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2009年3月28日 (土)

見てよかった「新皿屋敷舗月雨暈」・2

326日 「新皿屋敷舗月雨暈」アフタートーク(国立劇場大劇場)
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「宗五郎」の歴史~どう演じるか>
アフタートークは終演20分後に、磯部家奥庭弁天堂の前で、国立劇場理事の織田(おりた)紘二さんと化粧を落とした素顔の松緑さんによって始まった。この演目は松緑さんにとって格別に思い入れの深いものである。音羽屋の芝居であるし、おじいさんの二代目松緑さんの持ち役だったから。というところで、しばらくは「宗五郎」の歴史のような話になった。黙阿弥が明治になってから六代目菊五郎のために書いた作品で、江戸時代に書かれたものより江戸の町をよく描きこんでいるのだそうだ。六代目は宗五郎を昭和18年までに15回演じている。昭和12年二代目松緑が三吉を初演。23年、松緑、宗五郎を初演。その翌年、六代目は病に倒れた。松緑は14回宗五郎を演じ、うち11回は梅幸がおはまであった。
で、現・四代目松緑さんは菊五郎さんにこの役について聞きに行ったら、「おまえわかってるんだろ。稽古場に行くからまとめておけ」と言われたそうだ。そして菊五郎さんは「こうやれ、ああやれ」と教えるのではなく、段取りはこうこうだから、自分の気持ちをどうもっていくかは自分でやってみろ、というようなことだったらしい。指導は、菊五郎さんのほか、三津五郎さん、時蔵さんにも仰いだ。三津五郎さんも稽古に立ち会ってくれたそうだし、時蔵さんはおはま役を教えた。芸の継承は、松嶋屋さんでは「これこれ、こういうやり方があるけど、あんたどれ選ぶ?」という方法だそうだ。
松緑さんが酔う演技で注意しているのは、丸顔で童顔、元が笑い顔なので、そう見えないようにと。意識を素面に戻さないように、でもムリに酔いを意識してはいけないとか(このへん、よくわからなかった)。常日頃の飲酒生活は反映されているのかという織田さんの質問に「ははは、当たらずといえども遠からず」とのお答えでした。
今回は、「魚屋宗五郎」という確立された芝居に「お蔦殺し」をどうつなげていくかということが課題だったと。お芝居を見た印象としては、「お蔦殺し」を見ることによって、理不尽さ、非道さがはっきり実感でき、宗五郎の怒りにもより共感を覚えた。おなぎの説明にも、言葉だけではない感情をより明確に汲み取ることができた。
途中から登場した孝太郎さんは、お蔦とおはまとどちらが難しいかという観客からの質問(配られたアンケート用紙からの質問)に対し、おはまのほうが難しい、と。お蔦は型がないので拘束されず好きにやれたが、おはまは何人もの先輩が演じている。江戸と上方では間のつなぎ方がちがうし、江戸訛りもできていない(次までにマスターしたい)。というところで、織田さんが江戸訛りから信州訛りにうまくひっかけて、映画「Beauty」のチラシを取り出してちょっと宣伝された。これはかりん様のブログで先日感想を拝読したばかりなので、「ああ」とすぐにわかった。ぜひ見てみたい映画である。
孝太郎さんがむずかしいと言ったおはまはしかし、意外にもよかった。上方らしいはんなりさは漂うものの、江戸のおかみさんの心情がよく表現されていた。「宗五郎」とはこれまで縁のなさそうな孝太郎さんだが、面白いことに、六代目より早く、十一代目仁左衛門が宗五郎をやっているらしい。十一代目という人は変わり者で敵も多く、枕元に拳銃をしのばせていたとかshock
<夫婦仲>
松緑さんと孝太郎さんの「夫婦仲」はうまくいっていて、松緑さんにとって孝太郎さんは「僕には過ぎた女房heart04」だそうである。先にも触れたように、二代目松緑の宗五郎に対し、その大半が梅幸のおはまであったということだが、この芝居は家族の関係がとても大切なのだそうだ。四代目松緑さんも「とにかく慣れろ(「狎れろ」なのかな)」と菊五郎さんに念を押されたと言っていた。このメンバーで何回も何回もやって、慣れろ、と(江戸の狂言は「慣れ」と「息」なんだって)。宗五郎夫婦は同じコンビで演じられたほうがいいということになるのだろうが、私が今回も含めて6回見た夫婦は全部コンビが違う。でも、みんないい夫婦だったと思う。松緑さんは、今後やりたい役として、この同じメンバーで「宗五郎」を、と言っていた。
孝太郎さんによれば、雀右衛門さんと仁左様が共演したとき、雀右衛門さんのほうが先輩であるにもかかわらず、女房役として挨拶にこられたそうだ。女房役の心得として、なるほどと感心した。
<その他>
アンケートでなくて、客席からの直接の意見・感想。
★おはまが宗五郎に突き飛ばされる時、裾が割れずにきれいに倒れることについて→足も揃えているし、手で裾を押さえている。
★宗五郎が酒に酔って磯部家へ乗り込む花道での引っ込み。ここでの衣裳の乱れがないのがとてもよいという観客の意見(そういうところをちゃんと見ている人がいるんだなあ、と感心)→酔いを衣裳の乱れで表現する役者もいるが、自分はそうしたくない。六代目菊五郎から二代目松緑に継承されたときも、「行儀よくやれよ」と言われた。織田氏も今回ひとつだけ松緑さんに注文をつけたのが「行儀よくやってほしい」ということだそうだ。そうか、次回からは私もそういうところに目を向けよう。

