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2010年3月 7日 (日)

そめさま、じゃなかった、「染模様恩愛御書」初日

36日 「染模様恩愛御書」初日(日生劇場)
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年半前の松竹座での公演で受けたような衝撃、感動、興奮は残念ながら感じられなかった。ただし、それはあくまでも初日に2階で見た感想であり、芝居も今後進化していくだろうし、間近で見たらまた違うかもしれない(間近の席は千穐楽までお預けだけど)。
全体にずいぶんコンパクトにまとめられた感があり(初演時の上演時間を私は書き留めていないため、実際に短くなったのかどうかはわからない)、心理描写に重点が置かれたようであり、それは成功していたように思うが、随所にみられるマイナー(だけではない)チェンジによるものか、余裕のような大らかさのようなものがあまり感じられず、それが逆に感動に繋がらなかったような気がする。音楽やラストの紫の照明もちょっと安っぽさを感じた(音楽は音響のせいかも)。
マイナーチェンジの一つと言おうか、火事の場面における「かんじんちょう」*がなくなっていたのは、なんとも残念である。
ちなみに、副題も大阪版「細川の男敵討ち」から「細川の血達磨」と本来の通り名が用いられている。

以下、ネタバレします。
大川友右衛門(染五郎
: あらっ、大谷友右衛門と1字違いbleah)に見初められた印南数馬(愛之助)の気持ちの揺れ、一気に燃え上がる思い、最愛の人を失った悲しみは前回よりずっと伝わってきた。
初演ではイヤな女だとしか思えなかったあざみ(春猿)の気持ちも今回は理解できるような気がした。このあざみについては、春猿さんにもそういう反省のようなものがあったのではないだろうか。春猿さん自身が「初演のときは、女の人の嫉妬心を前面に出せばいいと思って演じたが、今回は心理をもう少し深く突き詰めたい」と言っている。愛する男を男に寝取られる女の身を思いやれる気持ちを観客に持たせることができたのではないだろうか。
横山図書(猿弥)はうんと悪いヤツになっていた。初演時の自分の感想を読み直してみると、「短慮が次々と悪事を生むという感じで、根っからの悪党という気がしない」と書いている。今回の図書は実に憎らしく、数馬の父を襲う卑劣さもさることながら、妻をいじめる男は許せない。この悪党ぶりについても猿弥さんによれば、前回は妖刀に操られるようにして妻を殺し、その現場を見た数馬の父を殺すという設定だったようで(その辺、記憶が…)、はっきりとした意志をもって殺す今回のほうが悪人らしく、勧善懲悪の爽快感が生まれる。
友右衛門の心理は、愛情ももちろんよくわかるのだけれど、後半の忠義の部分のほうがぐっとくるものがあった。

愛之助さんについてはいつも骨太の役のほうが好きだと言ってきたし、初演の時は小姓役にはちょっと無理があるような気がしたが、今回は実にしっくりきた。一目惚れされるに十分美しかったし、変になよなよしないでお小姓らしさが出ていた。染五郎さんは細身でカッコいい。ボーイズラブ(BL)がいやらしく見えないのも、染五郎さんのもつ清潔感と、女性に媚びることのないラブリンの美しさによるものだろう。
しかし、BL場面ではかなり笑いが起きていた。2人が見詰め合えば笑い、2人が結ばれる場面ではそんなに笑わなくても、と思うくらい笑い…たしかに、帯ぐるぐる(「あれぇ~、お代官さまやめて~」的な)場面はちょっと笑える。でも、シルエットで見せる濡れ場は、大阪では笑いが起きたかなあ。自分の記録を見ると、自分も含めて客席にとまどいが漂っただけだったようである。
数馬と友右衛門の出会いの場は美しく、ただ互いに目を見交わすだけ、杜若の花を友右衛門が捧げるだけなのに意外にも官能的であった(ここでも笑いが湧いたけれど)。大阪で覚えたような感動はなかったとはいえ、ラスト、友右衛門の死を嘆く数馬には涙が出た。

段治郎さんに代わる門之助さんの細川公は品も大きさもあってよかったと思う。奥方の吉弥さんとのバランスも悪くない。細川公も奥方も、心優しく大きな人間であることが前回以上によくわかった。
芝のぶちゃんが図書にいじめられる2人の妻を演じている。最初の妻・いよは病がちでいかにも薄幸な女性。2人目の妻・きくはしっかり者だが悪縁に悩まされる哀れさが芝のぶちゃんによく合っていた。

とりとめもなくなってしまったから、そろそろ終わろう。最後に、火事場では大阪にはなかった染五郎さんの強烈な階段落ちがあり、千穐楽までケガせずに続けられるのかしらと心配になった。この階段落ちがついたから、「かんじんちょう」がなくなった?
<上演時間>第一幕85分(16301755)、幕間20分、第二幕60分(18151915

