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2009年8月28日 (金)

文句なく楽しかった納涼第三部千穐楽

827日 八月納涼大歌舞伎第三部千穐楽(歌舞伎座)
こちらも二度目の第三部。どちらの演目も文句なく楽しめた。
「お国と五平」
実に面白かった。前回は重苦しい気がしてあまり笑えなかったのに、今回はずいぶん笑った。
狐と狸の化かし合いだと思った。三津五郎さんは乾いた芸風だったのがかなり湿っぽくなり、その身勝手さしつこさ女々しさに、少々辟易した。それどころか、お国と五平が国を出たときからず~っとあとをつけていたと打ち明けた時にはぞっとしたほど。この芝居はそれでいいのだ。
どっちもどっち、都合のよさに思わず苦笑してしまう。したたかなお国も、忠義の五平も、身勝手ながら案外説得力のある友之丞も、結局みんな同じ穴のむじなだ。でも人間ってそんなものよ、笑いながら見ている自分もおんなじcoldsweats02 だから人間って面白いのかもしれない。世の中立派な人ばかりだったら疲れてしまう。
3
人のセリフのやりとりがとても自然で、とくに扇雀さんと勘太郎クンが労わり合うあたりは、長い間ともに苦しい旅をしてきた男女の情感が漂い、仇討ちのむごさ(仇討ちしなくちゃ帰れないというむごさ)に胸を衝かれる思いがした。そして、本懐を遂げ、2人は晴れて夫婦になるのだろうが、仇討ち以上の重荷を一生背負っていくことになるのではないだろうか。未練たらしく生にしがみつき、ストーカーまがいの生き方をしていた友之丞のほうが、案外幸せだったかもしれない。友之丞の死に顔が今回の席からは見えなかったのが残念だが、前回は間違いなく安らかな顔であった。
「怪談乳房榎」
こちらも、慌しい印象を受けた前回と違って、けっこうじっくり楽しむことができた。
幕開き、茶店の女で登場した小山三さんに掛け声がかかり、大きな拍手が送られるnotes 橘太郎さんが「いつ見ても若いねえ」とほめた後、花道からやってきた福助さんが「そういえばお前さんこの間お誕生日で90歳になったっていうじゃないか」「卆寿のわりに髪が黒いねえ」とさりげなく客に紹介。待ってましたとばかりの拍手の嵐を小山三さんは内心の嬉しさを隠したような顔で受ける(20日のお誕生日当日はもっと盛り上がったのかしら。私は13日、27日とちょうど1週間前後に見たことになる。あらっ、ところで大正9年小山三さんまだ89歳じゃないcoldsweats01 ま、いいや数えでは90だもの)。一場面の短い出番とはいえ、90歳の役者さんがしっかりと3週間の舞台を勤めあげるって、素晴らしいことだと、胸が熱くなった。

橋之助さん(磯貝浪江)の色悪ぶりが冴えていた。前回はそう悪さを感じなかったのに、今回は本当に悪いヤツだと思った。福助さんがとてもきれい(百カ日の法要の時の着物が素敵。すぐに着替えてしまうのが残念)、でもこのお関という女はよくわからんthink 弱い、自分に弱すぎる。浪江に惹かれるところがあったのだろうか。勘三郎さんは下男正助で得意の三枚目キャラを、蟒三次で悪党を、菱川重信で正統派の演技を早替りで見せる。この演じ分けが見事だった。
早替りそのものもかなり進化していたのではないだろうか。1階席だったから余分なところが見えなかっただけかもしれないが、素直に楽しんだ。何度も「はや~い」と思わず声に出した。花道の傘の下での早替りなんて、まるでマジックだ。どう考えてもわからない。
滝壺の立ち回りではちょうど正面だったから、ちょびっとだけ水が飛んできたsweat01 勘三郎さんが傘で水をばしゃっとやった時だった。これ、目当ての一つだったから、まあ満足。
円朝の勘三郎さんの口上が終わり、緞帳が下りると、一度やや勢いの衰えた拍手がやっぱり勘三郎さんだからと期待をこめてまた強くなった。しばらくすると期待どおり緞帳があがり、勘三郎さんが舞台中央に戻ってきた。座布団を客に見せる。おお、汗でぬれている。その座布団に再び座り、「大和屋も皆さんによろしくと言っていました。歌舞伎はカーテンコールがないんで、みんなもう帰っちゃいましたけど」。おおかたの挨拶は円朝でしているから、ここはこの程度で幕。でもちゃんと舞台に戻ってきてくれた勘三郎さんはやっぱり人気者である。
そういえば、今年は三津五郎さんと勘三郎さんの絡みがなかったなあ(「船弁慶」ではほとんど絡んでいないし)。2人のはちゃめちゃな楽しい芝居がなかったのはちょっと寂しい、と最後に思ったのでした。

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。
ああ!わたしも行きたかった(T_T)
きのうはご用があって行けなかったので、おととい乳房榎だけ仕事帰りに幕見で堪能しました。
わたしもあの法要のときの福助さんの着物気になってました!すごく素敵ですよね。
なんだかいつもより福助さんが美しく見えた気が…。
帰り道にコオロギが鳴いているのを聞いて物悲しくなりました。夏も終わりですね。
でも11月の演舞場の演目を見たらまた気合いがみなぎってきました!確実に通っちゃいますね…。

投稿: あねご | 2009年8月28日 (金) 19時43分

あねご様
お仕事のある方は、スケジュールを立てるのも大変ですね。お仕事帰りの幕見はお疲れになったことと思いますが、じゅうぶん面白かったでしょう。私も煮詰まった舞台を見ることができてよかったと思っております(1回だけだったら物足りなかったかも)。

