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2008年11月26日 (水)

歌舞伎座千穐楽

1125日 顔見世大歌舞伎千穐楽夜の部(歌舞伎座)
08112601yorunobu
結局夜の部は
1回しか見られなかったけれど、それだけ思いが集中したから、それでよかったのかもしれない。終わってみれば、仁左様と時様を堪能した顔見世でした。
「寺子屋」
08112602terakoya_2 稚魚の会・歌舞伎会合同公演も含めて5回目の寺子屋。毎回泣かされるのだが、今回ほどぼろぼろ泣いたことはない。あんまり泣いてマスクの中で鼻水が止まらず、マスク美人台無しですゎ(私の並びの何人かもみんな同じようにずるずるしていた)。そして、幕が閉まった後は、目に膜が張ったみたいに見えづらくなってしまった。
死ぬために武部家へやってきた小太郎(玉太郎)のあどけない顔。すべてを腹に含み、机の数が1つ多いことを指弾する松王丸(仁左衛門)の胸のうち。<無事>責務を終えたあと、小太郎の見事な最期の様子を知って喜ぶ松王(さぞ未練を見せて死んでいったことでしょうな、とさぐる場面が人間らしくて好きだ)、桜丸が不憫だと言って泣く松王。任務と忠義と家族の愛情の狭間で苦しむ松王…仁左様のすべてが胸にずんずんきた。

しかし今回、仁左様以上に私を泣かせたのは藤十郎さんである。武部の家の玄関口で小太郎を迎えに来たから戸をあけてくれと頼むその姿を見たら、何か知らないけれどどっと涙が出てきた。それ以降、藤十郎さんが何かするたびに、何か言うたびに涙が溢れて、自分ながらなんなんだこれは、ととまどうほど。
夫婦2人してどれだけ泣かせてくれるのか。極めつけは、千代に「もう泣くな。昨夜決めたとき、さんざん泣いたじゃないか」(もちろん、正確じゃない→「うちで存分ほえたでないか」でした。Notari様からパクって、思い出しましたcoldsweats01 そういえば、このセリフの前にも「そんなにほえるでない」みたいなのがあって、「ほえる」ってそういう使い方をするんだ、と泣きながら面白く思ったのでしたっけ)という松王のセリフ。昨夜の2人を思ったら、わんわん泣きたくなった。さらには首のないわが子の遺骸を見る親の気持ちを考えたら…crying
武部源蔵(梅玉)・戸浪(魁春)夫婦からは、こうと決めてからの心理が強く感じられた。見抜かれたらどうしようというハラハラ感、いざという時の覚悟を含んだ緊迫感に、こちらも力が入った。魁春さんの戸浪は情が細やかで好きです。

そういえば、今月演舞場と歌舞伎座は、昼は美しき殺戮、夜は我が子を犠牲の忠義って、共通テーマ競演みたいだったなぁ。

「船弁慶」
08112603funabenkei これももう4回目になる。今度こそと意気込んだが、やっぱりダメだった。でも目を開いていた時間は今度が一番長い。そして、それゆえ、面白さも少しはわかった。囃子方の演奏が好きです(心理描写や情景描写がよくできている音楽だと思う)。この前、鼓の話を聞いてきたばかりだから、「あ、今息吹きかけてるんだ」などと余計なことも考えたし。
左團次さんの弁慶に存在感があり、踊りでは芝翫さんの舟長がとてもよかった。菊五郎さんの静はこれまでの静の中で一番動きがあったように思ったが、それでもsleepyなのは食後だから、ということにしておこうかな。知盛は意外にも線の太さというか強さというか迫力というか(しつこいcoldsweats01)を感じなかったが、その表情から静かな無念さと諦念が徐々に伝わってきて、ああこういう知盛も悪くないなあと思ったのでした。
08112604yaegiri 「八重桐廓噺」
これ見るの、3回目らしい。自分のことなのに「らしい」と言うのは、記憶にないから。前回(1812月)は記録があるので読み返してみたら、やっぱりこの時も前に見たのを忘れていたと書いてある。その時はそれなりの印象があったのだろうけれど、どういうわけか残らなかったのねぇ(煙草屋のくだりは見ているうちに記憶が甦った)。
時様、まさに適役だ。大らかで、それでいて細やかなところもあって、色気もあって。八重桐は女方の役の中で数少ない発散型の1つであるが、その発散の仕方も品がよくて、だからといって取り澄ました品ではなくて、こういう時様を見るとその大きさが感じられるのだ。
三代目時蔵さんは五男五女の子福者だったそうだが、子息で歌舞伎に残ったのはたった1人(初代錦之助、嘉葎雄は映画へ、獅童は早くに廃業、四代目歌六は体が弱く、歌舞伎をやめて脚本を書いたりしていたそうだ)。それが今は12人もに増えている。三代目が当時どのような思いでいたかは知る由もないが、この50年追善公演で、孫である五代目がしっかりお家の芸を受け継ぎ、さらには錦之助さん(太田十郎、私はなまっちろい二枚目よりこういう錦之助さんのほうが好き)、梅枝クン(沢瀉姫、きれい。いずれ八重桐をやることになるんだろうな)、歌昇さん(お歌、十分イケてる。ムリに作らぬ飄々とした雰囲気が可愛い)がそれぞれ伸び伸びと持ち味を発揮している姿を見て、歌舞伎のおうちってすごいなぁ、いい追善だったなぁconfidentと感慨に浸ったのでした。
<上演時間>「寺子屋」82分(16301752)、幕間30分、「船弁慶」67分(18321929)、幕間20分、「八重桐廓噺」67分(19492056

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コメント

こんばんは。
歌舞伎座千穐楽も良かったようですねえ。私ももう一回、観たかった!
私も、藤十郎さんに泣かされました。「寺子屋」っていままでは、話の筋はわかってもなんとなく共感しにくかったんですが、今回初めて千代に感情移入できて、ひいては松王の気持ちも良くわかった気がします。
そして、今月の時様は、どれも良かったですね。先代の当たり役を引き継がれてゆくのでしょうね。素敵でしたheart04
そういえば私、歌舞伎座夜の部、感想まだ書いてませんでした。SwinigingFjisanさんのを読んで、思い出しました( ̄Д ̄;;

投稿: mami | 2008年11月26日 (水) 23時33分

mami様
「寺子屋」にしても「先代萩」にしても(「熊谷陣屋」もでしょうか)、悲しく理不尽なお話がこれだけ愛されるのは、松王夫婦の気持ちが強く訴えかけてくるからなんでしょうね。
藤十郎さん、昼は失礼しちゃいましたbearingが、夜は素晴らしかったです。
時様、どんどんステキになりますね~smile
お忙しいようですから、お体に気をつけてくださいねhappy01

投稿: SwingingiFujisan | 2008年11月26日 (水) 23時59分

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