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2010年2月21日 (日)

歌舞伎の拍手考

梅玉さんが東京新聞のコラムに「芝居を助ける客席、壊す客席」というタイトルで拍手のことについて書いておられる。
拍手は嬉しいけれど、困ることもある。「演技の途中や聞かせどころの台詞の途中での拍手でかえって芝居の盛り上がりが欠けてしまう」ことがあるのだという。これは、私も観劇していて時々実感することで、名台詞の最中に拍手が起こるとせっかくの台詞が聞き取れなくなる。いいところなのになあ、と必死で耳を傾けながら残念に思ったりする。と言いながら、私も時々それをやってしまうが、拍手はできるだけ台詞が終わった頃にするよう心がけている。
梅玉さんはまた、大薩摩や三味線演奏への拍手についても、聞こえなくなるから残念とおっしゃる。演奏への拍手は、私も毎回やってしまう。梅玉さんによれば、芝居や演奏の最中に拍手をするようになったのは比較的最近のことではないかということだ(梅玉さんが子供のころには今ほど拍手はなかったそう)が、とくに演奏の場合<ここぞ拍手のしどころ>という感じで、拍手をするのが当たり前になっている感は確かにある。梅玉さんは「勧進帳」の手拍子についても触れておられるが、言うまでもなく、それは論外だろう。
息をするのも忘れるくらい芝居にのめりこみ、幕が下りてしばらくしてから我に返り素晴らしさに手を叩く、そういう拍手をもらえる芝居をしたいものだと、梅玉さんは結んでおられる。そういう芝居もあるな。確かに歌舞伎の場合はこちらも様式的(?)になってしまう面があるのかもしれないけれど、芝居の途中だって思わず拍手をしたくなる素晴らしい場面だってあることはあるんだもの。でも拍手が役者さんや演奏者にとって都合の悪いこととはあまり考えたことがなかったが、これからはそういうことも頭に置いて拍手しよう(でも、いいところではやっぱりつい拍手しちゃいそう)。

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歌舞伎ミーハー日記」カテゴリの記事

コメント

はじめまして。いつも楽しく読ませてもらっています。

拍手については私も気になっていました。もうちょっと拍手のタイミングを我慢して欲しいなと思うことがあります。特に花道のひっこみで、まだ しどころがあるのに観客が待ちきれないように拍手をしてしまうと、役者さんはリズムをくずしてしまうのではないかと心配してしまいます。

歌舞伎役者さんの書いたコラムは珍しいですね。私も探して読んでみます。

投稿: ウンチェ | 2010年2月21日 (日) 21時38分

拍手は幕が下りてから、という言葉もあったくらいで、上演中に観客が参加する演劇ならではの、拍手や掛け声は悩ましいですね。確かに、最近は爆裂的、自己アピールの悪形が目立つので、舞台の上でも、客席でも迷惑することが多い。あれこそ、紙上で具体的に注意してもらいたいくらい。
 (手拍子は論外として)自然発生的なものや、真に感激感動してならば、どんな形を取ったとしても気持ちは伝わるものです。ただし、毎月毎週、その日の舞台はその日にしかないと思って観ている身からすれば、正直なところ、邪魔でしかない。歌舞伎を観付けない人にはくれぐれも自制して頂きたい。邪魔をする意図がないにせよ、観るためにはそれなりの勉強が必要な演劇だと理解して貰いたいですね。今は皆な、余りにも気安いから。
 ただし、舞台は観客みんなのものであって、演者だけのものでもありません。関係者が観客を萎縮させてはいけないし、伝統芸術だと緊張して観劇するのも宜しくないし。本当に難しい。演ずる側は拍手をするのを忘れてしまうくらい、スキのない感動の舞台を心掛け、見る側は謙虚に、のびのびと名演を楽しめるとよいですね。妄言多謝。

投稿: 裏梅 | 2010年2月21日 (日) 23時36分

初めまして。
素晴らしいことを伝える手段は拍手だけではないと思います。
素晴らしい!→すぐ拍手、となる最近の傾向はあまり好きではないので、私は逆に拍手をあまりしないようになってしまいました。
その場で拍手してなくても、感動していないわけではない!と強く訴えたくなりました(笑)

投稿: M | 2010年2月22日 (月) 00時04分

ウンチェ様
裏梅様
M様
みなさま、はじめまして。
コメントありがとうございますsign03
ただ今、携帯にてのアクセスしかできない状態にあります。もちろん携帯からでもレスは可能なのですが、パソコン画面で頂いたコメントをもう一度拝読しながらお喋りしたいと思っております。ですので、大変申し訳ありませんが、今しばらくお待ちくださいませ。

