
構成は
第一章 新時代への胎動―寛永のサロン
第二章 古典復興―後水尾院と宮廷文化
第三章 新たなる美意識―Ⅰ 小堀遠州
第四章 新たなる美意識―Ⅱ 金森宗和と仁清
第五章 新たなる美意識―Ⅲ 狩野探幽

古文書を見るといつも思うのだが、私は文字にその人の空気を感じる。後水之尾天皇の書では、古典文学を研究する天皇の姿を想像した。ちょっと興味深かかったのは源氏物語を収める箪笥(近江八景歌書箪笥)。源氏物語が古典復興の機運の中、大事にされていたことがわかる。

小堀遠州では、遠州が愛した茶道具、これらを実際に使っていたのだと思うと、私のようなガサツな人間にはわからないなりに、当時のその世界に魂が連れて行かれるような錯覚を覚えた。
仁清は御室窯を始めた人。1月に仁和寺と御室派の仏の展覧会を見たばかりで、「おお」と盛り上がったが、仁和寺の門前に窯を開いたというだけで、御室派の仏とは関係なさそう(?)。宗和の影響を受けた作品と宗和死後の作品で色調などが違うそうだが、それを意識して見なかった…。印象に残ったのは白釉円孔透鉢。丸い穴がいくつもあいていて、これはインパクト大だった。
茶碗は見るのは好きだが、鑑賞能力はない。だから、探幽のところに来て、ちょっとほっとした(と言って、絵画の鑑賞能力があるわけではない)。
探幽では、モチーフの極端に少ない「桐鳳凰図屏風」、右幅に三保松原、左幅に清見寺、中央に富士と三幅で一つの大画面を構成する「富士三保清見寺図」(まんまだね、作品名)が印象的だった。
寛永という一時代、そして主に京都の文化に焦点を当てたこの展覧会は、一つ一つの作品に解説がついていて、学芸員さんの研究に対する熱意が感じられた。
4
8日まで。

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2018年3月30日 (金)

三月歌舞伎座夜の部

325日 三月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)
千穐楽のつもりでいた。なぜ垂れ幕がかかっていないの?とずっと疑問だった。千穐楽は明日か。翌日、よんどころない用事で歌舞伎座前を通ったら、やっぱり垂れ幕がない。垂れ幕やめちゃったのかしら、そんなはずない…そこで調べたら27日が千穐楽なのであった。
「於染久松色読販―小梅莨屋の場、河原町油屋の場」
開幕直前、突然眠気がさしてきて、やばい!! 案の定、ところどころ沈んでしまった。玉様のお六も仁左様の喜兵衛もはじめてなのに。
ということで、莨屋で覚えているのは、仁左様が早桶を蹴とばしたところくらいまで。物語の重要部分は飛ばして、仁左様の凄み、玉様の気だるそうな伝法、底辺にいてもかっこよさ、美しさは失われていない。仁左様が早桶を蹴とばす場面、花道でのカミソリを口にした引っこみ、決める場面がすべて(意識のあった範囲で)魅力的だった。
油屋では強請が失敗に至る過程が描かれるが、お店でのお灸の場面等、何度見ても面白い。失敗した2人がバツが悪そうに、しかし開き直って籠を担いで引っこむのが、<らしく>て印象に残った。仁左様の後棒の担ぎ方がかっこいい。
「神田祭」
濃密な空気が漂うコンビと言えば私は菊・時を思うが、仁左・玉コンビの間に漂う空気は菊・時の濃密さとはちょっと違うような感じを受ける。前者には長年の夫婦としての深い安心の空気、後者にはまだドキドキがおさまらない恋人の空気と言おうか。もちろん、二組とも強い信頼が根底にはあるんだけど、仁左様と玉様がこれだけの近しさで寄り添うのを見るのは初めてだからだろうか(若い時代の2人は見ていないし、先月は一応兄妹だったし)。
仁左様は美しく爽やか。玉様は美しく色っぽい。とにかく2人の美は絵になる。観客サービスもたっぷりで、仁左様が頬をすり寄せたときにはチュってするんじゃないかと思ったくらい。そういう中で2人とも江戸の鳶頭・芸者の粋に溢れていたのがたまらなく素敵だった。

ここまで見て帰った人がけっこういて、次の「滝の白糸」はちょっと空席が気になった。

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2018年3月26日 (月)

