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2009年11月18日 (水)

花形歌舞伎昼の部

1117日 花形歌舞伎昼の部(新橋演舞場)
「盟三五大切」
仁左様の凄まじくも美しい源五兵衛を見てからもう1年経つのか、と驚いた(つい、この間のような気がする)。というか、あれから1年後に若手が「盟三五大切」を演じることに感慨を覚えた。はっきり言って、オヤジ様世代はうまかった、深かった、と思った。年季も違うし、それは当然だろう。だから、どうしても比較をしてしまいがちな自分をたしなめながら、初めての芝居として見るようになるべく心がけた。すると、若手の真摯な挑戦、思いが十分に伝わってきたし、何より物語がとてもわかりやすくて、物語が進行するにつれ、どんどん面白くなっていき、終わったときには「とてもいい芝居だった」と満足した。
菊之助さんは初登場の第一声がおとうさんにそっくりだった。その後も最初の一言が似ていると思うことが時々あった(それから、弥助が御用金を盗んだ犯人だと知ったときのセリフにちょっと「十二夜」主膳之助が入っているように感じた)。それにしても菊ちゃんの本格的立役(と言っては語弊があろうが)は初めてではないだろうか。見る前にもっていた危惧は払拭。早くに勘当されたというワルぶりはあまり感じられないが、方法は間違っていても親に認めてもらいたいという気持ちが伝わってきて、私は主役3人の中でこの三五郎が一番好もしいと思った。
亀治郎さんの小万は、佃沖や、深川大和町の場では色気があまり感じられず、ちょっとピンとこなかった。佃沖での三五郎との濡れ場も全然ぞくっとこなかったし(この濡れ場が一番色っぽかったのは、仁左様と時様のコンビだった。と言っても、ほかに見たのは菊五郎さんと時様のコンビだけだけど)。う~ん、なんとなく乗れないなと思っていたら、後半、俄然亀ちゃんがよくなってきた。思うに、前半のように源五兵衛をだますことに後ろめたさを感じているような、そういう女は亀ちゃんに合わないのではないだろうか。亀ちゃんが活きるのは、良くも悪くも知性を働かせる女、あるいは一途な思いに燃える女、つまりどちらも真紅の色を帯びた女なんだと、私は思っている。前半の小万にはそういう赤さが感じられないので、亀ちゃんの魅力がはっきり伝わってこなかったんじゃないだろうか。でも、ひとたび赤くなった小万の亀ちゃんは本当に素敵だった(殺される場面の切なさに「女殺油地獄」を思い出した)。
追記:亀ちゃんがよくなってきたのは、もしかしたら、深川芸者から女になったからかも。深川芸者を演じようとする亀ちゃんより、おろくという女になりきった亀ちゃんがよかったのかもしれない、なんて後で思った。

染五郎さんの源五兵衛は、ぞっとするような色気とか凄みとか陰とかいう面に物足りなさを覚えた。大事な百両を小万身請けに差し出すあたり、この男ならそうするだろうと納得したが、それは「封印切」の忠兵衛を思わせるものがあり、それでいいのかどうかはよくわからない。染五郎さんはよく言われるように、線が細いのかもしれない。それと、染五郎さんの本質は明るさなのかもしれない。と、色々言ったが、この源五兵衛、私は決して嫌いではない。
意外なことに、家主の時の染五郎さんに時々幸四郎さんが重なって見えた(なぜ?なぜ??)。

