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2009年5月21日 (木)

五月大歌舞伎夜の部

519日 五月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)
舞台写真入りの筋書きが出ていました。この日からだったそうです(ラッキー)。

09052101yudachi 「夕立」
なんという官能的な舞踊でしょう。
菊五郎さんの七之助(!smile)の色っぽいこと。思いを遂げたあとの、満足げな笑み(ただ満足げなだけでない複雑な印象を受けた)をふっと表情にのせた、そのぞくっとするような色気。菊五郎さんのこうした色気には時々ぐぐっと心を鷲摑みにされてしまいます。
そして時さまのまた美しく色っぽいこと。いってみれば、七之助の行為は強姦でしょう。女心は複雑というけど、ありえないよね~(歌舞伎にはこういうシチュエーションがままある)。とはいうものの、その後の心境の変化の表現が絶妙。表情は和らぎ、恥じらいながらもうっとりと七之助を見るその目のうるみ。男の髪を梳いてやるその仕草のやさしさ。浄瑠璃もこの情景によく合い、しっとりとした大人の雰囲気が漂う。このコンビは市井の夫婦をやっても息がぴったりだし、こんな色模様を演じてもぴったりだし。
花道の引っ込みを堪能。
でも、滝川さん、大胆すぎる。恋を知ったとたんに、これまでのすべてを捨てるなんてsign03 で、この演目、ツッコミますbleah
①落雷thunderの音、ありゃあ雷じゃなくて、山崎街道っしょ。
②七之助が駕籠をあけると、滝川が気を失っている。駕籠の外へ出された滝川はそのまま土手に横たわっている(首をもちあげたままの姿勢、きびしそうbearing)のだけど、あんな土砂降りの後(まだ降っていたんだっけ?)では土手なんてひどいぬかるみになっているはず。そんなところに横たわっていたら泥だらけっしょ。それに、あんな降りじゃあ、ただでさえずぶ濡れになる。
③七之助の匕首を鏡がわりに髪の乱れを直す滝川(あんまり直ってなかった)…雪姫かっhappy01(どっちが先に作られたのかしら。刀身を鏡がわりにするって色っぽいものですなぁ)
しかし、「夕立」というのはうまい題名かも。雷は滝川の人生に変化を与える電気ショック、激しい雨はこれまでの人生をすべて流し去り(滝川という名前も象徴的? 滝のように落ちる雨は川となって…)、そして雨の上がったあと、「滝川」は「お滝」に変わる。
09052102kandabayasi 「神田ばやし」
新境地の海老ちゃんがとても好きheart04 のっそりとして不器用で、思うことも口に出せず、何を考えているかわからない、ちょっと屈折した若者。普段の海老ちゃんの役とは正反対とも言えるこの若者・留吉を海老ちゃんは丁寧に演じていた。最近の海老蔵にかつての激しいオーラを感じなくなっていると前も書いたが、もしかしたら海老ちゃんはこういう役も自分の持ち役にしたい、と考えているのかしら。
留吉の第一声はなんだか上ずっているような感じで、客席から笑いが湧いた。私は笑わなかったが、ちょっと違和感を覚えたのも確か。でも慣れるに従い、その朴訥さが胸を打ち、この若者が胸に抱えているものは何なんだろうと気になって仕方がなかった。それが明らかになる二幕目の場面には思わず涙が出た。悪人は1人もいない、だけど善人の心の中にあるいやな部分、闇の部分(おそらく、善人はそれに気づいていないに違いない)が1人の人間を深く傷つけてしまう。それでいて、傷ついたほうの人間もそういういやな部分をもっている。海老ちゃんの「いやな目で」というセリフは強く胸に刺さった。
1
人で嬉しそうに杯を傾ける留吉の気持ちもわかる。わかるけれど、やっぱり留吉にはおみっちゃんのような心のやさしい娘と差しつ差されつでお酒を楽しんでほしいわ。きっとそうなるというラストに心が温まった。
留吉以外の登場人物も適材適所で、まさに江戸の長屋生活を目の当たりにする感じ。おみつの梅枝クンがいじらしく、海老ちゃんとお似合いだった。これから海老ちゃんの相手役もできるな、と内心にんまり。三津五郎さんの大家さんが秀逸。世話好き、おっちょこちょいのお人よし、こんな大家さんが実際いたんだろうなあと思わせるリアルさだった。住人たちも個性派ぞろいで、とくに市蔵さんのおらく婆さんはサイコウ(おらくさんの入れ歯が海老ちゃんのお汁粉から出てきたときには思わず悲鳴をあげちゃったshock 留ちゃん、ニブすぎるbearing)。怪しげな行者の亀蔵さんとともに強烈だった。
ほんのちょっとの出番だけど、巳之助クンが若者らしい爽やかな印象を残した。
おまけ1おみつが留吉の汚れた浴衣を洗う井戸端。その井戸の水は井戸水ではないのだそうだ。江戸は神田上水や玉川上水から水道を引いていて、その水を井戸に溜めてあったのだって。世界であの時代に上水道があった都市って、江戸とロンドンくらいなものらしい(江戸のほうがずっと優れていたと思われる)。これ、とても鼻が高い。
おまけ2海老ちゃんと猫ちゃんのツーショット写真を買ってしまいました。海老ちゃんは横顔であまり大きく写っているわけではないんだけど、とてもいい笑顔なんですものlovely

09052103osidori 「鴛鴦襖恋睦」
眼福。3人のバランスがとてもよい。菊之助さんを行司に見立てた相撲の踊りは興味深い。鴛鴦の海老ちゃんと菊ちゃんの優雅で美しいこと。ため息が出る。松緑さんのキレの良い動き、敵役の憎々しさの中に垣間見える愛敬が私は好きだ。
この演目については、次回観劇の際にもっと詳しい感想を書きたい(「毛剃」でちょっと疲れちゃった)。
<上演時間>「毛剃」序幕33分(16301703)、幕間5分、「毛剃」二幕目60分(17081808)、幕間30分、「夕立」21分(18381859)、幕間15分、「神田ばやし」52分(17142006)、幕間25分、「鴛鴦」45分(20312116

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コメント

初日に見たときに、おらく婆さんがおしるこのお鍋に向かって思いっきりくしゃみをしたときには、「あぁ~!!」shockと声を上げてしましました。その後にあの入れ歯coldsweats01いやもうひっくり返りそうになりました。

わたしも梅枝クンと海老ちゃんは、良いコンビになりそうな気がしています(^^)

投稿: kirigirisu | 2009年5月22日 (金) 01時37分

kirigirisu様
おらく婆さんには参りました。そうそう、くしゃみしていましたっけね。よく見えなかったのですが、あの時、入れ歯が飛んだのですね!!(私もニブい) 留ちゃん、なにも齧り直さなくてもbearing

梅枝クンと海老ちゃん、今後どんなコンビぶりを見せてくれるのだろうと考えるだけで嬉しくなります。

投稿: SwingingFujisan | 2009年5月22日 (金) 07時12分

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