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2009年12月28日 (月)

十二月歌舞伎座千穐楽夜の部

1226日 十二月大歌舞伎千穐楽夜の部(歌舞伎座)
09122801sensyuraku

千穐楽になってやっと夜の部を見ることができた。
「引窓」
09122802hikimado この芝居ほど、家族の幸せというものを感じさせる歌舞伎の演目はないんじゃないかと、見るたび思う。なさぬ仲の母と息子、その嫁、血のつながっていない3人が慎ましく暖かな生活を送っているそこに起こった一夜の嵐。皮肉にもその原因は、母親の実の息子である。展開にもはらはらするし、互いが互いに思いやる4人の気持ちはじんじんと胸に響く。実によくできた芝居である。
配役もみんな適役で、秀調さんのベテランらしい味わい、巳之助クンの堂々とした役人ぶりがよい。橋之助さんは昼の久松とは打って変わっていかにも潔い相撲取りらしく、扇雀さんも情に厚く姑とも仲のよい嫁としてとても好感がもてた。そして右之助さんのお幸は、体の大きな濡髪をかわいく思う様子がなんとも切なく、母親としての共感を覚えた。
だけど、一番よかったのは三津五郎さんの南方十次兵衛。意外にも初役だそうだが、セリフも形もよく、濡髪の手に路銀を握らせ、早く行けというところでは泣けて泣けて。今後も是非再演してほしい役であると思った。
「雪傾城」
09122803yukikeisei 芝翫さんとお孫さんたちの発表会のような雰囲気で、大きいおにいちゃんたち(勘太郎・七之助)と小さい子達を比べても仕方ないし、目出度い目出度いというところでしょうか。
奴の国生クンは橋之助さんをそのまま縮めたような感じで、セリフに難があるが、動きが大きく、奴らしさがよく出ていた。弟たちの踊りを見守るような目つきでいたのも長男らしく頼もしい。宜生クンは踊りはまだまだだけど(一生懸命踊っている姿がいじらしい)、女の子の仕草、しな、雰囲気が見事。女の子って子供のときから女だとはよく言われるけれど、男の子の宜生クンからそういうものが滲み出ていたような気がした。

「野田版鼠小僧」
09122804nezumikozo シネマ歌舞伎で初演を見たが、だいぶ記憶が飛んでいて、新鮮な気持ちで見た。この芝居の面白さは、人間の本質を衝いているところにあると思う。名奉行と言われる大岡越前もただの名誉欲に駆られたエロおやじ、貞女の鑑も二股かけるエロおばはん、清純無垢なお嬢様は金のためなら相手を選ばない、人間なんて裏を返せばそんなものだというすっぱ抜きの怖さが面白い(その一方で金の亡者の裏を返したら意外な真実が見えた、のも面白い)。三太の言うことは誰も信じないが、鼠小僧の言うことならみんな信じるんだ、だったら俺は鼠小僧だ!! と叫ぶ三太の言葉はぐさっと胸に刺さる。マスコミがそうだ、いや自分もそうだ。
したたかで、鼠小僧になって真実を暴こうとした三太の一枚も二枚も上手だった大岡越前の三津五郎さんがうまい。呆然とした勘三郎さんの顔が忘れられない。人に施しをしたら死ぬ体質だという三太はしかし、小さい三太のために死ねて幸せだったのだ。喜びさえうかべていた勘三郎さんの表情も忘れられない。
チビ三太は初演の鶴松クンが素晴らしく、泣かされたので今回はどうかと危惧したが、宜生クンも見事であった。雪の精であんなに女の子っぽかったのに、こちらでは純粋な少年になりきっていて、3兄弟の中では一番の成長株ではないかしらと思った。
福助さん、扇雀さんは、野田版なんとかやクドカンではああいう役になってしまうのが、いいんだか悪いんだか。そういう役が妙にしっくり合ってしまうから、他のちゃんとした女方の役をやったときに居心地の悪さを覚えたりすることがある。
ところで、亀蔵さんはすっかり死体役者? 「らくだ」でも出色の死体役だったし、「りびんぐでっど」でも味のある死体だったし、この三太のアニキにも思わずニヤリとさせられる。やっぱり亀蔵さんは怪優である。
<上演時間>「引窓」73分(16451758)、幕間30分、「雪傾城」23分(18281851)、幕間25分、「鼠小僧」92分(19162048
おまけ:幕間に金太郎クンを見た。本当に本当に可愛らしい。後援会の方だろうか、オバサマ方が頭をなでていたが、抱きしめたくなるくらい可愛かった。お父様の染五郎さんは、鼠小僧カッコよかった!!

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コメント

正に怪優という言葉がぴったりの亀蔵さん。俳優祭で一緒に写真を撮ってもらったほど大好きなので、今回も本当に楽しませてもらいました。(くさや写真も買っちゃったしcatface)ただ、他のお芝居に出ていなかったのが残念でした。
引窓の三津五郎さん、情に溢れる部分をさらっと見せていて良かったですよね〜。ただ、その後の鼠小僧での大岡越前も十分ハマり役でしたがsmile
平日だとお休みとらなきゃいけないので楽日に行くのは中々難しいのですが、中村屋さんの楽はいつも一体感があって一度は行ってみたいなぁ…

そうそう、今年ももう終わり。周りに話せる人がほとんどいない私にとってSwingingFujisan様のサイトは本当に楽しみな場所です。いつも長々と書いてしまう私にお付き合いいただき、本当にありがとうございました!そして、来年も引き続き何卒こい願いあ〜げ奉りまする〜m(__)m

投稿: 林檎 | 2009年12月29日 (火) 21時10分

林檎様
いつもたくさんコメントを下さって、本当に嬉しく思っております。私も歌舞伎だけでなく色々な話題で林檎様とお喋りをするのが楽しみです。
こちらこそ、来年もよろしくお願いいたしまするhappy01

亀蔵さんとツーショット写真ですか!! 羨ましいです。私も亀蔵さん、大好きです。亀蔵さんって、かつてバーのマスターをしていらして、その時代にカラオケで声帯を鍛えられたんだそうですが、あの大きなはっきりした声にはそんな秘密(?)があったんですね。マイケル・ジャクソンの「スリラー」も完全にコピーできるとか。だから亀蔵さんの動きはリズミカルなんですね。スプラッタものやホラーがお好きだとのこと、絶品の死体役も納得がいきます。

歌舞伎座で一度閉まった定式幕を再び開いてのカーテンコールなんて、勘三郎さんくらいなものでしょう(6月の見事なカーテンコールは別として)。お客を喜ばせることに心を配る勘三郎さんならでは、ですね。コクーンだととくに思い切り千穐楽を楽しめますから、来年機会があるといいですね。

投稿: SwingingFujisan | 2009年12月29日 (火) 22時46分

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