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2008年8月28日 (木)

納涼大歌舞伎第二部

08082801sensyuraku 827日 納涼大歌舞伎第二部(歌舞伎座)
仕事の都合で少し早く着いたのだけど、「らくだ」の幕見に間に合うほどではなく、ハンパな時間をちょっとブラブラして過ごしました。そうしたら、傳左衛門さんと出くわした。こちらはしょっちゅう演奏を聴いて知り合いみたいな気分でいるから、はっとして、危うく声をかけてしまいそうになったけれど、あちらはそうじゃないものね。「らくだ」と「つばくろ」は出番がないので、束の間の休息を取りに外へ出られたのかな、なんて思いながら、後姿を見送りました。
第二部と第三部を続けて見ましたが、まずは第二部の感想から。

「つばくろは帰る」
08082802tubakuro 登場人物に悪い人がほとんどいない(<ケチ十>は悪いって言っていいのかどうか)。それなのに、それぞれの人が抱える人生のつらさも伝わってくる。
母恋し、父恋しの安之助(小吉)が何と言ってもいじらしい。4歳のときに父をなくし、今は京都・祇園にいるという母をたった1人で訪ねる旅の途中、頼れる大人の文五郎(三津五郎)と出会う。文五郎は、京都のお大尽の依頼で江戸風の家を作るため弟子たちを先行させ、自分は1人京へ向かっているのである。宿で夕飯を前にして「こんな親切にされたことは初めて」と涙を流す。幼い少年はそれでも明るく健気で、大工の親方である文五郎は安之助に仕事を仕込むいっぽうで父親のような愛情を寄せる。文五郎の安之助に対する気持ちは、観客の安之助に対する気持ちでもあろう。文五郎には三次郎(勘太郎)と鉄之助(巳之助)という2人の若い弟子がいて、この子たちもまた、兄のように安之助を可愛がる。2人の仲のよさが文五郎の親方としての大きさを実証している。
その親方・三津五郎さんが実にカッコいいし、若い2人も気は荒いけれど心根がやさしい。江戸っ子はこれだからいいよなあと思う。勘太郎クンはおとうさんによく似てきたなあと思っていたけれど、声(ちょっと嗄れさせたり、笑いを含んだり)や喋り方が勘三郎さんに思い切りそっくりな時があって、驚く。巳之助クンはこの役によく合っているというか、役をとてもよく摑んでおり、この後の山神も含めて、これまででこの役が一番「うまい」と思った。2人によって、実に生き生きとした若者像が浮かび上がった。
実直で不器用な江戸の若者に対して、祇園の舞妓たちは華やかで明るい。七之助クンのみつが勘太郎クンの三次郎をリードして指きりげんまんするところなど、2人が兄弟であることも含めて微笑ましい。
小吉クンは大きな役をよく頑張った。セリフや立ち姿にやや歌舞伎的ではない印象を受けたが、安之助という役をきちんと理解しているのだろう、この年齢で飄々とした味わいを含み、笑顔に愛敬があり、健気さと同時に良い意味のしたたかさを感じさせる。やがていい役者になることを期待させた。
京女の君香(福助)だけど、福助さんには、はんなりさはあまり感じられず、むしろしゃっきり感のある江戸っ子芸者のような印象を受けた。江戸で安之助を生んだのだし、元々江戸出身なんだものねえ、とはじめは誤解してしまったほどだ。義理と愛情の板挟み、このまま母子の対面は実現しないのかとはらはらしたが、安之助がおっかさん(君香)の胸に固く抱きしめられたときは涙がぽろぽろ出た。最後に雪の中、息子の旅立ちをそっと見送る姿は、たとえ江戸と京都に離れても母子の心はしっかり結びついたという晴れやかな表情で感動した。でも福助さん、やっぱり時々表情作りすぎ。
江戸っ子と京女、2組の恋が結ばれないというのが面白い。大人の恋(文五郎とお君。いずれ2人が互いを好きになるのは見えていた)はしっとり切ないし、若者の恋(三次郎とみつ、)は瑞々しく微笑ましい。女スリ(高麗蔵)、三島の宿の主人(権一)といったチョイ役の脇の役者さんがよい。中で特筆しておきたいのは、物語の最初に出てくる茶店の婆さん(菊十郎)。この婆さんがたまらなくいいのよ。人情味と、1人で茶店を切り盛りしているしたたかさ。菊十郎さんは好きな役者さんだけど、こんな婆さんをやらせても存在感抜群、じつにいい味出して、ますます好きになっちゃった。
暗転による場面転換がけっこう多く、また舞台の裏でトントン作業する音が聞こえてきたりもした。わずか23分で場面を変えてしまう技術にいつも感心させられる。

