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2010年1月20日 (水)

伊達十役:海老蔵篇

117日 初春花形歌舞伎夜の部(新橋演舞場)
前後しましたが、夜の部の感想を。席は理想的な花道七三手前横(まさに海老ちゃんの顔を正面下から見上げる感じ)。海老ちゃんを堪能してきましたlovely
①口上
バックに海老蔵さん演じる10人の写真パネルが善人と悪人に分けて掲げられている(名前の上にのっかっている屋根のようなものは「入」という字を意識したものだそう。これからご覧になる方はちょっと気をつけてみて)。真ん中には善でも悪でもない、事件のもととなる張本人足利義兼が。
海老蔵さんによれば、題名の意味は、「恥も外聞もなく顔を真っ赤にして汗びっしょりかいて十役お見せします」というのだそうだ。「私1人で十役を早替りで演じるのが見せ所」「裁き裁かれ、謀り謀られ、殺し殺され、宙を飛び地へもぐり…」(何かもう一つ言っていたと思う)「十役なのでお目まだるきところがあってもご寛容のほどを」「皆さんの声援がなければつとめられません。いつもの十倍のご声援を」
②早替り
とにかく早いsign02 口上での柿色の裃姿の美しさに酔っていた目に、あららもう仁木弾正が。それからも早い早い。圧巻は、花道での与右衛門と道哲の入れ替わり。目の前で見ているのに、まるでマジックみたい(何とか見破ってやれなんて思っているから一瞬、あっとわかりそうな気配なのに、やっぱりわからない)。40何回という早替りのたび、吹替えの役者さん、裏方さん、みんなが結束した力を感じ、胸打たれた。
そして海老蔵さん自身についていえば、次から次の早替りはすなわち姿かたちだけが変わるのでなく全て違う人物になりきるわけで、その早替りが見事なのである。姿はAなのにBの人物が抜けていなかったり、間違って他の人物になっちゃったりってことがない。それができなくちゃ早替りなんてするなってものだけれど、でもそれってすごいなあと感心するのである。
③仁木弾正
十役の中でやはりかっこいいのは仁木弾正と細川勝元である。弾正の暗く鋭い目、真ん中に寄せてふくらませた目玉(きっとまた毛細血管が切れてる)、大きな大きな悪人だ(後に改心したふりをして外記を襲う卑怯さも備えている)。
床下での荒獅子男之助との対決はどのようにするのだろう(ここは吹替えを使うわけにいかないじゃない)と思ったら、弾正は鼠のままで(鼠さん、大活躍)男之助が引っ込んだ後スッポンからどろどろと登場。このとき、スッポンからは煙が流れるのだが、少し燻りくさいにおいがした。そのせいだろうか、海老ちゃんは少し咳が出るようで、必死でそれを堪えている様子なのが痛々しかった。
23回小さくコホッコホッとしていたので本当に心配した。私も芝居を見ていると必ず途中で咳が出て(空気のせいか埃のせいか)堪えるのに苦しい思いをするからよくわかるの。この場面は、弾正が悠々と宙乗りで消え去る場面だから咳なんてしたらかっこがつかない。どうにか無事に飛んでいってほっとした。
この宙乗り、今回はほとんど下から後姿を追うだけだったが、まるで宙を歩いているような堂々たる引っ込み。ああ、これぞ弾正なんだわと胸が躍った。
外記左衛門との全力を尽くした立ち回りは迫力に満ち、どきどきしながら見た。ところで、問註所白洲の場の大鼠、あまりの巨大さにびっくりした。

