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2008年9月23日 (火)

<歌舞伎>堪能その1:盛綱陣屋

921日 秀山祭九月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)
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階の幕見席から3階前方席へと移ってみると、ずいぶんと違いを感じた。まず、明るい。そして、3階とはいえ、やはり4階に比べたらかなり舞台に近い気がする。空気も微妙に違う。幕見席の気楽な雰囲気も好きだけれど、下へおりて、ちょっとほっとする気持ちにもなった。
08092302morituna「盛綱陣屋」
勘三郎さんの襲名公演で見ていて、芝翫さんの微妙と福助さんの篝火と児太郎クンの小四郎は覚えているのだけど、どういうわけか、あとはあまり記憶にない。
今回の小四郎役は宜生クンで、私が見た芝翫さんの微妙は、2回とも実のお孫さんを役の上でも孫としたことになる。あまりそういう目で見ないようにしていたが、子供より可愛いといわれる孫に死んでくれと迫らなくてはならない祖母の気持ちが切々と感じられた。とくに、小四郎の本心を知って、「死にたくない」と逃げるのを未練たらしいと叱ったことを悔やむ微妙の姿が小さく見えて泣けた。
宜生クンは教えられたとおりに一生懸命やってるなくらいの感じだったのだが、切腹する段になったらとてもよくなって、子供ながらに立派に武士の役目を果たした小四郎に哀れを覚えた。そういえば、宜生クンの初舞台では、まだ口上でご挨拶の言葉も言えない息子を横目で見た橋之助さんが「……だそうでございます」と締めたのをよく覚えている。演技もほとんどしなかったあの3歳の宜生クンが4年たった今、こうして演じているのを見ると、子供の成長というのは早いものだとしみじみ思う。小三郎の玉太郎クンも小さな体に鎧をまとい、りりしく立派な武士ぶりを見せてくれた。
玉三郎さんの早瀬は、決して目立つ役ではないのに、登場するだけで舞台がきりりとしまり、それでいて小四郎の切腹に涙する姿などは、形だけの涙でなく心から哀しんでいる情が窺えて、胸に迫るものがあった。で、これはやっぱり福助さんの役じゃないよな、福助さんは篝火だよな、うまく配役されているものだと思った。
吉右衛門さんの盛綱は、さすがにうまい。この芝居の中で私が一番感動したのは、小四郎の死を前にして、女性たちに「ほめてやりなされ」というところ。弟・高綱と小四郎の真意を悟り、首実検を無事にすませて北条時政を見送る。ぐ~っと高まり続けた緊張が緩むいっぽうで、健気な小四郎の最期に感情が高まる。盛綱の気持ちに私の気持ちも同化する。泣き笑いのような吉右衛門さんの表情、小四郎を讃えてあの世に送り出す盛綱の心に涙が溢れました。
盛綱はそうやって自分の主人である時政を欺いて、一方で敵である和田兵衛と心を通わせる。だから和田には、ああ、この人ならそうだろうなと思わせる大きさがないといけないと思う。左團次さんの和田兵衛はその点、とても納得できてよかった。ところで、和田兵衛は時政が忍ばせたスパイを短筒で撃つんだけど、この時代短筒ってあったの? 鎌倉時代の話に仕立ててはいるけれど大坂冬の陣を題材としているから、ありってことか。
勝手にストーリー:この芝居の内容をかなり忘れていた私は、時政が褒美だと言って置いて行った鎧櫃に、ひょっとして高綱が入っているのではないか、小四郎があんなに会いたがっていた父親に一目会って死ねるのではないか、なんて期待して、勝手に話を進めていた。ところが、そこに入っていたのは和田兵衛が見抜いて撃ったスパイ。時政をちょっと甘く見ていたね。歌六さんが時政だったから(歌六さんの人情に期待したcoldsweats02)。っていうか、「熊谷陣屋」が頭にあったんだと自分で思う。
小四郎と槌松:しかし、歌舞伎には子供を犠牲にする話が多いよね。寺子屋、熊谷陣屋、先代萩、そして盛綱陣屋(ほかにもあったっけ)、みんな子供が自分の役割を心得て死んでいき、健気だ。と、ここでなぜ「逆櫓」が私にとって納得できないのか思い当たった。槌松は武士の子ではなく、しかも間違えて殺されたんでしょう。結果として若君が守られたことは他の4人と同じだとしても、カタルシスがないのだ。よくやった、と褒めてあげられないのだ。こんな理不尽な話にそれがなかったら、余計やりきれなさが増すではないか。だから、「逆櫓」に気持ちが入り込めないのだろう。
おまけ:注進の侍(松緑・歌昇)のうち、歌昇さんは伊吹藤太といって、顔も衣裳も「義経千本桜」の逸見藤太と同じよう。名前も似ているし。そういえば、「義経千本桜」の「鳥居前」では逸見藤太ではなく笹目忠太で、今月演舞場の「竹生島遊覧」に出てくるのは塩見忠太で、猿弥さんと歌昇さんは私の中で時々かぶるし。ああ、ややっこしい。
<上演時間>111分、幕間30

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コメント

伊吹藤太・逸見藤太・笹目忠太・塩見忠太
…ほんと、書いてるだけでもわけわからなくなりますね~
その上、猿弥さん・歌昇さん、お二人とも芸達者な上にあの顔にあの衣装になっちゃうとコロコロして外見もそっくりだし…
ほんと「ややこしや~"<(ーー;)>”」ですね(^_^;)

投稿: HineMosNotari | 2008年9月24日 (水) 00時06分

HineMosNotari様
こちらにもありがとうございます♪
藤太や忠太はお芝居の緊迫感を少し和らげるためにも大事な存在ですよね。登場すると、確かにちょっとほっとします。
猿弥さんと歌昇さんは、私の中では他のお役でも時々かぶることがあり、ましてやあの黄色い衣裳、剽軽メーク、コロコロ感bleahではおやっと思ってしまいます。ね~、「ややこしや~」。
お2人とも大好きな役者さんです。

投稿: SwingingFujisan | 2008年9月24日 (水) 08時22分

分かります、分かります。私も歌昇さんと猿弥さんの、ややこしや〜分かりますよ〜。おふたりとも踊りもお芝居もお上手で、やや丸みをおびた安心感のある体系。(←誉めています)同じ舞台での踊り比べなんて拝見したいものです。

では、ここで問題です。右手にクロックムッシュ、左手に携帯電話、時々コーヒー。さて、私は今どこにいるでしょうか?!

投稿: aki | 2008年9月24日 (水) 12時49分

aki様
Ken'sさんでランチでしたのねgood
クロックムッシュという言葉が目に入っただけでわかりましたよwink 羨ましいです~。

歌昇さんと猿弥さんが同じ舞台に立たれたのは見たことがない(と思う)ので、実現したら嬉しいですね。お2人とも踊り上手ですし、連れ舞を見てみたいですわ。丸みを帯びた体つきは、本当に安心感があるし、癒し系という感じがしますheart04

コメントのお返しが遅くなってごめんなさい。

投稿: SwingingFujisan | 2008年9月24日 (水) 17時32分

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