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2009年3月12日 (木)

元禄忠臣蔵再見:理に訴え情を揺さぶられる

311日 元禄忠臣蔵昼の部(歌舞伎座)
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初日に見て、どうしても間近で見たくなって帰宅後すぐに
Web松竹で取った席。
どちらかといえば<情に訴える>ことによって理も感じ入るところの多い「仮名手本」に対して、<理に訴える>ことによって情を揺さぶられる「元禄」をたっぷり味わった。
「江戸城の刃傷」
梅玉さんの内匠頭は、大大名らしい品性の中に癇性が垣間見える。このときの内匠頭は「大変なことをしてしまった」という意識よりも、吉良を仕留められなかった悔しさがいっぱいのようで、見ているこちらは事件の大きさと波紋を承知しているから、内匠頭の切なくジリジリする思いも切実にわかりながら、複雑な気持ちであった。
ここで興味があったのは、内匠頭を羽交い絞めにしていた梶川与惣平衛が内匠頭に対してどういう感情をもっていたかということだった。セリフだけ聞いていると、中立の立場でもあるようなのだが、菊十郎さんの表情からは、内匠頭への同情が感じられた。
また、もう一つ面白かったのが加藤越中守で、多門伝八郎(彌十郎)論ずるところの「武士の脇差心」*に心を動かされながらも、幕府の役人としてそれを受け入れられない気持ちの揺れというものが萬次郎さんの大きな目によく表れていて、私はここでかなり感動した。萬次郎さんについては後でも触れる。多門は儲け役には違いないが、それだからこその難しさがあると思う。彌十郎さんは初日やや上滑りな感じがしたが、今回はしっかりハラが据わり、大きさが出ていた。
「最後の大評定」
前回失敗したので、今回は昼食を抜いて備える。でも、一部沈没したcoldsweats02
井関徳兵衛(歌六)は、私としてはもう少し抑えてもいいのではないかと思うけれど、息子・紋左衛門(種太郎)とのやりとりには哀れを覚えた。「われ等も侍の子の生まれ、一度この御城内に詰めとうござりました」と言う息子の言葉がどんなにか徳兵衛の心を揺らしたであろう。不器用な生き方しか出来なかった徳兵衛のような人間も、歴史の片隅にいたんだな、と胸を抉られる。
ここで、よかったのは巳之助クン(大石松之丞、後の主税)。下男・八介に内蔵助に関する愚痴をさんざん聞かされて「爺よ。もうわかった。堪忍してくだされ」というその一言で、松之丞の人となりの一部がわかるような、いいセリフだった。また、血判の場面ではセリフはないが表情からその気持ちが理解できた。
幸四郎さんの内蔵助は、泣きすぎのような気がする。ねっとり系の人があまり泣くと、大石の大きさが損なわれる。ど~んとすべてを受け止めた中での苦悩というものが伝わってこない。幸四郎さんは「夢の仲蔵」や「明智小五郎」がとてもよかったし、こういうセリフ中心の新歌舞伎は向いていると思うのだが…。
「御浜御殿綱豊卿」
仁左様の綱豊卿の緩急自在なセリフの素晴らしさ。真山青果の真髄を一番捉えているのは仁左様ではないかと思われるほど一言一言が熱く伝わってくる。
新井勘解由(白石)に言う「討たせたいのう」なんていうのは簡単なようで難しいセリフだと思うが、本当に共感できる。
富森助右衛門との遣り取りも、軽くあしらいながら助右衛門の人となり、覚悟を鋭く見抜いて、厳しく暖かく見守る大きさが素敵。綱豊卿という人の魅力を余すところなく体現している。
先に加藤越中守を好演した萬次郎さんがここでは意地悪上臈・浦尾。その意地悪にも位の高さが感じられる(変な表現だけれど、何となくそんな感じがした)。同人物とは思えない変身ぶりだが、何しろ映画「マジックアワー」でしょぼくれた会計係を演じたのも同じ萬次郎さんだから、私にとっては加藤越中守のほうが新鮮な驚きであった。もう、萬次郎さん、大好き!!

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おまけ:
さよなら歌舞伎座グッズを買ってしまった。定規は角度を変えると絵柄が変わる。3パターンあるそうだが、多分「助六」「暫」「勧進帳」じゃないかと思うのだけど…。
*
武士の「脇差心」
「生きるにも死ぬにも、武士の最後を頼むものは腰に帯びた刀のほかない。侍として敵の狼藉を受けたら、その手はまず第一に己が刀の柄にかかっているべき。抜く抜かないは、第二の分別である。」
内匠頭に斬りかかられて刀に手もかけなかった吉良を、殿中の作法を恐れて手向かいしなかったと褒めたお上に対する多門の批判。

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