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2009年6月 4日 (木)

6月歌舞伎座昼の部・2

63日 六月大歌舞伎初日昼の部(歌舞伎座)
09060405abura 「女殺油地獄」
与兵衛という男を一言であらわせば、「まだ23の親がかり」。このセリフは歌舞伎には出てこないが近松の原作にあるのだそうだ。仁左様曰く「吉田屋や封印切は年を重ねて芸が身についたほうがいい作品となる。でも油地獄は若さが必要」。だから、もう10年ほど前からやめようと決めていたのだそうだ(詳細はココ)。私は松竹座の思いもかけぬ代役を見ていないし、一度も見たことのない仁左様の与兵衛を見る機会はついにないのかと諦めきれぬ思いでいたところのこの公演。さよなら公演じゃなかったら実現しなかったかもしれないのは複雑な心境であるcoldsweats02
さて、仁左様は自身がもつ分別を封じ込めて、強がってばかり自分1人じゃ何にもできない、本心は寂しくてしょうがない典型的ともいえる不良少年を見事に体現しており、これまで以上に与兵衛の現代性を強く感じた(いや、現代性というよりは普遍性といったほうがいいか。こういうガキはいつの時代にもどこの地域にもいるだろう)。
秀太郎さんのおさわを見て、悪いのは母親である、ときっぱり思った。男なんて所詮はマザコンである(あ、全国の男性諸君を敵にまわしたかもcoldsweats02 ごめんなさい)。母親が筋の通った揺ぎない愛情を注いでいれば、ああはならなかった、と秀太郎おさわを見て、私は信じた。竹三郎さんのおさわにはあまり感じなかったこの確信。秀太郎さんと竹三郎さんのどちらがいいとか悪いとかいう問題では全然なくて(竹三郎さんのおさわ、だ~い好きだし)、また次回見たらどう思うかもわからない、ただ、今回はそう思ったというだけ。
そして、後妻ならぬ後夫に入って与兵衛たちの父親となった元番頭・徳兵衛(歌六)については、その苦悩が強く伝わってきた。歌六さんの震えるような声が切ない。
豊嶋屋の場。借金を断られ、だんだん目に狂気を宿す与兵衛。仁左様は狂気の変化を丁寧に表していく(後で、前出リンクの記事を読んだら「殺しの手順の間の変化を演じていくのが面白い」と仁左様が言っていた。まさにそれが感じられる演技だった)。お吉(孝太郎:好演!!)に男女の仲を迫り(与兵衛がお吉に思慕をもっていたという演じ方もあるが、仁左様はそれはナシ。こういうのって、ありだと思います。というか、恋愛感情なんかないほうが面白い)→とにかく拝み倒し→ダメとわかったら殺すしかない→機会を窺う→一太刀浴びせたらあとはもう突き進むだけ→殺しの陶酔→我に返り、恐ろしさに震える。
この過程を見ながら、私は「責任能力のある心神耗弱」を思っていた。裁判でよく争われる「責任能力」と「心神耗弱」。誰だって人を殺そうと思いそれを実行するまでの間は人間としての心を失っている、それを心神耗弱と言うのだろう。とすれば、殺人者は誰だって心神耗弱なのだ。与兵衛にもし現代的な裁判が行われるとすれば、気の毒な生い立ち、心神耗弱、そして責任能力が持ち出されることだろう(弁護するにもそれしかない、ってことだ)。しかしコイツには行き当たりバッタリの生き方しかできないだけで、絶対責任能力がある。

ああ、何度でも見たい仁左様の与兵衛。でも、昼の部チケットまっ赤っ赤なのよね。こまめにチェックするしかない(今日の分は出ていたけど、さすがに2日連続はムリ)。
<上演時間>「草摺」20分(11001120)、幕間20分、「角力場」48分(11401228)、幕間35分、「蝶の道行」28分(13031331)、幕間25分、「油地獄」110分(13561546
「油地獄」以外の演目はどれも短く、先月のようにぎっしり詰まった感はない。余裕をもって「油地獄」に臨める感じ。「油地獄」の110分は、お尻が痛くなり出す頃に殺しの場面に入るので、痛さを忘れることができる。幕間35分なら久々に食堂で花籠御膳でも食べたかったな(去年のいつだろう、食堂での食事の最後は。さよなら公演の間に一度は食堂で食事したいと思っている)。

