« 歌舞伎座夜の部千穐楽2:江戸のエロス | トップページ | 歌舞伎座夜の部千穐楽4:うっとり三角関係 »

2009年5月27日 (水)

歌舞伎座夜の部千穐楽3:いとしの留ちゃん

526日 五月大歌舞伎夜の部「神田ばやし」(歌舞伎座)
海老ちゃんのああいう目を強調しない化粧でも、とても目が印象的で、菊五郎さんとは逆に「いい、おとこだなあheart04」と呟きたくなる。
留ちゃんったら~
留ちゃんがおらく婆さん(市蔵)の入れ歯を食べちゃう例のお汁粉、よく見ていたら、掬うおたまがかなり浅いのよ。大家の奥さん(右之助)、お椀に入れるときに気づけよ~wobblyなんて1人ツッコミを心の中で。留ちゃんも、早く入れ歯とわかれよ、わざわざ入れ歯を齧るなよ、入れ歯とわかった後でも平気でお汁粉食うなよbearing(大家さんなんか、吐きそうになっていたよ)
この前ストーリーがわかったから、今度は、あの1両がどこへ消えちゃうか見ていようと思ったのに、舞台のほうが高くて、全然見えなかった。おらく婆さんが1両の小判と、32朱の包みを別々に畳の上に置いたのまではわかったのだけどね。
そして、怪しげな行者(亀蔵)が1両の行方を占って祈祷だか呪文だかを唱えている間、留ちゃんに最初に疑いの目を向けたのは秀調さんである。このときは、本当に疑っていたのかどうかはわからないが、とにかく最初に「イヤな目」を留ちゃんに向けたのである。その目は男女蔵→亀三郎→團蔵と伝わって、いたたまれなくなった留ちゃんがこそこそと席を立つに至り、早とちり大家(三津五郎)が「わかった!!

舞台は暗くなり、大家の家から留ちゃんの家へと移る。明かりもつけない部屋で留ちゃんは背中を丸め、じ~っとしている。そこへ大家が訪ねてきて、話がある、明かりをつけろ、と何度も言う。留ちゃんときたらぽつりと、「毎日見ている顔だし、改めて見るほどいいオトコじゃないです」なんて。多分、このとき客席じゅうが首を激しく横に振ったと思うsign04 私なんて思わず「なに言ってるの、こんないい男がsign03」って叫びそうになったもの。
暗→明へ
暗がりの中での大家と留ちゃんのちょっと噛み合わない遣り取りに笑いながら、これから起こる深刻な事態に気持ちが沈む。ハッピーエンドがわかっていても、やっぱりここは切ない。留ちゃんがあとで述懐するこのときの気持ちを思うと、たまらなくなる。留ちゃんの背中に手を置いて、包んであげたくなる(包むには大きすぎるな、海老ちゃんの背中はbleah)。
懇々と諭す大家さんはいい人だ。本当に親身になって留ちゃんを心配している。早とちりの親心を三津五郎さんがしみじみと表していて、違うよ、留ちゃんじゃないよって心の中で訴えながらも、留ちゃんのために有難く思った。
翌年の神田まつりになると舞台は明るく、物語がいいほうへ向かうことを暗示している。これ、最初見たときに、あの後どうなったんだろうか、留吉は長屋に居づらくなったんではないだろうか、と心配したから、舞台の明るさに救われた思いがしたものだ。

1人で酒をちびりとやっている留ちゃん、口に運ぶ肴の豆腐の1切れのちっちゃいことsmile おみっちゃんが来ると、うちわで床(ござ? 畳?)をぱたぱたとはたいて歩く留ちゃんがユーモラス(逆に埃がたっちゃうんじゃないの?)。2人にしておこうと猫ちゃんも気を利かせたのか、障子の破れ目(猫ちゃんの専用出入り口だな、多分)から出て行く。留ちゃんが汚してしまった町内揃いの浴衣をおみっちゃんが「つまみ洗いしておきますよ」と手に取ると留ちゃんが「それは悪いから自分で」とか何とか言って、2人で浴衣を引っ張り合う。あ、破れる、とハラハラしていたら、勢いのついた2人が両側からぶつかり合って互いにぽっとなる、その初々しさ(オバサンは忘れとるなあdespair)。半分閉めた扉越し、井戸端で浴衣を洗うおみっちゃんに「えっへっへ」のような「いっひっひ」のような「うっしっし」のような、にた~っ笑いで目をやる留ちゃん。おみっちゃんが急いで浴衣をはずしたからだろう、曲がった衣紋掛けをいとおしそうに丁寧に直す。
そこへ大家さんが慌てて駆け込んでくる。留ちゃん、うちわで又ぱたぱたぱたsmile
ここで1両が見つかったことがわかるのだが、「濡れ衣を着たほうが楽。だけどこんにゃく屋のおばあさんに1両返して謝ったときは情けなかった」と語る留ちゃんの体が震えていて、私は涙が出たweep
しかし
大家さんが畳替えしなかったら、永久に留ちゃんの濡れ衣は晴れなかったんだわ。いえいえ、留ちゃんも言ってたじゃない、「天知る、地知る、人知る」って(私は「天知る、地知る、我知る」だと思っていた)。きっと必ず疑いは晴れたはず。おみっちゃんが「留ちゃんに限ってそんな人じゃないと、あたしは思っていましたよ」と軽く大家さんを睨むところなんぞ、「うちの人に限って」という感じでもう夫婦気分shine そこだけ花が咲いたようなおみっちゃんが、きっと留ちゃんをこれからも支えていくであろう、と想像するだけで微笑ましい。


