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2009年7月22日 (水)

シュールな「矢の根」と大人な「藤娘」

720日 歌舞伎鑑賞教室「矢の根」「藤娘」(国立劇場大劇場)
「矢の根」
初めて見る。「歌舞伎のみかた」で事前に予習したので、ストーリーとかポイントはわかった。
いや~、ほんと何もかもシュールsmile 車鬢と言われる鬘も、衣裳もシュール。超特大・矢(の根)もシュール。うたた寝する姿もシュール(亀鶴さんが「面白い格好ですよ」と言っていたが、想像もできなかった)。
仁王襷をかける様が舞台で展開されたのが興味深かった。「歌舞伎のみかた」ではすでに出来上がっていた仁王襷が、ここでは1本のふと~い組紐状で、そう、横綱を締めるような感覚かしら、後見さんが2人がかりで仕上げていくのだが、その間は三味線が同じフレーズを繰り返して盛り上げる。手際よく進めていてもけっこう時間がかかったので、この作業の力強さ、大変さが実感できた。
後見さんは五郎のうたた寝でも力強さを発揮する。なんと、五郎はお尻で座ったまま、やや体を後ろに倒して寝るのだ。その五郎の腰のあたりに後見さんが身を丸めて入り、支える。あの衣裳をつけた重さを支えるのだから、こりゃ大変だ。
團十郎さんの指導を受けた男女蔵さんはセリフ回しも團十郎さんによく似ているということだったが、思ったほどそういう感じは受けなかった。声の質が違うからだろうか。
一生懸命丁寧に大きく演じている男女蔵さんには初々しさがあり好感がもてるが、やや稚気に欠ける気がした。團十郎さんで見たらもっと面白かったに違いない。あの大らかさはやっぱり團十郎さん独特のものなんだろう。もっとも初役だし、ずいぶん緊張もしているだろうし、今それを求めるべきではないのかもしれない。今後何度も演じて、男女蔵さんなりの稚気、大らかさを見せてほしい。
それにしても、荒事における稚気というものが芸をより大きく見せるんだなあと思った。
おせちにかけた<つらね>は事前に説明があったものの、大人の私でさえ難しいと思ったから、子供たちにはわからなかっただろう。舞台の左右に設えられた電光掲示板に大薩摩の歌詞が出るのはいいのだが、それを見てしまうと舞台に目が行かなくなり、その兼ね合いがむずかしい。イヤホンを聞いたほうがいいのかもしれない(借りればよかったかな)。
宗之助さんにしても亀鶴さんにしても出番が短くてインパクトが弱い。もったいない!! 馬士の嵐橘三郎さんは馬を引いて花道から出てきたとたん、笑いが起こったし、短い出番ながら強烈な印象を残したのではないかしら。
商売馬を奪って、兄・十郎を助けに行く五郎。大根を鞭代わりにするなんて、やっぱりシュールだわsmile

「藤娘」
幕が開いて梅枝クンが出てきたとたん、客席がどよめいた。舞台の明るいきれいさと梅枝クンの美しさの両方に対する感嘆の声だったのではないか。私が子供の頃に見た歌舞伎で一番印象に残っているのは「籠釣瓶」である。それは、桜が満開の吉原を表現した舞台の艶やかな美しさに感銘を受けたからだ。そういう印象って、後々までとても大事なことではないだろうか。だから、この舞台を見た子供たちが将来それを思い出してくれるといいなあと思った。
梅枝クンは、まさにさなぎから孵った蝶、蕾が8分開いた花。ほっそりとたおやかで、その瑞々しさたるや、まさに花の精。
しかし「藤娘」って歌詞を見ると、かなり色っぽい。「娘」なんていうからちょうど梅枝クンぐらいの初々しい女の子なのかと思いきや、案外大人な色気を必要とする踊りなんだなあ。あちこちで好評なのは知っていたものの、幕が開くまでは近所のオバサン感覚でどきどき心配。でも梅枝クンの、ベテラン役者さんの円熟の舞いとはまた一味違う初々しさ、清らかで上品な色気を滲ませながら踊る姿にうっとり、引き込まれた。初役かつ若い故の硬さもありながら半面しっとりしてもいて、これが不思議な魅力になった。このまままっすぐ伸びていってほしい、そして鷺娘、道成寺なども見たい!!と思った。
ところで、梅枝クンの顔が時々時蔵さんそっくりに見えることがあった。それ以上に、姿かたちが先代に重なる気がした。先代時蔵さんの記憶ってほとんどないから、妄想に過ぎないんだけどcoldsweats01

