« 有言実行男!! | トップページ | ありえね~ »

2008年8月11日 (月)

絶対オススメ:見事な巨匠対決

87日 「対決 巨匠たちの日本美術」(国立博物館)
08081101taiketu_2 いつだったか、電車の中で広告を見て、ぜひ行きたいと思っていたこの展覧会、あと10日(正確には11coldsweats02で終わりという頃になってやっと見ることができた。
最初の対決は「運慶 vs 快慶」。入口を入っていきなりの運慶が素晴らしい。躍動感にあふれるその仏像に対し、快慶は静かで左右対称の美しさを追求したという説明に、私は運慶のほうが好みだなと思っていたら、秀逸な作品は好みにかかわらず心をつかむ。胸にじ~んと沁み込んでくるような快慶の仏の静かな佇まいに、2人の仏師の登った山の高さは同じなんだとしみじみ思った。
次は雪舟 vs 雪村、以下永徳×等伯、長次郎×光悦、宗達×光琳、仁清×乾山、円空×木喰、大雅×蕪村、若冲×蕭白、応挙×芦雪、歌麿×写楽と、息のつまるような対決が続き、最後は鉄斎 vs 大観で締める。

歌舞伎ファンとしては、永徳のじいさまが「傾城反魂香」の狩野元信だとか、「金閣寺」の雪姫は雪舟の孫娘ってことになってたなとか、応挙といえばほら「応挙の幽霊」じゃんとか、そんな独り言を言いながら(口に出したら怪しいオバサンになってしまうから、もちろん心の中で)見て歩くのも楽しい。
雪舟の「慧可断臂図」、見る者に重くのしかかってくるグロテスクさ、いやドラマチックさと言おうか。雪村の「蝦蟇鉄拐図」、私の目にはこれもグロく映るものの、伸び伸びとした愉快さも感じられる。雪村は「金山寺図屏風」がよかった。緻密な線を用いながら、やっぱり伸びやかさがみられる(ように思う)。

とにかくボリュームが多く、国立博物館にたどり着くまでの暑さに辟易していた私は、中の混雑もあって脳の中に二酸化炭素が充満しだし、途中、立っていることさえつらくなった。休憩用の椅子を探したが、なかなか見つからない(コロー展では椅子がたくさん用意されていたのに)。ちょうど光悦とか光琳とか乾山のあたりで、それは頂点に達し、このまま倒れて作品を割ってしまったら、大変なことになる(では、すまないだろう)と、怯えながらふらふらと椅子を求めた。少し先でやっと見つけた椅子はしかし満席(みんな疲れているよねえ)。諦めて再び展示を眺めていたら、あいた。席があいた。ほっとして腰掛け、痛んだ膝を曲げ伸ばしし、目を瞑って頭と身体を休めた。だもんで、なんだかこの辺、頭がごっちゃになった。長次郎 vs 光悦のような茶碗系は大好きなんだけど(説明を聞いてよ~く眺めると違いがわかって面白い)、仁清 vs 乾山の陶器になるとついていけない。
ちょっと端折ってしまったこの辺りの対決だが、宗達の「蔦の細道図屏風」と光琳の「白楽天図屏風」は、強く印象に残った。宗達のほうは、蔦が生い茂る道を金地と、緑の帯、金地に緑をちょっちょっと載せた部分が幾何学的な構図で組み合わせて表現し、2枚の襖のどちらを右にしても左にしても合うように考えられている。計算し尽くされたということを感じさせない単純さが好きだ。光琳の作品は、白楽天が発した漢詩に対し、漁師に扮した住吉明神が和歌で応え、日本にも中国に劣らぬ文化があることを示したという内容だそうで、まずはそれが気に入った。波のうねりが、チューブからひねり出された練り物みたいで、垂直に近い形で波間にいる舟とともにインパクトが強い。

次は再び仏像対決。円空と木喰、片や鑿や鉈の削り後も荒々しい素朴な印象を受ける像、片やなめらかな丸みを帯びた穏やかな像、それなのにお顔を見ると、その表情は不思議と同じようなのである。清々しい気分になり、疲れを忘れてもっとこれらの像の前に佇んでいたいと思った。
蕪村と大雅、面白かった。蕪村なんてほとんど俳句でしか知らなかったけれど、大雅との「十便十宜帖」は非常に興味深い。同じテーマで2人が競作したこの計20枚の作品(大雅は自然とともに楽しむ生活を描き、蕪村は季節や気候を楽しむ生活を描いている)の本物は、期間を定めて少しずつ展示されているらしい。ある素封家の注文で描かれたというが、こういう趣味のもてる金持ちが羨ましいっす。