この芝居がこれだけ面白かったのは、海老ちゃんの新しいキャラクターのみならず、三津五郎さんの力に負うところが大きいと思う。松緑さん相手の「泥棒と殿様」が面白かったように、三津五郎さんの演技がよくないと、芝居の魅力は半減だったろう。勘三郎さんとの「浮かれ心中」や「らくだ」なんかでも三津五郎さんの存在が大きいのではないだろうか。遅まきながらシネマ歌舞伎の「らくだ」で三津五郎さんに開眼した(?)私は、こういう発見があるから歌舞伎は面白い、としみじみ思うのだ。これからもどんどんこういう発見をしていきたい。

|

« 歌舞伎座夜の部千穐楽2:江戸のエロス | トップページ | 歌舞伎座夜の部千穐楽4:うっとり三角関係 »

歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

SwingingFujisanさま☆
こんばんは♪
昨日の千穐楽は夜の部にいらしたのですね!私は昼の部にまいりました♪
好き(Love)な役者さんが一人も出ない今月の歌舞伎座。
いつもだったら行かないところを、さよなら公演ということで松竹に踊らされ…でも、行ってよかったです♪
昼も夜も満喫しました!
そして、SwingingFujisanさまのレポで思い出し笑い♪
いつも楽しみにしております~☆

投稿: 七子 | 2009年5月27日 (水) 21時23分

2度目に見たときに三津五郎さんの大家さんが、前半はツッコミ気味、後半にあやまりに行ったときは引き気味で留ちゃんがセリフを言いやすいように巧くリードされていたように感じました。これで大分お芝居のテンポがよくなったようです。

世話物って言葉(江戸弁)もさることながらなにげない日常のしぐさも慣れないと難しいでしょうね。たらいでお洗濯や床をうちわで扇ぐなんて普段しないですものね。

投稿: kirigirisu | 2009年5月27日 (水) 21時29分

七子様
こんばんは。
コメントありがとうございます。
heart04な役者さんがいない月--そういうこともありますよね。でも、そこで思いがけない良さをみつけたりすると、嬉しくなりますnotes
七子様も今月楽しまれたようで、よかったhappy01 演目も充実しており、千穐楽の昼の部も見ごたえがあったでしょうね。私は昼の部は月の前半に見終わってしまいましたので、もうちょっと後にすればよかったなあと少し残念に思いました。

投稿: SwingingFujisan | 2009年5月27日 (水) 21時49分

kirigirisu様
そうなんですね、三津五郎さんが上手に受けながらリードしていらしたんですね。留ちゃんはあのテンポですから、三津五郎さんのお芝居がカギでしたね。私は筋書きに舞台写真が入った日が初見でしたから、だいぶ進化していたんでしょうね。
そうそう、日常の仕草というのは、すぐに身につくものではありませんから、難しいでしょうね。海老ちゃんのうちわパタパタも、梅枝クンのたらい洗濯も、若い役ですし、一生懸命で初々しい感じがしましたhappy01 

投稿: SwingingFujisan | 2009年5月27日 (水) 22時08分

一両が無くなるのは、どうやっているのか?! わたしもずっと気になっていましたので、千穐楽は、そこだけは見逃すまいと(笑)、タイミングは「ここしかないでしょう!」とわかっていたので、オペラグラスで見ていたら、なんと猫ちゃんと一緒に奥へ・・・でした。

「神田ばやし」は、三津五郎さま(初日は、あまりの老けっぷりに、一瞬どなただかわかりませんでした 笑)、海老蔵さんはもちろんですが、長屋の住人の皆さんが、それぞれにきっちりとお芝居を作っていらしたから、よかったんだと思います。

初日に見た時は、まだまだ変わりそうな予感がありましたが、中日過ぎに見て「あーー、ずいぶん進化したな」と思いました。

お芝居は、やっぱり「生き物」なんですよね。

投稿: みつひめ | 2009年5月28日 (木) 00時09分

みつひめ様
コメント、ありがとうございます。
みつひめ様も千穐楽ご覧になったのですねhappy01
一両は、猫ちゃんと一緒に奥へ、でしたか!! 私はケンカの最中に誰かが蹴飛ばしでもしたのかなぁと思っておりました。ありがとうございます。謎が解けてスッキリです。

「神田ばやし」では海老蔵さんも完全なイメチェンでしたし、三津五郎さんも一気に老けておられましたものねsmile
芸達者な長屋のみなさんが江戸の慎ましい市民生活の風情を醸し出していましたね。ああいう長屋風景は大好きです。
お芝居は「生き物」--同じお芝居を何度か見ると、本当にそう思いますね。そこが観劇の魅力でもありますねgood

投稿: SwingingFujisan | 2009年5月28日 (木) 00時39分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1083822/29821007

この記事へのトラックバック一覧です: 歌舞伎座夜の部千穐楽3:いとしの留ちゃん:

« 歌舞伎座夜の部千穐楽2:江戸のエロス | トップページ | 歌舞伎座夜の部千穐楽4:うっとり三角関係 »