<歌舞伎>堪能その2:河内山
「鳥羽絵」
清元の歌詞が面白いらしかったけれど、よく聞き取れなかった。これが聞き取れていれば、きっと踊りももっとよくわかったんだと思う。わかりやすい空飛ぶ擂粉木は、唐突でびっくりしたけど面白かった。ネズミの着ぐるみの鷹之資クン、可愛かった。ということで、天王寺屋親子の微笑ましい踊りでした、で、ごめんなさい。ちなみに記録を見ると、これって、必ずしもネズミ年に上演されているっていうわけでもないのね。 「河内山」
この芝居は何度見ても痛快で好きだ。本当はちょっと粘り気のある吉右衛門さんよりカラッとした仁左様の河内山のほうが好きなんだけど、今日の吉右衛門さんには思ったほどの粘っこさは感じなかった。意外にカラッと感があって、「かっこいい~」と思わず口に出そうになったほど。
本当は悪党だっていうけど、すっきりした江戸っ子ぶり、大名を手玉に取る知恵と度胸、有言実行、河内山はどれをとっても、<いい男>である。しかも愛嬌もある。私は「ひじきにあぶらげの煮たのばかりをうまそうに食ってる」というくだりが好き(私もよく食っております)。バカにしているようではあるが、庶民に対する愛情のようなものが感じられる。だからそのセリフを聞いて笑えるのだ。
で、歌六さん、左團次さん、吉之丞さん、と出てくりゃ、それだけで見惚れちゃう、聞き惚れちゃう。とくに吉之丞さんはやっぱりいいなあ。大店の女主人らしい風格がある。そして私はこの人のセリフまわしが好き。聞いていて心地よいのだ。
染五郎さん、竜馬とは正反対な短慮で癇症なお殿様が、ぴったり合っていた。実は、このお殿様登場のところで、幕見からの疲れが出て、ちゃんと見ていなかったのだが、断片的な印象では、本当に普段から額に青筋が立って、こめかみのあたりがぴくぴくしていそうな、そんな感じがした。
吉右衛門さんの「バカめ~」の高笑いに、盛綱陣屋の涙をちょっと向こうへ追いやり、気持ちよく帰路につけた夜の部でした。
初代を知らない私がこんなことを言うのも変だけれど、吉右衛門さんが初代の芸と心を継いで丁寧に演じていることが伝わるようで、歌舞伎を堪能した~という満腹感を覚え、そっちのほうの食欲も大いに満足したのでした。
<上演時間>「鳥羽絵」15分、幕間15分、「河内山」95分。終演20:56
おまけ:2階ロビーで先代の写真や自筆の俳句、ゆかりの品が展示されている。昭和22年11月、白鸚さんが「逆櫓」の樋口を演じたとき、煙草入れを贈ったそうだが、それにつけた手紙が、ここは動いてはいけない、あそこはこれでよい、などと書かれていて興味深い。
昭和25年頃御園座公演の合間に野球のユニフォーム姿で撮影された珍しい写真がある。1人で写っているのと、他の役者さんなどと写っている2枚で、後者には白鸚さん、又五郎さん、先代時蔵さん(当時、梅枝)もいて、妙に感動してしまった。そのほか、若い頃のフロックコートにシルクハット姿のブロマイドハガキとか、後援会の会報誌(大正年間か、昭和初期のもの)が私のミーハー的視点を引き付けた。
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