投稿: SwingingFujisan | 2010年2月22日 (月) 00時26分

ウンチェ様
あらためて、はじめまして。
コメント、ありがとうございました。
確かに、役者さんのリズムやタイミングよりちょっと先走る感じのする拍手というのがありますよね。歌舞伎を見慣れている方がいち早く拍手し、それにつられてあちこちから拍手が起こるということもよくあり、またいっぽうで私なりにここは拍手のしどころじゃないのというタイミングでためらいがちな拍手が起こることもあり…。
いろいろ考えると拍手ってむずかしいものですね。私は小心者ですので、「おおっ、ここは拍手」という場面でもまずは心の中でぱちぱちぱちと手を叩き、あとは周囲に迎合しますcoldsweats01
梅玉さんのコラムは、東京新聞日曜日のTV欄の中にあるのですが、残念ながらWebでは読むことができないようです。ただ、ご自身のHPの「言いたい放談」で何日か遅れで公開されています。HPはこちら⇒http://www.baigyoku.com/top.htm

投稿: SwingingFujisan | 2010年2月22日 (月) 07時57分

裏梅様
あらためて、はじめまして。
コメント、ありがとうございました。
お芝居の途中で拍手が起こるのは、歌舞伎くらいなものでしょうか。ミュージカルやオペラのアリアなどのあとに拍手が湧くことはありますが。
私も自分自身が爆裂的に拍手をすることが(周囲に迎合して、ですcoldsweats02)間々ありますので大きなことは言えないのですが、ここは静かに聴きたい見たいと思う時があるのも事実です。また一方で、ここで拍手がないのは寂しいと思う時もあります。でも、それは拍手に毒されているということなのかもしれません。
掛け声も、さすがに実際にかけることはしませんが、時々心の中で叫んでいます(最近妙なタイミングだったり、芝居を壊すようなものが時々聞こえてきますねbearing)。
見る側と演じる側の心が一つになる、そういう舞台であれば、おのずと拍手の起こり方も変わってくるのかもしれません。
裏梅様のおっしゃるように、「演ずる側は拍手をするのを忘れてしまうくらい、スキのない感動の舞台を心掛け、見る側は謙虚に、のびのびと名演を楽しめる」、それが理想ですね。でもまあ、人それぞれ見方、楽しみ方がありますから…というところが難しいものですね。

投稿: SwingingFujisan | 2010年2月22日 (月) 08時17分

M様
あらためて、はじめまして。
コメント、ありがとうございました。
拍手がなくても客席が感動している、というのは空気でわかりますよね。それを一番実感したのが、昨年の「女殺油地獄」でした。その中にいる自分は舞台にも、その空気にも体が震えるほどの感動を覚えました。
人の楽しみ方はそれぞれ自由だと思いますが、舞台の感動を共有できるような楽しみ方ができるといいですね。よく亀治郎さんなどがおっしゃいますが、舞台と客席のキャッチボール--互いに一つの心になって熱く舞台を盛り上げていきたいものです。私も大いに反省しなくてはcoldsweats02

投稿: SwingingFujisan | 2010年2月22日 (月) 08時24分

私は絶対演奏の途中では拍手はしないことにしています。戸板康二氏もかつて指摘していました。「昔は途中で拍手はしなかった」と・・・この一文を読んで以降、私は強く自制しています。
クラシック演奏でも途中で拍手はないですし・・・長唄などで拍手がくると、こころ持ち頭をさげる演奏家もいるようにも思いますので、益々拍手喝采となっているように思えます。
特に「曲弾き」になると大きな拍手をする方がいて、つられてみんな拍手するのがとても気になります。
一方、お芝居の方は盛り上がってきて「ここで」と言う時に大向こうも拍手もないのは本当に寂しいですね。
役者の最初の「出」には特に贔屓の役者には大きな拍手をしたくなってしまう(もしかしたら近所迷惑な)わたくしであります。勿論場面を考えて音の大きさは考えているつもりです。逆に誰もしない時に贔屓の役者にわたしひとりささやかな拍手しているときもあります。「なぜ皆さん一緒に拍手してくれないの?」とか、「私はこの役者を贔屓にしていますよ」というささやかな自己主張ができたという嬉しさと両方ありますね。こんなときは。
我々多くの観客にとって、「大向こう」は難しいですし、役者への観客からの化粧声(声援)の代わりとしての「拍手」は度が過ぎては困りますが、仕方ないのではないでしょうか。

