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2009年6月18日 (木)

6月歌舞伎座夜の部2:黙阿弥2作

09061802banzui 「極付幡随長兵衛」
客席通路から長兵衛の吉右衛門さんが登場したとき(通路際のお客さんと握手しながら出てきた)、あまりのカッコよさ、色っぽさに思わずぽ~っとなった。吉右衛門さんはこういう役をやると、実に頼もしく男っぽくて素敵だ。そして、今日初めて、吉右衛門さんの顔がお父さんの白鸚さんによく似ている、と思った。白鸚さんの芝居はあまり覚えていないから違うかもしれないけれど、白鸚さんの長兵衛を見ているような気持ちがした。
序幕、村山座の「公平法問諍」では歌昇さんが素敵。公平としての立派な役者ぶりと、水野の中間や家臣の横暴にびくびくする普通の人間っぽさの対比が面白い。難癖をつける水野の人間を舞台番がなだめるのと一緒に、歌昇さんも心配そうになだめる身振りをしていたのが、この公平役者の人間性を表しているようで好もしかった。児太郎クンが久しぶりに成長した姿を見せてくれたが、風邪でもひいているのか声が割れていたし、セリフも「う~ん、これでいいのか?」というような感じだった。
それにしても、この芝居はどうしても後味が悪い。仁左様をもってしても、気分が悪い。いや、仁左様がすっきりとカッコいいだけに(吉右衛門さんのカッコよさとはまた別のカッコよさ)納得いかない。仁左様のカッコよさが、よけい水野を許せない素因になってしまったのかもしれない。菊五郎さんの水野にはどことなく愛敬と丸みがあって、卑劣さがちょっと薄まる感じがするんだけどな。
長兵衛の子分が素敵揃い。染五郎、松緑(毎度言うようだけど、松緑さんの江戸っ子ぶり、好きだ)、松江、男女蔵、亀寿、亀鶴(ガン飛ばしたのが似合っていたsmile)、種太郎の面々。

09061803sinza 「梅雨小袖昔八丈」
しょっぱなの大工たちの会話や結納の品が運ばれる場面はなく、加賀屋藤兵衛(彦三郎)がそろそろお開きに…、というところから始まる(「お開きに」は、たしか結納を運ぶ加賀屋の若い者たちのセリフにからんで面白いのだが、そこが今回は省略されていた)。
序幕では錦成クンの部屋子披露があって、微笑ましい。芝居好きの可愛らしい丁稚さん。錦成ファンの私は心から拍手を送った。
さて、芝居はそれなりに面白く見られた(客席から笑いも何度も起こっていたし、「面白かったわね~」という声も聞こえた。私もけっこう面白いと思った)。けれど、やっぱり幸四郎さんは新三タイプではないような気がする。何が違うんだろうeye
考えてみれば私は勘三郎さんの襲名公演のほかは、幸四郎さんの新三しか見ていない。だから新三をどうのこうの言う資格はない、と自分でも思うのだけど、要するに、幸四郎さんに町人臭をあまり感じないのかもしれない。
幸四郎さんは前回に比べればかなり努力の跡が見えると思った(セリフもはっきりしていたし)。しかし新三の人間性というものが自然に滲み出るというよりは、頑張っています感が強いような気がするのだ。新三はワルいヤツだけど、初鰹に高い金を出したり(金を騙し取ろうというのに、ぽんと鰹に金を出すんだからbleah)、町の顔役に一歩もひけをとらなかったり、そんな気性はまあまあなのだが、そこに垣間見えるはずの小悪党(やっぱり、ちょっと立派すぎる? 大悪党は素敵なのに)としての愛敬、爽やかさ(小悪党の爽やかさって変な表現だけど)、ちょっとした色気といったものがいまひとつ立ち昇ってこない。でも、それは私の先入観かもしれないから、ここで結論を下すのはまだ早いだろう。
大家の彌十郎さんは実に面白かったが、15両の遣り取りはちょっとくどいような気がした(彌十郎さんの責任ではまったくない)。
最高だったのは大家のおかみさんの萬次郎さん。欲張りで、存在感たっぷり。こういうおかみさん、絶対いたいた、と頷きたくなる。強欲でもイヤ味にならないのは、萬次郎さんの大らかさのなせる業だろう。萬次郎さん大好きsign03
ところで、顔役の弥太五郎源七っていったい何なの? あんな小悪党1人に振り回されて(大家のほうがよっぽど知恵者)、遺恨を残し待ち伏せするなんて。歌六さんが堂々として男っぽかっただけにガッカリな感じ(これは、勘三郎さんのときの富十郎さんでもそう思った)。
<上演時間>「連獅子」31分(16301701)、幕間15分、「幡随長兵衛」93分(17161849)、幕間30分、「髪結新三」120分(17192119

