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2009年3月28日 (土)

見てよかった「新皿屋敷舗月雨暈」・1

326日 「新皿屋敷舗月雨暈」(国立劇場大劇場)
初日を見損ねたらなかなか見る機会がなく、歌舞伎座とハシゴすることになった。でも、おかげで運よくアフタートークを聞くことができちゃった。
三幕目「片門前魚屋宗五郎内の場」、四幕目「磯部邸玄関先の場」「同庭先の場」はおなじみ「魚屋宗五郎」で、序幕「磯部邸弁天堂の場」「同お蔦部屋の場」、二幕目「磯部邸井戸館詮議の場」がいわゆる「お蔦殺し」にあたり、今回初めて見る。それも道理、通しは20年ぶり、「お蔦部屋」は85年ぶりの上演だという。
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おなぎに関する私の思い違い>
通しと「魚屋宗五郎」を見て、自分が大きな思い込みというか思い違いをしていたことがわかった。それはおなぎの地位。私はこれまでずっと、おなぎは腰元だと思っていた。筋書きを見れば、たしかに配役には「磯部家召使い」とは書いてあるのに、なんでそう思い込んでいたのだろう。
おなぎとお蔦は、「加賀見山旧錦絵」のお初と尾上のような関係だったのね。実際、「お蔦部屋」ではお初がいそいそと尾上に仕え、主人の身を心配するのと同じような場面がみられる。ここは、黙阿弥が「加賀見山」を下敷きに書いたらしい。でも、宗五郎の家を訪ねたおなぎには、これまでお蔦の召使いっていう風情が感じられなかったなあ。私の中では、おなぎといえば菊之助さんなんだけど、今回の梅枝クン、「お蔦部屋」もお蔦殺しの説明も情感がこもって、とてもよかった。
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怪談を思い起こさせる題名だが>
また、題名にもあるように、「皿屋敷」の怪談もちょっとだけ盛り込まれている。怪談部分は実にさらっと描かれていて、磯部家の重宝の茶碗を割った罪を着せられたことに対するお蔦の恨みはあまり感じられない。おなぎが宗五郎たちにお蔦殺しの事情を説明するときにもこの話は出てこない。題名だけ見ると怪談かと想像するが、そうではなく、あくまでもこれは悲劇だ。
亀蔵さんの悪役は、とんでもないヤツだと思いながらも、お蔦を打ち据えよと殿に命令させて(されて、ではない。悪人どもが仕組んだことなのだから)、それでもちょっとは躊躇った様子を見せたから、やっぱり好きな女にそんなことできないよねえ、と思っていたら、それはとんでもないことだった。「可愛さあまって憎さ百倍ってことか」とため息をついたとたんに、亀蔵さんがそのセリフを吐いた。
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人の酒飲み>
宗五郎のほかに酒飲みがもう1人出てくる。酒飲みというか、酒に飲まれるというか、酒乱というか。磯部の殿様である。バカな殿様をいただくお家は悲劇だ。バカだから悪人につけこまれ、お家騒動も起きるっていうわけだ。とりわけ上に立つ人は、我が酒癖を心得ておいたほうがいい。今度の事件で、磯部主計之介も少しは反省して酒を控えるであろうと期待したい。ラスト、自分をだましてお蔦を殺させた悪人どもを自ら罰するからそれで料簡してくれとの主計之介の言葉を、宗五郎が有難がるのがどうにも納得いかない。殿が手をついて謝罪したからか。お蔦が側室に迎えられたときに支度金やらいろいろ磯部様からいただいているという感謝の気持ちが宗五郎に残っているのか。生涯困らないように金を下さるとのことが有難いのか。いずれにしてもかわいそうなお蔦は帰ってこない。「この芝居は悲劇だ」と松緑さんも言っていたのに、ハッピーエンド風な終わり方というのがイマイチ納得できないけど、これも封建時代の庶民感情なのかな。
長くなりそうなので、以下続く。

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