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2009年7月18日 (土)

純愛の天守物語

716日 七月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)
「天守物語」

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海老ちゃんのオーラということだけで言えば「海神別荘」のほうが遥かに強烈であった。こちらはむしろ玉様のオーラだ。あちらの主導権を握っているのが海老ちゃん(公子)ならこちらは玉様(富姫)に主導権があるから当然と言えば当然か。いや、2人は互いのもつオーラをそれぞれに立て合っているような気がした。私自身は正直言って受身の海老ちゃんより主導権を握っている海老ちゃんのほうがずっとステキだと思う。とはいえ、これこそまさに夢の世界、「天守物語」は見事に完成された感動的に美しい純愛物語で、別に泣く芝居じゃないよなぁと思いながら、涙が滲んできた。また下界の目でみればグロな部分もあるのに(亀ケ城主の首、けっこうリアルcoldsweats02)、見終わった後に心がきれいになるような、不思議な気持ちであった。2度目であるせいか、見る側の心持ちとして余裕があったのも、より物語に入り込める要素になっていたと思う。

幕があくと、富姫の侍女たちが秋草釣りをしている。この幕開きはとても印象的で、見ている者は一足飛びに鏡花の世界に入り込む(セリフの一つ一つも幻想的で美しい)。侍女たちの中では守若さんが明るくやさしく控えめな色気があって私のイチ押し。吉之丞、歌江さんはもちろんのこと、先月の玉之助さんといい、最近、超ベテランの脇の女方さんがとてもすてきに思えてきている。
どの役者さんも玉三郎さんの目が行き届いて適役。薄の吉弥さんがきれいで堂々としており、天守にあって侍女たちを束ね姫を見守る気概が感じられた。私は笑三郎さんの日本語がとてもきれいで好きだが、吉弥さんの物言いもタイプはちょっと違うのに同じくらいきれいで好きだ。
しばらく吉弥さんに見惚れていたら、蓑を背中にのせて富姫が天守に帰ってきた。なんという美しさshine位の高さshineそれでいて気さくな姫様。完全に目が釘付けになった。この世にこんなきれいな女性がいていいものか(はは、そういえば、「海神別荘」ではこんなに美しい男がいていいものか、と思ったんだっけ)。人間である以上、年をとるのは必然なのに、異界の光り輝く姫君をあんなに完璧に演じられる(ますます美しい)のは、玉様自身が異界の人だからじゃないか、なんて錯覚に陥ってしまいそう。
亀姫の勘太郎クンは微妙。お辰のときにはそれさえ素敵と思った横顔のごつさがちょっと気になった(正面の顔はおかわゆらしいのに)。妹(的)姫としての可愛らしさや甘えは十分感じられたし、前回好演した春猿さんに代わって勘太郎クンかぁと知ったときの危惧は払拭されたけれど、声が難点なのかなぁ。それと玉三郎さんとのバランスがあまりよくないのかもしれないな、なんて思った。
獅童さんの朱の盤坊は、全体に硬い気がした。もっともそれが獅童さんの持ち味なのかもしれない。侍女たちと戯れている途中、刀が抜けるハプニングがあり、またその刀がなかなか鞘に納まらずこちらはハラハラしたが、獅童さんは動ずることなく予定された動きの一部であるかのように振舞っていた。でも、あの鬘と衣裳ではさぞ暑かろう、実際顔じゅう汗びっしょりで気の毒になってしまった。

