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2009年11月 2日 (月)

仮名手本忠臣蔵初日昼の部

111日 顔見世十一月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)
09110201syoniti_2 「仮名手本忠臣蔵 大序、三段目」
これを聞きたかった
「とうざいと~ざい、とざいと~ざい」、そして浄瑠璃の太棹の最初の一音。これを聞いたとき、初日のこれを聞きたかったのだと強く思った。

★優れた歌舞伎美術
鶴岡八幡宮は3階から見ると、その広さ、距離がまるで本物のように感じられ、見ごたえある。後の扇ケ谷屋敷の場でもそうだが、歌舞伎美術がいかに優れているかがよくわかる。
緊張の瞬間
そして浄瑠璃にあわせて11人に息が吹き込まれる緊張の瞬間、これも歌舞伎としてのこの演目の優れた点だと胸が高鳴る。富十郎さんの高師直は3段階に顔を上げていた。去年、この場面を幕内の桜席で見ておいてよかった。
注目の直義
私のここでの注目は七之助さんの足利直義。去年平成中村座でも見事な直義を見せてくれたが、さよなら公演初登場で、この大きな役をどのように演じるか。七之助さんは品よく格式高く、堂々たる直義であった。
桃井若狭助の梅玉さんはちょっと癇性な感じがいいし、塩冶判官の勘三郎さんはおっとりと品よく美しい(こういう役の勘三郎は大好きだ)。
あの声でいじめられたら…
しかし、ここでの圧巻は何といっても富十郎さんだ。大きさ、声の美しさに惚れ惚れする。たしかに憎ったらしいけれど、あんな声でいじめられたら、かっとするより聞き惚れてしまいそうな気がする(私は決してMではありませんょsmile)。顔世への横恋慕は、橋之助さんの師直には「好きでしょうがないんだ」という気持ちが溢れ出てむしろ微笑ましささえ覚えたが、富十郎さんの恋心には一クセも二クセもありそうである。私が顔世なら、「びびびびびぃ」とでも言って振りたいところだ(なんて、そんなセリフが出るような場面ではない)。
富十郎さんで心配なのは膝である。今回はどうしても床に跪かなくてはならない場面があり、1カ月大丈夫かしらと心配になった。床上での動きには膝を庇う様子がみられたし、長袴の裾捌きも大変そうだ。無事に乗り切られますように。
番外編:松の間の場面に変わるとき、大道具さんの見事な薄縁捌きに思わず拍手!!

判官の死と大星
09110202onegai 勘三郎さんは「いい判官だった」。白装束を隠す黒の長羽織で登場したときの悲しさ。大星の到着が自分のことのように待たれた。で、その大星なのだが、去年あまりにすごい大星を見てしまったので、どうしてもそちらに思いがいってしまう。仁左様の大星は、たとえば判官の遺体の衣裳を直す指先、判官の手から腹切刀を取る指先、腹切刀をなでる指先等々、そういうところに大星の思いが痛切に感じられた。そういうものが今回はさほど伝わってこなかったかわりに、もしかしたら幸四郎さんの大星は、判官の死に直面しながら、家老としてもう先々のことを考えていたのかもしれない、という気がした。送り三重(栄津三郎)に合わせた引っ込みは、泣きすぎだと思う反面、この泣きも悪くないとそれなりに感動した。
判官の供養をする顔世(魁春)の表情には、自分の短冊が師直を怒らせた一因かもしれないというつらい思いが溢れていて、歯を食いしばったような顔が痛ましかった。

「仮名手本忠臣蔵 道行」
菊五郎、時蔵コンビは色っぽくて大人の恋人同士という感じでいいなあといつも思う。お軽は本当に勘平が好きなのだということがよくわかる。でも、お軽が能天気すぎて、勘平が可哀想になったりもする。
道行の舞台は重い忠臣蔵の中で唯一といってもいい明るさで、恋の喜びも、鷺坂伴内との剽軽なやりとりも明るい陽の下で繰り広げられているのかと思うと、ちょっと間の抜けた「コケコッコー」の声が聞こえて、あら、明け方近い深夜だったのね、この明るさは何?なんて、ずっこけかけてしまった。
<上演時間>「大序」57分(11001157)、幕間5分、「三段目」45分(12021247)、幕間35分、「四段目」85分(13221447)、幕間20分、「道行」40分(15071547
おまけ12階ロビーで「歌舞伎座写真集」のカメラマン安齋重男さんの写真展をやっている。多分、写真集の中の写真だと思うが、大判で見るのも迫力があっていい。
おまけ21月の演目はまだ発表になっていなかった。早ければ今日、遅くも数日後には明らかになるのではないだろうか。
09110203osirase

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

SwingingFujisanさま☆こんばんは~♪
初日、いらしたのですね~♪(やっぱり?ですね?!)
素敵なレポを読ませていただき、お昼から顔がニヤケっぱなしです!七之助さんも素敵だったとのこと…♪♪♪
毎月初日のレポを楽しみにしております~♪もちろん再見された際のレポ、千穐楽のレポも♪♪♪
ところで、一月の演目はあとは歌舞伎座だけですね。早く知りたいですね!(SwingingFujisanさまは演舞場にたくさん通われるのですね!海老さまですものね!)

