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2009年10月14日 (水)

歌舞伎座夜の部、ざっくり感想

1012日 芸術祭大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)
先日カギのトラブルでフイにしてしまった夜の部。多くの皆様の評判を伺うにつけたまらなくなって、3Aに戻りが出たのを思わずぽちっ。チケット代が倍になっちゃうから松也・巳之助トークイベントの後、幕見に並ぶつもりだったのだけれど、他で節約しよう。
で、夜の部はもう一度見る予定だし、今は仕事をしなくちゃいけないので、とりあえずな感想を。
「渡海屋・大物浦」では、富十郎さんの大きさ、風格、情が秀逸で、この男になら天皇を任せようという知盛の気持ちを、見ているこちらも共感できる義経であった。知盛と目と目で通じ合う情、義経の「さらば」に込められた万感の思いに泣いた。段四郎さんの弁慶も、身体的には小柄ながらそれを上回る大きさと情を感じさせる。最後のホラ貝がとくに胸に響いた。段四郎さんの弁慶とはこれまで考えたこともなかったが、それは私の認識不足であったことを思い知らされた。
吉右衛門さん、玉三郎さん、歌六、歌昇さん、溢れる思いはこの次にとっておく。
ともかく、舞台にずっと引き付けられ、約2時間という長さをまったく感じなかった。
「吉野山」の菊五郎さんは色っぽくて、胸がきゅんとしてしまった。松緑さんの逸見藤太がまた素敵に愛敬があって踊りも楽しい。忠信の投げた笠をちょっと飛んで見事にキャッチ。
「川連法眼館」は、もう菊五郎さんの大奮闘に尽きる。素早い動きは難しいものの、愛敬もあり、哀れな子狐の両親への思いを体全体で表していて感動した。
しかし今日の客席はよく笑いが起こっていた。①本物の忠信が詮議を受けようというときにもう1人の忠信が現れたとの申し次に笑い、②忠信が2人いるこを不審がる義経に笑い、③後から来るはずの忠信が既にそこにいることに気づいた静に笑い、④「抜け駆けした」と詰る静に笑い、⑤鼓に合わせて動く狐に笑い、⑥刀を突きつけられて出た狐言葉に笑い、等々。今日の笑いは全然いやじゃなかったけれど、いつも、そんなに笑ったっけ。
時様は、私にはやっぱり女方のほうが合うような気がする。
<上演時間>「渡海屋・大物浦」114分(16301824)、幕間30分、「吉野山」50分(18541944)、幕間15分、「川連法眼館」70分(19592109

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

夜の部の感想、拝見しました。同感です。私も、今回はもう一度見たくなりましたが、スケジュールが合わず、じっと我慢です。若い頃とは違い、同じ舞台を2回みることはなくなってしまいました。吉右衛門の知盛、この前は神がかりとコメントしましたが、「歌舞伎の神が乗り移った」といったほうがいいくらいの素晴らしさでした。玉三郎については、改めてのFujisanさんのコメント楽しみにしています。
 菊五郎の狐忠信、情味があり、なかなか、よかったですね。先日の林檎さんのコメントで、狐言葉が際立たないのが音羽屋型かとの疑問でしたが、音羽屋とは言わず、従来の東京の歌舞伎役者の型はこのような演じ方だったと思います。一方。猿之助は狐言葉を際立たせる演じ方ですが、これは、別に珍奇な型ではなく、本行(文楽)を習ったものだと思われます。私は、猿之助の演じ方の方が個人的には好きですし、けものと本物の人間忠信との差異が明確で戯曲の奥行きがでていた気がします。話が飛びますが、海老蔵が猿之助に教えてもらったというわりには、狐言葉が不自然だったのが残念です。ただし、最後の宙乗りは、そんな不満をすべて帳消しにするすばらしさ(スターのオーラ全開)でしたね。

投稿: レオン・パパ | 2009年10月16日 (金) 22時01分

レオン・パパ様
こちらにもありがとうございます。
正直「義経千本桜」や「仮名手本」は見飽きた感もあるのですが、実際に見てみると、何度も上演される理由が分かるような気がします。そして自分自身も又見たくなる。役者さんがいい芝居をしてくれると、ますますそう思います。吉右衛門さんの知盛は、本当にそこに知盛が甦ってきたようでした。
玉三郎さんの典侍の局で、政岡と鶴千代を思い出されたとのことでしたが、納得です。

狐言葉の件、ありがとうございます。私自身は菊五郎さんの狐言葉がとくに際立たないとは思わなかったのですが、じゃ他に誰の忠信を見ただろうと思い返すと、右近、海老蔵、歌昇さんだけなのです。ですから、澤瀉屋型以外との比較ができませんでした。なるほど、澤瀉屋の狐言葉が文楽に近いのですね。
さすがに右近さんの狐言葉は身についていた感じがしましたが、海老蔵さんのは確かにちょっと違和感ありました。でも初演はとても感動しましたし、2度目の忠信もそのオーラに興奮しました(まったく稀有な役者さんですよね)。ただ、私は歌昇さんの忠信が好きだったなあ。あ、私も話が飛んでしまいました (^-^;