「大江山酒呑童子」
08082803oeyama 事前に演目がよくわかっていなくて、扇雀さんが出てきたとき義経かと思った。四天王も山伏姿だったし。扇雀さんが名乗ったのでああ、頼光か、鬼モノかとわかったような次第。
スッポンから飛び出してきた酒呑童子(勘三郎)が女の子みたいで実に可愛らしい。童子の飛ぶ姿が人形で、墨絵の山の頂上に近づくに従ってだんだん小さいものに変わっていき、本火でボっと燃えたのには思わず「おお」と声が出た。
童子にさらわれてきたという3人の女(福助、七之助、松也)の踊りはちょっと寝てしまい、松也クンを半分くらい見逃したのがめっちゃ悔しい。タレ目の三枚目化粧をした松也クンも可愛いでないの~。
四天王の1人、亀蔵さん。一瞬、らくだが思い出されてうっと笑いが出そうになったが、前の役を観客が引きずってはいけないと堪えた。
お目当ての鬼退治。鬼に対峙する四天王たち、足を開き腰を落とし刀を振り上げる形は、勘太郎クンが一番腰が低く足の開きが大きくて、梅王とか思い出した。鬼の館のミニチュアはちょっとちゃちい気がしたが、最後の大仕掛けは面白かった。殺された鬼の乗った台が垂直に立てられ(なぜ、舞台中央に台が置かれているのかと不思議に思っていたが、こういうわけだったのか)、上からざ~っと赤いビーズなんだか小豆なんだかが落ちてくる。血を表しているのでしょうかね(鬼も赤い血を流すんだ。何となく鬼の血って青いように思っていた)。
酒は身を滅ぼします。
追記:音楽がとてもよくて、とくに鬼退治のときのお囃子が素晴らしく、演技も盛り上がって目が離せないのに、聞くだけということにガマンできず、お囃のほうにもついつい目がいった。
<上演時間>「つばくろ」110分、幕間20分、「酒呑童子」50

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
私も昨日、二部に行きました〜!ご一緒だったんですね♪で、そのあと「新・水滸伝」にハシゴしました(笑)

実は遅刻して「つばくろ」は見れなかったのですが、「酒呑童子」はぜひとも観たかったのでなんとしてでも!と頑張りました。
でも私も3人の女の踊りのときちょっと寝ちゃったんですがcoldsweats01

勘三郎さんの踊りも勘太郎くんも、良かったのですが、私もお囃子の調子がよくって、聞き惚れました♪
傅左衛門さんを見かけられたなんて、羨ましいです!

投稿: mami | 2008年8月28日 (木) 11時02分

昨日ニアミスだったようです(^^)
わたくしめは、らくだ+2部を拝見しました。
酒呑童子は完全に落ちてしまったので
SwingingFujisanさんのレポで脳内補足させて
いただきました(^^;

日曜日にThe Woman in Blackも見てきましたが
目下取り込み中のためブログまで手が回りませぬwobbly

投稿: kirigirisu | 2008年8月28日 (木) 11時18分

mami様
まあ、そうだったのですか!! 
第2部は単独で見るのは時間的にもったいないので、何かと組み合わせてご覧になる方が多いようですね。歌舞伎座とはまた違った味わいの「新・水滸伝」、いかがでしたか。
傳左衛門さん、ね、思いがけないところでお見かけしたのでドキドキしてしまいました。その後「酒呑童子」で演奏していらっしゃる姿を拝見して、またドキドキ。演奏の素晴らしさにもドキドキで、ドキドキ3乗の第二部でしたsmile

投稿: SwingingFujisan | 2008年8月28日 (木) 11時31分

kirigirisu様
kirigirisu様もいらしたのですね!! 「らくだ」との組み合わせとは羨ましい。私も幕見に間に合うように出ればよかったと残念に思いました(そのかわり、銀ブラでミーハー的満足を得られましたが)。
芝居を見ていて寝ると、かなり罪悪感を覚えるのですが、みんなで寝れば怖くない、な~んてねcoldsweats01 ほっとします。

この頃ブログの更新をされていらっしゃらないので、きっとお忙しいのだろうと思っておりました。どうぞ、お体第一で。

投稿: SwingingFujisan | 2008年8月28日 (木) 11時37分

歌舞伎座の千穐楽は、SwingingFujisan様がいらっしゃったはず~!、と記事アップを楽しみにしておりました♪

「つばくろ」。小吉丈、「いいお芝居」をなさってましたよね。あのお芝居自体が、歌舞伎カブキしていないですから、歌舞伎というよりむしろ「いい芝居」をなさっていたからこそ、安之助と文五郎の「情」がスっと心に入ってきたのだと思います。三津五郎丈と小吉丈の、お芝居のリズムが合っていた、とも感じました。10月の「歌舞伎の」お芝居も楽しみですね!

あと、菊十郎丈の「ヒッヒッヒッsmile」が忘れられませんっ!

「酒呑童子」。私も頼光さんのお衣裳だけが「歌舞伎」だったので、ちょっと違和感を感じました。私もお囃子を耳だけで我慢できず、かなりの時間をお囃子さんへの目線に費やしてしまいましたデス。

第3部のレポも、楽しみでーす。

投稿: はなみずき | 2008年8月28日 (木) 20時15分

はなみずき様
コメントありがとうございます。

そうなんですよね、小吉クンは「いい芝居」をしていたんですね。というか、安之助になりきっていたのだと思います。それに三津五郎さんとの関係には実生活も重なりますし、「親方」と呼ぶ声にも実感が籠っていたかもしれませんね。2人の兄弟子たちが安之助を可愛がっていたのが、とても嬉しく心に沁みました。

菊十郎さんは何をおやりになっても、印象に残りますが、今回のおばばはとくにsmile

お囃子って楽しいものですねえ。笛のぴーっという鋭い音と打楽器だけで、情景や雰囲気を表現できるのですから、素晴らしい。

投稿: SwingingFujisan | 2008年8月28日 (木) 21時53分

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