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2009年5月27日 (水)

歌舞伎座夜の部千穐楽1:よかよか、團十郎ワールド

526日 五月大歌舞伎夜の部千穐楽「毛剃」(歌舞伎座)
09052601nami
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度目の今回も、よか、よか。よか、よかhappy01
親分登場
浅葱幕が落とされると、海賊の大きな親船が舞台ほぼいっぱいに現れる。船では毛剃の4人の手下(権十郎、市蔵、松江、亀鶴)が談笑している。女の話になろうかというところで、亀鶴さんが松江さんに向かって「その顔で色話など」とからかう。いやいや、松江さん、とってもいい男で、色話がたくさんありそうだったよ。
そんなこんなのところへ親分登場。やっぱり親分だねえ。大きさ、あたりを圧する偉容、もうこれだけで、團十郎さんワールドに取り込まれてしまったゎ。舳先よりやや中央寄りに神棚が置かれており、そのすぐそばに團十郎さんの毛剃九右衛門がどっかと座る。茶髪縮れ毛、顔のまわりも髪の毛の延長のようなヒゲが囲っており、見るからに恐ろしそう(でも、團十郎の愛敬も感じちゃうけれど)。
海賊と和事の香り
毛剃たちは退屈しのぎに素人さんを呼んで酒盛りを始める(その効用は、前回観劇記に既出)。酒盛りといっても、酒は赤ワイン。日本人離れした毛剃の風貌、衣裳にはギヤマンのグラスwineがよく似合う。そして月代姿の純日本人手下たちにしても、これが意外にみんな板についていて違和感を覚えない。
さて、この席に呼ばれた素人さんというのが藤十郎さん演じる小松屋宗七。むくつけき海の男たちの間に藤十郎さんが登場したとたん、上方和事の息吹というか香りというか、そういうものが湯気のように立ち上るのが見えた気がして驚いた。宗七は長崎生まれで、生後間もなく京都へ移ったんだったのね。前回、そこ聞き逃した。ところで藤十郎さん、いや宗七はワイン飲んでたかなあ。
毛剃が宗七に話して聞かせる長崎の話は全部が聞き取れたわけではないが、個人的には4月に長崎に行ったばかりだし、面白かった。眼鏡橋ってそんな時代からあったんだ~(もしかしたら文字的知識として見たことがあるかもしれないけれど、毛剃の時代にあった、という具体的な情報として入ってくると印象が強くなる)。下大工町という地名が聞こえてきたけど、龍馬のブーツ像を探しあぐねて、百段以上もありそうな階段を下りてたどり着いた先が新大工町だった。遊ぶ女の値段を地位(種類?)別に挙げていたのがなんだかおかしかった。
目ン玉が太かぁ
宗七にあなたは唐人かと訊かれ、「いやいや、潮風に吹かれて色が黒くなった」から唐人と言われる(他にも理由があったかも)。さらには「目ン玉が太か」ゆえ、「木場の唐人」と呼ばれている。「木場には目ン玉が太か役者がいるらしい」。って、これ、四代目(?、自信ない)團十郎のことらしい。
汐見の見得の團十郎さんは、本当に目ン玉が太かったよeye

廓風景
二幕目「奥田屋」になると、あの毛むくじゃらの毛剃九右衛門(毛剃って名前はなんなの?とずっとナンセンス疑問を抱いているんだけど、ここで毛を剃って出てくるから? な~んてbleah)もすっきりとした月代姿で登場する。毛むくじゃらは、手下たちの姿とのギャップを見ると恐ろしさを強調するためかもしれないが、海上生活の長さを物語るようでもある。そういえば、「船に乗っていると、珍しい話が何より」と言っていたっけ。
毛剃たちが奥田屋にやってくる前に、宗七がうらぶれた姿で小女郎(菊之助)に会いに来る。このとき、宗七を認めた禿(この日は吉田聖クンかな)が、廓の子らしく、何もかも呑み込んだ風情なのが印象的であった。歌舞伎俳優には「らしさ」が求められると言うが、こういう子役ちゃんも「らしさ」を醸し出していることに感心したhappy02
藤十郎さんと菊之助さんの再会シーンは実に色っぽかった。この2人の関係は、全体的に小女郎がリードしているような感じ。
小女郎が金の無心をしに九右衛門の前に現れると、そうとは知らぬ九右衛門は慌てて髪を撫で付けたり衣裳を直したり、その身仕舞ぶりが何ともいえぬ愛敬でかわいい。「あい、あい」と答えるその嬉しそうな声にも、思わず微笑んでしまう。もっと後になって客改めがあると知って、子分ともども震えていた九右衛門もかわいい。捕まることへの恐怖から泣きそうになっていたよsmile
小女郎・宗七と九右衛門の対峙は、九右衛門が子分を追い払って3人だけの緊迫した場面になる。相手があの宗七と知って「やっちまえ」とばかりに逸る子分たちを弁慶風に押しとどめ、「はよ行け」「はよ行け」とおっかない顔の九右衛門には、もうこの2人の一生を手玉に取る青写真ができていたんだろうな。ああ、恐ろしや。遊女なのに清らかな菊ちゃん…しかし小女郎は将来肝っ玉の据わった姐御になる可能性を秘めている気がした(そんなことないかbleah)。
宗七と小女郎が身を寄せ合って眺める前での、めでたしめでたしの毛剃さまご一行の総踊り。前回のイヤホンで、「踊り上手な役者さんがわざとヘタに踊る」と言っていたが、ヘタじゃなかった。楽しくて、この踊りを中断させた「客改め」の慌しい知らせが恨めしいbearing
異国情緒と和事のミックスを豪華な配役で十分楽しんだから、ああ又長くなってしまったsad

追記:筋書きを読んだら、「毛剃」は実際にあった密貿易犯の逮捕で鼻そぎの刑にあった(コワいwobbly 九右衛門たちが震えるのもわかる)八右衛門という男のあだ名が元になったらしい。「けつり」。前科があって戸籍を削られた男、というのが一般的な解釈だとあるが、私はまた、鼻を削られたから「けつり」かと思った。近松は、「けつり」は「けそり」のなまったもので、「削り」ではなく「毛剃」とあてたのだとか。見せしめのために髪を半分剃り落とされた男をイメージしていたのだろう、とも筋書きには紹介されている。
もう1つ追記:奥田屋では7人の遊女をいっぺんにもっていかれてしまって、困らないのかしら。それともたくさん金が入ったから、いいのか。悲しい女たちの補充はいくらでもきくのか。奥田屋女房お松(秀太郎)が、毛剃たちに遊女の名前を紹介するのに、「さま」付けだったのが不思議な気がした。大事な商品だから? お松は人がよさそうには見えたけど。

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