« チラシから・2(今夏、子供のためのシェイクスピア) | トップページ | 舞台写真と鯛焼きはお早めに »

2010年3月15日 (月)

3月歌舞伎第二部

312日 御名残三月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)
感想が今頃になってしまいました。
「筆法伝授」
幕があくとお香のかおりが漂ってきた(誰かの香水じゃないよね)。
寺子屋に至る過程がよくわかり、こんな面白い場面がなぜあまりかからないのか不思議。
どの役も私にはしっくりきた。まず第一に、吉之丞さんの局・水無瀬が嬉しい。この人が登場しただけで、空気がその場面のものになる。魁春さんの園生の前も気品と格と心の優しさが見て取れた。前にも書いたが、私は魁春さんの女方にほぼ絶対男性を感じない(多くの反論がありそうだけど)。それは、多分うなじの線によるものなんだと思う。うなじから肩のあたりのラインがとてもきれい。東蔵さんの三枚目敵の役が面白い。腰元に手を出すあたりにもうちょっと下世話なところがほしい気もするが(ほら、「毛抜」の弾正みたいに)、飄々とした柔らかさがあって、源蔵の書を邪魔する場面など子供みたいで可笑しかった。道真の落ちた烏帽子を被る時に後ろから手伝うが、仁左様の身長が高いから小柄な東蔵さんは大変そうだった。
武部源蔵、梅玉さんの心が入って丁寧な演技がとてもよかった。菅丞相に特別な恩義を感じ、菅秀才を守り抜いた事情が、芝雀さんの戸浪の気持ちとともに胸に迫る。菅原館を去るとき、なぜ女である戸浪に菅秀才を背負わせたのかと思ったら小袖で秀才を守るためだったのか。ところで梅玉さん、ちょっとスリムになったのではないかしら? 
歌昇さんの梅王丸も心が感じられていい。歌昇さんは本当にいい。大好き。
三善清行は「加茂堤」と同じ秀調さん。「加茂堤」の時より敵として憎らしい気がした。
菅丞相の仁左様。ここでの出番は少なく動きもあまりないものの、その品格でその場の空気を圧倒する。本物の道真公もこうだったに違いないと思う。伝授は伝授、勘当は勘当ときっぱり武部の懇願を退けるあたりも、菅丞相の清廉な性格が伝わってきて、下手な同情などいらないのだと納得させられてしまう。
芝居としても喜劇的要素、緊迫感、立ち回りなど様々な要素が入っていて、楽しめた。
<上演時間>「筆法伝授」88分(14:30~15:58)、幕間15分、「弁天娘」70分(16:13~17:23)

「弁天娘女男白浪」
菊五郎さん、ごめんなさい、出はやっぱりおばさんっぽい。でもそんなの全然問題ない。菊五郎さんのもつ愛敬というか、茶目っ気みたいなものが見た目を超えた若さを湛えていて、自然と武家のお嬢様に見えてくるから不思議。正体がバレた後は本領発揮だ。こちらは弁天小僧の怖いもの知らず、世間に一泡ふかしてやろうという少年らしいふてぶてしさがたっぷり感じられる。
吉右衛門さん、絶対ニンじゃないと思っていたら、とんでもない、武士に化けたときはさすがの貫禄だし、正体を明かしてからもかっこいいし、堤の場では化粧も変えたせいか、精悍で元漁師らしさが見えた。
橘太郎さんの番頭が出色。「今月は木挽町御名残興行」というセリフに客席が沸く。おなじみ、お浪実は弁天に「ご贔屓は菊五郎? 幸四郎? 左團次? 梅玉?」と次々名前をあげて訊くがそのいずれにも首を振るお浪。最後に「吉右衛門」で恥ずかしそうに頷く菊五郎さんが可愛い。橘太郎さん、吉右衛門さんに逆に好みを尋ねられ、迷うことなく「小粒でもぴりりとからい坂東橘太郎」と答え、やんややんや。実際にも(と言うのもおかしなものだが)浜松屋の番頭は絶対こういう人だったという気がする。
ベテラン勢としては、菊十郎さんの悪次郎も舞台にいるのは最初のわずかな時間だけなのに渋い存在感を放っていて、印象に残る。
幸四郎さんは、台詞もちゃんと聞こえたし、大きさもあったけれど、やっぱりどこかに暗さのようなものがある。日本駄右衛門としてはもう少し大らかさがほしいような気がした。左團次さん南郷が印象的だったが、忠信利平もなるほどと思わせられた。梅玉さんの五人男は初めて見たが、自然なやわらかさが赤星に合っていた。
名場面は何度見てもいいものだ。

|

« チラシから・2(今夏、子供のためのシェイクスピア) | トップページ | 舞台写真と鯛焼きはお早めに »

歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

SwingingFujisan様
 昨日 歌舞伎座第1.2部行ってきました。平日にも関わらず超満員でした。歌舞伎座もあと少しで閉場ということで、ここ数カ月、地方の団体の方が多いような気がします。地方なまりの方が目につきます。
 感想を少し。Fujisanさんと同じく、「楼門」「浜松屋」が最高です。「楼門」は眼福の一言。最高の顔合わせ、15分の至福の時でした。「浜松屋」も両優の意気がぴったりで、黙阿弥の寸法に正しくあった演技だと思います。Fujisanさんが、お褒めの橘太郎の番頭、大変結構です。もっと年配の名題役者がやる役ですから、抜擢なのでしょう。この優、昔、坂東うさぎといっていた人だと思いますが、子役の時から達者な人でした。先般の伴内も、上手でしたね。
 ところで、玉三郎の「女暫」は、歌舞伎座の立女形としては、相応の出来なのでしょうが、玉三郎の仁とは、確かにずれがある役ですね。玉三郎独特の含み声の発声もマイナスに働いていたような気がします。幕切れの大太刀をかついでの見得も、歌右衛門の至芸ともいえる、素晴らしい形と比べると、今一つでした。役者を揃える演目として選ばれた演目でしょうが、「阿古屋」あたり(吉右衛門か仁左衛門の重忠で)をさよなら公演で見たかったですね。

投稿: レオン・パパ | 2010年3月18日 (木) 12時22分

レオン・パパ様
3月は期待ほど売れていないように思いましたが、平日の満員とは嬉しいことです。
「楼門」はまさに至福ですよね。たった15分でもこういう感動を与えられるのだと、役者さんの力量とはすごいものだとあらためて感動しました。「浜松屋」も同じコンビでとにかく楽しくてステキでした。橘太郎さんは、3年前の博多座「彦市ばなし」で注目し始めたのですが、いつも期待を裏切らない演技を見せてくれます。分を弁えているところも好きです。

玉三郎さんの「女暫」については、再見のレポで書こうと思っていたのですが、レオン・パパ様のおっしゃるとおりです。しかし、この役はむずかしいですね。これまで私が見た中では萬次郎さんがよかったのですが、時蔵さんなんかニンではないかしら(時様もちょっと声に難がありますが・・・)。

投稿: SwingingFujisan | 2010年3月18日 (木) 23時52分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1083822/33778405

この記事へのトラックバック一覧です: 3月歌舞伎第二部:

« チラシから・2(今夏、子供のためのシェイクスピア) | トップページ | 舞台写真と鯛焼きはお早めに »