投稿: 七子 | 2009年11月 2日 (月) 22時18分

七子様
コメントありがとうございます。レスがおはようございます、になってしまってごめんなさい。
歌舞伎座は原則的に初日、千穐楽を見ようと予定しておりますが、だんだんそうもいかなくなってきました(今月の千穐楽は演舞場ですしcoldsweats01)。
女方の役者さんが立役をやると、線の細さとかセリフが気になることが多いのですが、七之助さんはセリフも自然ですし、体がスリムなのに線の細さを感じることもほとんどなく、立役としてもいいものがあるなあと思います。
1月は忙しくなりますねえ。もちろん演舞場にも通いますし、国立、浅草、そして歌舞伎座と、どうやってスケジュールを立てようかと、頭を悩ませています(こんな嬉しい悩みなら全然苦になりませんけどhappy01)。歌舞伎座の演目、待ち遠しいですね。

投稿: SwingingFujisan | 2009年11月 3日 (火) 08時25分

swingingFujisan様
 昼の部のレポ有難うございました。私は今日3日の昼見てきました。何度も見た忠臣蔵、道行以外の昼の部の諸段は通し以外は見れませんのでそれほど観劇歴はないのですが、やはり充実していましね。
 富十郎の師直は初見ですが、すてぜりふが際立つのは上方出身のゆえなのですかね。とは言うものの当代一でしょう。
 今回の気に入った優は、裏門の伴内の橘太郎、決まり決まりの良さ、プラスいやみのなさが気に入りました。大幹部では菊五郎の勘平が持ち前の哀愁が道行の華やかさといい意味でマッチしていましたね。

投稿: レオン・パパ | 2009年11月 3日 (火) 23時12分

SwingingFujisanさま☆こんばんは~♪
しつこくすみません><
今日、歌舞伎座にまいりました。久しぶりに歌舞伎座で見る七之助さんにドキドキしてしまい、心がふるえました!ホントに素敵ですね~♪♪♪
そして仁左サマ素敵♪くらくらしましたわ。
歌舞伎ファンのくせに苦手演目多い私が、去年の平成中村座で忠臣蔵ニガテ→けっこう好きかも!になり、今日も通しで楽しめました。もう一回ずつ見る予定なので楽しみです♪
(あ、一月の演目はまだあがってませんでした…)
演舞場も楽しみですね~♪

投稿: 七子 | 2009年11月 4日 (水) 00時01分

レオン・パパ様
コメントありがとうございます。
仮名手本忠臣蔵は芝居そのものとしても充実していますし、配役も充実していましたね。
富十郎さんの師直、19年の2月にはご覧になりませんでしたか?(このときも顔世は魁春さんでした) ぐいぐいと追い詰めていくところなど、手に汗握りながら、聞き惚れました。ほんと、当代一だと思いました。
橘太郎さんは、主人に忠実で、気働きがあって、憎めない愛敬が感じられて(そう、イヤミがないんです)、なんともいえないいい味を持った役者さんですよね。大好きです。

投稿: SwingingFujisan | 2009年11月 4日 (水) 00時14分

七子様
こんばんは。しつこいなんてとんでもない、いつでもコメントは嬉しく存じます。
七之助さんは、一番最初に息を吹き込まれ、一番最初に口を開く大事なお役ですから、さぞ緊張なさったことと思いますが、堂々と格の高さを見せましたね。
昼の部はもう一度見る予定ですので、あまり詳しく書かなかったのですが、仁左様の石堂には、大星より泣かされてしまいました。ハッとするほどかっこよくて素敵でしたね~。
忠臣蔵は私もそんなに好きではないと思っていたのですが、何回か見るうちによさがわかってきたような気がします。

1月演目はまだでしたか。早く知りたいですねえ。

投稿: SwingingFujisan | 2009年11月 4日 (水) 00時31分

SwingingFujisan様
 おはようございます。また、おじゃまします。昨日(11/6)、歌舞伎座夜の部行ってきました。Fujisanさんが後半観劇とのこと、感想を少し。今回の通しは昼の部のほうが、総じて見ごたえがあったようです。富十郎と勘三郎の喧嘩場の緊迫感は、場内のシーンとした雰囲気からも格別のものでしたね。夜の部は六段目が充実していますが、私としては、菊五郎以外の勘平が見てみたかったというのが本音です。Fujisanさん御贔屓の時蔵は、しっとりとして、いいお軽でした。東蔵のおかやは、数年前の吉之丞と比較すると、手強さはありませんが、やさしさのあふれる、おかやで、これはこれで悪くはありませんでした。七段目は、福助のお軽がいつもの、福助調で、仁左衛門、幸四郎とのアンサンブルでやや違和感があったような気がします。一番危惧していた幸四郎の平右衛門は軽みがあり、いい出来栄えです。仁左衛門は声を抑えて由良之助に相応しいのですが、今回は昼の石堂の方が私は気にいりました。

投稿: レオン・パパ | 2009年11月 7日 (土) 09時46分

レオン・パパ様
夜の部のご感想、ありがとうございます!!
しばらく歌舞伎を見られないので、こうして歌舞伎のお話をしていると、歌舞伎座の空気が感じられ、自分も早くその中に入りたいと、うずうずしてきます。
七段目は、福助さんと幸四郎さんが私としてはネックだと思っていましたが、幸四郎さんは意外にも(なんて言ったら失礼かcoldsweats02)好評のようですね。自分の目で見るのが楽しみです。福助さんは、やっぱり…ですか。
仁左衛門さんの石堂はよかったですねえ。あの場面、大星より石堂に惹かれました。
昼の部は2度見る予定ですが、正解ですね(^^)

投稿: SwingingFujisan | 2009年11月 7日 (土) 11時44分

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