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2009年12月19日 (土)

久々の観劇は「シェルブールの雨傘」

1218日 「シェルブールの雨傘」(日生劇場)
久々の観劇は「シェルブールの雨傘」。大好きな映画だし、私が女神と崇めるカトリーヌ・ドヌーヴの出世作でもあるし、日本人が演じたらどうなるのかなぁと、あまり期待せずに見に行った。
ところが、正直なところ、映画より感動したかも。ドヌーヴは輝くように美しく、全編音楽にのせたセリフも流れるように美しかったけれど、映画は全体に感情表現がさらっとしていたような気がする。ただ、「戦争で引き裂かれた恋」という点に関しては、やはり実際にアルジェリア戦争を経験しているフランス映画のほうが実感があった。以下、映画ありきでの感想。
ジュヌヴィエーヴ役の白羽ゆりは人間味が強く感じられた。恋する少女のときめき、喜び、高揚感、恋人との別れのつらさ、切なさ、そういう感情がストレートに伝わってきて、映画のジュヌヴィエーヴにもっと魂が吹き込まれたような感じ。その人間像にこちらも入り込むことができ、母親に対する強さも一時的なものにせよ、「そうだ、そうだ」と応援したくなった。しかし、時がたつにつれ、ギイへの恋心が曖昧になっていく不安や揺れのようなもの、カサールの愛を受け入れるに至った心の変化については、やや不足しているような気がした(そこは、映画のほうがわかりやすかった)。
彼女の母親は、娘かわいさのあまり、娘を自分の掌の中で動かしたい、金持ちが娘に惚れたとなると苦しい経済状態もあって娘を利用しようとする。いや、娘の幸せを願う気持ちにウソはなく、自分では利用しているなんて意図はないに違いない。しかし見ているほうにはどうしても利用しているとしか思えないのだ。本当はアンタが自分でその金持ちと結婚したいんじゃないか(それくらい、色目を使っている)、でも相手が惚れたのは自分じゃなくて娘だからって突っ込みたくなる。香寿たつきは、映画同様、強烈な存在感と印象を残す母親であった。
金持ちの宝石商カサールは岸田智史。誰だか全然わからず、プログラムを見てビックリした。男の人って変わるんだなあ。役としてはまあ、こんなものかなという感じ。映画の人よりうさんくさくなかった。
話をジュヌヴィエーヴに戻すと、結果金持ちと結婚して正解だったのだと思う。ギイと結婚してもギイを支えることは出来なかったのではないか。金持ちの奥様に納まるのが合っていたのだろう。と言って最高の幸せを手に入れたという風情でもない。映画のドヌーヴにはそれがはっきり現れていた。白羽ゆりのジュヌヴィエーヴは柔軟な適応力があるのだろう、それなりに幸せそうではあったが、複雑な表情にじ~んときた。
ギイ役の井上芳雄!! 素晴らしく素敵だった。映画のギイは私には全然魅力的とは思えなかったが(顔と声にギャップがありすぎたのもその一因かも)、このギイはむしろカッコよすぎるくらい。多喜二で初めて見て、ぜひ彼の歌を堪能したかったので、とても満足。ギイが本当の幸せを見つけたのは嬉しい。パパぶりも素敵で胸がつまった。
小さな幸せという言葉がぴったり来るギイの一家。それをもたらしたのはマドレーヌだ。私は彼女を見ると、「風とともに去りぬ」のメラニーを思い出す。こういう描かれ方をする女性は苦手なのだが、ANZAという女優の個性の故だろうか、素直に魅力を受け入れることができた。
さて、この物語最大の見せ場であるジュヌヴィエーヴとギイの再会。ジュヌヴィエーヴが身籠ったギイの子は女の子ならフランソワーズ、男の子ならフランソワと名づけようと約束していた。2人が再会したとき、ギイにも子供ができていた。ジュヌヴィエーヴが生んだのは女の子であり、ギイの子供は男の子であり、名前はフランソワーズとフランソワ。この場面、白羽ゆりと井上芳雄に溢れる万感の思いに泣けた。しかしこの再会できっとギイは過去を断ち切ったに違いない。一方のジュヌヴィエーヴはどうなんだろう。逆にギイへの思いがよいが甦ったのではないだろうか。だけど適応力のある彼女だから、きっと自分の気持ちとうまくやって折り合っていくだろう。

よくできた芝居だと思った。舞台装置もよくできている。半円形の壁が人力でぐるりと回されると、そこには小さな空間が現れ、それはギイの叔母の部屋であったり、ジュヌヴィエーヴ母子の傘店の内部であったり、舞台装置もなかなかのアイディアである。また、この壁に描かれた絵が柔らかいタッチで心が和む。
ダンスが素晴らしい。音楽に合わせた優雅なダンスで、町の人々、恋人たち、娼婦たちの日常が表現される。そしてギイが働く自動車修理工場でのダンスはリズミックで実にかっこいい。全体として、私のイメージの中でのいかにもミュージカルなダンスであった。
生のオーケストラのよさも堪能した。
全体がよく見渡せて、2階席は大正解。上からはオーケストラピットの囲いがとても高く見え、1階最前列の席からはちゃんと舞台が見えたのだろうか、なんて心配になったくらい。

もう一度見てもいいな、と思える芝居だった。
<上演時間>150分(14001450)、休憩20分、第270分(15101620

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コメント

うわぁ、素敵な舞台だったようですねぇ~。あの日生劇場の空間(私、あの不思議な空間がけっこう、好きです)とあいまって、私も興味をひかれました~。

となみちゃん(白羽ゆりさん)やタータン(香寿たつきさん:実は、宝塚卒業記念のDVDとか持ってます!)は宝塚時代何度も拝見していますので、そのお二人が共演している(しかも母娘役ですか!)というのも興味津々です。

演出の先生はどなたなのでしょう。あぁ、時間とお金と体力に余裕があったら是非是非行きたいですわぁ。

投稿: はなみずき | 2009年12月20日 (日) 08時51分

はなみずき様
コメント、ありがとうございます!!
たしかに日生劇場というのは一種独特な空気をもっていますよね(「シェルブールの雨傘」の雰囲気にピッタリでした)。
はい、白羽ゆりさん(ニックネームはとなみちゃんとおっしゃるのですかhappy01)と香寿たつきさんは母娘でしたよ! 宝塚ファンでもいらっしゃり、しかも香寿さんのDVDまでお持ちのはなみずき様には是非おすすめの舞台です(でも、体調一番ですから)。ここには挙げませんでしたが、出雲綾さんも、ギイのおばさん役で静かな存在感を発揮していらっしゃいました。
宝塚出身の方は、演技、踊り、歌と三拍子揃っているし、姿も美しいので、安心して楽しく見ることができますね。

演出・振付は謝珠栄さん(私、宝塚のことはほとんど存じませんので、謝珠栄さんも宝塚出身だということ、今プログラムを見て初めて知りました)、訳詩は竜真知子さん、女性が大活躍の舞台です。今さらながら、女性ならではの細やかさが見事だったなと思い出されます。

投稿: SwingingFujisan | 2009年12月20日 (日) 11時09分

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