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2010年3月17日 (水)

3月歌舞伎第三部

312日 御名残三月大歌舞伎第三部(歌舞伎座)
第二部と通しで見た第三部。すっかり遅くなってしまった。感想というのは、すぐ書かなければダメだと痛感。
10031701tuizen 「道明寺」

十三代目片岡仁左衛門十七回忌・十四代目守田勘弥三十七回忌追善公演。
どのあたりからだろうか。場内がしんと静まり返り、厳粛な空気に包まれた。その中でも時々笑いを誘う場面があったりして、少しほっとするのだが、菅丞相が出てくると、神々しさに客席も打たれるのだ。私など、本物の(つまり木像でない)菅丞相のお姿があまりに有り難くて涙が出たくらい。まったく仁左様は、本当の道真公もかくありや。美しく、気高く、悲しい。最後、苅屋姫に檜扇をそっと渡す場面、父と別れたばかりの私はたまらず滂沱の涙を流した。
この演目はちょうど4年前の先代13回忌追善公演でも見ているが、残念ながら私のブログはその年の8月に始めたものであり、3月の記録はない。それでもけっこう記憶に残っているから、当時もかなり感動を覚えたに違いない。木像と一緒の写真にしようか仁左様1人の写真にしようか散々迷って1人のにしたけれど、木像のほうも買えばよかった。
菅丞相は醍醐天皇の信任厚かったから朱雀天皇もわかってくださるだろうと思っていて、敢えて弁明しなかったそうだ。ところが結局朱雀天皇はわかってくださらなかった。機を見るに敏い時平との対比が現実問題として興味深い。
立田の前の秀太郎さんがとてもいい。あんなバカで軽率な男とどうして夫婦になったか不思議でならないが、好きになっちゃったんだからしょうがない(とは小山觀翁氏の言)という風情がよく出ていた。あんまり哀れで、心の中で手を合わせた。
孝太郎さんの苅屋姫は、「加茂堤」よりよかった。無謀なことをする世間知らず的な可愛らしさがあり、父に対する思いも切々と感じられた。ところで、菅丞相は菅秀才という息子がありながらどうして苅屋姫を養女にしたのだろう。ナゾですな。第一、覚寿が菅丞相の伯母ならばその実の娘である苅屋姫は菅丞相にとって従姉妹ではないか(伯母の子だとはわかっているのに私はずっと姪だと思い込んでいた。さっき友人に指摘されて、「あら、ほんと」と初めて気づいた次第)。
そしてまた良かったのが我當さんの輝国。真面目な役人でありながら大きさもあたたかさも兼ね備えている。松島屋3兄弟に孝太郎さん揃っての好演が十三代目の何よりの追善になったのではないだろうか。

玉様の覚寿。私は覚寿という人は、苅屋姫を折檻したりするから豪傑ばばさまだという気がしていた。多分前回の芝翫さんからそんな気概を感じ取ったのだろう。しかし玉様の覚寿はそういう気概も見せつつ、時として呆然としたり、しょんぼりしたり、とても人間くさいお婆さんで、共感を覚えた。立田の前を殺した人物に気づいたときの驚き、半信半疑、確信には、まったく同じ気持ちになってどきどきはらはらした。娘の1人は殺され、もう1人は菅丞相流罪の原因を作り、その過酷な運命が本当は背の高い玉様の体を小さく見せてこの覚寿もまた哀れな女性であることが胸を痛くした。
先月の「ぢいさんばあさん」ではいただけなかった玉様の老け化粧だが、
あまりシワなど描き込まないで白髪だけでもいいような気がする。
「加茂堤」には古代の大らかな雰囲気が漂っており、「筆法伝授」には古代的なものと現代的な空気が混じり、「道明寺」にはきわめて現代的なにおいが感じられた。上演時間約2時間の「道明寺」、全然長いと感じなかった。ただひとつ、長さを実感させるものがあるとしたら、それはお尻の痛みだろうか。
「石橋」
ごめんなさい、かなり寝てしまいました。千穐楽にはしっかり見ます。
<上演時間>「道明寺」115分(18001955)、幕間30分、「石橋」40分(20252105

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コメント

仁左様は高貴で、「潔癖」というぐらい汚れたものを受け付けないような清潔感があって、あまりの神々しさと存在感に圧倒されましたshine籠の出入りの時は実は人形という事で、動きが微妙にぎこちなくて顔つきにも生気がなくて、その姿との対比で余計に神々しさが際立ちましたね。本当に素晴らしい役者さんですheart02

そうそう、玉さまの化粧は私も気になってたのですよ〜!あんなに完璧な美的感覚を持っている方が、なぜ?玉さまらしくないですよね〜。いや逆に、美意識の高い玉さまだからこそ、老けの化粧が苦手なのかな?sweat01でも、気品は溢れてましたね〜shine
ちなみに石橋は、思ったよりずっと良かったですよcatface