3
回のアフタートークの中で、この3回目だけ、松緑さんと孝太郎さんのサイン色紙が6枚プレゼントされた。アンケート用紙に書いた座席番号が抽選の対象となったのだが、アフタートーク参加が公演期間中のチケット有効なのに対し、色紙当選の権利があるのは26日のチケットを持っている人だけ。私は残念ながら当たりませんでしたweep

国立劇場の花形歌舞伎は二代目松緑さんが橋之助さんに教えた「大物浦」(@小劇場、昭和61年?)が第1回だと聞いたように思うが、この情報には自信ない(自信がなければ出さなきゃいいのにねcoldsweats02)。今後も花形歌舞伎は続けていくそうなので(国立の花形歌舞伎って、わたしは今回初めて見たように思う。鑑賞教室とはまた別なわけでしょ)、浅草歌舞伎とはまた違った趣で、若手の大きなお役が見られる楽しみが増えた。
<上演時間>序幕・二幕目65分(11301235)、幕間30分、三幕目・四幕目80分(13051425)、幕間20分、アフタートーク40分(14451525

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コメント

私は結局、3月はこの国立劇場へ行っただけに終わりました。・・・が、通しを見ることができてほんとによかった、ととても満足しています。3階の11列あたりでしたが、花道七三での宗五郎もよく見えたし、国立劇場エライpassという気分です。私も、磯部邸に乗り込む時の宗五郎の着物がズルズルじゃないなぁ、と思ってたんですよ!! なるほどね。そういうのも含めて、なんていうか若さが気持ちいい宗五郎でした。
そして今後「魚屋宗五郎」を見る時には、おなぎの立場(お蔦を「旦那さま」と呼ぶ関係なんだ、と初めて知ったので)や彼女の説明などが、いちいちガッテンできるだろうなと思うと、見て良かったという気持ちが更に増します。松緑さんも応援しなくっちゃhappy01

投稿: きびだんご | 2009年3月29日 (日) 09時57分

きびだんご様
コメント、ありがとうございます!!
今月は歌舞伎座に足を運ばれる方がいつもより少なかったかもしれませんね(私は昼だけで3回も行ってしまいましたがcoldsweats01)。
でも、きびだんご様は他の演劇や落語などにも精力的にいらしているからdash
国立の座席は後ろのほうでもとてもよく見えるので、最近はもっぱら3階で見ています。申し訳ないくらい安いんですものsmile
宗五郎の着物の裾がズルズルしていないのは、言われてみれば確かに、と思いましたが、役者さんがちゃんと意識していらしたんですね。宗五郎は松緑さんの代表作になるでしょうね。私、松緑さんの江戸っ子ぶり、大好きです。
「宗五郎」だけの上演だと、宗五郎の家にやってくるおなぎって、お蔦を「旦那さま」と呼ぶ立場には見えませんよね~。そういうことがわかったのも面白かったですね。

投稿: SwingingFujisan | 2009年3月29日 (日) 10時54分

うむむむ 羨ましい。当方、季節外れのインフルエンザ(A型)に罹って観にいけませんでした。
週末にかけて発症したため、芝居のチケット合計3本をドブに捨ててしまいました・・・。
歌舞伎座の昼の部はその後取り直しして行けましたが、国立は日程が取れず無念の涙でありました。
松緑の宗五郎はきっとこれから観られると思いますが、通しは八十助(当時)以来でしたので、今後いつ拝見できるかと思うと痛恨事であります。

投稿: うかれ坊主 | 2009年3月29日 (日) 18時48分

うかれ坊主様
インフルエンザとは、大変でしたね!! チケットを取ってあったのにいらっしゃれなくて、さぞやご無念とお察しいたします。
「新皿屋舗」の通しは、前半部分もとても面白かったので、もっと上演回数をふやしてもいいように思いますが、うかれ坊主様がご覧になった前回は17年も前なんですね。しかも今回、お蔦部屋の場は85年ぶり…本当に残念でしたね(すみません、残念さをエスカレートさせてしまうようで)。
期間中TVカメラが入っていたかどうかわかりませんが、テレビで中継をやるといいですね。
歌舞伎座昼の部を取り直されたということで、もうご回復されたことと存じますが、どうぞお体お大切に。

投稿: SwingingFujisan | 2009年3月29日 (日) 22時06分

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