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2010年1月 3日 (日)

演舞場初日昼の部

12日 初春花形歌舞伎昼の部(新橋演舞場)
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毎年、国立劇場の音羽屋通し狂言初日が私の歌舞伎始めなのだけど、今年は初めて演舞場の初日に行ってみた。ただ、ちょっと風邪気味で(昨年の「にらみ」の効果は年が明けたら切れた)ずっと頭が重く、しばしば瞼が落ちてしまったので、感想もあまりまともじゃないかも。しょっぱなからこんな調子で…coldsweats02
「寿曽我対面」
去年は歌舞伎座の初春公演でかかった演目が今年は演舞場で澤瀉屋さん中心の舞台に、というので楽しみにしていた。ところが、体調不良のせいか、曽我兄弟が登場してからかなり眠ってしまった。
右近さんの工藤祐経は大きさは十分あっていい祐経だと思ったが、意外と大らかさがみられず、やや陰気な感じを受けた。工藤はむずかしい役だと思った(富十郎さんの大きさ、大らかさが私にとっては最高の工藤)。猿弥さんの小林朝比奈は存在感抜群、大磯の虎の笑三郎さんの品と大きさ、化粧坂少将の春猿さんの輝くばかりの美しさ(思わず、はっと息をのんだ)、そして笑也さんの十郎の美しく毅然とした佇まい、初春公演に相応しいいい芝居だと思う一方で全体にもう少しメリハリがあるといいかなあという気がしたのは、自分が寝てしまったのが悪い。獅童さんの五郎は、荒削りなのはいいとして、なんだろう、自分でもよくわからないが、上半身の動きにあまりきれいな印象を受けなかった。特筆しておきたいのは欣也さんの梶原景時。老獪なセリフに聞き惚れた。
「黒塚」
三響会で亀治郎さんの「安達原」は見たことがあるが、「黒塚」は初見。
右近さんの老女・岩手は、見た目が筋書きに載っていた猿翁に似ていると思った。能仕立ての第一景は、あまり動きがなかったわりには面白く見られた。とは言いながら、予想通り(能仕立てというだけで反射的に)途中で寝てしまい、老女の苦悩がわからなくなってしまった。糸繰り唄は長唄との掛け合いだったが、はじめその区別がつかず、途中で「おや?」と思って右近さんの口の動きを見たり、声を注意して聞き分けて、そうかとわかった。せっかくなのだから、もう少しわかりやすい掛け合いだとよかったのではないだろうか。
第二景は素晴らしかった。これまでの悪行を悔いて仏の教えに従えば成仏できると信じ、岩手は明るい気持ちで客人のために薪を取りに山へ行く。月の光の中で踊る岩手は童女の心に戻って、という心根だそうだが、右近さんのこのときの踊りはまさに純真で、希望に満ちて見えた。それだけに、閨を見られたと知った岩手が哀れで、その心情を思うと涙が出そうになった。ロシアンバレーの技法が取り入れられているというのは、よくわからなかった。猿弥さんの強力が逃げていく様などにはコサックダンス的なものがみられたが、岩手の踊りにもそういうエッセンスがあったのだろうか。
第三景の鬼はすごく怖いのかもしれないが、私は完全に岩手に思い入れしてしまったので、怖さよりもその怒りに同調し、せっかくの希望を打ち砕かれた哀れさをただただ気の毒に思うばかりであった。確かに、罪もない人々を殺した鬼女ではあるが、第二景を見ればそう思わざるを得なかったのだ。
阿闍梨の門之助さんは高僧らしい品格が現れていたし、猿弥さんの踊りは全身で恐怖を表していて見事だった。
「黒塚」という舞踊劇、一度で好きになった。

「春興鏡獅子」
これも去年の歌舞伎座初春公演でかかった演目(勘三郎さんの素晴らしい弥生)。海老蔵さんでも見たことがあると思っていたら、それはパリ公演のビデオをどこかでさんざん流しているのを見た記憶であった。ということは海老ちゃんでは初見か。いや、海老蔵襲名公演で見ていました(ほとんど覚えていないcoldsweats01)。
老女・飛鳥井は右之助さんだったが、この役はもう少し年配で体の大きい人のほうが合うのではないかしら。右之助さんはほっそりしていてきれいなのだけど、私の中で飛鳥井のそういうイメージができあがっているせいか、あまり合わないような気がした。局・吉野の歌江さんと逆でもよかったのではないかしら。飛鳥井が華奢だった分、海老ちゃんの弥生がよけい大きく見えてしまった。
愛らしさや目の動きなどの細かい部分には丁寧さが感じられたし、踊りもよかったけれど、やっぱりデカいよなあcoldsweats01
獅子は意外と豪快な感じがしなかった。別に豪快じゃないからよくなかったんじゃなくて、海老ちゃんなら豪快に違いないという自分の先入観が覆されただけ(誤解があるといけないので付け足すと、私がイメージする荒々しさと少し違ったかなという感じ。意外と落ち着いた印象を受けたので)。動きに勢いもあったし、美しいし、毛振りも見事だったし(レオン・パパ様によると、壇に上がってから49回もsign03 夜の部も大変なのに千穐楽までの体力が心配になってしまう)、満足。胡蝶の2人は、とくに獅子との絡みがよく、本当に獅子のまわりを飛び交っているような錯覚さえ覚えた。
傳次郎さん渾身の「いや~ッ!!」、それに呼応する傳左衛門さんの「いよ~ッ!!」の太鼓と鼓も素晴らしかった。
昼の部はもう一度見るので、次回はしっかり体調を整えておかなくては。
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人力車にもお飾りがhappy01