長くなるので急ぎます。若冲 vs 蕭白には圧倒され(蕭白の独特の画風は面白いけれど、私の好みは若冲だなあ。「仙人掌群鶏図襖」「石灯籠図屏風」は素晴らしいです)、応挙・芦雪の虎の絵には妙に感動し(ここでも「傾城反魂香」を思い出した。だって、本当に飛び出してきそうな虎なんだもの)、次は歌麿 vs 写楽へ。
先日、江戸博の浮世絵展記者発表で亀治郎さんの好きな作品として紹介されたという歌川国政の「市川鰕蔵の暫」、おお、そこでインパクトのあった<>って字がここにも。写楽「市川鰕蔵の竹村定之進」。これには思わず見入った。私は写楽の人物は生き生きしていると思うのだけど、やっぱり醜悪さがあるのは否定できない。歌麿は目と首の角度で気持ちを表現しているのがすごい。ところで写楽に関しては、清水義範の奇説が面白い(写楽はユダヤ人の画家シャイロックであったという。まったくないこともなさそうで。「蕎麦ときしめん」の中の「黄金の夢」という短編です)。
最後は富士山対決。鉄斎の「富士山図屏風」は、右隻が富士の全貌、左隻が山頂だけを描いたもので、力強く素朴な感じを受けた。いいなあと思っていたら、右隻が白い雲海だけ、左隻に雲海から顔を出した青い富士という大観の「雲中富士図屏風」もああ、これぞ富士という気がして、とてもいいのだ。
ど素人の私には、専門的な評価はまったくわからないけれど、好みは別として、いいものはいいのだ、ということはわかった気がする。
おまけ:音声ガイドははじめ借りる気はなかったのだが、それぞれの対決をいろんな声優が解説するっていうウリに惹かれ、又々借りてしまった。「巨匠対決」というこの素晴らしい企画に声優対決っていうのがなかなかではないか。私にとってこの人はこの役っていう声を期待していたけど、みんな意外と普通に喋っていた。唯一、野沢なっちゃんが、あのノリで解説してくれ、思わずニヤリとした。

PS この展覧会を見に行っている間にブログにトラブルが起きたのです。まだご覧になっていない方には是非お勧め。そう思ってすぐに感想っプするつもりでいたのに(何しろ17日までだから)。それが無理でも再開を目指して、早くから感想を書いておけばいいものを、あまりガックリきて、その気がなかなか起きず、今頃になってしまいました。下に、思いっきりこわごわ写真載せました。
08081102ueno
木陰を歩けば、さしもの熱気もかなり薄れる。





08081103ueno

いつものテラスで。


|

« 有言実行男!! | トップページ | ありえね~ »

展覧会」カテゴリの記事

コメント

再びお邪魔いたします~。

おや、「いつものテラス」にbeerがない?!(笑)

すごい「対決」の連続ですね。ゆーっくり観ていたいようなものばかりですね~。日本の美術館て、混み混みなのが大変ですよね。なかなか心ゆくまで眺めている時間的、空間的余裕がないんですよね…。

投稿: はなみずき | 2008年8月11日 (月) 21時11分

はなみずき様
こちらへもコメント、ありがとうございます。
うふふ、このテーブルは、私のお隣なんですよ~。もちろん私のところにはいつものbeersmile お隣さんは、スナック菓子を小さく砕いて、雀やら鳩やらにやっていました。かわいいお尻を見せている雀ちゃんは、口にお菓子を含んでいます。もう1羽もおこぼれにあずかろうと、舞い降りてきたところです。私はなんにもあげるものがなかったけれど、こんな近くで写真を撮っても逃げない雀に、一茶になった気分でした。

対決は豪華でしょう。それぞれ別個に作品を眺めるより、作者の特徴がずっとわかりやすい。という着眼点が素晴らしい企画だと思いました。最終日まであと6日。さらに混み混みでしょうね。

投稿: SwingingFujisan | 2008年8月11日 (月) 21時37分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 有言実行男!! | トップページ | ありえね~ »