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2009年11月 1日 (日)

舞台が劇場に、そして泥まみれで:真田風雲録

1031日 「真田風雲録」(さいたま芸術劇場)
09110101sanada_4 蜷川幸雄が立ち上げた「さいたまネクスト・シアター」という若手俳優養成プロジェクトの公演である。それだけなら見るかどうか迷ったかもしれないが、演目の「真田風雲録」に惹かれた。真田十勇士の活躍には子供の頃けっこう夢中になった思い出があるから。もっとも、ここに出てくる真田十勇士は、そういうきれいごとの活躍ではなく、人間くさい、さまざまな悩みや希望を抱えた若者であった。
昔読んだ小説や漫画と大きく違うのは、霧隠才蔵をお霧という女性にして、猿飛佐助への愛に悩む設定にしてあったこと。そういう設定自体は目新しいことではないが、それによって、仲間のうちに不協和音が流れたりして新たなドラマが生まれることになる。
また佐助は、人の心が読めることで苦悩する。お霧の愛に応えたとしても、人の心が読めることを知っているお霧とどうやってその愛を貫けるのか。だから人は愛せない。人の心を読むことは、真田軍の戦術にとって重要なものであるけれど、佐助にとってそれは苦痛でしかなくなる(それって筒井康隆の七瀬と共通するじゃない)。
若い俳優さんたちはそれぞれの思いのたけをよくぶつけていたと思う。中で、私が注目したのは、豊臣秀頼の鈴之助、千姫の春木美香、大野修理の遠山悠介の3人。とくに千姫の春木美香は、これまでの千姫のイメージを覆す、かなり太めでそれほど美人というわけではないけれどとても存在感があって、運命に呑み込まれるのではなく運命を呑み込むような大きさと人間としての可愛らしさがあると思った。
大勢の若い俳優にまじって、ベテランがゲスト出演している。横田栄司(真田幸村)、原康義(織田有楽斎)、山本道子(淀君)、妹尾正文(木村重成)、沢竜二(大野道犬)の5人。緩急の呼吸や存在感はやはり全然違うものがある。カーテンコールで、最後に登場した5人が若手を前面に押し出して自分たちは後ろに控えていたのが、このプロジェクトにふさわしい気がした。

この芝居でもう一つの楽しみは、インサイドシアターという方式。コクーンの「桜姫」や日生の「ジェーン・エア」のように舞台上に客席を作ったのかと想像していたら、ぜ~んぜん違った。通常の客席と舞台の間に大きな開閉式の壁を設え、舞台と客席を隔離する。そして舞台上に敷居で囲った四角形の舞台を作り、その三方を囲んで階段式の客席が置かれている。私は舞台正面、つまり通常の舞台なら一番奥、通常の客席と相対する側の席であった。まさにインサイドシアター、舞台上に劇場ができていたのだ。
したがって、客席と舞台の距離は人1人が通れる程度の通路があるだけ。客席の最前列は舞台と同じ高さ。俳優を至近距離で見ることになる(横田栄司さんをあんな間近で見られるなんて!!)。
もっとすごいのは、「真田風雲録」が演じられる舞台が泥でできていること(1.7トンの泥が使われているらしい)。座席に黒いビニールシートが置かれていたので水でも使うのかと思ったら、泥とは予想外であった。とくに最前列の人は首から下をすっぽりシートで覆わないといつ泥が飛んでくるかわからない。役者さんはもちろん泥まみれ、横田さんも当然泥まみれ(鎧も鬘も泥だらけで管理が大変そう、なんて現実的なことを考えてしまった)。
しかし、当時はちょっとでも雨が降れば、道路でも庭でも何でもそういうぬかるみになったんだろうから、変わった設定というよりはリアルさが感じられて、これはよかったと私は思う。
なお、劇中時々客席との境の壁が開いて、4人のミュージシャンが登場する。朝比奈尚行作曲によるこの音楽演奏はスパイス的に効いていて、これもよかったと思う。
そうそう、あと、舞台両側情報に、場のタイトル等が電光掲示板で表示されていた。井上ひさしの時代物なんかでよく見かけるような。こういう作品ではこの表示はありがたい。
<上演時間>195分(18001935)、休憩15分、第28019502110

おまけ:開演前、劇場外の地下通路を歩いていたら、目の前に蜷川さんが!! 1人でぽつねんと立っていらしたので、思わず声をかけそうになって、やっぱり怖いとやめてしまったcoldsweats01

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