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2009年1月17日 (土)

はじめて泣けた「封印切」:演舞場夜の部

12115日 初春花形歌舞伎夜の部(新橋演舞場)
「七つ面」
昭和581月以来の上演となれば、もちろん初見。たった20分、それも大半面をつけての踊りでも、海老ちゃんの魅力をたっぷり感じ取った。翁の面をつけて登場した海老ちゃん、その面を取れば錦絵から飛び出してきたような美しさ。サルの面では愛敬のある踊りを見せてくれて、脇をぽりぽり。荒事の若衆の面をつけると「暫く~暫く~」、公家荒の面と取っかえひっかえ大福帳を引き合う様子が面白い。とにかくここは後見との息が合わないとリズムが崩れる。後見の新十郎さんの緊張が伝わってくるようだ。新十郎さんはでも、引き締まった表情で手際よく忙しいお仕事をこなしていた。
次は関羽の面でしばらく舞ったかと思うと、般若の面に変わり、これも交互にめまぐるしく入れ替わる。最後は恵比寿。海老ちゃんの踊りは、面をつけたらその面の人物にちゃんと見えた。
恵比寿で踊るうちに、澤瀉屋の面々が登場して一緒に舞う。なんて華やか。私の目の前では笑也さんが微笑みながら踊っていた。きれい~。かなり胸がどきどきしてしまいましたわ~。
「封印切」
こういう心中モノは苦手。とくにぐじぐじした男がぐじぐじと心中に追い込まれていく様はどうも好きになれない。忠兵衛って男も、なんてバカなヤツなんだといつも思っていた。八右衛門のほうがよっぽどカッコいいじゃないか。
ところが、だ。この「封印切」は初めて「いい」と思った。演技の巧拙はわからないが、伝わるものがあって、初めて忠兵衛に共感を覚えた、というか忠兵衛が追い込まれていく必然性がわかるような気がした。
それはある意味、猿弥さんの八右衛門がとてもよかったからだと思う。この八右衛門ときたら、これまでの仁左様や三津五郎さんとは違って、すっきりしたいい男ではない。しつっこくてイヤな男だった。でも猿弥さんだから、ぎりぎり愛敬が残る。八右衛門と忠兵衛(獅童)との250両をめぐるやりとりはまるでガキのけんか。執拗な意地悪なんか無視すりゃいいのにいちいち相手になるから、八右衛門はますます面白がっていじめる。
それに乗ってやっきになる忠兵衛はやっぱりバカなんだけど、獅童さんだとなよなよ男がためてためて爆発したというよりは、やんちゃ坊主が挑発にのっているうちにのっぴきならなくなっちゃったという感じだ。懐の中で封印が切れているのに気がつき、ぶっと息を吹き出すようにして驚いたところなど、表現がわかりやすい。その後、次々に封印を切っていく様も、ここまできたら250両全部あけるしかないというその気持ちが痛ましくもよく伝わってくる。
獅童さんの忠兵衛は、花道の出のじゃらじゃらしたところなんか、「きもかわいい」と言おうか。恋に自信があったりなかったり、その葛藤にしても藤十郎さんとは全然違う面白い味がある。その能天気な忠兵衛が死を決意して梅川と落ちていく時には、思わず涙が出そうになった(何度も言うようだけど、こんなこと初めてsign03)。
ところで、これを見るたびにツッコミたくなることがある。井筒屋のおえんにしても槌屋治右衛門にしても、忠兵衛に肩入れしているわけでしょう。どうして誰もけんかを止めないの? 金包まで見せている忠兵衛なんだから、誰かが割って入ったってよさそうなものなのに。ま、どっちにしたって、その金がなくちゃ梅川を見受けできないんだから同じことだけど。
それと、もうひとつ。2人はめでたく結ばれるのに様子が変だ、と誰も気づかないの? 青ざめた様子でよろよろと立ち上がることもままならず、梅川は自分の簪などをまるで形見分けのようにして置いて行くのに(「私の形見として」とまで言っている)、普段あんなによく2人のことに注意を払っているおえんがどうして気づかないの? 
以上、ナンセンスつっこみでした。

「弁天小僧」の感想はまた後ほど。
ところで、今日は仕事以外の何もしなかったというほど、よく仕事をしたcoldsweats01(家事も基本的なものはした)。

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コメント

SwingingFujisanさま!日付、日付~happy01
レポ有難うございます。
封印切、獅童さんが熱演して好評のですね。
七ッ面も珍しい演目で貴重ですし。
私はまだ新橋まで行けていません。あー早く行きたいです!