④細川勝元
弾正が陰なら一方の細川勝元は爽やかな陽。見目麗しく、口跡清々しく、元々お得な役ではあるけれど、仁左様に優るとも劣らぬ魅力的な勝元だった。畳み掛けるようなセリフを聞いていつも思うのは、よく噛んだりトチったりしないものだということ。TVや映画と違って一発勝負の舞台、ここで噛んだらさすがの勝元だって笑い者なのに、思わず拍手喝采したくなる明快な論理、悪を落とす爽やかな弁舌。ぱっと花の開いたような海老蔵の魅力であった。
ナンセンスツッコミ:先代萩では瀕死の外記左衛門に「舞え」と命じるのだが、ここでは謡に唱和しろと言う。どちらにしても、外記左衛門があんまりかわいそうです(って、これ、先代萩見るたびにツッコんでるかも)。
⑤政岡
玉三郎さんの指導を受けたそうだが、たしかに時々玉様を彷彿させるところがみられた。丁寧な演技で好感がもてたが、後半かなり男が入っていたかなぁと思う。千松を殺されたところはけっこう表情が変わり、こわ~い顔になっていた。これでは栄御前にバレてしまうよと心配になる。
レオン・パパ様ご指摘の緋色の衣裳のだぶつきは、そういう目で見るせいか、確かに気になった(玉三郎さんもだぶつき気味だったかどうかは覚えていない)。いや、そういうご指摘がなくても「おや?」と感じたかもしれない。他の女方の役ではそういうところは見られなかったと思うが。
⑥その他の人物
与右衛門をほめる評をいくつか見たが、私にはよく摑めなかった。千穐楽にもう一度見るから、その時には与右衛門という人物をきちんと把握したい。道哲はイマイチながら、徐々に面白くなってきた。赤松満祐はちょっとしか出てこないが、恨みつらみが籠もっていて怖かった(白髪の海老ちゃんも素敵)。
高尾太夫と累はきれい。とくに大喜利の高尾+累の亡霊は美しい。女方の声や音調はあまり気にならなかったし、笑いも起きてはいなかったように思う。私としてはむしろ、与右衛門のセリフに時々おかしな語調を感じ、だから摑みきれなかったのかなという気がする。
以下、続く。

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コメント

いやぁ〜良かったですよね〜なんてったって、海老蔵出ずっぱり♪今月歌舞チャンでやった猿之助版を見てから行ったのですが、本当に早いっっ。よく息があがらずに台詞が言えるものだと関心してしまいました。でも、Swinging Fujisan様ご指摘の通りかなり痩せてしまいましたね〜心配ですbearing体が小さくなった分女形がハマって、大喜利の高尾の出はハッとするぐらい綺麗。ただ、女形の時は背を盗んで欲しかったなぁ。常に立役さんより大きくって迫力が!政岡は大きくてもいいとして、右近さんの八汐も男らしいからスゴイ対決になってましたよねcoldsweats01
素顔でも2人は似てると思ったのですが、累が小林真央にとっても似てませんでした?上目遣いとか口の結び方とか…catface
仁木弾正と勝元がやはりニンで、赤松は出番が少ないのが惜しいほどカッコ良かったなぁ。考えてみれば歌舞伎座で團十郎さんの押戻し、演舞場で海老蔵の押戻しと見れて良い月になりましたheart04
写真は海老蔵の8枚全部買ってる方も結構いたのですが、4枚に抑えました。Swinging Fujisan様は結局何枚買われましたか?
そうそう、残念ながら猿弥さんは休演のままでしたweep

投稿: 林檎 | 2010年1月25日 (月) 21時15分

林檎様
たっぷり海老蔵を楽しまれたご様子、同じ海老ファンとして嬉しく存じます。私はとうとう千穐楽なになるまで猿之助版は見る機会がなかったのですが、2月になってからでもゆっくり見ますゎ。

あれだけの大奮闘をすれば、海老ちゃんも痩せますよね。でも体は細くなっても迫力は変わらず。たしかに女方でもかなり迫力ありましたよねぇ。
累が麻央さんに似ているかどうか、気がつきませんでした。普段も似ているかどうか…今度意識して見てみますね。
赤松、カッコよかったですね。私もちょっとだけの出番が残念な気がしました。
海老蔵さんの写真は、まだ鏡獅子の1枚しか買っていませんcoldsweats02 だって今月はたくさんお金を使ってしまったし、2月3月も散財しそうだし、ぐっとこらえています。でも、明日筋書きを見てから、又考え直すかも。
猿弥さんは残念ですが、無理なさってはいけませんものね。早くお元気になられますように。
明日、最後の押し戻しを見てきます!!

投稿: SwingingFujisan | 2010年1月26日 (火) 00時19分

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