« 二月歌舞伎夜の部2:高坏 | トップページ | ラブ歌舞伎座・30(地口がいっぱい) »

2010年2月12日 (金)

二月歌舞伎夜の部3:籠釣瓶

28日 月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)
私の歌舞伎の原点とも言うべき演目が夜の部最後のこれ。
「籠釣瓶花街酔醒」
闇に包まれた舞台が一瞬にして華やかな吉原の町になる(「お芝居が始まるとしばらくはお入りになれなくなります。お早めにお席におつきください」。この瞬間をお見逃しなく)。「ああ、これだ」と思わず口に出しそうになった。子供心に強く印象付けられた満開の桜のこの明るさ華やかさ美しさ。金棒の威勢のいい音。豪華な花魁道中。今、それが目の前に再現されていると思うと、次郎左衛門ならずとも、きょろきょろうろうろ道中にくっついていきたくなる。
勘三郎さんの次郎左衛門は、八ツ橋に魂を奪われる表情が少しずつ変わっていくのがいい。驚き、ちょっと睨みつけるように、そしてとろけるような呆けた顔。その中に、悲劇のラストが示唆されるような暗さが見られるようで、ちょっとぞっとした。
八ツ橋はもっと無残に何太刀も浴びせられるのかと思っていた。しかし「籠釣瓶はよく斬れるなあ」というのであるから、一刀のもとに絶命して当然なのであろう。「伊勢音頭」とか「女殺」とか「三五大切」とか、そんな殺しの場面とごっちゃになっていたのかもしれないcoldsweats02
愛想尽かしの場は、自分がその場にいるかのようにどきどきといたたまれないような気持ちになった。商人仲間(市蔵・亀蔵兄弟っていうのが嬉しい)に自慢していた仲の八ツ橋に満座で恥をかかされたその恨み、悲しみが勘三郎さんの体全体で表現されていた。八ツ橋がもう少し注意して次郎左衛門を見ていたら、4カ月後、お座敷がかかっても決して出かけなかったに違いない。
次郎左衛門を慰める九重の魁春さんに優しさが溢れていて、こちらの心も慰められた。
玉様の微笑み。私の席からもぎりぎりで見えた。自分に見とれる男に投げかける余裕の微笑は誘うようでもあり、この笑みがあったからこそ、次郎左衛門は八ツ橋の許へ通うようになったのだろう。玉様の八ツ橋には、生身の女を感じた(生身といって生々しいという意味ではない。存在感というのともちょっと違うような気がする。うまく表現できない)。誇り高い吉原随一の遊女だって、生身の女なのだ。生身の女は、だらしない男に恋をし、心の中で手を合わせても大事な客を裏切る。その決意がよく伝わってきた。
だらしない男、栄之丞(仁左様)はしかし、こんな男がいたんじゃしょうがあるめえといういうほどいい男。だからこそ、次郎左衛門はよけい許せなかったのかもしれない。廊下から様子を伺っていた栄之丞がさっと身を翻す--栄之丞と次郎左衛門両者の心境が一瞬にして伝わってくる見事な一瞬だったと思う。
あまり後味のいい演目ではないはずなのだが、原点ゆえの甘さか、全然後味の悪さを感じないのよね~
鶴松クンの初菊が初々しくて愛らしかった。こんな子に客取らせちゃいかん。あ、でも初菊だって花魁なんだ。
我當さんがさすがの貫禄で大きさを見せた。秀太郎さんの醸し出す廓の女将の雰囲気は絶品。この2人の登場で、舞台がさらにしまる。