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

「黒塚」私もとっても好きになりました!暗い、怪しげな老婆から改心して、また鬼に戻っていく。。。右近さん見事に表現していましたよね。一幕目のほとんど真っ暗な冒頭部分や、二幕目の一面ススキ野原の中の老婆というなんとも枯れた風情が舞台全体としてとてもカッコいいnotesいつも華やかな舞台ばかり見ているせいかとても新鮮に写りました。亀ちゃんとかでも見てみたいなぁ。。。

「鏡獅子」前シテは動きがずいぶん滑らかに、そして女らしくなったなとおもいました。確かに元々ガタイがいいから「可愛らしく」とはなかなかいかないけれど、前はかなり無理があるなと思っていた女形もすんなりはいってきました。毛振りはスゴイなと思っていたら、なんとそんなに振っていたんですね~!初日で気合が入ってたのかもcatface

Fujisan様はじめ、沢山の方が初日にいらっしゃったようできっとすれ違ったりしてましたねhappy01

投稿: 林檎 | 2010年1月 3日 (日) 23時44分

林檎様
三響会で「安達原」を見て以来、「黒塚」を見たくてたまらなかったので、この日を楽しみにしていました。
林檎様も「黒塚」の不思議な魅力に引き込まれたようでいらっしゃいますが、私もあの世界に取り込まれてしまいましたわ。
亀治郎さんもきっといつか演じられると思います。

「鏡獅子」はそういえば、海老蔵襲名公演でやったのでしたね。忘れていました。

お互い、知らずにどこかですれ違い、あるいはすぐそばで舞台を見ていたりして。そう考えると楽しいですね。

投稿: SwingingFujisan | 2010年1月 4日 (月) 01時20分

SwingingFujisan様
 今晩は。お風邪は完治されましたか。お正月は多忙でしょうから、こじらせないことをお祈りしております。同日拝見の、演舞場 昼の部、ご感想楽しく読ませていただきました。演目立てが、舞踊公演みたいでしたが、私としては、正月初芝居で疲れない演目立てで相応に楽しみました。「対面」は獅童が、おっしゃるとおり、発声、かどかどの決りが荒事らしくなく(恐らく腰高の故でしょう)、未完成のように感じました。右近も工藤役の貫録は、出せていませんでした。歌舞伎役者としての、年季のいる役なのでしょう。一方、猿弥が、安定感、抜群の朝比奈で感心しました。
「黒塚」は右近、熱演ですが、月明かりの下、童女の頃を思い出し、影とたわむれる第二景の踊りは、猿之助の陶酔感にはかなり距離があったと思います。また、ここでも、猿弥の強力が段四郎の傑作を思い出させ、秀逸でした。
 さて海老蔵の「鏡獅子」ですが、前シテは以前の所演よりはいいものの、やはり生硬さが付きまといました。「黒塚(右近の鬼女)」と同じく役の陶酔感が希薄です。この前シテについては、梅幸が傑作でしたね。舞台から、かぐわしい春風が吹いてくるがごとき陶酔感(当方が少しアルコールが入っているとさらに結構でした。)がありました。但し、後シテのいいこと・・。跳躍して、ひな壇に降りて決ったときの見得の眼力は、当代一でしょう。まさに「成田屋」!です。毛ぶりの回数が多いのは、玄人批評家筋からは、あそこまで振らなくてもとか、とかく言われますが、私は若い役者の躍動感を感じて、いつも楽しみます。幕切れの、片足あげも、かなり高めに上げ、爽快でした。
 ところで、黒塚が終わったあとの幕間、一階で車椅子の猿之助(同行のご老人が何人もいました)と、実に十年近くぶりで遭遇しました。幹事室から、演舞場の会長室(一階トイレの手前です)へ行く途中でした。あれほど元気だった人がと、感傷ひとしおでした。私としては、一時代を築いた、自分の歌舞伎の遺産をどんどん、海老蔵、亀治郎に引き継いでほしいと、切に願いました。

投稿: レオン・パパ | 2010年1月 4日 (月) 21時29分

レオン・パパ様
こんばんは。ご感想、お待ちしておりました!!
猿之助さんの「黒塚」をご存知の方の目に右近さんの岩手はどのように映ったのだろうかと、ご意見を伺うのを楽しみにしておりました。
なるほど、陶酔感ですか。海老蔵さんの弥生にしても、そう言われると、それはちょっとわかるような気がします(梅幸さんって、そんなに素晴らしかったのですか。私も梅幸さんは見ているのに)。次回の観劇の際には、第二景をそういう目で見てみます。
海老蔵さんの後シテは、完成度の高さが逆に私には物足りなさのように感じられてしまったのかしれません。私も、毛振りの回数は多いほうが好きです。おっしゃるように、若い躍動感にわくわくします。
猿弥さんのうまさは群を抜いていますね。うまいから場数を踏める、場数を踏むからますますうまくなる、そんな感じがしています。

猿之助さんの車椅子姿、痛ましいですね。私は直接猿之助さんの全盛期を知りませんが、その芸を本当に引き継いでいけるのは、まずは亀治郎さん、そして海老蔵さんだと私も思います。右近さんも猿之助さんの芸を自分のものとして消化してほしいものです。

風邪は幾分よくなってきましたが、なかなか休めないので完治までには時間がかかりそうです(この後しばらく観劇予定はないのですが、仕事がたまっていて…)。ご心配、ありがとうございます!!

投稿: SwingingFujisan | 2010年1月 4日 (月) 23時37分

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