私は着物のことは全然わかりませんが、あのお着物は爽やかで、かつしっとり落ち着いており、前回見たときも強く印象に残っておりました。福助さんは、必要以上に表情を作らないと綺麗なんだと思います。今月は小野小町もお関もとても綺麗でした(豊志賀は、あんなになる前はさぞ美人だっただろうという感じでした)。

もう夏も終わり…私は日の暮れるのが早くなったなあとしみじみすることがあります。でも、私の8月はまだまだ終わっていませんsmile アツい夏はもう少し続きます。

11月の演舞場、チケット争奪戦がきびしそうですね。頑張るぞdash

投稿: SwingingFujisan | 2009年8月28日 (金) 21時31分

> SwingingFujisan さま

五右衛門と乳房榎の両方の千穐楽を楽しまれたとは贅沢でしたね。私は今回は秋に備えて、楽日をパスして一回の観劇のみでした(^_^;)。

今回の納涼歌舞伎は、原点に帰った怪談ものが多く、演目的にはよかったですが、たしかにご指摘のように勘三郎さんと三津五郎さんが正面からぶつかる演目がなかったのが惜しまれます。歌舞伎座建て替え期間中は納涼歌舞伎はないらしいとの話を聞いていますが、どうなるんでしょうか?

ところで、小山三さんの卒寿を福助さんがさりげなく紹介していたのは好ましいことですが、90歳というのが正確ではないですね。卒寿は数え歳で言うのが本当ですから。

新橋演舞場の花形歌舞伎、チケットの争奪戦が厳しそうです(>_<)。

投稿: 六条亭 | 2009年8月28日 (金) 23時58分

SwingingFujisanさま☆こんばんは~♪
昨日、演舞場→歌舞伎座、といらしてるのでは~♪と思ってました!私も納涼三部のみまいりました
初めて見た歌舞伎が納涼でしたので、(あ~この歌舞伎座では最後の納涼なんだな~)と思いつつ、でも楽しかったです~♪また新しい歌舞伎座で八月は納涼ですね!
ところで、演舞場の11月の演目、テンション上がりますね~♪12月は南座も…♪
あ!私も前楽で海老さまの親指注目してました!Swingさまのおかげです~

投稿: 七子 | 2009年8月29日 (土) 01時31分

六条亭様
この8月はずいぶん歌舞伎を見ました。五右衛門と勘三郎さんはやはり千穐楽も、と決めておりましたので、無事両方とも見られて幸せでした。
円朝こと勘三郎さんによれば、納涼歌舞伎は又新しい歌舞伎座で、ということだったように思います。でも、どこかで続けてほしいですね。たとえば、大変だとは思いますが、平成中村座のような小屋をつくってでも。

あら、卒寿はそういえば数えでいうんでしたっけcoldsweats02 私のように間違えて覚えている者がいるから、福助さんもそれを飲み込んでそう言ったのかもしれませんね。

11月演舞場のチケットが厳しいとなれば、建替え期間中の演舞場での歌舞伎公演のチケットも厳しいでしょうね。キャパが違いますものね。また毎月胃がきりきりしそうです。

投稿: SwingingFujisan | 2009年8月29日 (土) 01時51分

七子様
こんばんは。
納涼歌舞伎も今年で20年になったんですね。初めてご覧になったのが納涼であれば、それは面白かったでしょう。私の中では去年の「らくだ」が最高でした。さよなら公演がまだ8カ月も続くといっても、納涼、秀山祭、顔見世と1カ月ずつそういう公演が今の歌舞伎座では終わっていくんですね。だんだん建替えの現実味が増してくるような気がします。

歌舞伎役者さんはまさに頭のてっぺんから爪先までぴんと筋が通っているんですね。舞踊にしても立ち回りにしても、荒事の姿勢にしても、先日のNHKの番組じゃないですけど、歌舞伎って体育会系なんだなあと思います。

11月演舞場、皆さん、ご注目ですね。毎月10日と20日は昼の部観劇を入れないようにしていますが、来月20日はとりわけ頑張らねば。

投稿: SwingingFujisan | 2009年8月29日 (土) 02時35分

SwingingFujisan様
 演舞場、歌舞伎座の楽、堪能され、何よりです。
 今年の八月は本当に充実していました。
 大谷崎の芝居、全く古さを感ぜず、楽しみました。それにしても、大劇場の女性客はよく、いろんなところで笑いますね。ところで、大谷崎には「恐怖時代」という不思議な傑作もあるのですが、海老蔵、亀治郎あたりで掛けてくれませんかね。
 来年5月以降の演舞場のチケットのことを考えると私も、本当に憂鬱になります。ゴールド初日をはずすと、土日の3階席はまさしく、ゴールドチケットになりそうです。

投稿: レオン・パパ | 2009年8月29日 (土) 20時09分

レオン・パパ様
「恐怖時代」という作品、存じませんでしたので、ネットで調べました。何度か上演もされているようですが、人物相関がどろどろややこしいですねcoldsweats01 でも歌舞伎向きだなあと思うし、確かに海老蔵、亀治郎というのは面白そうです。

建替え期間中のチケット、今から悩んでも仕方ないと思いつつ、今から戦々恐々でいます。3階席は平日でもきびしそう…。

楽しかった8月、私はまだ先があるんですよsmile

投稿: SwingingFujisan | 2009年8月29日 (土) 20時56分

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