ビュールレ・コレクション

319日 「ビュールレ・コレクション」(国立新美術館)
180326buhrle1 混まないうちに、と珍しく早めの鑑賞。ず~っと前のバーンズ・コレクションのトラウマがあるし(遅くなっちゃって、早朝8時頃から並んだ記憶がある)、ぐずぐずしていると、春休みだ、連休だと慌てるから。チケット売り場には10人くらいの列ができていたが、案外ゆっくり見ることができた。そうしたらこの日、なんと10万人目の来場者があったとか。
コレクターって、見る目の確かさ、エネルギー、資力等々、すごいなと思う。ビュールレも、ここに展示されているだけで、ハルス、アングル、ファンタン=ラトゥール、クールベ、ルノワール、ドガ、グァルディ、カナレット、シニャック、モネ、マティス、コロー、ドラクロワ、シャヴァンヌ、マネ、ピサロ、シスレー、セザンヌ、ゴッホ、ロートレック、ピカソ、ヴュイヤール、ゴーギャン、ボナール、ヴラマンク、ドラン、ブラックと錚々たる画家を集めている(展示作品数が64点と少ないし、どの絵もいいので誰1人落したくなくて、全員の名前を挙げてしまった。絵についても1点1点、感想を言いたいけれどそうもいかない)。しかも、出品作のおよそ半数が日本初公開だとか。
1章 肖像画
2章 ヨーロッパの都市
3章 19世紀のフランス絵画
4章 印象派の風景―マネ、モネ、ピサロ、シスレー
5章 印象派の人物―ドガとルノワール
6章 ポール・セザンヌ
7章 フィンセント・ファン・ゴッホ
8章 20世紀初頭のフランス絵画
9章 モダン・アート
10章 新たなる絵画の地平

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2018年3月21日 (水)

「本蔵下屋敷」「髪結新三」

318日・20日「本蔵下屋敷」「髪結新三」(国立劇場大劇場)
180321sakura 18
日の観劇では花粉症がひどく、ついに薬に頼ってしまったせいか、眠くて、「新三」のいいところをかなり見逃してしまった(新三が忠七の髪を整える場面とか、梅枝さんの紙縒りとか、傘尽くしとか、勝奴が鍵をとぼけるところとか)ため、急遽「新三」のみ20日にリベンジ。でも、結局20日もところどころ…(なんでこんなに眠いのか、家にいても眠い)。まあ、18日に見逃したところはちゃんと見たから2日の合わせ技。
「増補忠臣蔵 ―本蔵下屋敷―」
作者のわからぬ増補であるし、いい加減な設定だということではあるが、それでも二段目、三段目、九段目とのつながりある外伝という風で面白かった。
悪役の橘太郎さん(井浪伴左衛門)がよかった。ワルの中に愛嬌があり、まさに歌舞伎の悪役。もう1人の悪役荒五郎さん(高木平馬)は声に表情があって、こちらもよかった。
本蔵が亀蔵さん(片岡)は神妙でしっかり筋が通っていて、案外ニンに合っていた。
桃井若狭之助の鴈治郎さんも、直情的な面と忠臣を思う心がよくあらわれていて、万感こもった「長の、長の暇を遣わすぞ」のセリフには大いに感動した。その一方で、ほんのちょっとだけだがテンション高すぎる気がしないでもなかった。もっとも、若狭之助ってそういうテンションの人なんだろう。
この物語でも「未来で忠義を尽くしてくれよ」と「未来」が出てくる。若狭之助が本蔵を斬ると見せかけて伴左衛門に刀を振りおろし、本蔵の縄目を切った時には数人の拍手が聞こえた。
梅枝さんの三千歳姫は古風。筝唄は梅枝さん自身が歌っていたのだろうか。よくわからなかった。私は以前から阿古屋を梅枝さんが受け継いでほしいと願っているのだが、さらにその感を強くした。八重垣姫も見たい。
「梅雨小袖昔八丈―髪結新三―」
今日の観客席は、そこ、そんなに可笑しい?というほどよく笑うし、反応がいいと18日に思ったら、20日も同様だった。
権十郎さんの加賀屋藤兵衛は、「結納金の三方を以て白子屋に入る時片手で持つようにしている」とプログラムに出ていた。本来両手で持つ重さだろうが、位取りを意識して片手にするとのことで、役者さんってそういうところにまで気を遣うのね、と感心した。のだが、白子屋の戸口では両手で持っていたような気がする(見間違いかしら? 花道は見逃した)。

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«その心と作品に触れて:「熊谷守一 生きるよろこび」