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2009年7月24日 (金)

七之助さんの見事な桜姫

723日 「桜姫」(シアターコクーン)
勘三郎さんの、観客を楽しませるというコンセプトに乗って、十分に楽しんだ。そして、七之助さんがこんなに見事な桜姫を見せてくれるとは!! 堕ちるところまで堕ちても失わない清らかさ、吹きすさぶ風の中の柳のような芯の強さ、若手がいい芝居を見せてくれる中で、七之助さんもまた大きく飛躍したと思った。

狂言回し的な笹野高史が舞台に飛び出してくる。それだけで芝居小屋に入り込んだような気分になるから、ただ笑わせるだけでないこの役の重要さがわかろうというものである。笹野さんはまずは物語の発端の紹介をするところだが、遅刻してくるお客さんをいじりつつ、ムーンウォークをちょっと披露してみたり、客席が落ち着くのをうまく待つ。でも、この間の笹野さん、顔といい動きと言い、萩本欽一みたいだったbleah
さて、狂言回しの話が終わると、舞台上に設えられた追加席、これは舞台を見下ろす形で階段式になっているのだが、その最上階(通路)に忽然と清玄・白菊が姿を現す。芝居としても物語としても期待感をもたせる見事な出だしだ。舞台には浪幕が張られ、2人がこれから入水することがわかる。しかし飛び込むのは白菊1人。清玄は一歩が踏み出せず、生き残ることになる(手に手を取って飛び込むんじゃなかったのね)。ここ、ちょっと興ざめなこと言うと、浪幕の内側にマットかなんかが敷いてある感じがこちらにもわかった。
舞台は悲壮な場面からがらりと変わり、桜姫の出家の日。今や尊い高僧となった清玄、桜姫、残月(彌十郎)ら僧侶、長浦(扇雀)ら局、そして吉田家家臣たち、侍女たちがそれぞれキャスター付きの台に乗って登場する。台の高さ、乗っている人数で位の高さがわかる。みんな台の上で正座しているんだけど、どうやら台の動きを見ていると、正座の脚はニセモノで、役者さんは実は立っていて自分の足で台をうごかしている様子。台から下がる布と床のかすかな隙間から足の動きが見えるのだけど、最初は誰か中に入っているのかと思ったけれど、扇雀さんの確信犯的な動きで、「やっぱり~bleah」。しかし役者さんが自身で動かしているとして、勘三郎さんと七之助さんの台はそれにはやや高すぎるようなので、この2人の台には人が入っていたのかもしれない。また、位の低い人たちの台はかなり低く、役者さんの足だとしたら、きついだろうなあと思った。ここの場面はどうも、そっちが気になってしまって、セリフなどあんまり聞いていなかった。

桜姫は、玉三郎・段治郎の「東文章」が初見。このときはまだ歌舞伎デビュー年で、昼夜通しの昼の部しか見ていないが、段治郎さんの色悪ぶりがステキだった印象が強い。玉三郎さんの変身を見ていないのは悔いが残る。
2
回目は勘三郎さん抜きのコクーンで福助・橋之助コンビ。それなりに面白かったのかもしれないが(ラスト、桜吹雪舞い散る中で踊り狂う福助さんが印象的)、今回のほうがずっと面白く、しかも桜姫の気持ちや行動がわかるような気がした。
七之助さんが清らかであればあるほど、権助への思いや運命に翻弄されながらも生き生きとしている姫がいじらしく私には映った。女郎としての婀娜っぽさも、私にはなかなかのものと見えた。そして権助が自分たちの運命を狂わせた張本人であることを知ったときの心情がぐっと胸に伝わってきて、思わず涙が出そうになった。今回子供を殺さないのはどういう意味をもつのだろうか。子供に罪はないということなのか、たとえ悪の血が継がれても権助への思いを断ち切ることはできなかったということなのか?
最後に桜姫の中から何か玉が出て昇天していったが、それは何を意味するのか? 姫からこれまでの穢れが出て行ったということなのか。清玄と権助が微笑みながら昇天していったのは何を意味するのか。第一幕終わりの皿回しは何を意味するのか?
疑問は多々あるが、それを全部、<輪廻転生>に結びつけては安易だろうか? 私は皿回しで輪廻転生を強く感じたのだが…。
ラストの音楽は、よくコメントを下さるレオン・パパ様によれば、マスネのオペラ「ウェルテル」のテノールのアリア「春風よ何故私をめざめさせるのか」だそうだが、あのラストにとても合っていて余韻を残したと思う。