おまけ12階ロビーで、金太郎展(?)をやっている。歴代金太郎の貴重な写真(初代は11代目團十郎、二代目は当代幸四郎、三代目は当代染五郎)が目を引く。当代金太郎ちゃんの初サインも(なかなか味がある)。
おまけ2松本錦成クンが幸四郎さんの部屋子になったそうだ。注目の錦成クン(以前はたしか錦政クンだったが、字も変えたのかな)、今後が楽しみだ。金太郎クンとともに高麗屋を盛り立てていくことだろう。

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コメント

本日行ってまいりましたぁ(ハイテンション!)。
襲名興行以来の、そして最後の与兵衛。今日は3階1列目。1等もとってあるから今日は花道はいいや、と音だけを味わいました。とても65歳とは思えない「若造」でしたね>仁左様。このあと見る予定があると思うと、すべての演目を余裕をもって見ることができました(今後の教訓)。
昼の部、たしかに見事にまっ赤っ赤ですが、こまめにチェックしてると思わぬ良席が。とちりの花道よりが出ていたので、ついとってしまいました。これも一世一代っていうのにつられてしまっているのだわ。
幕間に、イヤホンガイドのところでの会話が耳に入ってきました。「あれ、売ってるんですか?」「はい、30枚だけ限定で。昨日で10何枚か出ました。今まだあるかどうか。。。」んん、それってもしかしてあのポスターのこと?確認してみたらやっぱり!ってことですぐに案内所へ走り、買ってしまいました。ああ、散財に次ぐ散財。
今帰ってきたばかりなのに、次の観劇が待ち遠しいからつぎでした。

投稿: からつぎ | 2009年6月 4日 (木) 17時34分

からつぎ様
ポスター、売っていたんですかshock 知りませんでしたぁcrying 知っていたら、私も昨日の10何枚かのうちの1枚を押さえていたのにbearing うわああ、残念至極!! でも、からつぎ様はポスターが手に入ってよかったですね。私は舞台写真を狙います(売り切れ続出かも)。
仁左様の与兵衛、私も千穐楽にも拝見しますが、その間見ないなんてありえない。日程の問題もありますが、とにかくもう一度だけは見ておきたいです。
以前にご覧になったからつぎ様がうらやましいSwingです。

投稿: SwingingFujisan | 2009年6月 4日 (木) 17時45分

SwingingFujisanさま☆
こんばんは♪
初日にいらしたのですね!うらやましい!!
仁左サマ、ホントに素敵ですよね~♪
前の方で見ると(勘違いで)や~ん♪仁左サマと目が合ったわ~☆と思うのですが、幕間などに前の席や後ろの席のおばさまたちが「さっき仁左サマと目が合ったわ!」とのたまっているのを聞き、(ああ、視線がこのあたり一帯に落ちただけね、、、)と現実にかえっている私。
今回も、チケット取りに一時間以上かけた割りには二列目☆また勘違ってきますね~!

投稿: 七子 | 2009年6月 4日 (木) 19時57分

七子様
こんばんわ。
そうそう、前のほうの席にいると、目が合ったとか、こっちを見てくれたとか、ついつい都合のいい解釈をしてしまいますよねbleah でも以前、どなただったか忘れましたが「舞台にいるときは特定のお客さんを見ることはない」とおっしゃっていましたので、以来目が合ったように思っても「私を見たわけではないのよ」と自分に言い聞かせるようにしています。
昨日のステキな仁左様(あんなダメ男なのにステキなんですもの)にheart02です。

投稿: SwingingFujisan | 2009年6月 4日 (木) 20時45分

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