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2009年10月18日 (日)

心に残る和のコラボ、「芯」

1017日 錦秋特別公演「芯」(ゆうぽうとホール)
中村屋兄弟の錦秋公演、今年は和太鼓と津軽三味線とのコラボである。昼の部は完売となっていたが、確かに大入り満員で、入場は行列に並んで5分かかった。
まずは太鼓。「序」「山幸」「天芯」「海幸」という演目は、組曲「澪の蓮」を今公演に合わせて再構成したものだそうである。舞台真ん中の大太鼓を林英哲が打ち始めると、空気がびんびん震えて、その気迫がホール真ん中あたりの私の席にまで伝わってくる。やがて英哲風雲の会の若い4人が桶胴太鼓を首から下げてこれに加わり、勇壮な演奏が繰り広げられる。
一糸乱れぬアンサンブルは音だけでなくパフォーマンスも力強く、体の奥にあるものを呼び起こすような深い響きを全身で伝えている。
こんなに後姿の美しい演奏風景はあるだろうか。こんなに後姿で魅せる演奏家はいるだろうか。英哲さんの後姿、そして4人の見事な音と動きに目も耳も釘付けになりながら、そのいっぽうで、これだけのレベルにもっていくにはどれだけの修練を積んだのだろう、普段どんなトレーニングをするのだろうなどとちょっと下世話なことを考えてしまった(体力がすごいんだもの)。
「澪の蓮」とは、1914年朝鮮に渡り193140歳の若さで現地で病没した林業技手浅川巧という人の人生をテーマにしているそうである。演奏を聴いただけではそこまではわからないが、太鼓の音が作り出す壮大なドラマが脳裏に海や山の風景を映し出す。素晴らしかった。
次は高橋竹童の津軽三味線。曲は「津軽じょんがら節」「郷愁」「おわら風の盆」「即興曲」。
尺八とともに、あるときはやさしく、あるときは力強く、1本の三味線からこんなに多彩な音が出るとは驚いた。撥のお尻(?)で弾いたりもしていた。
糸を押さえる左手指の動きがものすごく早い。ロックのギタリストみたいだけど、ギターと違って棹が細いから、指が平たく広がるのではなく、立つというか丸めた感じで動かしている。指の丸め具合と動きの早さから、ピアノの鍵盤の上を滑る指を思う。歌舞伎の三味線では気がつかなかった感覚だ。しかしこんなに早い撥さばきなのに、曲には悠久さを感じた。
「おわら風の盆」は胡弓での演奏で、三味線とは違ってゆったりと哀切な、懐かしさを覚える曲だった。
三番目は勘太郎・七之助の「二人椀久」。これ、苦手演目の1つで、誰が踊ってもダメだcoldsweats02 今回もかなり頑張ったけれど、ところどころ瞼が落ちてくるのを止められなかった。七之助さんが儚げで実にきれい。勘太郎さんの動きには固さが感じられた。悪い意味ではない。固さというと語弊があるな、わりときびきびしていたような気がしたのだ。ただ、半分意識を失っていたから、とんでもない感想かもしれない。「船弁慶」だって序の口、まだまだ乗り越えるべき壁はあるものですなぁbearing
このあと、10分ほど4人のトークがあって(後述)、最後はコラボレーション「芯」
太鼓演奏、三味線演奏に続いて、勘太郎さんが力強い素踊りを見せる。鋭い掛け声を発し、高いジャンプを入れた躍動感に溢れる踊りである。太鼓の音だけで踊るそれは、人間の原点にある荒々しさ(いい意味での)や力強さを感じさせる。勘太郎さんの踊りが終わると七之助さんが胡弓に合わせて舞う。やはり素踊りでありながら、巫女が舞っているような印象を受けた。先ほどの荒々しさ・力強さとは違い、人間のもつもう1つの面、柔らかさ・穏やかさを感じる。七之助さんの動きはあまりになめらかで、七之助さんが舞台を右から左へと動くとまるで舞台そのものが回っているような錯覚を覚えた。そして、面白いことに、七之助さんに重なって振り付けの勘十郎さんの姿が見えるような気がした。
ソロの踊りが終わると、兄弟揃って鈴と扇をもって舞い、また演奏も全員のコラボとなる。この踊りが五穀豊穣を祈り、神に捧げる踊りだということが強く伝わってくる。人間の営みの基本は農業なんだと思った。
素晴らしい芸術を見た、聞いた。
<上演時間>太鼓・三味線50分(13001350)、休憩15分、舞踊30分(14051435)、休憩10分、トーク10分(14451455)、休憩15分、コラボ30分(15101540
という予定であったが、実際はトークが始まったのが1451。コラボは1520から20分間であった。