図書之助と姫の関係は興味深い(堂々たる姫君が若く美しい男の登場に少し動揺するというシーンはどこかで見たなぁ…ああ、そうだ、「十二夜」の織笛姫だsmile)。最初は貫禄といい、位といい、姫のほうが上であったが、目が見えなくなってからは対等な立場に立ったような感じがした。光を失うことによって図書之助の心の目が完全に開き、異界の人になったのだろうか。あるいは2人の愛が本物になったのだろうか(愛に上下はないもの)。しかし互いに「もう一度顔が見たい」と嘆き合う2人を見ていると、あの姫がこんなにも弱々しく頼りなげなのが痛ましい。この純愛が近江之丞桃六の奇蹟を生むのだろう。
受身の海老ちゃんは…と書いたが、その若々しく凛々しい美しさが神々しいくらいなのは言うまでもない(前半の赤みを帯びた化粧の海老ちゃんは團十郎さんに顔がよく似ていた)。どれだけ賛嘆の形容詞をつければいいのかheart いや、富姫の「涼しい言葉」というセリフが海老・図書を一言で表しているのかもしれない。姫がそうやって図書を褒めるたびに客席に笑いが起こっていたけれど、あの気位の高い姫君の必死に図書を見つめる目と心がほほえましいという笑いだろうか。それとも姫の褒め言葉が海老ちゃんにどんぴしゃ過ぎちゃっているからだろうか。
我當さんが2人を救う桃六として出てきたのは嬉しい(映画なら名前の上に「特別出演」とかつきそうな感じがした)。玉三郎さんが優しく敬意をもって我當さんの手を取り舞台中央に導いたカーテンコールに涙が出そうになった。
ああ、千穐楽前にもう一度見たい。
<上演時間>「夏祭」125分(16:30~18:35)、幕間40分、「天守物語」105分(17:15~21:00)
おまけ:海老ちゃんheart04の舞台写真を各演目1枚ずつ買った。

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。7月16日夜の部、私も観劇しておりました。吉右衛門さんの巡業初日も、ニアミス(?)でしたね。
この日初見だったのですが、朱の盤坊の刀はハプニングだったのですか?ちょっと変だなとは思いましたが、獅童さんは大変だったでしょうね。
私は今月の観劇は、残念ですがもうなしです。SwingingFujisan様はまだ御覧になるのでしょう?またレポをお願いいたします。

投稿: とこ | 2009年7月18日 (土) 14時21分

とこ様
まあ、この日もご一緒でしたかhappy01 2週間ちょっとの間に2度もご一緒とは、何だか楽しくなります。
刀は、踊りの中で抜く場面もあったのですが、あの時は多分ハプニングだったのではないかしらと思います。獅童さんも侍女の役者さんたちもさりげなく動いていたので、お芝居の一部かなという気もしましたけれど、やっぱりちょっと違うかなと…ね。

私の今月の観劇は、これからがすごいことになっているんですよ。自分でもどうしてこんなスケジュールにしてしまったのかと手帳を見てはため息をついていますが、拙いレポで楽しんでいただければこんな嬉しいことはありません。

投稿: SwingingFujisan | 2009年7月18日 (土) 15時52分

Swinging Fujisan 様
 天守物語のレポ楽しく読ませていただきました。私としては、猿弥の追っ手の武士が気に入りました。どうということのない役ですが、猿弥の歌舞伎役者としての男らしさが横溢し、悪役ではないよさが気に入りました。ともかく、体調が戻って本当によかったですね。
 昨日のコクーンに続き、今日は歌舞伎座の昼を観劇しました。(二日続くと、歌舞伎三昧の幸せを痛感します。)コクーン初参戦と申し上げましたが、なかなか安い土日のチケットが取れなかったのです。(仕事もそれなりに忙しかったので、そうそう劇場に行けなったからでもあります。)第一印象は、あれ、若い女性が多いなあと思いましたが、劇場が小じゃれているせいですかね。下北沢あたりの小演劇の経験のない私としては大変面白かったです。
 歌舞伎座の昼は、ボリューム的には軽めでしたが、これも楽しめました。勘太郎に脈々と続く中村屋の血を感じました。あと、春猿笑三郎がますますいい女形になってきましたね。。
海神別荘は作としては天守物語よりは落ちますが、海老蔵、玉三郎を堪能し、幸せな気分になりました。
 

