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2008年11月13日 (木)

その刃、痛い!

1111日 顔見世大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)
08111301hirunobu
そういえば(って、いきなりですが)、今月
11月は大量殺戮月間になってしまっている。演舞場の貢、中村座の法界坊(自分も殺されちゃうけれど)、そして歌舞伎座の源五兵衛。あな恐ろしやshock
「盟三五大切」
08111302sango 貢は妖刀に魅入られたかのように人を斬っていくから、そこには惨状ではあっても美が感じられたが、恨みつらみが籠っている源五兵衛(仁左衛門)の刀の恐ろしいこと。その刃(は)がさ~っと引かれるたびに、まるで我が身に刃(やいば)があてられ、じわじわと肌を裂かれるような気がして、ぞっとすると同時に思わず「痛いbearing」と口に出そうになった。
三五大切を初めて見たのは3年前。このときは三五が仁左様、源五兵衛は吉右衛門さん、そして小万は同じ時様であった。吉右衛門さんのねっとり系源五兵衛に比べると、仁左様の源五兵衛は私には乾いた感じがして、それがまたねっとりとは別の恐ろしさを抱かせた。
3
年前の上演で一番忘れられないのは、序幕第一場の舟の場面。三五と小万のラブシーンがとても美しくエロチックだった。ただ、抱き合ったまま舟底に2人で倒れこむっていうだけなんだけど、2人の姿が見えなくなったのがエロスを感じさせたのかもしれない。と、ずっとそう記憶していたのだが、今回見たら、舟底はそんなに深くなく、抱き合った2人の姿はずっと見えていた。私が勝手に記憶を変えていたのかもしれない(ほんと、記憶ってアテにならないcoldsweats02)。
仁左様の源五兵衛は本当にいい男で、時には小万が本当に惚れているのは三五(菊五郎)じゃなくてこっちじゃないか、と思いたくなるほど。少なくとも、小万に対する源五兵衛に不気味さはなく、身請けに100両を差し出す場面の苦悩など、まるで「封印切」みたい。本当に小万のことが好きなんだなぁと伝わってくる。それだけに、源五兵衛の怒りは、武士のプライドが傷つけられたというよりは、だまされた恋の恨みに重点が置かれているような印象を受けた。こんな殺人鬼(赤ん坊を小万の手で殺させる残忍さ、shockだよ~)が討入に加わっていいのかよ~とついつい思ってしまったのは、その辺に原因があるのだろうか(先月の仮名手本Dプロ、見ておくべきだった。同じ不破数右衛門だもの)。
菊五郎さんの三五郎には、先月の直侍ほどの衝撃は受けなかったが、最後、腹に包丁を突き立てて大樽から出てきた場面の感情がとてもよく、これまでの出来事がすべてここへ集約したんだなあという感慨をもたらした。源五兵衛の夜襲から逃れるときは、悪いのはアンタたちだと突き放しながらもついつい「早く、早くrun」と後押ししたくなった。しかし、この三五、女房を芸者に売ったとは、いくら事情があっても、考えてみればイヤなヤツだな。

歌昇さんがめちゃくちゃ良い。源五兵衛の家来で、女に入れあげる源五兵衛を心配しながら、殺人の罪をすべて背負って縄をかけられる。この場面、私は涙が止まらずcrying、まわりに人がいなかったら声をあげて泣いていたに違いない。
家主の左團次さん、三五の父・田之助さんがいい味を出して、舞台を締めている。
さて、小万の時さま。な~んて綺麗!! 清潔感があるのにぞくっとするよう色気。深川芸者だから男言葉なんだけど、丁寧な口調でそれすら品がある。感情も細やかである。ただ、さっきも書いたけれど、本当は源五兵衛のほうが好きなんじゃないのぉ?と思ってしまう。第一、これは別に時さまがどうこうではなく、源五兵衛からさらに金を巻き上げるのを渋っているじゃない。源五兵衛に対しては意外にしたたかさが発揮されない。もっとも、それだからこそ、源五はころっとだまされてしまうのかもしれないな。源五に嬲り殺される場面の時さまは凄絶で、また美しい。しかし、南北はエグいよな~。時さま生首のサプライズには場内笑いが起きていた(前回はただただビックリしたが、今回は知っているので余裕bleah)。
時・仁左・菊という魅力的な顔合わせだし、舟の場面を上から見たいなあとは思うのだけど、この芝居、後味悪くて、もう一度見ようかという気にあまりなれない(伊勢音頭のほうは、勝手ながら貢側の人間は死んでいないし、変な言い方だけど、明るい陰惨さなんだよね)。
おまけ:松三郎さんの名題昇進披露、おめでとうございます。初代仁三郎さんになったのね。それを知ったのは後になってからだったけれど、松三郎さんじゃなかった仁三郎さん、少し大きくなったような気がしながら見ていたのでした。
「廓文章」
08111303yosidaya_2 大変、申し訳ない。大半、目を開いていられなかった。見ないで帰ろうかとも思ったのだが、梅之さんが出るんだっけな、と残ったのが、かえって失礼になってしまった。藤十郎さんは若々しくきれいだったし、目をあいている間はけっこう面白かったような気もするのだが、どうもああいう、ぐずぐずした男は苦手でcoldsweats01 で、肝心の梅之さんが魁春さんに打ち掛けを着せる場面は、しっかり目を開いていたにもかかわらず、ちょうどその時出てきた千両箱に気を取られ、ふと目を移すと、着せ掛け終わったところだったsad ドジしたぁ。
<上演時間>「盟三五大切」序幕・二幕目80分(11001220)、幕間30分、大詰90分(12501420)、幕間25分、「吉田屋」64分(14451549
追記:2階ロビーで三代目時蔵のゆかりの品が展示されている。蘭蝶蒔絵螺鈿の鏡台がとても豪華。初代錦之助らの写真とともに、歌六・歌昇さんの幼い頃の姿(歌六8歳、歌昇3歳。歌昇さんは110カ月の写真も)、ひなさんに抱かれたお宮参りの時蔵さんも見られる。