もう1人、愛之助さんの八右衛門が悲しくてよかった。花形としてちょっともったいないような気もするが、愛之助さんはこういう役もできるんだ、とあらためて認識した。
そのほか、脇を固めるベテランがよかった。とくに、三津之助さんの酔っ払いの演技が自然で、好きです。
松也クン、梅枝クンは、せっかく持っていったオペラグラスを、メガネもオペラグラスも忘れてきたという友人に貸したため、顔がよく見えず、悔しい思いをした。諸々含めてもう1度見たい気持ちは強いけれど、どうしてもスケジュール入れられない。
「弥生の花浅草祭」
三社祭の山車人形に魂が入って踊りだすという形で、愛之助さんと松緑さんがそれぞれ四変化を見せる。「神宮皇后と武内宿禰」、「三社祭」、「通人・野暮大尽」、「石橋」を踊り分けるのだが、どれも楽しめた。「三社祭」は大好きな踊りだし、きびきびとメリハリのある善玉・悪玉の動きが本当に楽しかった。通人と野暮大尽の愉快なやりとりの後、大薩摩が入って期待の「石橋」。静謐で勇壮で、とくに二畳台での毛振りは見事だった。2人が毛を振っている間拍手が鳴り止まない。松緑さんの勢いのある美しい毛振り、愛之助さんは途中少し疲れが見えたようだったがすぐに持ち直し、松緑さんに負けず勇壮に毛を振る。2人のその姿にただただ感動して、涙が出そうになった。
終演後、あちこちから「よかったね」「これを見たかったんだ」「素晴らしかったね」と声が聞こえてきて、私もその一言一言に心の中で頷いたのでした。
でも、どうして、11月に「弥生」なの?
<上演時間>「盟三五大切」序幕・二幕目75分(11001215)、幕間30分、大詰80分(12451405)、幕間20分、「弥生の花浅草祭」45分(14251510

おまけ:舞台写真がでていたけれど、今後の出費を考えてひたすらガマン。筋書きも写真入りが出るまで、と堪えた(19日に出るそうです)。

091118kyuen 権一さん、心配です。お大事に。



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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

おはようございます。観劇記、待ってましたッgood
私はこの花形・昼の部を4日に見たので、もう2週間ほども経つのですわ。序幕で乗れなくて(正直、エッという思い)、熱くなれないまま・・・勿体ないことをしました。皆様の感想などを伺うにつけ、もう一度きちんと見たいもの、とグジグジ思ったりもしていましたが、やはり無理のようです。Swingさまのレポでいろいろ思い出して、我慢しますcoldsweats01
松緑さんが今月もよかったと思うので、夜の部もお楽しみに。そして、愛之助さんの「石橋」は南座でまた見ることができそうですnotes

投稿: きびだんご | 2009年11月18日 (水) 09時22分

こんにちは!
わたしが「石橋」で涙が出た気持ち,おわかりいただけましたでしょうか…。
そして三度目の昼の部に行きたい気持ちが。

いつもわたしは愛之助さんがいるとそっちばっかり見てしまうのですが,
今回は松緑さんの美しい毛振りに見入ってました。
いや,愛之助さんだってきれいに振ってるんですよ!でも松緑さんのはさらにきれいでしたよね。

残念ながらあとはもう楽日の夜(しかも仕事があるので遅刻sweat02)を残すのみですが,
最後まで存分に楽しみたいと思います。

投稿: あねご | 2009年11月18日 (水) 12時21分

きびだんご様
ありがとうございます。
多分、日を追うごとによくなっていったんでしょうね。私は後半で見て正解だったかもしれません。ただ、序幕はやっぱり私も乗り切れませんでした。どうしても粒が小さく見えてしまうのです。目と脳がだんだん慣れて、登場人物に思い入れができてきたり、客観的にもよく見えてきたような気がします。
きびだんご様もスケジュール、ぎりぎりですか。私は先々のmoneybagを考えて、1回で満足することにしようと決意しながら、未だにグジグジ悩んでいます(特に夜は千穐楽の前に一度見ておきたい…)。
松緑さん、最近とってもいいですよねえ。きびだんご様もたしか最近の松緑さんご推薦でしたよね。和尚吉三をとても楽しみにしています。

南座か。いいなあ。今度は翫雀さんとのコンビですね。でも2カ月続けての毛振りは大変そう。ラブリン、がんばれ!!
南座のレポ、よろしくお願いいたしますね。

投稿: SwingingFujisan | 2009年11月18日 (水) 20時08分

あねご様
こんばんは。
もちろん、ですよ~。「石橋」を見ながら、ずっとあねご様のことを思っておりました。ああ、これね、これね、あねご様のお気持ちが実感できる、私も涙が出るわ、って。本当に感動しました。
松緑さんの踊りはメリハリがあって好きです。形もきれいだし、いい毛振りでしたねえ。愛之助さん、来月も毛振りがあって大変ですが、きっと又感動を与えてくださるでしょうね。

千穐楽の夜の部、お互いにしっかり目に焼き付けましょう。お仕事、できるだけ早く終えられるよう、お祈りしております。

投稿: SwingingFujisan | 2009年11月18日 (水) 20時17分

待ってました!
と言っても、昼の部はあさってカンゲキなのですが益々楽しみ♪
菊ちゃんは確かにめったに立役やらないですが、(去年の1月国立ぐらい?)色気たっぷりでタマランのですよね~heart02