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

SwingingFujisanさま☆
おはようございます♪
先月の「歌舞伎のみかた」のレポを読ませていただいて、私も!と、今月「社会人のための鑑賞教室」にまいりました♪
亀鶴さん、男女蔵さんの浅草メンバーも、パルコ歌舞伎から勝手に注目の宗之助さんも嬉しかったですが、
なんといっても梅枝クン♪よかったですね~
SwingingFujisanさまがおっしゃる通り、上品でしかも色気もあって…
いつか(早く?)梅枝くんの鷺娘や娘道成寺が見たいですね~♪♪♪

投稿: 七子 | 2009年7月22日 (水) 08時53分

七子様
おはようございます。
「歌舞伎のみかた」は、担当する役者さんによって料理の仕方が様々、その個性を味わうのも楽しみの一つです。先月の笑三郎・春猿さんの味わいがとても好きですが、亀鶴さんはとにかく歌舞伎の敷居を低くして、歌舞伎を好きになる取っ掛かりを作ろうとしている様子が見えました。
浅草メンバーの活躍は嬉しいですよね。
七子さまは宗之助さんにもご注目でしたか。おっとりとして、女方としても立役としても、いい役者さんですね。
梅枝クンは、七之助さんに続き、これからの女方を背負って立つであろうと確信します。舞台に立つたびに成長しているのが感じられ、またこうして評価していただくと、近所のオバサン感覚の私としては嬉しい限りですsmile

投稿: SwingingFujisan | 2009年7月22日 (水) 09時51分

こんにちは。
SwingingFujisanさまのレポを読んでいるうちに、どうしても行きたくなり(今月はできるだけ我慢する決心をしておりましたのに)、明日近くまで行く用事もあるし、3階なら1500円だし、で結局行くことに(^_^;
亀鶴さんも、梅枝ちゃんも、男女蔵さんも、ぜぇんぶ楽しみです。「矢の根」は多分2000年のお正月、羽左衛門丈の最後の舞台(だと思います)で見て以来。
国立劇場じたいが久しぶりなので、わくわくしてきました(^_^)
歌舞伎会の引き落とし額を見て気が遠くなったからつぎでした。

投稿: からつぎ | 2009年7月22日 (水) 15時28分

SwingingFujisanさま

こんにちは。今回の鑑賞教室は一日違いの観劇だったようですね。私は亀鶴さんの歌舞伎の見方は端折ってしまいましたので、詳しいレポで楽しませていただきました。

男女蔵さんの矢の根もなかなか頑張っていましたが、今回は何と言っても梅枝さんの『藤娘』に尽きますね。これからの女形を背負ってたつことは間違いない逸材であることが証明されました。

投稿: 六条亭 | 2009年7月22日 (水) 17時28分

からつぎ様
うわっcoldsweats01 責任を感じてしまいますゎ。明日「おかげで損しちゃったわ」なんてクレームをいただかないことを願っています。いや、十分楽しんでいただける自信はあります。1500円であれだけのものが見られるなんて、絶対お得です。国立は3階席でもよく見えますから、安心ですよねえ。
ニコスの請求書、私も「が~んshock」です。

投稿: SwingingFujisan | 2009年7月22日 (水) 18時44分

六条亭様
最近、あまりご一緒になりませんね(歌舞伎座千穐楽夜の部は、私も行く予定です)。
「歌舞伎のみかた」は、自分の記憶のためにも細かく記録しました(すぐに忘れちゃうんですよsad)。それに、先月とはまた違った楽しさもあったし。

梅枝さんの「藤娘」、六条亭様にもお褒めいただいて嬉しいです。見事な踊りを見たら、もう「梅枝クン」なんて呼んではいけないかな、なんて思いました。本当に瑞々しく、役の性根を摑んだ藤の精でした。

投稿: SwingingFujisan | 2009年7月22日 (水) 18時51分

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