投稿: SwingingFujisan | 2009年10月16日 (金) 22時51分

SwingingFujisan様、誘惑に負けてのカンゲキは大正解だったようですね♪いずれ「たっぷりとっっ」な感想を楽しみにしています。

レオン・パパ様、狐言葉の件ありがとうございます!
私は映像も含めて澤瀉屋型しか見たことがなかったので、今回のようなのが本来多かったとは知りませんでした。菊五郎さん自体は大好きなのですが、私も狐言葉を出す演技の方が狐の親を思う切なさや失った淋しさが「ケモノながらもある」という雰囲気が出ていいなと思いました。海老蔵がやった時は2階桟敷にいて目の前を宙乗りで通っていく姿が本当に「歓喜に打ち震える狐」に見えましたshineが、確かに狐言葉は惜しかったですね。色々な表現力を要求されてとても難しそうだとは思いますが。。。
そういえば、歌舞チャンで獅童がやっているのも見たような気がします(それもやはり猿之助さんと同じ演じ方でした)。とても好きなお役の一つなので、SwingingFujisan様オススメの歌昇さんのも見てみたいです。
あ!私も脱線coldsweats01

投稿: 林檎 | 2009年10月17日 (土) 12時45分

林檎様
楽しいお話、ありがとうございます。
狐言葉は、私自身はあまり気にしていなかったのですが(だから菊五郎さんの狐言葉も、そういうものかなと…)、こうしてみると、とても大事な要素なんですね。

獅童さんは、平成15年の浅草歌舞伎でしょうか。
歌昇さんの忠信はちょっと地味でしたが、とても実があって心が伝わり、感動しました。
海老ちゃんは、私もかなり近くで宙乗り見ましたよ♡
歌舞伎チャンネルで猿之助さんの忠信を見たい!!

投稿: SwingingFujisan | 2009年10月17日 (土) 18時02分

SwingingFujisan様
 「四の切」に関し、私の下手な説明が誤解を与えたのではと思い、再度コメントさせてください。猿之助が宙乗りを含む、ケレン味たっぷりの演出で人気をはくする以前は、音羽屋の演出が正統として君臨していました。五代目菊五郎が明治時代に当たり役として、それが六代目、二代目松緑、先代勘三郎へ受け継がれ、七代目、当代勘三郎につながるわけです。明治以降の東京の歌舞伎の特性として、一旦正統として位置づけられた演出は、それを教えてもらった場合はもちろん、それを当たり役とした俳優(家)への遠慮から、なかなか、新しい演出をとりにくい事情があります。これは、進取の気風を重んじる、関西では全く異なり、新しい工夫をしないのは、その俳優の怠慢とさえされたようです。猿之助系列以外のその他の俳優(富十郎、団十郎等)は、二代目松緑に教わったとういこともあり、広い意味の音羽屋型に含められる、同様な演出方法をとっているのです。
 音羽屋の「四の切」と同じような意味合いを持つ典型的な演目は、やはり音羽屋の「忠臣蔵、六段目」があります。あの浅葱色の紋付を着る勘平の演出は、東京系では、他の演出はいわば禁じ手、不可侵の演目です。
 話を「四の切」に戻すと、海老蔵が猿之助のやり方を学んで出し物にしたのは、団十郎が音羽屋型だっただけに、団十郎、海老蔵両人の大英断だったと思います。狐言葉でとかく言われた海老蔵ですが、歌舞伎界の慣習を打破する、海老蔵のチャレンジ精神に私は頭が下がる思いです。
(また、長々とコメントして申し訳ありませんでした)

投稿: レオン・パパ | 2009年10月18日 (日) 13時44分

レオン・パパ様
貴重なお話をありがとうございます!!
大変勉強になりました。私は自分の感覚でただミーハー見るばかり、知らないことがたくさんありますので、レオン・パパ様のような方からこういうお話を伺うのはとても楽しみです。
東京のほうが保守的(という表現は当たっていないかもしれません。守るべきものを守るのはいいことだと思いますし)だというのはちょっと意外な気がしました。
その東京も、明治以来の正統は正統として、新しいことをしようという若手のさまざまな試みが加わって、変わってきているのではないでしょうか。
それにしても、海老蔵さんの「四の切」にそんな事情があったとは知りませんでした。海老蔵さんもますます好きになったし、歌舞伎もますます面白く感じられるようになってきました。

投稿: SwingingFujisan | 2009年10月18日 (日) 15時41分

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