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2008年11月 2日 (日)

前後半でがらりと姿を変える「伊勢音頭恋寝刃」

11月1日 花形歌舞伎昼の部(新橋演舞場)
「伊勢音頭恋寝刃」
2
度見ている(三津五郎さん、仁左様。海老蔵襲名公演では見られなかった)けれど、通しは初めて。油屋と奥庭はいじめと殺しの陰惨な場面で、役者がよくなかったらとても耐えられないところだけれど、「又か」という気持ちにならなかったのは、2度とも良かったんだと思う。通しのおかげか、はたまた記憶が薄れているせいか、油屋と奥庭も新鮮な気持ちで見られた。初日ゆえのテンポの悪さが間々あったが、それは承知の上で初日を選んだのだから。
前半部分は、あの陰惨な物語に、こんなにゆるい、ドジでコミカルな前提があったのかと興味深い(ナンセンスツッコミどころ満載bleah)。筋書きなどのあらすじでは読み取れない面白さがある。ネタバレしないよう、多くは書かないが、まずは今田万次郎(門之助)、おっとりおっとり、こんなんでよく世渡りできるわいな(できないから事件が起こった)、と呆れるほどお坊ちゃまなのだ。あまりのおっとりぶりに、貢(海老蔵)にまでツッこまれる始末(思わずぷっと吹き出してしまったsmile)。門之助さんが、9月の目端のきく小万とは違った味を出していて、とてもよい。
ここでなんといっても可笑しいのは、万次郎・貢派の敵である蜂須賀大学の一味・杉山大蔵(新蔵)と桑原丈四郎(新十郎)。コンビの息もぴったり、軽妙で、奴・林平(獅童)との追っかけっこや、夜明け前の二見ケ浦海岸での海老ちゃんとの立ち回りはとても楽しい。ここで貢が大事な手紙を何とか星明かり(月じゃないと思う)で読もうとするのだが、いいタイミングで「コケコッコ~」。ありがたい、手紙がはっきり読めるって、ああた…coldsweats01
獅童さんは、はじめ声が荒れているように感じたが、徐々に落ち着いてきた。私は、誰がなんと言おうとやっぱり獅童さんはカッコいいと思うheart04。ほかの舞台も確かに個性的でいいのだけど、獅童さんに一番似合うのは歌舞伎だと信じる。あっちこっちしないで歌舞伎に精進してほしいのになあ。
お紺の笑三郎さん、美しかったです。しっとりと大人な感じで、貢への愛情に溢れていて。笑三郎さんって、とてもモダンな時もあるのに、こういう役をやると古風さが現れて、いいなあと思う。
吉弥さんの万野はこれまでの2人(勘三郎、福助)にないものを感じた。うまく言えないのだけど、情のある意地悪っていうのか。情と言っても、温かみや情けの「情」ではない。ヒステリックではなく、言葉のひとつひとつに込められたものがあるっていう感じなのかなあ。とても丁寧な印象を受けた。それにしても吉弥さんって綺麗だゎ~。
お鹿の猿弥さんが可愛かった。お鹿っていうと化粧で笑いを取っているような感があるが、猿弥さんは化粧ではなく自身のキャラで勝負しているような気がした。貢を本当に好きで、でも食い違いがあったことを知ると、今度はお金のことを強く言い出して、お鹿が頼れるものは金だけなんだなあと哀れを覚えた。

さて、肝心の海老蔵さん。今回の席は花道に近く、しかもちょうど七三あたりで、海老ちゃん(だけでなく、いろいろな役者さん)を間近に見ることができて、もう目がlovelyになっちゃって。でも、9月の義賢・実盛・岩藤で受けたほどの魅力の衝撃はなかった。役柄のせいもあるのかもしれないな。門之助さんの万次郎と一緒に二見ケ浦にやってくるときは、中央上手側の通路から登場するよ。2人が進むたびに、その一角の観客から拍手や歓声が起こって(「日本一!」っていう女性の声も聞こえた)、ああ海老ちゃんはアイドルだなあ、なんて思った。貢が万次郎とはぐれぬようにと、手を取り合って歩く様はほほえましい。
貢を単なる殺人鬼にしないためには役者の力量がいると思う。海老ちゃんは刀の魔力に魅入られたかのように次々人を斬っていく。目は視点が定まらぬような、一点に据えられたような、ともかく妖かしの何かに取り憑かれたかのような様式美の世界が展開される。
おまけ1黒御簾の歌詞が面白い。メモを取らなかったのでほとんど覚えていないけれど、「♪べんべらべんべら♪」「♪畳も新しく取り替えた♪」とか。
「吉野山」
菊ちゃんheart04の舞いを目の前(七三ですから)で見られて幸せ。でも、その後はかなり沈没しました(まわりもけっこう…)。遅ればせながら、逸見藤太(亀三郎)が出てから、こっちはやっと調子が出てきた。亀三郎さんheart04、ちょっと緊張しているような印象を受けたけれど、こなれてくるとよくなりそう。最後、忠信(松緑)が嬉しそうに微笑みながら花道を引っ込むとき、まわりのお客さんたちの多くが同じように微笑んでいたのが面白かった。そういう私もにこにこしていたはず。忠信との一体感っていうのかしらね。
今月は演舞場1回ずつしか取ってない。もう一度見た~い。で、今Web松竹見たら三階席があったから(この間まで、三階席は完売状態だったように記憶しているけれど、戻ってきたのか)、思わずスケジュール押し込んじゃった。ダブルブッキングしてないだろうなぁeye
おまけ2上演中にお喋りをしないでくださいというアナウンスが2度ほど入った。私のそばでも少しお喋りが聞こえてきたが、いつもほどは気にならなかった。きっと他の席でよほどひどかったのだろう。あんな静かなアナウンスで効果あるのかな、と疑問に思ったけれど、その後どうだったのかしら。
<上演時間>「伊勢音頭恋寝刃」序幕50分(11:00~11:50)、幕間30分、第二幕90分(12:20~13:50)、幕間25分、「吉野山」50分(14:15~15:05)

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コメント

>Fujisanさま
二見ケ浦ありましたか。かっこよい奴、阿呆の若旦那と、貢さん刃傷までのシュールな不条理劇みたいですよね。浪花花形歌舞伎の実験的な取り組みでしたが、本公演というのはうれしいです。
吉弥丈は綺麗し、すらっとしたはるし、情も理もあるし、品はええし。
栄御前もいけますんよ。松島もどうだったか、貴宅にゆっくり覗きにいきます。

投稿: とみ(風知草) | 2008年11月 4日 (火) 14時46分

とみ様
コメント、ありがとうございます。
ほんとほんと、仰るとおり、シュールな不条理劇みたいですsmile
浪花花形歌舞伎の実験的な取り組だったとお聞きして、筋書きの上演記録を開いてみましたら、とても魅力的な配役で、ああこれも見たかったなぁ、と。今回通しで見ることができたのは幸せです。
吉弥さんがとりわけ気になりだしたのは、遅ればせながら去年の「牡丹燈籠」からなのですが、ええ、まさに情も理もあり、品のいいすっとした美しさ、じわじわとその魅力に引き込まれていっています(吉弥さんの魅力って、わっと一度に押し寄せてくるのではなくて、知らぬうちにじわじわ、っていう感じなんです、私にとっては)。夜の部の松島、注目ですわね。

投稿: SwingingFujisan | 2008年11月 4日 (火) 16時44分

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