おまけ:筋書きには舞台写真はまだ入っていなかったが、売店には出ていた。仁左様の与兵衛heart04全部ほしかったけれど、そうもいかず、でも大量に買ってしまい、大散財。コワいのは、次回観劇時、今日買わなかった分に手を出してしまいそうなこと。

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コメント

Swinging Fujisan 様
 私も歌昇(大一座だと役に恵まれず、気の毒ですが、兄 歌六のように必ずチャンスが巡ってくることを祈っています。)、萬次郎(菊五郎劇団での精進の賜物。今回の大家女房は傑作。下手だ、下手だと嘆いていた亡き羽左衛門が泉下でどれほど喜んでいるでしょう。)が実力発揮の出来栄えだったと思います。源七の役としての格については、私も同意見です。昔、先代の幸四郎(新三が先代勘三郎で名コンビでした。)で見たとき、新三内の最後、悔しがるセリフ、表情、仕草が素晴らしかったのですが、盛りの過ぎた、落ち目の親分にはとても見えない、堂々とした立派さでした(あえて言えば、幡随院長兵衛風)。
 この役は映画「人情紙風船」(日本映画屈指の傑作)の前進座の同役俳優が、何とも雰囲気が的確(新三より、かなり年上で、端敵風)で、それらしく見えた記憶があります。(もし、未見であれば、一度ごらんになるといいですよ。)
 幸四郎の黙阿弥物がしっくりこないのは全く同意見で、Fujisanさんの先入観ではないと思います。役柄と仁との相違もあるのでしょうが、幸四郎の演技の組立てが身体からではなく、頭から入るためだからでしょう。(要は、賢すぎるのです。)逆に、幸四郎が新作歌舞伎(もちろん現代物も)で抜群の技量をみせる要因だとも思います。
 ところで、小山三の芸談は本当に楽しく読ませてもらいました。これだから、Fujisanさんのブログは目が離せません。毎日、コメントできるのではないので、遅れがちにコメントし、失礼にあたるのではと、ひたすら恐縮しております。
 

投稿: レオン・パパ | 2009年6月18日 (木) 19時28分

レオン・パパ様
コメント、ありがとうございます。
そうですね、歌昇さんにもきっとチャンスが巡ってきますよね。国立の狐忠信も、演舞場の「らくだ」も、歌昇さんの力と味がよく出ていましたもの。
萬次郎さんはお父様にそんなにヘタだと言われていたのですか!!私は「決闘高田馬場」ですっかりファンになってしまいました。小山三さんも役者にとって必要だけれどむずかしいものとおっしゃっていた「味」が何とも言えません。
源七は基本、立派な役の似合う役者さんがおやりになるんですね。でも、新三のような小悪党には真っ向から立ち向かったのではダメだってことですね。先代幸四郎さんの源七、そして「人情紙風船」(タイトルは聞いたことがありますが、新三の話だとは知りませんでした)、機会があったらぜひ見たいと思います。
コメントのことは全然お気になさらないでください。もちろん、いただけば嬉しいのですが、拙い記事をお読みいただいていると思うだけで張りがあります。

投稿: SwingingFujisan | 2009年6月19日 (金) 02時10分

SwingingFujisanさま☆
おはようございます!
やっと昨日、夜の部まいりました。
金太郎ちゃん可愛いかったですね♪初お目見得からずいぶんしっかり?したな~と、親戚の子でも見るような、なんとも言えない気持ちになりました☆
友人が萬次郎さんと芝のぶさん好きになって、嬉しかったです♪(私もパルコ歌舞伎から萬次郎さんにハマりました♪)
そして久しぶりに染五郎さんにときめいてしまった♪上様とかより、こういう方が好きです♪
いつもミーハーですみません、、、

投稿: 七子 | 2009年6月27日 (土) 10時05分

七子様
こんばんは、になっちゃいました。歌舞伎座千穐楽に行っていたので、レスが遅くなり、申し訳ありません。
金太郎ちゃんを見る目は、きっとみんな七子様同様、親戚の子に対するようなものだったに違いありません。かく言う私もhappy01
染五郎さんはこうしてみると、けっこう芸の幅が広いんだなあと思います。竜馬もステキですし。
お友達が萬次郎さんと芝のぶさんをお好きになったとのこと、私も嬉しく存じます。

そういえば、俳優祭のTVを見て、七之助さんも亀治郎さんも番外篇ではあるけれど、歌舞伎座の舞台に立っていたんだなあと思いました。

投稿: SwingingFujisan | 2009年6月27日 (土) 19時00分

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