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2009年9月27日 (日)

九月大歌舞伎夜の部・2

926日 九月大歌舞伎千穐楽夜の部(歌舞伎座)
09092704kanjintyo 「勧進帳」
見るたび同じことを言っているかもしれないが、「勧進帳」は何度見ても面白い。見飽きない。
太刀持ちの梅丸クンが凛々しい。舞台中央で富樫の口上がある間、右腕を肩の高さまで上げて長い太刀をもっていなくてはならず、そうとうキツいだろうなあと心配になったが、梅丸クンは爽やかな顔でぐらつくこともなく、しっかりと太刀を預っていたのが印象的だった。
「寄せの合方」は杵屋六三郎畢生の名曲と小山覲翁氏が言っていたが、まさにその通りだと思う(昨日はイヤホンを借りてみた)。父が勧進帳を大好きで、子供の頃からしょっちゅう聞いてきたこの曲が始まると、いっしょにメロディーを口ずさんでしまいそうになる。
幸四郎さんの弁慶は汗びっしょりsweat01の熱演。何回も見ている割に、私はどういう弁慶がいいのかというのはよくわからない。見るたびに「この弁慶はよかった」「イマイチだった」という感想をもつ程度だ。そういう意味で言うと、今回の弁慶は概ねよかったし、義経が見破られそうになって打擲するところでは思わず涙が出た。ただし、義経の後ろにまわって一礼するのはどうしても納得がいかない。弁慶の究極の苦渋を観客に伝えるという意味なのだろうかeye だとすれば、かえって逆効果な気がする。いくら様式的な、といってもそれでは富樫が気づいてしまわないか。いや富樫自身は見て見ぬふりをするかもしれないが、大勢の番卒の中の誰か、とくに義経を見破った番卒は見逃さないのではないか。な~んてことを考えちゃったら、私はそこで、一回引いてしまったdown しかしその後すぐに持ち直して涙を誘われたのは、さすが1000回以上も演じている幸四郎さんの力によるものか。
染五郎さんの義経は、はじめピンとこなかった。義経が花道の出で山を見上げる場面、あそこは杖を床からちょっと持ち上げる人と床につく人がいるでしょう。私は床についているのはあまり好きでないのだけど、染五郎さんはつけていたように見えて(確信はない)、そこからしてピンとこなかったのかもしれない。しかし無事安宅の関を越えたところで弁慶の手を取る段で、品位や主君らしさが見えてなかなかいいと思った。ここでも涙が滲んできたもの。
でも、なんてったって、一番は吉右衛門さんの富樫よsign03 品格、大きさ、冷静さと熱い気持ち、涙、どれも弁慶以上に胸を高鳴らせてくれた。しかし、吉右衛門さんの声は高いcoldsweats01
以下、おまけたくさんありますbleah

おまけ1延年の舞で、弁慶が後見から数珠をもらうところが2回ある。2回とも弁慶はその数珠を振り回す(?)のだけど、その時数珠が後見さんの顔を直撃することがあるんだそうだshock 今までそんなこと意識しなかったが、これからはそれが気になってしまうかも。今回の後見は錦弥さん。幸四郎さんとピッタリ呼吸を合わせていた。
おまけ2延年の舞の終わりのほうで滝の舞というのがあるが、それは後から付け足したものでオリジナルにはないそうだ。覲翁氏曰く、「体力がいるのでやらないことが多いのですが、今回は大サービスです」。これまで見たことがあるのかないのか、残念ながら未熟な私にはそこまではわからなかった。
おまけ3帰宅後、何となく以前に録画した勧進帳のDVDを見たら、それは奇しくも2階ロビーに昭和403月の七世幸四郎17回忌追善興行で、名優揃いの八代目幸四郎、二代目松緑、十一代目團十郎3兄弟が日替わりで弁慶と富樫を演じるというものであった(奇しくもというのは、今月の「勧進帳」が七世の没後60年にちなんだものであるから)。私が見たのは、弁慶・團十郎、富樫・松緑、義経・延若!! 深夜だったので途中でダウンしたけれど、これは貴重な録画だ。あとでゆっくり見直すつもり。
「勧進帳」はさよなら公演の間にもう1回か2回ありそうな気がするのだけど。とくに4月に成田屋さんで、それも親子が弁慶・富樫を日替わりもしくは昼夜交替でやってもらいたいなあなんて私は期待しているのだ。そこへもってきて、この昭和40年の公演sign03 日替わりだって可能なんじゃない。ぜひぜひ実現してほしいわ。

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

SwingingFujisan様
今晩は。歌舞伎座千秋楽夜の部、レポ楽しく拝読しました。勧進帳は吉右衛門が最高でしたね。私ももう一度見たかったですね。(来月の碇知盛、期待しています。)私の好みはセリフが高音の富樫です。その意味では松嶋屋も最高です。幸四郎の弁慶は、心理表現の面で非常に分かりやすい、いかにも幸四郎らしい弁慶だと思います。気になった点は、問答がセリフに覇気がなく失速寸前だったこと(普通、問答の部分はもう少し観客の手(て)が来なかったですかね。客席はシンとしていました。)吉右衛門が必死にフォローしている気すらしました。また、滝流し(今回はその一部だったよう)も、今の年齢で出すのがよいのか疑問です。体力がもっと充実しているときに見たかったと思います。(私は滝流しではっきり覚えているのは猿之助です。批評家筋にはくさい演技と悪評の弁慶でしたが、とにかく力一杯、滝流しのクルクル回るところは万雷の拍手でした。)ところで、染五郎の花道の引っ込みのご感想はいかがでした?
勧進帳は、やはり、もう一度はあるでしょう。おそらく、団十郎の弁慶でしょうが、仁左衛門の富樫、菊五郎の義経ならどんなにいいでしょう。

投稿: レオン・パパ | 2009年9月27日 (日) 19時24分

そうそう、梅丸丈、爽やかなお顔で、素晴らしい集中力でございましたね。音若は、梅丸丈の持ち役でございますね。あの富樫さまにしてこの太刀持あり!といった、こちらも「主従」にみえましたね。

三兄弟の名舞台、お羨ましゅうございます! 私も日替わり・役替わりの勧進帳、望む者のひとりです♪(11月の演舞場は、若手版でそれもアリ?…なんて思っていたんですが…ダメでした!)

