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2010年2月 4日 (木)

2月歌舞伎昼の部2・俊寛

23日 二月大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)
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「俊寛」
「俊寛」という演目は、見れば「よかったぁweep」と感動するのに、上演が発表になるたび「また俊寛かぁ」とちょっとテンションが下がる。つまり決して好きな演目ではなく、ベスト20アンケートにどうして入っているのかもわからない(14位)。そんな「俊寛」なのに、このたび、もしかしたら好きになったかも。
「俊寛」については見るたびけっこう色々書いているのと思うので、今回は別の視点から。
何度も見ているのに今頃になって初めての発見。花道から少将と康頼がやって来てセリフが語られ出す頃、大きな岩の周りの砂浜の布がす~っと引かれ、波布が現れた。ついさっき俊寛がその岩陰から登場したあたりの砂浜である。いつの間にか波がそこまで寄せてきていたという風で、後の砂浜が波に変わる見事な舞台転換につながるうえ、島の生活の厳しさを思わせて感心した。
勘三郎さんの俊寛は、実に自然な感じがする。登場したときから、俊寛その人に見える。鬼界ケ島の伝説が残る鹿児島県硫黄島で平成8年に「俊寛」を演じた体験が勘三郎さんを自然に俊寛に入らせるのだろうか。
先代追善公演にどうしてもこれをやりたかったというのは、先代最後の舞台での「互いに未来で」の一言が今でも耳に残っているからというのは、あまりに有名な話。そういう頭で当代の「未来で」を聞くと、それは天国の先代に応えているようでもあり、次世代の勘太郎・七之助兄弟へ思いを伝えているようでもあり、私もぐっときた。
七之助さんの千鳥は、瀬尾と戦う俊寛に加勢する姿に父とも慕う人を助ける必死な思いが表れ、俊寛を残して船に乗るのに後ろ髪を引かれながら少将の顔を見れば思わず走り寄る、そんな若い娘の複雑な気持ちが滲み出ていた。前回見た千鳥のクドキはロボットみたいな動きで違和感を覚えたものだが、千鳥はそれでいいのだとこの前何かで知り、じゃあそういう目で見てみるかと意気込んでいたのに、クドキのところだけ寝てしまった。
扇雀さんの康頼が意外と(失礼)よかった。花道から出てきて砂浜に座ったとき、なぜか「ああこの人は貴族なんだ」と強く思い、心が揺さぶられた。康頼にこんなことを感じたのは初めて。
しかし、都の生活から突然流人に貶められたのに3人ともけっこう適応力があるのだなあ。少将・康頼とは離れて1人で暮らしていた俊寛だが、それでも仲間がいるという心強さはあったろう。本当に1人ぼっちになってしまったこれから、俊寛はどう生きていくのだろう。
「俊寛」は上から見てこそ、その孤独感が身に沁みる。

つまらぬツッコミというか、何というか:岩にのぼって船を見送る俊寛が松にすがると枝が折れる。おっとっとっとと前につんのめる俊寛。私はいつも「危ないっ、落ちるっ」とハラハラしちゃうのである。感動のさなか、何考えてるんだかcoldsweats02

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コメント

SwingingFujisan様
 こちらにも、コメントさせてください。
 今回の追善演目、「爪王」以外は先代ですべて見ているのですが(長谷川一夫との「ぢいさんばあさん」をナマで見たのが自慢です。長谷川の大衆演劇風の演技術はある意味すごかったですよ。三階前列下手に向けての流し目の演技はサービス満点の上方歌舞伎風演技のプロそのものでした。)、まだほかの演目、黙阿弥、長谷川伸の作品もみたかったなと思いました。
 ところで、またかの「俊寛」ですが、幕切れ、先代は虚空をみつめ、微かに笑いました。見ている人間にいろいろな思いを抱かせる演技でした。以前みた当代は笑いませんでしたし、幸四郎、吉右衛門も笑いません。もう一度、笑う演技を見てみたいと思っています。

投稿: レオン・パパ | 2010年2月 7日 (日) 09時30分

レオン・パパ様
こちらにもありがとうございます。
俊寛の微笑み、先代がそういうことをなさったということは存じませんでしたが、最後に微笑むというのは、とてもいいやり方だと思います。あそこで微笑むといいなあと、私もずっと思っていたのかもしれません。
今回の俊寛はどうだったでしょう。残念ながら覚えていません。ただ、とても穏やかな表情で、ほんの微かに微笑んだような気がしないでもありませんでした。というのは、そうであるといいなあと思う私の気持ちが勝手に作り上げた像なのでしょう…。ちゃんと見ておけばよかった。

長谷川一夫がるんをやっていたんですねえ!! かの有名な流し目を実際にご覧になったんですね!! それは十分ご自慢に値しますよ。映像を見てみたいものです(歌舞伎チャンネルでやらないかしら)。

投稿: SwingingFujisan | 2010年2月 7日 (日) 09時55分

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