トーク
本日の公演だけのサプライズだそうだ。たしかにプログラムにはのっていない。全員スーツ姿で登場。中村屋兄弟は10分で化粧を落とし、着替えてきたことになる。司会の女性(お名前、聞き損ねた)がそれぞれにインタビューするのだが、勘太郎さんに対しては独身最後の舞台だとか結婚にからめたことばかりで、あまり大した話は聞けなかった。ここ数年充実していて、今年はとくに新しいものも含めて色々演じることができた。予習と復習の年であった、とのこと。
七之助さんは、この会で自分たちは出来たものをやるだけだが、他の人たちは1から作り上げているのだから自分たちが一生懸命やらなくてはいけない。今年を振り返ると、1月から大作を演じ(道成寺)、鷺娘、藤娘を踊り、雪姫、桜姫もやった。いつものカンパニーから出て、次の月は別のカンパニーでできたのは大きい(五右衛門のことでしょうか)。
英哲さんは白いスーツで意外にも小柄(ガッチリはしているけど)。年齢は一番高く子供のような年齢の人たちとの共演なのに(英哲さん、お年はなんと57歳。ビックリした。40代前半から半ばくらいかと思っていた)、こういう公演がよく2回も組まれたものだ(どの会場も1日2回みたい。しかも16、17、18日は移動の連続で厳しい)。演奏中はいい状態のときは何も考えない。しかし舞台だから間違えないようになどと段取りは考えている。とくにこの後の「芯」は心配りをしながら演奏する。
竹童さんは、このトークが一番緊張するコーナーだそう。こういう公演で怖いのは慣れで、中日の今日あたりが危ないんです。お嫁さん募集中だそうですwink
カーテンコール2回。アンコールを望むところだったが、そうはいくまい。心に残る見事な舞台だった。

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コメント

SwingingFujisan様
 こちらにもコメントします。中村屋兄弟のコラボ楽しまれたようで、なによりです。私は和太鼓は昔、鬼でこ座の国立劇場公演を見たきりですが、迫力(確かに肉体美も)が凄いですよね。その中に林英哲さんもいたのかもしれません。
 ところで、「二人椀久」は苦手ですか?。私は富十郎、雀右衛門で何度か見て、好きな演目です。「按摩けんびき」のくだりの早間の踊りは、日本舞踊らしくない、吾妻徳穂の斬新な振り付けが素晴らしく、いつも、陶然と見ていたのですが・・・・。

投稿: レオン・パパ | 2009年10月18日 (日) 13時57分

レオン・パパ様
こちらにもありがとうございます。
太鼓と歌舞伎の共演といえば、2年前の「アマテラス」が記憶に新しいのですが(とはいえ、もう2年も前になるんですねえ)、太鼓は楽器の原点という感じがして、聞いていると体内から何か湧き出してくるような気がします。
かつては太鼓といえば鬼太鼓座(私の知識の中では)、その中に英哲さんもいらしたのですね。
吾妻徳穂さんの「二人椀久」は人気が高いようですね。私は吾妻さんの振り付けでは見ていないと思いますので、それで眠くなるのかもしれません。でも次回の機会には、どなたの振り付けであろうと、もう少しちゃんと見ることができるよう、体調も心構えも整えておかなくては。眠ってしまうともったいないですものね、とくに今回のように1度しか見ることのないものは。

投稿: SwingingFujisan | 2009年10月18日 (日) 16時15分

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