亀ちゃん=赤というのはとっても同感!
ご本人の真っ直ぐさや熱さとか、やはりそういう本質みたいなものって芸に出るんですかね~。抑える役よりは発散した方が生きるタイプですよね。

ああ~~私は舞台写真買っちゃいそうですcatface

投稿: 林檎 | 2009年11月18日 (水) 22時34分

林檎様
菊ちゃんの立役は、一応「十二夜」の主膳之助以来でしょう。でも、こういう役は初めてかなあと思います(見ていないのは仕方ないとして、記憶から抜けてしまっているのもあるかもしれませんが)。賛否両論あるでしょうが、私はこの三五郎、好きです。

女方として、亀治郎=赤、菊之助=白というのが私の持論なんですが、紅白の2人が夫婦役というのが今回面白いと思いました。本人の本質がニンですから、やはりニンに合う合わないは出てくるでしょうね。小万は亀ちゃんのニンなのかどうか、私にはまだわかりませんcoldsweats02

舞台写真、ちゃんと見たらほしくなっちゃいますよ~。私は極力遠くから眺めるだけにして、舞台写真入りの筋書きでガマンです。

投稿: SwingingFujisan | 2009年11月18日 (水) 23時19分

去年1月じゃなくて、12月国立の(祐天でしたっけ?)間違いでした。すみませんcoldsweats01
そうそう、その後に主膳之助がありましたねheart01
色んな方の色んなお役を見てると、本当に「ニン」てあるんだなぁとつくづく思います。どんな名優でも、打ち破るのは難しいんでしょうね〜。

投稿: 林檎 | 2009年11月19日 (木) 10時28分

SwingingFujisanさま☆こんばんは~♪
解禁日で今頃はよい心持ちでいらっしゃいますか?
さて、レポお待ちしておりました~♪♪♪
いつもその時その時は感動してもうまく表現できず、結局「よかったわ~」で終わってしまうダメダメな私><
SwingingFujisanさまのレポを読ませていただくと「そうなの、そうなの!」もしくは「へ~なるほど~!」がいっぱいで、感動がよみがえってまいります♪
二月の松竹座以来の亀ちゃんで期待しすぎていたのか、私も最初アレ?って感じでのれなかったんですけど、後半すごくよかったですよね~♪
そして、おっしゃる通り、菊ちゃんが意外とよくてちょっとくらっときましたわ~♪
松緑さん、実は最近ときめいてしまいます(ぽっ)
ところで海老さまのこと、SwingingFujisanさまはいかがお感じになりましたか~
私はもともと小林麻央さん可愛くて清潔感があって好感持っておりましたので、歌舞伎座でお見かけできる日が楽しみです♪

投稿: 七子 | 2009年11月19日 (木) 21時28分

林檎様
そうそう、菊五郎劇団は毎年1月なのに、今年は團十郎さんの「象引」があって、菊五郎さんたちは前年の12月にまわったんでしったっけね。
女方さんのやる立役はどこか女性っぽい男性のことが多いのですが、三五郎はそうじゃありませんから、菊之助さんの新しい面が見られた気がしました。
ニンって、私などよくわからないこともあります。基本、ニンに合った役がいいに決まっていますが、意外なよさがみられることもあったりしますし…。また、見る人によっても意見が分かれることもあるし…。まあ、その時々で「よかった」「イマイチだった」と判断しているのが私の現状かなcoldsweats01

投稿: SwingingFujisan | 2009年11月19日 (木) 22時10分

七子様
花形、仮名手本、そして今日奇しくも團十郎さんの歌舞伎を見て、「ああ、やっぱり歌舞伎はいいなあ」とお察しのとおり良い心持でおります。
私もうまく言葉で言い表せないことがたくさんありますよ~。それにしょっちゅう色々なことを忘れてしまいますし。でも、少しでも共感を覚えていただけると、嬉しく存じます。
考えてみれば、菊ちゃんと亀ちゃんのカップルって、ちょっと意外な取り合わせかなという気が今でもします。でも、その一方で、これからもこの2人で何かいけそうだなという思いもあります。菊之助さんにはこういう立役にもどんどん挑戦していただきたいわ~。
松緑さんについては、私は以前からスパッと竹を割ったようなという表現がピッタリの、いかにも江戸っ子的なところが好きでした。そこへ踊りのきれいさも加わって赤丸上昇中。七子様の松緑さんへの評価も高いようで嬉しいです(^^)