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コメント

またお邪魔いたしますm(_ _)m
先日はあたたかい歓迎のお言葉ありがとうございました。

先週、見てまいりました>歌舞伎座昼の部。
仁左様は伊左衛門なんか(失礼)より、こういう陰惨なこわ~いお役のほうが私としては好みです。心底ぞくっとするけど、惚れ惚れするほどかっこいい。
2階東の奥の桟敷であるのをいいことに何度「かっこいい」とつぶやいたことか。。。

美しい人が殺される場面ってのは、絵になりますね。ひたすら見つめておりました。

今日も中村座へ行ったからつぎでした。

投稿: からつぎ | 2008年11月13日 (木) 16時52分

からつぎ様
コメント、ありがとうございます。こちらこそ、長文をお読みいただき、恐縮、感謝しております。
今日が二度目の中村座でしたか。NY版とはまた違った楽しみ方がおできになったことでしょうねhappy01
伊左衛門はさすがに仁左様でも、私もちょっと…despair 源五兵衛には仁左様のこの役に対する美学が籠められているのでしょう。怖かったけれどカッコよかったですね。小万が斬られるところは凄惨な美しさがあり、私も息を詰めてみておりました。痛かったですよ~wink

投稿: SwingingFujisan | 2008年11月13日 (木) 17時59分

SwingingFujisan様、こんばんは!

「三五大切」は、うっとりするような美男美女の幕開けに油断すると、陰惨さに震えますよねぇ~。油断せず、楽しみに(!)、拝見したいと思います!!

>歌昇さんがめちゃくちゃ良い。

歌昇さん大好きですので、SwingingFujisan様にこうおっしゃっていただけただけで、嬉しくなってしまいました~♪ わくわく♪

投稿: はなみずき | 2008年11月13日 (木) 19時31分

はなみずき様
こんばんわ。コメントありがとうございます。
美男美女の恐ろしい因果ですよねえ。菊五郎さんの最期を迎える表情もそういう因果を感じさせて、泣けます。
歌昇さん、私も大好きnotes 今でも罪をかぶって捕らえられた歌昇さん(八右衛門)の気持ちを思うと涙がにじみます。2階ロビーの写真を見て、こんな時代もあったのね、とほほえましい気持ちになりましたconfident

投稿: SwingingFujisan | 2008年11月13日 (木) 20時09分

こんにちは。私は昨日観てきました。「盟三五…」私は初めてみたので、時様の首にはびっくりしましたが、それを愛しそうに抱く仁左様が恐ろしくてせつなくて。
美しい悪夢のような、いつまでも明けない夜のようなお芝居でした。
陰惨だけど、私けっこう好きかも(^-^;仁左様も時様もこの世のものとは思えないくらい美しかったんですもの。

最後は、私も、あのまま討入りに参加しちゃうの?って思いました(笑)

投稿: mami | 2008年11月14日 (金) 09時55分

mami様
コメントありがとうございます。
私もけっして嫌いなお芝居ではないのですが、この場面は返り血を浴びて真っ赤なんだろうなとか、この部屋血の海なんだろうなとか、うわっ、今首が飛んだとか、ついつい現実的なことを考えてしまうんでしょうね。それで、もう一度はあまり見たくないと思うのです。でもそう言いながら、やはりあの美しさは魅力で、又行っちゃおうかなぁ、なんて考えたりもしていますcoldsweats01
赤穂の義士って何だったんでしょうね。あんなことまでして参加して、そうかと思えば勘平みたいな悲劇もあって…

投稿: SwingingFujisan | 2008年11月14日 (金) 12時46分

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