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2009年11月21日 (土)

見ごたえあった国立劇場・3

1119日 「外郎売・傾城反魂香・大津絵道成寺」(国立劇場大劇場)
「大津絵道成寺」
一巴太夫、里長、藤十郎と常盤津、長唄、歌舞伎3人の人間国宝が一つの舞台に乗っているこれも贅沢。皆さん、お若い。とくに藤十郎さんの若さは、図抜けている。
演目は初見である。藤娘と娘道成寺の合体といったらわかりやすいだろうか、かえってわかりにくいだろうか。
スッポンから登場した藤娘は時に早替りで、鷹匠→座頭(犬とのからみ)→藤娘(「恋の手習い」の手ぬぐい踊り)→船頭→藤娘(花笠。「山づくし」。引抜きあり)と変化するのが楽しい。船頭は、花道から傘をさして走ってきた吹替えと藤十郎さんが一瞬にして入れ替わる。思わず「おお」と感嘆の声が出た。演奏も常盤津、長唄の掛け合いがあったりして楽しい。藤十郎さんは藤娘のときはいかにもあでやかだけれど、男性として踊るときはそういう藤十郎さんとは全然別人のようで、演じ分けが見事だった。鐘に飛び込んだ藤娘は鐘が持ち上げられると鬼の形相に変わっている。女方の役者さんがする鬼や蜘蛛の化粧を私はあまり好きではないが、藤十郎さんの化粧もイマイチな気がした。
09112001tojuro この「道成寺」には、大津絵に描かれている人物(犬も)が全部登場するのだそうだ。聞いたか坊主にあたる外方(げほう)と唐子が剽軽で面白い。外方の市蔵さんが藤娘を見て「このたび文化勲章を受けた坂田藤十郎によく似ている」と言ったのは客サービスとしても嬉しい(どこで文化勲章のことが出てくるかなあと期待していたから)。
ここでもお目当ての亀鶴さん、評判どおりの素敵な弁慶だった。逸見藤太が軽く入ったようなところもちょっと見せて、荒事の弁慶とはかなり違う。この弁慶はさほど体が大きい必要はなさそうだが、どちらかといえば華奢で小柄な亀鶴さんがけっこう大きく見えた。槍奴たちの「とうづくし」を時々頷きながら聞いていた亀鶴さん、最後に「やっと終わったとうづくし、聞いてくれてありがとう」と「ありがとう」のところを可愛らしく言うのが愛敬たっぷり。いかにも大津絵の弁慶といった感じで微笑ましい。
軽妙さと勇壮さとがうまくミックスされた弁慶は亀鶴さんのニンにぴったり。そして亀鶴さんという人は、いつも形がきれいだなあと感心する。
翫雀さんが矢の根五郎で登場して最後を締める。女方から二枚目、おバカな公家、荒事までこなす翫雀さんは器用な役者さんだ。器用貧乏になっていないのがいい。
大津絵は、浮世又平が始めたという説があるそうだ。「傾城反魂香」にも又平が大津絵を描いていたことを思わせる語りやセリフがある。そして、「外郎売」と矢の根五郎は曽我五郎。面白い演目の組み合わせだと思った。3演目あわせて、見ごたえ十分であった。
<上演時間>「外郎売」35分(12001235)、幕間30分、「傾城反魂香」85分(13051430)、幕間25分、「大津絵道成寺」60分(14551555

09112002doncho おまけ1幕間に緞帳の紹介をしていた。歌舞伎座は絵のタイトルと作者、提供者等を紹介するだけだが、国立では絵の内容も簡単に説明していて興味が湧いた。ただ、そのアナウンスの声があまりにやさしく穏やかで、幕間のざわめきにかき消されてしまいがちで、よく聞き取れなかったのが残念(私の耳が悪いせいかも)。
おまけ21階ロビー奥で小田原の物産展をやっていた。みかんがおいしそう。梅干が安い。人気はういろうのようだった。私は重い荷物をもっていたので、目で楽しんだだけ。

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コメント

おひさしぶりです。 
初日に舞台で亀鶴さんが倒れて救急搬送されたと聞き、また、日経新聞夕刊11月11日の舞台評論でべた誉めだったので、23日のチケットを用意していたにもかかわらず、14日発作的に行ってきました。。。。
団十郎様 外郎売 良かったわー(*゚▽゚)ノ
どの演目も死ぬの殺すの首切るのがなく、特に大津絵道成寺まで見せてもらって、初芝居みたいなおめでたーい気持ちになりました。 

あさって、予定通り、また行く予定です。藤十郎様の「文化勲章!」に続いて、団十郎様には「成田屋さん おめでとう!」の声がかかっているとか。。。
ますます嬉しい今月の国立・・・

投稿: 八幡屋贔屓 | 2009年11月21日 (土) 18時05分

八幡屋贔屓様
お久しぶりです。コメント、ありがとうございます。
初日に亀鶴さんが倒れられたと聞いたときにはどうなることかと心配で、翌日国立劇場に電話して状況を確認してしまいました。休演されることもなく、翌日はもう無事にご出演なわっているとのことで、本当にほっとしました。私もすぐにでも飛んで行きたかったのですが、予定通り19日に見てきたわけです。
日経新聞で亀鶴さんベタ誉めって嬉しいです!!

そういえば、今月は演舞場は殺し、歌舞伎座は切腹に仇討ちという中、国立は大らかで、ほのぼのとしたお目出度い気持ちになりますね。

團十郎さんへの掛け声、私の行った日はまだありませんでした。その日の朝、突然出てきたニュースでしたから。23日にはそういう空気も楽しんでいらっしゃってくださいね。私も2度見たいと思った国立でした。

投稿: SwingingFujisan | 2009年11月21日 (土) 21時24分

SwingingFujisan様
 ここにもコメントさせてください。
 亀鶴の演技よかったですね。ともかく、Fujisanさんは萬次郎とか亀鶴とか、どちらかという玄人ごのみの優をしっかり評価されるのはさすがですね。亀鶴は富十郎の甥ですが、お父さんの先代亀鶴は、不遇の人でした、殆ど良い役では見ていません。ただ、二代目雁治郎は関西成駒屋一門の一員として可愛がっていました。今回の国立の二役、それほどいい役とは思えませんが、何とも言えずいいなと思わせました。八幡屋贔屓さんのようなちゃんとしたファンがおられるのもなるほどと伺わせる役者ですね。本当に他のいい役がつくといいですね。

投稿: レオン・パパ | 2009年11月21日 (土) 22時13分

レオン・パパ様
ありがとうございます、そうおっしゃっていただいて面映い気持ちです。萬次郎さんは声のよさと、素顔と舞台の上のお顔のギャップで注目しているうちに好きになったのですし、亀鶴さんは浅草歌舞伎できわめてミーハー的に好もしく思った、というのがきっかけなんですもの。
富十郎さんの甥という血筋ながら国立で勉強なさった(浅草のお年玉ご挨拶で、突然ひょいっとトンボをきるのが、なんともいえずステキです)のを不思議に思っておりましたが、それもお父様の不遇を見ていらしたからなんでしょうか。
なかなか大きな役がつかなくても、地道に着実に力をつけてこられた亀鶴さんを、これからもますます応援したくなりました。

投稿: SwingingFujisan | 2009年11月22日 (日) 01時43分

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