橋之助さんの権助は色気があってステキだけれど、ちょっと悪人っぽさが足りないような気がした(段治郎さんはワルかったなあと思う)。しかし、橋之助・七之助コンビはきわどいラブシーンを演じるものだなあ。確か去年の「愛陀姫」でもそんなシーンがあったようなbearing
勘三郎さんが清玄を楷書で演じていたのがよかった。高僧の位の高さも十分感じられたし、清玄が桜姫を白菊の生まれ変わりだと確信し、その後白菊への思いが桜姫の中の白菊でなく、桜姫自身への執着に変わるというのもよく伝わってきた。前回のコクーンではもっとしつこい、今で言うストーカー的な要素を感じてイヤなヤツだなと思った記憶があるが、今回はむしろ気の毒さが先に立った。「女に生まれ変わって添い遂げたい」と言っていた白菊と桜姫は別人格なのね。

カーテンコールは予定されていた分も含めて3回。3回目には盆がまわって役者さんがどの席にも均等に顔を見せられるようにしていた(そう、舞台には盆も作ってある)。
筋書きはいつもなら脇の役者さんの集合写真や顔写真があるのに、今回はない!! コクーン歌舞伎15年の歴史を振り返る写真があるのは嬉しいけれど、やっぱり出演者全員の顔をそろえてほしかったなあ。
<上演時間>第一幕75分(13:30~14:45)、幕間15分、第二幕95分(15:00~16:35)

追記:橋吾さんのブログによると、写真は撮っているようなんだけど…。それから、さっきのキャスター付き台の話、やっぱり役者さんが自分の足で動いていたみたい。

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コメント

SwingingFujisanさま☆
こんにちは~♪
昨日いらしたのですね~♪いつもながら、素敵なレポ、(勝手に)嬉しいです☆どうもありがとうございます♪
私は初日と、あと前楽にまいります。七之助さんの舞台はどうしても客観的に見れず(ほかの方のも自分流ですが><)いっぱいいっぱいで見てしまうので、
SwingingFujisanさまのレポで「そうそう!」と思い出してはまたかみしめております♪
七之助さんを褒めるブログや記事を読むたび、自分のことのように嬉しい七子です♪(アホか…)

投稿: 七子 | 2009年7月24日 (金) 14時40分

七子様
こんばんは。
七之助さん、桜姫の心になっていましたね。あまり回数を見ていない桜姫ですが、その中で今回はとてもわかりやすかったように思います。伝わるものがありました。

自分の贔屓の役者さんがいい演技をして褒められたら、それは嬉しいものですよ。私だって、今月の梅枝クンの好評は嬉しくて嬉しくて。だから、お気持ち、よくわかります。

コクーンは1回だけになってしまいますが、千穐楽も見たかったなあと思います。
初日をご覧になったのであれば、前楽にはきっと進化のあとを目の当たりになさることでしょうね。お楽しみですねnotes

投稿: SwingingFujisan | 2009年7月24日 (金) 20時35分

七之助さん、とても良かったようですね〜!私は明後日カンゲキ。初めて見るお芝居であまり知識がなかったのですが期待が高まりましたnotes
Swinging Fujisanさんはいつも目をつける所が面白くて笑ってしまいますsmileマットやキャスター付きの台、気になっちゃいます〜!カクニンせねばcatface

投稿: 林檎 | 2009年7月24日 (金) 22時49分

林檎様
コメント、ありがとうございます。
私はこの桜姫、かなり好きです。七之助さんは熱演なんでしょうが、「頑張ってます」感がなくて、自然に演じているのがいいと思います(つまり、桜姫の心になっている、ということです)。

マットだのキャスター付きの台だの気にしているようでは邪道ですよねcoldsweats01 でも、ご覧になったらわかると思いますが、あの場面ではとってもそれが気になるんですもの。
そうそう、邪道ついでに桜姫の赤ちゃんにもご注目。実にタフな赤ちゃんなんですよsmile

投稿: SwingingFujisan | 2009年7月24日 (金) 23時15分

SwjngingFujisan 様
 詳細かつ楽しいレポ拝読しました。あのキャスター台の仕掛けは不思議でしたが、なるほどと思いました。私も、目まぐるしい、車の動きに気をとられ、肝心のセリフは上の空でした。革新的な演出も良し悪しかもしれません。また、非人の皿回しも仏教的な意味合いがあるのかもしれませんね。
 橋之助、熱演なのですが、ニンが「色悪」ではないのでしょう。やはり、海老蔵の権助(清玄との二役ならなお良い)が見たくなりますね。

投稿: レオン・パパ | 2009年7月25日 (土) 07時15分

レオン・パパ様
おはようございます。コメントありがとうございます。
やはりレオン・パパ様もあの台の動きに気をとられましたか。コクーン歌舞伎としては、あのような笑いの入れどころ、程度というのは難しいものがありますよね。
革新的な演出というのは、こちらを戸惑わせることがありますが、それを「してやったり」とする確信犯的な部分もあるようで、まあ自分なりに解釈すればいいのかなと思います。
海老蔵さんの権助、見たいですねえ!! 海老蔵さんならきっと清玄との二役をやられることでしょう。「高野聖」の清らかな坊さんを思い出すと、こちらは過去あるとはいえ高僧もきっとお似合いのことと確信します。

投稿: SwingingFujisan | 2009年7月25日 (土) 08時31分

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