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2009年7月28日 (火)

高僧が、公子が…:七月歌舞伎座千穐楽夜の部

727日 七月大歌舞伎千穐楽夜の部(歌舞伎座)
09072802yorunobu

つい先ほど人の心に染み入る説教をした高僧が、姿だけでなく人間性まで薄汚いオヤジになる、つい先ほど夢のような海底世界でオーラを放っていた公子が、現実世界のどん底に墜ちる。私が歌舞伎の偉大さを感じるのは、同じ役者がまったく異なる役をわずかな時間をおいただけでいくつも演じる、そういうときだ。
「夏祭浪花鑑」の感想は前回とほとんど変わらないが、舅殺しの前後の団七の気持ちがよりわかりやすく伝わってきた。
祭りの声が近づくのに気づいた団七、大変なことをしたという恐怖と何とか自分の姿を取り繕おうと気が焦るばかりで、刀は鞘に収まらない、すべって足が前に進まない。わかっていても「早く、早くsweat01」とこちらの気も焦る。
与兵衛は数日後捕まったが、団七も捕まるのだろうか。お梶は、倅市松はどうなるのだろうか。三婦は自分がついていかなかったことを後でどれだけ悔やむだろうか。
前回あまりピンとこなかった笑也さんの磯之丞が、今回は<らしく>ていいなあと思った。
「天守物語」、こちらは感想がずいぶん変わった。私はこれまで図書之助は受身の存在で、海老ちゃんの魅力が活かされていないと思っていた。ところが、今回の図書には能動性、積極性がかなり感じられたのだ。二度天守に戻らざるを得なかったのは、自分の意志でない力のためであるにもかかわらず、その裏に図書の富姫に対する思いがある。そう感じたら、海老ちゃんが断然輝いて見えてshine公子さまに劣らず強い魅力を覚えた。だって、図書は自分で言ってるのよね、「暗闇で足を踏み外してケガをするよりは富姫の手にかかったほうがいい」「濡れ衣で殺されるのならば富姫に命を奪われたほうがいい」。それはまさしく図書の意志だ。それに今まで気づかなかった私ってcoldsweats02
富姫が図書をはじめ「おまえ」と呼んでいたのに、いつの間にか「図書さま」になっていて、それはいつからだったんだろうと思い返しても、思い出せない。

疑いをかけられた図書の実況をする薄が面白くていい。薄は花釣りができなくて気の毒だったな。
獅童さんの朱の盤坊、適度にくだけてよかった。
勘太郎さんの亀姫は、前より違和感がなくなってはいたけれど、やっぱりちょっと違う…気がする。背中がとくに…。比べちゃいけないけれど、玉三郎さんと春猿さんが睦まじく並んだ後姿が忘れられない。
富姫の純情に涙が出たところへ、最後に我當さんの大きさで天守の世界が包まれ、2人の幸せにまた涙が滲んだ。

今月は昼と夜の間が1時間45分もあり、また昼夜とも幕間がいつもより長かったが、考えてみれば、海老蔵さんなんて「五重塔」以外は出ずっぱりなわけだ。とくに団七での大熱演の後、幻想的な天守の世界に入るには、40分の幕間では足りないくらいだったかもしれない。千穐楽になって、やっとそんなところに思いが至ったのでした。セリフ覚えもスゴイよね~sign03
海老ちゃんって、声もステキlovely

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

千穐楽に昼夜通しでご覧になったとはsign03 そういう熱意にはチケットの神様も降臨されますよねscissors
見る方は、通しといっても、泉鏡花という柱がありますし、他の月よりはいいのかもしれませんが、出演者はほんと大変。そうは銘打ってないけど「海老蔵奮闘公演」。私は夜の部しか拝見してませんが、確かにあの海老蔵さんの全てが、特別な輝きをもっている、まさに希有な方、という気がしました(希有? 希有とは他の人と違っている・・・などという「麻阿」の台詞がすぐに浮かぶところが今の私bleah

投稿: きびだんご | 2009年7月28日 (火) 09時21分

きびだんご様
私もはじめのうちは、千穐楽に通しとは考えてもいなかったのですが…大阪に行けないと思ったから、よけい見たくなっちゃったのかもしれません。いい席が出ると「引き寄せたぁ!!」という気持ちになりますねsmile
稀有とは…そういえば、麻阿のセリフにありましたね。安藤英竹との会話でしたっけ?全然ちがったかなcoldsweats02
海老蔵さんはまさに稀有なお方ですわ。

投稿: SwingingFujisan | 2009年7月28日 (火) 13時23分

SwingingFujisan様
千秋楽に昼夜通しでカンゲキとは、羨ましい限りです!1日の中で全く違う人間を演じられる、時にはその中の一演目の中で更に男女を演じ分ける事もあるわけで、本当に歌舞伎役者さんの表現力ってスゴいですよねsign03upコクーンのラストで泣いてしまい、歌舞伎の、役者さんの素晴らしさをつくづく感じていた所だったので、SwingingFujisan様の意見に大きく頷いてしまいましたshine
天守物語は初めて見たのですが、ストイックにつとめてもどうしようもなく富姫様に惹かれて戻ってしまう図書様が非常に色っぽくて、たまりませんでしたheart04花釣り?とか不思議な世界観もとっても良かったのですが、門之助さんの長〜〜い舌には思わず笑ってしまいましたsmile
来月の演舞場も楽しみですねlovely

投稿: 林檎 | 2009年7月29日 (水) 20時47分

林檎様
コメント、ありがとうございます!!
昼夜通しは疲れるのであまりしないのですが、今月は矢も楯もたまらなくなってしまいましたcoldsweats01

「桜姫」、感動的でしたね。私もラストには涙が出そうになりました。七之助さん、見事な表現力でしたね。

歌舞伎の役者さんは1日のうちに様々な違う人間になり、おっしゃるようにそれが男女であったりもします。わずかな時間でその人間になりきるというのは、スゴいことですよねえ。歌舞伎の醍醐味の一つですね。

夢のような「天守物語」、まだ夢がさめやらぬ気分です。
門之助さんはインパクトありましたでしょう。私、前回見たときに門之助さんはそういうキャラなんだとインプットされてしまい、その後しばらくは別のお役がなじまなくて困ったものでした(とくに二枚目役なんてねbleah)。やっと二枚目もステキなと思えるようになったのに、またドカ~ンとやられました。あの舌、ほんと、笑えますよね。首が妙にリアルだったし、場面としてもグロいところなので、あの舌のおかげでなごみ(?)ましたね。

来月演舞場、何回見ようかしら、なんて今からね。

投稿: SwingingFujisan | 2009年7月29日 (水) 21時15分

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