« ラブ歌舞伎座・13(入れ替え) | トップページ | 楽しいセルフサービス・ビール »

2009年8月13日 (木)

納涼歌舞伎第三部

811日 八月納涼大歌舞伎第三部(歌舞伎座)
20
分の入れ替えの大混乱をかいくぐり、3階へ上がってみると、そこは比較的落ち着いていた。慌しいようでもけっこう間に合うものだと思ったが、ギリギリで遅刻してくる人もちらほら見られた。
09081301okuni 「お国と五平」
幕があくと、あたりは一面のススキが風に吹かれている。
始まって間もなく、ドンと揺れがきたので、ぞっとした。幸いすぐに収まったから安心したが、日本と言う国ではどこにいても地震のリスクから逃れることはできないので、覚悟はしておくべきか。
さて、この芝居、谷崎の作品で、描かれているのは武家の奥方の仇討ち。そういう時代なのに、内容は実に現代的である。友之丞(三津五郎)の言い分は、嫌われ者の鬱屈、ひがみ根性に満ち、弱いくせにしつこく相手の気を強引にこちらに向けようとする図太さを持ち合わせ、そしてストーカーの身勝手な理屈で相手を困らせる(絶対、お近づきになりたくないタイプだ)。友之丞は国を出奔する前も今もその本質はまったく変わっていない。
友之丞が命乞いするたび、ムシのいいことを言うたび、客席から笑いが起きる。そんなに可笑しいかなあ。いや、やっぱり可笑しいのかもしれない。身勝手な理屈に呆れて思わず笑ってしまったのか。こんなヤツがいつの世にもいるものだという可笑しさなのか。
私はといえば、さほど可笑しいとも思わず、三津五郎さんがあんまり上手なものだから、いやな男だと思いながら少し同情さえし始めている。しかも、悲劇の主人公であり、主従の固い絆で結ばれているはずのお国と五平の事情が変わってきた(2年も3年も若い男女が旅を続けていれば、ありうることだ)。
そうなると、お国は案外したたかな女だと思ったし、お国と五平の主張も友之丞の言い分も、どっちもどっちな気がした(いっしょにしたら五平に気の毒か)。それだけに、本懐を遂げることを大義名分にして自分たちの不義を知られている唯一の人物の命を奪ってしまえば、というラストは後味の悪さが残る。ただ、友之丞の死に顔が思いのほか安らかだったことに、やや救いを覚えた。
秋の寂しい風景に吹く風は荒涼として乾いているのに、そこに漂う空気はじっとり重い、そんな感じがした。

「研辰の討たれ」に共通するものがあるような気がした。
09081302enoki1 「怪談乳房榎」
昼の累ケ淵と違って、話の流れや怖さを味わうというよりは(怖くないんだもの)、勘三郎さんの早替り、本水を使った立ち回りを楽しんだ。
早替りは、たとえば料亭で蠎(うわばみ)三次が下男正助と入れ替わるために階段を降りながら着物を脱いでいるのが見えちゃったり、大滝の場では小屋みたいなところの奥で吹き替えと入れ替わる仕掛けが見えちゃったり、三次と磯貝浪江(橋之助、女みたいな名前だけど男)が争っているときに三次の鬘が落っこっちゃうというハプニングがあったり、そんなこともあったけれど、とにかく早くてビックリ。吹き替えと入れ替わるときなんて、一生懸命見ていたんだけど、全然わからなくてずいぶんだまされた。吹き替えは顔がけっこう見えたのだけど、遠いのと動きがあってどなただかわからずじまい。勘太郎さんがやっても面白いと思うのだけど。
芝居が終わった後、勘三郎さんが筋書きに出ていないもう一役・円朝で登場。納涼歌舞伎の口上のような感じだった。
09081303enoki2 面白いは面白かったけれど、全体に怖くなかったし、慌しい印象を受けた。
もっと色々書くことがあったのだけど、メモしなかったし、時間がたったら忘れてしまった。後日、もう一度見るので、そのときまた。

|
|

« ラブ歌舞伎座・13(入れ替え) | トップページ | 楽しいセルフサービス・ビール »

歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。やっとビールの美味しい夏が来た! という感じですね。
「お国と五平」、友之丞の台詞で笑いたくなるのは私わかります。人それぞれでしょうが、なんかねぇ、笑いでもしないとやってらんない、みたいな。だから小さく笑っても心地よくはないの。全くなぁ・・・と思いながら、でも実は後々までなんだか記憶に残ってしまうような気がします。
「乳房榎」は最後までやってくれないと、ほんと早替わりと本水の舞台に満足、ってだけで終わりますね。私も(2日めに見ました)、大滝の場の小屋での入れ替わりが残念、と思いました。他は見事にだまされちゃうんだけど。1階席だったから階段を降りながら着物を脱ぐなんて見えないし。
納涼歌舞伎、一応どの部もチケットは取っていたのですが、急に仕事が入ったりして、最悪この3部だけで終わるかも。ま、ちょこちょこwebをチェックしますわ。

投稿: きびだんご | 2009年8月15日 (土) 11時07分

きびだんご様
1年中beerの私ですが、やっとビールの旬(?)がきました!!

そうか、友之丞の台詞には笑うしかないか…なるほどね。心地よくない笑い、そう言われるとわかるような気がします。「お国と五平」のような芝居って、好き嫌いは人それぞれ、だけども誰の胸にも重苦しい何かを残す、そういう類の芝居なんでしょうね。

早替りは、よくできているなあと思うことのほうが多かったのですが、時々雑な感じがしちゃって。難しいものですよね、見るほうは勝手な要求を出しますから。

3部だけというのは残念です。ご無理なく観劇できるようでしたら、ぜひ1部も2部もご覧になっていただきたいわ~。

投稿: SwingingFujisan | 2009年8月15日 (土) 21時01分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1083822/30937848

この記事へのトラックバック一覧です: 納涼歌舞伎第三部:

» 怪異の世界#59・・・八月納涼大歌舞伎「怪談乳房榎」(歌舞伎座) [飾釦]
■日時:2009年8月12日8(水) ■劇場:歌舞伎座 ■原作:三遊亭円朝 ■出演:中村勘三郎、中村橋之助、中村福助、他 昨日の記事にアップのとおり、事前に桂歌丸の落語(CDで)を聞いておいた「怪談乳房榎」を歌舞伎座で見ました。その感想はというと、何よりも面白かったことですねぇ。歌舞伎を見た!って感じです。いい意味でカタルシス感もあるお芝居でした。話のテンポいいし、芝居の長さも集中力が持続できるころあいで丁度いい。話はもともと無理があるもののそれは歌舞伎なので許される?なぜこの三遊亭円朝の落語を歌... [続きを読む]

受信: 2009年8月13日 (木) 22時24分

« ラブ歌舞伎座・13(入れ替え) | トップページ | 楽しいセルフサービス・ビール »