« ラブ歌舞伎座・28(ユニフォーム) | トップページ | 浅草アルバム:スカイツリー篇 »

2010年1月16日 (土)

初春大歌舞伎昼の部

115日 初春大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)
10011601omajpg
本年初歌舞伎座。だというのに、初っ端から遅刻。というのも、
赤坂ACTシアター「薔薇とサムライ」の先行販売にぶつかったから。まだACT倶楽部の会員資格があったみたいだし、どうしても確保しておきたいチケットだったので、悩んだ末、最初の「春調娘七種」を犠牲にした。というわけで、第二演目から。
「梶原平三誉石切」
3
度目かな。もっと何度も見ているような気がしていたけれど、富十郎さんの平三を見逃しているので、吉右衛門、幸四郎、幸四郎になる(正直言って、2度目の幸四郎さんの平三はあまり記憶にない)。
幸四郎さんは時々、セリフがもごもごして聞き取りづらくて苛立たされるものの(セリフの発声と理解の間にタイムラグが生じ、非常に疲れる)、大きさも情も力強さもあって、この梶原は好きだと思った。「こうらいやっ」の掛け声が盛んに飛んでいたが、それも納得。
俣野の歌昇さんが、眼光鋭く成り行きを見つめ、憎々しいこと。それでいて、試し切りの件で平三に強くたしなめられるとバツの悪い表情を見せる愛敬もある。そのバランスが絶妙で、歌昇さんは本当にステキな味の役者さんだ。
面白い(というと語弊があるかな)のは、秀調さん。剣菱呑助や馬盗人のならず者みたいな役もやるかと思えば、忠実な家来、果ては身分の高い奥方まで。どの演技も端正なのに、呑助なんかは巧まずして可笑しさと悲哀が感じられる。
芝居には全然関係ないが、八幡宮の正面階段の一番下に梶原の供侍が4人腰掛けている。その頭の丸い髷が階段のラインの上に炭団(古いね)が揃って載っているように見えて、なんだかおかしかった。
「勧進帳」
はじめの20分ほどだろうか、客席が全体にざわめいていて、落ち着かない感じだった。
團十郎さんの弁慶を見るのは3度目。やっぱり弁慶は團十郎さんだ。吉右衛門さんも、幸四郎さんも、仁左様もそれぞれいい。だけど、團十郎さんにはこれぞ弁慶、という味がある。なんて言うのかなあ、子どもの頃に見たかもしれない、あるいは映像でしか見たことがないかもしれない、一世代も二世代も前の弁慶の空気がある、という気がする。他の役者さんの弁慶ほどスマートではなく、けれどどっしりした頼もしさ、大きさ、大らかさは群を抜いている。そして勧進帳を読み上げる場面は團十郎さんのが一番好きだ。さよなら公演で團十郎さんの弁慶を見ることができてよかった。力みがなく自然体の弁慶であった。3階西側のお客さんたちが一生懸命下を覗き込んでいたが、「たっぷり!」と声の掛かった六方は見られなかったのではないだろうか(私もあの席は一度経験があるが、花道はまず諦めたもの)。
梅玉さんの富樫がとてもよかった。上品で気骨が感じられる(私は、梅玉さんは気骨のある役のほうがステキだと思うのだけど)。團十郎さんの弁慶とよく合っていた。もちろん、どの芝居でもそうだろうが、「勧進帳」ではとくに弁慶役と富樫役の相性が芝居のレベルを上げるような気がする。そういう意味では吉右衛門 vs 富十郎がマイベストだが、今回の團十郎 vs 梅玉も非常に相性がよかったと思う。弁慶を見送る姿に胸が熱くなった。
さらに感動したのは勘三郎さんの義経。花道の出からして尊く見えて、思わず涙が出た。弁慶の手を取る場面がまたありがたく、ここでも涙が滲んだ。
本当は、梅玉さんと勘三郎さんにずっと気をとられていたのに、いつの間にか弁慶に取り込まれてしまったという「勧進帳」でした。

ところで、太刀持ちの玉太郎クンが登場した一瞬、あんまり小さくてビックリした。

「松浦の太鼓」
これも3回目(勘三郎、吉右衛門、吉右衛門だが、梶原と同様、なぜか2回目の吉右衛門さんのときはほとんど覚えていない)。
面白かった。吉右衛門さんの松浦侯は、鷹揚さと癇症なところが同居していて、ちょっとわがまま、子供みたいな感情の表し方が愛敬たっぷりで、しょうのない殿様だと苦笑したくなる。タイプも置かれた立場も全然違うのに、仇討ちに対する思い入れというだけで綱豊卿を思い出してしまった。吉右衛門さんは、大高源吾の付句を聞いてからの表情の変化が見もの。ここは大いに感情移入できる。

梅玉さんの大高源吾もとてもいいのだが、ついさっきまでの富樫の印象が強くて、はじめ気持ちとしてちょっと馴染めなかった。でも、討入後はばっちり。歌六さんの暖かさにほろっとした。
いつも思うのだが、大高源吾の付句の意味を其角は汲み取れなかったのだろうか。そこはやはり武士である松浦侯だから理解できたのだろうか。武士でなくても源吾の妹を松浦侯に推挙したほどの間柄である俳人ならわかるんじゃないのかなあ、なんてまたナンセンスツッコミをしたりして。
適度に笑いもあって、明るい結末で、正月公演昼の部の最後としてはいい芝居だったと思う。
おまけ:舞台写真は出ていたが、筋書きにはまだ入っていない(いつからか訊くのを忘れた)。よっぽど團十郎さんの弁慶を買おうかと思ったけど、moneybagngだって。
<上演時間>「娘七種」18分(11001118)、幕間15分、「石切」70分(11331243)、幕間30分、「勧進帳」72分(131314 25)、幕間20分、「松浦の太鼓」75分(14451600

|

« ラブ歌舞伎座・28(ユニフォーム) | トップページ | 浅草アルバム:スカイツリー篇 »

歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

SwingingFujisan様
 おはようございます。歌舞伎座 昼 の感想拝見しました。昼の部の3作品は各俳優の得意演目を並べて、さながら豪華お節の三段重のようでしたね。
 ところで、私は昨日は演舞場の夜に行ってきました。感想を少し。今月は四座あくので、全部みようとしたら、こちらのスケジュール、体調管理も大変です。若手の芝居は、中日以降がぐんと良くなることが多いので、「伊達の十役」と、浅草歌舞伎は後半でとりました。
「伊達の十役」は猿之助で2~3回、見ています。猿之助十八番の中では、「再岩藤」「小栗半官」などと並んで傑作だと思います。単なる早替わり、宙乗りを楽しませるだけではなく、「御殿」「床下」「対決」「刃傷」に相当する部分を、原作の「伽羅先代萩」を上手に変更し、内容が充実しているからだと思います。
 今回の海老蔵の十役の中では、予想どおり、勝元、仁木の二役が素晴らしく、いわば本役です。海老蔵贔屓、必見でしょう。(但し、夜の部は全席売り切れなんですね)。特に、仁木の凄絶さは前回の演舞場にもまして凄いです。ここでは、市蔵(外記)も好演です。(この二人、「夏祭り」の立ち回りもよかったですね。)一か所あげると、手負いの外記が抱えられて舞台下手に入るのを、仁木が追う場面、びっくりするぐらいの早さで追っかけます。その迫力たるや、総毛だちます。
 ほかの諸役(特に女形)では、セリフの発声、音調が奇妙なところが多く、観客の笑いをさそっています。とはいうものの、温かい笑いで、海老蔵の得なところです。一番肝心な政岡は、何人かのブロガーの方が言われるほど、ひどいものとは思いませんでした。セリフも低めに抑え、感情の込め方、挙措も、玉三郎の指導だけあって本格です。ちょっと、脇道にそれますが、内掛けを脱いだ、緋色の衣裳の着付に妙な、だぶつき感があった様な気がします。ただ、玉三郎もややそのきらいがありましたかね。歌右衛門はもう少しピシット着ていたような気がしますが記憶違いかもしれません。Fujisanさんが、ごらんになったときの感想を聞かせてください。
ほかの諸優では、笑三郎の栄御前は年齢からして無理かと思ったのですが、どうしてどうして、しっくり決まり、この優の独特の個性を再認識しました。 また、長々と失礼しました。

投稿: レオン・パパ | 2010年1月17日 (日) 09時51分

Fujisan様の他の記事にて「勧進帳」の話は「たっぷりとっっ」してしまったので控えようと思いつつ。。。
梅玉さんと團十郎さんは確か青学で同級生で仲良しだったようですよね?だから思いも一塩、息も合うのかなぁと思いました。
勘三郎さんは役によってすごく顔付きが変わるところが凄い!
法界坊と同じ人とはとても思えない(笑)品があってきれいな義経でしたねshine

実は私も秀調さん(特に愛嬌のあるお役の時)好きなのです〜。
思わず微笑んでしまうあったかい可愛らしさがありますよね。

投稿: 林檎 | 2010年1月17日 (日) 10時49分

レオン・パパ様
おはようございます(まだ、「おはよう」で間に合いますねsmile)。
演舞場夜の部のご感想、ありがとうございました。
私は夜の部1回目を今日見ます。おっしゃるように、若手のお芝居は後半ぐっとよくなる傾向がありますね(先輩世代でも日を追うごとによくなっていきますけれど)。「伊達の十役」も、早いうちは早替りが忙しすぎるような評がみられましたが、後半になると慣れてその辺も落ち着いてきているのでしょうね。
レオン・パパ様のご指摘を頭に置きながら見るようにします(夢中になって忘れてしまうかもcoldsweats01)。
とにかく初見ですし、今日は花道横なので、楽しみです。

歌舞伎座は昼夜1回ずつしか見ないのですが、昼の部、もう一度見たくなりました(3等席はもうないようなので、幕見しかありませんが、どちらにしてもスケジュール上多分ムリ…)。

投稿: SwingingFujisan | 2010年1月17日 (日) 11時17分

林檎様
「勧進帳」のお話、何度でも大歓迎です!!
梅玉さんと團十郎さん、同級生だったのですか。知りませんでした。梅玉さんは富樫を13回もつとめられてきたそうですから、呼吸も心得ていらっしゃるのでしょうね。昨日の東京新聞夕刊は梅玉さんのインタビュー記事でした→http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/tradition/CK2010011602000218.html

勘三郎さんは、歌舞伎見始めの頃は、法界坊のような役が楽しくて見ていたのですが、いつ頃からでしょうか、そういう役よりも楷書で演じられる役のほうが好きになりました。ほんと、同じ人には思えないsmile

秀調さんファンがいらして嬉しいですぅ。ちょっと地味目だからwink

投稿: SwingingFujisan | 2010年1月17日 (日) 11時23分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1083822/33002325

この記事へのトラックバック一覧です: 初春大歌舞伎昼の部:

« ラブ歌舞伎座・28(ユニフォーム) | トップページ | 浅草アルバム:スカイツリー篇 »