投稿: はなみずき | 2009年9月27日 (日) 19時45分

日替わり・役替わりの勧進帳、いいですねぇ。
私は昭和52年に、吉右衛門さん・初代辰之助さん・十代海老蔵さんで「弁慶・富樫・義経」の三役日替交代を見ました。私の見たい配役の日のチケットを取ったことを覚えています。
今なら、染五郎、松緑、海老蔵、菊之助さん達ですかね。

投稿: とこ | 2009年9月27日 (日) 22時10分

レオン・パパ様
コメントありがとうございます。
幸四郎さんの弁慶はおっしゃるとおり、心理面がわかりやすいですね。弁慶だけでなく俊寛もそんな感じがします。弁慶については、わかりやすいのはいいのですが、ちょっとサービス過剰なんじゃないかしら、と思うのです。舞いながら一行に「早く行け」と扇で促すところも、ちょっと動きが大きすぎるのではないかなあ、なんて。
問答は、台詞が難しくて理解できませんので、私はぼんやり聞いておりますが、段々熱がこもってくるとわからないなりに拍手します。記憶に自信はないのですが、今回は2回ほど拍手があったのではなかったかしら。
滝の舞は「滝流し」というのですか。さよなら公演ということで幸四郎さんがサービスなさったのでしょう。私は初めてのように思いますので、見られてよかったです。猿之助さんの弁慶、見てみたいものです。
染五郎さんの引っ込みですが、たしかにそっけないほどさっさとしていました。色々考えましたが、幸四郎さんが義経を打ち据えるときに一礼するのがおかしいことを思えば、義経が富樫に一礼したのでは「見逃してくれてありがとう」があからさまになりすぎるかもしれないと自分なりに理由付けをしています。でも、ちょっとした心遣い(目礼)は確かに、見る側にとっては気持ちよくその場を見納めることができますね。

「勧進帳」は成田屋さんは間違いなくやると思いますが、やっぱり親子共演でしょうね。仁左様の富樫は見たことがないので、これも実現するなら嬉しいです。海老蔵襲名公演で團十郎さんの代役に立った三津五郎さんには、もう機会はないのでしょうかねえ。

投稿: SwingingFujisan | 2009年9月27日 (日) 22時46分

はなみずき様
コメント、ありがとうございます。
音若って、ただ太刀を持っているだけのようでいて、品も要求されるし、またちゃんと「帝」という言葉には頭を下げたりするし、そして何より、はなみずき様のおっしゃるように、富樫と「主従」であること--重要なお役だと思います。梅丸クンのきりっとしたお顔から富樫への敬愛が、こちらにも伝わってきて、いい「主従」に見えたのでしょう。

三兄弟の日替わり公演では、染五郎・萬之助時代の幸四郎・吉右衛門兄弟がそれぞれ亀井六郎と片岡八郎で出演していましたよ。

若手の「勧進帳」、役替わりも含めて浅草歌舞伎で期待してもいいかもしれませんねnotes  

投稿: SwingingFujisan | 2009年9月27日 (日) 22時51分

とこ様
コメントありがとうございます。
上演記録を見ると、昭和の時代には日替わり、役替わりというのはけっこうあったんですね。さよなら公演でも実現していただいて、満足して歌舞伎座を見送りたいものです。

とこ様がご覧になった昭和52年の勧進帳はまさに、花形ですね。平成の花形役者さんたちにも勧進帳に挑戦してほしいですわ。私は獅童さんが弁慶も富樫もできるくらいに成長してほしいと思っています。昭和40年の日替わりのときの義経は延若さんだったんですよ。ということは獅童さんは義経もできるかもwink 歌舞伎に専念して大いに勉強してほしいのになぁ。

投稿: SwingingFujisan | 2009年9月27日 (日) 23時04分

私も楽日観劇でした。
梅丸君よかったよかった!!本当に「行儀の良い」子ですね。
滝流しは猿之助さんのところはたっぷりとおやりになりますが、他の方はめったにやらないと思います。今回の高麗屋さんの心境をお聞きしたいですね。
SwingingFujisanさんも言うように心理面が分かりやすい反面で底を割ってしまう危険性があります。判官を打ち打擲する時にあんなにはっきり頭を下げてしまっては富樫に気付かれると思いますよ。見ていておやおやと思いました。ちょっと疑問です。

投稿: うかれ坊主 | 2009年9月28日 (月) 23時53分

うかれ坊主様
コメントありがとうございます。
まあ、うかれ坊主様も楽日をご覧でしたか。
梅丸クンの「行儀の良い」子という表現、ぴったりです!! 踊りも上手だし、先が楽しみです。
滝流し、その後、録画してあるいくつかの「勧進帳」を見ましたが、どれもやっていませんでした。そうなると、猿之助さんの「勧進帳」をますます見たくなります。歌舞伎チャンネルに期待しましょう。
高麗屋さんは、やはりさよなら公演用のサービスではないでしょうか。

あの、頭を下げる場面は、心で下げてほしいですよねえ。あんなに堂々とやられて富樫役の吉右衛門さんも困ってしまったのではないでしょうか。いつもあんな風でしたっけ…。

投稿: SwingingFujisan | 2009年9月29日 (火) 01時19分

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