投稿: うかれ坊主 | 2010年2月22日 (月) 21時21分

 楽しみ方は自由だ、ということを安易に口にする輩がいるから、万人に誤解が生じるのだと思います。歌舞伎を観るということは、決して自由ではない! これだけは断じて曲げられないルールです。歌舞伎には観るにルールがあって、この一点が歪んでいるから、イキや間を分かっていない、爆裂拍手や身勝手な掛け声という、目を覆い耳を塞ぐしかない惨状があると言っても過言ではないのです。正しい味わい方をしたいだけの、純粋な歌舞伎の観客には、本当に邪魔なのです。願いはひとつ、単に歌舞伎を心底楽しみたいだけなのです。
 客席が埋まらない日々を体験してきたオールド歌舞伎ファンは、鷹揚にして余りにも寛容な、多少なことに目を瞑る、善良にして優しい観客だったから、このような現状にも何も言えなくなっているのです。残念なことに、全ては、役者も含めて、自らが招いたのだともいえます。
 歴史や伝統から言っても、歌舞伎は、気楽に自由奔放な観方が出来るような、独り善がりな演劇ではありません。本来は同時代の演劇だったのですが理解できる者が少なくなったことから、現代においては伝統的な音曲の素養が必須の演劇として成長してきました。今や、それなりに成熟した観客が相手です。ニンを恃んでの興行は営業公演であって、大多数の役者が望む歌舞伎ではないと思います。舞台の演技こそが役者の言葉だと十二分に承知している筈の高砂屋の主張は、現状を憂う視点からの、已むに已まれぬひと言です。そこのところを観客は真摯に理解すべきであり、劇場も観客に理解させるべきです。

投稿: 高砂や | 2010年2月22日 (月) 22時35分

うかれ坊主様
コメント、ありがとうございます。
少なくとも演奏についてはやはり、拍手は最近の傾向なのですね。歌舞伎歴7年目の私(何十年もご覧になっていらっしゃる方にくらべればヒヨッコですが、さすがにもう初心者とはいえませんね)は当初のことは覚えていませんが、現在三味線の曲弾きには拍手しています。もちろん見事な演奏を讃える気持ちはありますが、手を叩くことが礼儀のように思っていました。たまたま拍手がないと、なんだか背中がそわそわするような気持ちにさえなります。でも、なぜ三味線だけなんでしょう。鼓などにはどんなに素晴らしくても拍手しませんよね。これからは、演奏途中の拍手についてはちょっと考えてみようと思います。

贔屓の役者さんの出には、私も格別に大きな拍手を送ってしまいます。私も近所迷惑かも。 
芝居の最中について言えば、拍手がないと寂しいと感じることが間々あります。これまでにも何回か、当ブログでそんなことを書いた記憶があります。芝居の内容によっては拍手で盛り上がるということもあるのではないでしょうか。また、芝居の途中でも感動して心から拍手を送るということは、これまでもあったように思います。私は小心者で迎合的なので、自分だけで手を叩くことはほとんどありませんけれどcoldsweats01

投稿: SwingingFujisan | 2010年2月23日 (火) 07時06分

高砂や様
きびしいお言葉、ありがとうございます。
歌舞伎を観るということは決して自由ではない! というルールがあるとは考えませんでした。いや、もちろん、それなりにマナーがあることはわかっておりますが…。
高砂や様のコメントを拝読して、単純にミーハーミーハーと劇場に赴く私には「さて歌舞伎を観るというのは難しいものだ」とため息が出ましたが、だんだんおっしゃることがわかるような気がしてきました。
でも、高砂や様、単純に歌舞伎を楽しみたいのは私も同じです。その楽しみ方はもしかしたらルールから外れているかもしれません。だとしても、きっともっと長く観ていくうちに、修正される可能性はあると思います。たとえば拍手――決して他人様のせいにするわけではありませんが、6年間見てくるうちに、迎合的な拍手を覚え、しかしその一方で時としてそんな拍手に疑問を感じることもあり、それはもしかしたら自分が少し成長したのかなとちょっぴり自画自賛したりして。
歌舞伎を心から愛する人たちは、たとえ今ルールから外れているとしても、自然とそのルールに近づいていくのではないでしょうか。また、間やイキといった絶対曲げられないルールを守れば、新しい観方が許される余地があってもいいのではないでしょうか。同時代の演劇であった頃の歌舞伎というのは寛容の(許容範囲が広い)演劇であったと私は思っているのですが。歌舞伎そのものがそうであれば、客のあり方にもある程度の寛容は許されるのではないかと(もちろん、基本ルールは基本ルールです)。
そんなことを言いながら、梅玉さんの主張が已むに已まれぬものであるという高砂や様のご意見、私もまったく同感です。

投稿: SwingingFujisan | 2010年2月23日 (火) 07時42分

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