投稿: レオン・パパ | 2009年7月18日 (土) 21時03分

レオン・パパ様
コメントありがとうございます。
猿弥さんは何をやっても存在感バツグンですね。私も小田原修理はとてもよかったと思います(あまり長々と書いているうちに、書き忘れてしまうこともありまして…)。三婦といい、貴重な人材ですね。

コクーンは座席にも色々工夫がありますから、それも楽しみの一つではないでしょうか。今回は平場席がないかわりにベンチシートなんですね。先月の現代版でベンチシートは経験済みですが、歌舞伎だとまた違った感じになるんだろうかと楽しみです。

血脈を通じて、あるいは師匠と弟子の関係を通じて、芸は後世に伝わっていくのですねえ。

お仕事をお持ちの方は劇場通いもままなりませんものね。好きなこととはいえ、時間を縫って観劇なさるのは大変でしたでしょう。私など恵まれていてありがたいことです。

投稿: SwingingFujisan | 2009年7月18日 (土) 21時51分

こんばんは。
先ほど歌舞伎座夜の部から帰ってまいりました。
「天守物語」の玉三郎さんの美しさ・・・めまいがしました。明日は鎌倉、来週は歌舞伎座昼の部、昨日亀治郎の会のチケットも届き、8月に向けてもテンションあがってます↑↑

突然永楽館の思い出ですが、実は去年も行ってるんですよ。
永楽館自体ももちろんよかったのですが、泊まっていたホテルでエレベーターに乗ったときのことです。
わたしはお風呂あがりのすっぴんテカテカおでこ&昼間の日焼けで赤くなった顔・・・ロビーで扉が開いて、そこにいたのは秀太郎さんと愛之助さんでした。。。
超恥ずかしかったですが、たまたま一緒にエレベーターに同乗していた方(←この方もファン)とお互いに3ショット写真を撮りあいました。

・・・とこんな思い出のある永楽館。行くのが大変な場所なので今年も何か↑のようなごほうびがあるといいな、と思う今日この頃です。

投稿: あねご | 2009年7月19日 (日) 00時32分

あねご様
まずはミーハーな私、秀太郎さんと愛之助さんとの3ショットですって!!! な、なんと、なんとうらやましいhappy02 
でもほんと、遠くから大変な思いをしていらっしゃったんですもの(芝居小屋はだいたい交通の便の悪いところにあるので、なかなか行かれません…)、素敵なご褒美になりましたね。今年もそんないいことがありますようにconfident

玉三郎さん、お年を召してますます美しくなっていらっしゃいますね。心のもちようが容姿を美しくし、芸を最高のものにするのでしょうね。

今日も蒸し暑くなりそうですが、鎌倉での仁左様、お楽しみくださいませね。
8月初旬に向け、体調には十分お気をつけられますよう。

投稿: SwingingFujisan | 2009年7月19日 (日) 09時03分

おはようございます。厚い雲に覆われた空を見ていると、この雲の上を、富姫さまが歩いていらっしゃるかもしれない…なんて想像してしまう今日この頃です。

私も、本当に私も偶然に、玉三郎丈の富姫さまの恋の嘆きを聞きながら、時蔵丈@十二夜を思い出していたんですよ!! やはり、恋する女心の胸のざわめきは、共通なんですね~。

我當丈の大きさにも、カンゲキでした♪

投稿: はなみずき | 2009年7月20日 (月) 08時19分

はなみずき様
おはようございます。
厚い雲を通して富姫さまのひそやかな足音が聞こえてきそう…なんて考えるのも楽しいnotes

富姫に織笛姫を重ねてから、そうだ、そういえばはなみずき様も「十二夜」を思い出しておられたんだわ、とレポの記憶が甦りました。この時期、東京と大阪で、気位の高い美しい姫君がまるで少女のような恋をしているんですねhappy01

我當さんの包容力には胸が熱くなりました。「元禄忠臣蔵」ではおみ足を心配しましたが、今回はご自分で動いていらっしゃいましたね。ほっとしました。

投稿: SwingingFujisan | 2009年7月20日 (月) 08時50分

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