投稿: 林檎 | 2010年3月18日 (木) 16時32分

連コメ失礼しますsweat01さっき思い出したのですが、今朝のめざましで歌舞伎座さよなら公演を取り上げていて、仁左、玉コンビが出てたのは見ましたか〜?あのお2人は、素顔でも品があってとってもお似合いheart01
この凛とした気品が少しでも私にあったらなぁと朝から少し反省したのでしたbleah

投稿: 林檎 | 2010年3月18日 (木) 20時54分

SwingingFujisan様
 今晩は、遅い時間に失礼します。先ほど、歌舞伎座第三部見終えて帰宅しました。「道明寺」大変充実していました。菅丞相は、仁左衛門以外の配役は考えれません。幕切れ花道の引っ込みは、大粒の涙が松嶋屋の目から流れ感激しました。先々代の名演(天神様になった松嶋屋といわれたものです。)を見て以来の観劇で、名作を堪能しました。玉三郎の覚寿は、理知的な演技が好悪の分かれるところかもしれませんが、立派な初役だったと思います。あの老女役の化粧法は、他の俳優(例えば芝かん)と比べても大分違う気がするのですが。眉とか、皺の描き方等。他の役者では、錦之助の水奴が嫌みがなく気に入りました。
 ところで、前観た時も感じた素朴な疑問ですが、苅屋姫は何故、贋迎いの段階での別れをしなかったのですかね。イヤホンガイドで説明していたら教えていただけませんか。

投稿: レオン・パパ | 2010年3月18日 (木) 23時12分

林檎様
連打、ありがとうございますhappy01
仁左様の神々しさには格別なものがありましたね。木像との演じ分けも見事でした。
玉様の老け役は、玉様なりの美意識に基づいたものではあるのでしょうが、シワを描かなくても十分いけるのではないかと思います。これからも老け役に挑戦していかれるでしょうから、化粧にも注目して見てみるつもりです。

「めざまし」は残念ながら見ませんでした。バードファンの私は「ズームイン」専門なんですwink

「石橋」、次回は寝ないで見ます (^-^;

投稿: SwingingFujisan | 2010年3月19日 (金) 02時56分

レオン・パパ様
お疲れ様でした。私も菅丞相は仁左様以外考えられません。上演記録を見ると、昭和56年以降は13代目と当代仁左衛門しか演じていませんね。敢えて他の役者さんを想像するとしたら勘三郎さんでしょうか。
玉三郎さんの化粧はちょっと話題になりますね。理知的でありながら、ちょこんとした老婆らしさが見えて、とても共感がもてました。
錦之助さんは私もよかったと思いました!!

苅屋姫の件、そういえばそうですね。イヤホンではそれについては何も言っていなかったと思います。ツッコミどころですね。

投稿: SwingingFujisan | 2010年3月19日 (金) 03時05分

こんばんは。

1週間以上遅れてのコメント、お許しくださいm(_ _)m
本日(26日)、やっと見てまいりました。みなさまと同じく、仁左衛門丈の天神様の凛々しさ、美しさ、気高さに圧倒されました。劇場全体が息をのんで見つめている、そんな舞台でした。3兄弟揃っての追善興行、きっと先々代もお喜びのことと思います。そして秀太郎丈贔屓の私はしっかり立田の前に感情移入してしまいました。

石橋、天王寺屋さんはもちろんのこと、錦之助さん&松緑さんの狂言が楽しくって、よかったですよ(^-^)

今日はなんとあの吉永小百合様がいらしてました!終演後、いつもならとっとと席をたつ私ですが、今日ばかりは小百合様を見送ってから(笑)、ゆっくりと出口へと向かいました。そうそう、幕間にはかのサイモン氏と何か話している右近さんを発見!なんだか得をした気分のⅢ部観劇でした。

先月の千穐楽には、楽屋口から出てらした香川照之さん親子(!)を目撃したからつぎでした。

投稿: からつぎ | 2010年3月27日 (土) 00時02分

からつぎ様
からつぎ様は本当に運のお強いお方です!!!
吉永小百合さんと一緒の日に観劇なんて羨ましい~!! どんなにかお綺麗だったでしょう。
右近さんも今日、いらしていたんですかぁ。
え~っ、それに先月は香川さん親子もぉ!! 香川照之さんはご自分が歌舞伎役者になれなかったことを残念に思っていらっしゃるようですし(私も今の香川さんを好きであると同時に、歌舞伎役者の香川さんを見たかったとも思います)、息子さんを歌舞伎役者にしたい気持ちがおありのようですから、どなたかにご挨拶にいらしたのかしら。香川さんの願いがかないますように。

仁左様の神々しさはまさにお天神様でしたね。ありがたくて涙が出るほどでした。
立田の前、よかったです!! 私もいつの頃からか秀太郎さんに惹かれています。秀太郎さんの女方にはいつもどこかしら可愛らしさがあり、男を感じることがありません。

「石橋」、千穐楽にはしっかり見るようにします。体調を整えておかねば。

投稿: SwingingFujisan | 2010年3月27日 (土) 01時36分

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