女中・お咲として小山三さんの名前が筋書きに出ていたので「嬉しいっ」と期待したが、実際に舞台にいらしたのは今月名題昇進披露の國久さんだった。歌舞伎座の方に「小山三さんは休演ですか?」と訊いたら、「休演ということは聞いておりません」という返事で、何となく歯切れの悪い感じを受けたのが気になる。館内にも休演のお知らせはなかったし…。急なお病気なのかしら。もっとも、お咲は仕事の多い役だから、高齢だし体調があまりよくなさそうな小山三さんには元々難しかったのではないかと思う。とはいえ、一番残念なのは小山三さんご自身だろう(大好きな大旦那の追善だもの)。無理をなさることなく、お元気を回復されますよう。
<上演時間>「壺坂霊験記」73分(16301743)、幕間20分、「高坯」30分(18031833)、幕間30分、「籠釣瓶」115分(17032058

|
|

« 二月歌舞伎夜の部2:高坏 | トップページ | ラブ歌舞伎座・30(地口がいっぱい) »

歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

今日、戻りが出ていたので、仕事終わりで夜の部参戦してまいりました!
残念ながら壺坂は間に合いませんでしたが、高坏には余裕♪で楽しんでまいりました。舞台写真も目の色変えて物色…我ながら下品ですわ、、、反省です…。
そして、三階から見る八ツ橋花魁…ん~まいちど見たくなってしまふ…
次郎左衛門のように帰りたくなくなり、久々にKen′sさんへ☆ますますトロけて帰途につきました。
三月は皆様と違ってジミめなカンゲキですので、今月もちっと頑張ろうか、でもおサイフが><と悩める毎日です…。
今月は今のところあとは昼の部のみなのです、、、
私もオリンピック楽しみです!真央ちゃんの活躍を期待しています♪

投稿: 七子 | 2010年2月17日 (水) 23時17分

七子様
素敵なアフター5をお過ごしになられましたのねhappy01 
いいではないですか、舞台写真の物色。誰だって、大好きな役者さんがいればそうなりますよsmile
吉原一の花魁でも、花魁は悲しい身の上。八ツ橋の運命を狂わせた次郎左衛門との出会い(それは、次郎左衛門の運命も狂わせたんですが)を思うと、あの微笑まで悲しくなります。
いつか、七之助さんの八ツ橋、勘太郎さんの次郎左衛門で見てみたいですね。
今月はもう一度昼の部をご覧になるとのこと、いいなあ。私は「爪王」はもちろんのこと、意外にも「俊寛」をもう一度見たかったと思っております。
千穐楽まであと1週間。悔いのないご観劇を(けしかけているわけでは決してありませんよ)。

五輪では普段馴染みの少ない競技も見ることができるので、楽しんでいます。真央ちゃんの登場は来週ですねshine

投稿: SwingingFujisan | 2010年2月18日 (木) 01時19分

こんにちは。

今頃のコメント、お許しあれ。

昨日思ったのは、私はつくづく男の人の後姿が好きなんだなぁ(笑)ということ。それも着物を着替えているところにぐぐぐっときます。栄之丞がさささっと着物をかえ、帯をしめるところに惚れ惚れ。忠臣蔵でも、五段目か六段目で勘平が着替えるシーンがありますでしょ。あそこでめろめろです(^_^;
亀な上に変なコメントで本当に申し訳ないm(_ _)m。

京の床で桜を散らす場面の舞台写真があったらなぁ、と思った(もしかして売り切れだったのかも?)からつぎでした。

投稿: からつぎ | 2010年2月26日 (金) 17時48分

からつぎ様
いつでもコメント大歓迎です!!
男の人の着物を着替えているところ、素敵ですよね。よくわかります。きびきびとしてすがすがしい感じが私はします。
今月は前半しか歌舞伎座に行かれませんでしたので、舞台写真も、舞台写真入り筋書きも見ていません。そんな写真があったら、私も是非ほしかったですheart04

投稿: SwingingFujisan | 2010年2月26日 (金) 18時44分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1083822/33346823

この記事へのトラックバック一覧です: 二月歌舞伎夜の部3:籠釣瓶:

« 二月歌舞伎夜の部2:高坏 | トップページ | ラブ歌舞伎座・30(地口がいっぱい) »