投稿: non | 2009年1月18日 (日) 01時01分

non様
ご指摘ありがとうございますsign03
08年と09年は未だによく間違えるのですが、12月と1月とはねえ、我ながらボケボケで呆れますヮcoldsweats02
獅童さんの「封印切」、やっぱり好評なんですか。嬉しいですsign03 華もあるし、いい個性をもっていますし、獅童さんにはもっと歌舞伎に専念してもらいたいのです。
演舞場は海老ちゃんの弁天小僧も見ものですよ。
non様、亀ちゃん目的の松竹座で獅童さんも応援してくださいねwink

投稿: SwingingFujisan | 2009年1月18日 (日) 02時12分

Swinging Fujisan 様

こんにちは♪
今月は歌舞伎座・国立・浅草・新橋演舞場と・・
東京で4座も歌舞伎の上演があり、嬉しい悲鳴ですね~(汗)
私はお財布の事情からweep演舞場の夜の部は諦めておりましたが・・・
こちらのレポを拝見して、どうしても見たくなりました。
明日は浅草の1部なのですが、急遽演舞場夜の部との通しとなりました。
楽しみですぅ~♡

投稿: ミッチ | 2009年1月18日 (日) 12時11分

SwingingFujisanさま、レポお待ちしていました(^-^)。ありがとうございます。その翌日に行ったので、私でもまだ記憶があります(^_^;
6年半ぶりの演舞場、3階席でしたが思った以上によく見えました(^-^)v。花形といっても私がめっちゃ好きな俳優さん方は登場なさらないので見送るつもりだったのですが、3階1列目が出ていたので「見てみようかしらん」ってことで。
海老ちゃんは遠めからでも惚れ惚れする美しさでした。今更ながら、襲名興行に行かなかったことが悔やまれます。恵比寿は本当に華やかで幸せな気分になれました。
封印切は最初獅童さんの関西弁にどうも無理があるように感じたのですが、段々慣れてきたのかなじんできたのか、すんなりと耳に入ってくるようになりました。涙は出なかったけれど、胸が苦しく、切なくなりました。
演舞場の美しさ&立派さに魅入られて、来月の浅草パラダイスもとってしまったからつぎでした。

投稿: からつぎ | 2009年1月18日 (日) 12時54分

ミッチ様
ひゃあshock 責任重大ですわ、私。
「封印切」はあくまで、私の好きな獅童さんと猿弥さんがよかったもので…獅童さんについては色々意見が分かれるかと思います。
ミッチ様はどんなふうにご覧になるでしょうか。ご覧になったらご感想お聞かせくださいませ。
「七つ面」はとても楽しかったですし、「弁天」もいいですよ~。華のある役者さんを満喫してまいりましたhappy01

投稿: SwingingFujisan | 2009年1月18日 (日) 13時55分

からつぎ様
海老ちゃんは、ほんと、遠目でもその美しさが引き立ちますよねぇ。大柄な弁天はダイナミックで素敵でした。
獅童さんの関西弁、あまり似合わないと思っていたのに、私もいつの間にか違和感がなくなりました。もしかしたら、現代的な忠兵衛だったのかもしれませんね。だから私にはわかりやすかったのかな、という気もします。
ああいう雰囲気を味わってしまうと、ついつい次の舞台も取ってしまいますよね。私も2月演舞場、参りますwink

投稿: SwingingFujisan | 2009年1月18日 (日) 14時00分

Swinging Fujisanさま

はじめまして、maroon6と申します。時々拝見させていただいております。Swinging Fujisannのレポに共感しております。獅童さんの忠兵衛、けっこうよかったです。やはり好き嫌いは分かれるところでしょうが。私は今回大奮発して3列目花道脇のお席でしたので、獅童さんの大量の涙、汗、鼻水が私にかからないかハラハラしておりました(笑)

投稿: maroon6 | 2009年1月22日 (木) 23時40分

maroon6様
はじめまして。
コメントありがとうございます!!! とても嬉しく存じます。
獅童さん、まさにぐしゃぐしゃになっての大熱演でしたものね。本来の上方歌舞伎の味とは違うのでしょうが、私はあのやんちゃそうな獅童さんが追い込まれていくところに泣けたような気がします。
3列目花道脇のお席ですと、獅童さんの汗・涙・鼻水攻撃coldsweats01の後は、海老蔵さんのオーラ直撃でしたねsmile 3階には3階の楽しみがありますが、やはり役者さんの息吹を直接感じられるお席で時々は見たいものですよね。

投稿: SwingingFujisan | 2009年1月23日 (金) 00時36分

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