海老蔵さんと小林麻央さんのこと、さきほどのエントリーテーマにしました。意外な気がしましたが、素直で可愛らしく、大らかな感じのする麻央さん、きっといい奥さんになりますよ。幸せになってほしいです。

投稿: SwingingFujisan | 2009年11月19日 (木) 22時50分

SwingingFujisan様
 今晩は。私は今日(11/21)、演舞場昼の部、観てきました。おおよその感想はFujisanさんと同じです。染五郎の源五兵衛は、いかんせんニンにない役といわざるをえないようです。こういうニヒルな役とは遠い優のようです。幸四郎のこの役は観たことがありますが、ずっと似合っていました。この親子は似ていない部分も多いですね。幸四郎の家主も確かによかったですね。小万の亀治郎、殺し場は大熱演でしたが、すこし役どころが違うのかもしれません。この役は、玉三郎(実に仇っぽかった)か、雀右衛門のような真女形の方が良いのでしょう。この二人に対し菊之助が悪くないですね。菊五郎が世話物立ち役を演ずる時に未だに滲む女形くささが殆どなく、将来的には世話物立ち役として菊五郎以上になるかもしれません。楽しみです。
 今回、昼の部の白眉は、皆さんおっしゃるように松緑の浅草祭です。ここ一、二年の踊りの腕の向上には目を瞠ります。股(足)を割ったときの低い姿勢の良さ(下半身の安定)に加え、上半身も、安定し(愛之助は上半身が妙にゆれます)決まり決まりの美しい形は若手の中では群を抜きます。毛ぶりの立派なこと!この浅草祭は染五郎との顔合わせで観たかったですね。
 そうそう、梅枝がここでも、菊野といういい役でしたが、この優、薄幸な若い女性の役が多いですね。Fujisanさんご指摘のとおり時蔵の若いときとは、随分違います。玉三郎の若いときも、やや、こういう雰囲気がありましたが、いっそ雲の絶間とか、土手のお六のような役を勉強会でやって、一段の飛躍をすべき人なのでしょう。

投稿: レオン・パパ | 2009年11月21日 (土) 18時57分

レオン・パパ様
ご観劇後すぐのコメント、ありがとうございます。
人によって見方は色々だと思いますが、レオン・パパ様も同様のご感想とのこと、嬉しく存じます。
そうですね、想像するに幸四郎さんのほうが染五郎さんよりも源五兵衛には合っているかもしれません。時蔵さんのところといい、親子でそういう違いがあるのも面白いものですね(松緑さんもお父様とはだいぶ違うような…)。梅枝クンは若いのに古風な面があり、儚げなところがいいですね。お父様が女方ですから玉三郎さんに教わるというのも難しいことでしょうが、そういう枠を超えて勉強してみてもいいかもしれませんね。
菊之助さんは、まったく意外な発見でした。立役にもどんどん挑戦していってほしいものです。

松緑さん、ここのところメキメキと踊りの腕をあげてきましたね。おっしゃるとおり、下半身の構えが低く、上半身も安定して、形がとてもきれい。こういう踊りは、見ていても楽しくて全然飽きないです。いずれ、染五郎さんとの共演も見られるかもしれませんね。今回は愛之助さんの頑張りにも感動しました。

投稿: SwingingFujisan | 2009年11月21日 (土) 21時45分

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» 鶴屋南北? 歌舞伎「盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)」(新橋演舞場) [飾釦]
■日時:2009年11月15日(日)、11:00〜 ■劇場:新橋演舞場 ■作:鶴屋南北 ■出演:市川染五郎、市川亀治郎、尾上菊之助、他 新橋演舞場で、ボクが劇作家としては今もっとも注目したいと感じている江戸時代に活躍した鶴屋南北の「盟三五大切」を見ました。この作品はボクにとっては片岡仁左衛門が出演したものをテレビで見て、なんか鶴屋南北って凄くないか?と気づくきっかけとなった作品です。その後、花組芝居によるものや、映画になったもの(「修羅」)なども見る機会がありボクにとっては馴染み深い作品となりまし... [続きを読む]

受信: 2009年11月19日 (木) 10時23分

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