*かんじんちょう:火事場で友右衛門が我とわが腹をかっさばき、その中に御朱印状をねじ込み守ろうとする場面。友右衛門が一つ一つ内臓をつかみ出すと、講談師が「肝、腎、大腸、あわせてこれで勧進帳」とのたまう。

こうして感想を書いていたら、大阪の記憶と相俟ってか、色々しみじみ思い出されてきて、私けっこうこの芝居好きなのよねぇと再認識smile

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

こんにちは!
先ほど「そめさま」観てまいりました。
隣の方がどうも染さまファンらしく(拍手の大きさが違う)
物も言わず、無駄に笑いもせず、超真剣に観ていらしたので
わたしも集中して観られましたcoldsweats01

今日もあの色っぽい場面ではかなり笑いが起きていました。
わたしもクスッと笑ってしまいましたが
あのピンクの照明。あれがわたしの笑いの原因です。
もうちょっと月明かりっぽい色なら
わたしは笑わなかった…はずです。
でもあの障子越し、というのがなんだか艶めかしくて
ピンクの照明でなくてもやっぱり照れくさくて
ニヤッとしてしまうのかもしれませんが…。

ただ、二人が見つめあうところ。
Fujisanさまもおっしゃるように
真剣な場面にもかかわらず
毎回相当笑いが起きていたのが気になりました。
真剣な場面なのに、そんなにおかしいかな?と。
笑いのツボは人それぞれですけどね。。。

でもお二人、本当に美しかったです。
特に染さんが。
この人こんなにかっこよかったっけ!?
とうっとりしちゃいました。
わたしも久々の観劇だったので目の保養になりました。
楽日近くにもう一度行く予定なので
今から楽しみです♪

投稿: あねご | 2010年3月 7日 (日) 17時21分

あねご様
コメント、ありがとうございます。
東京と大阪では観客の反応が違うみたいです。でも、あねご様もそんなに可笑しいかなあと思われたんですよね。人によって反応が違うことがはっきりわかって、面白いですね。
濡れ場はシルエットとはいえ、そこまでやるか、って感じじゃありません? もしかしたら客をあまりテレさせないように逆にピンクにしたのかもしれませんねbleah でも、やっぱりちょっと照れくさい…。
染五郎さん、素敵でしたでしょう。数馬ならずとも惚れてしまいますわheart04 
再演とはいえ、初演と違う部分もあり、日に日に進化していくと思います。次に観る日が楽しみですね、お互い。

投稿: SwingingFujisan | 2010年3月 7日 (日) 21時10分

こんばんは!
「染模様・マンガ版」まで見てしまったあねごです。。。

わたしも色っぽい場面については
えぇ~?ここまでやるの!?と思ってましたよ~catface
艶めかしいというか生々しいというか…。
そっと寄り添うふたり→暗転でも十分だった気がsweat02
けっこう脳裏に焼きついてしまってますもの。

公演前の愛さんのインタビュー記事で
「ちょっとこれは恥ずかしいかな、と思われるぐらいまでは頑張りたい」
とおっしゃっているのが出ていましたが
十分すぎるほど頑張っておられますよねcoldsweats01

マンガ版はご覧になりましたか?
わたしもレジ横での立ち読みだったので
ものすごくサーっとしか読んで(見て)ませんが
う~ん…なんとも。。。という感じ(←?)でした。
もしご覧になることがあれば感想お聞かせくださいね^^

投稿: あねご | 2010年3月 8日 (月) 22時27分

あねご様
愛之助さんは、男性同士で見つめ合ったり手を取り合ったりするのは、ふだんの歌舞伎と変わりないので全然抵抗感はないと筋書きで語っていますね。でも、あのシルエットは…大阪で一度見ているのに、やっぱり気恥ずかしくて。愛之助さんも染五郎さんも「してやったり」と思っているかもしれませんねwink

マンガ版はまだ見ていません。でも、大阪でノベライズ本を買いましたよsmile お芝居とはあちこち内容が違っていて、全部読まなかったけれど。あらためて読んでみようかと思いましたが、だらしない私のこと、どこへしまいこんだのか、見つかりません。そのうち、思いもかけないところから出てきそうcoldsweats01 今度行ったらマンガ本もちょこっと見てきますね。

投稿: SwingingFujisan | 2010年3月 8日 (月) 23時50分

遅ればせながら、私も土曜日にそめさまあいさま見てまいりました♪
そして、意外と違和感なく受け入れちゃいました!
染さまと愛さまがそれぞれ無理なく素敵でしたので、見つめあったり手をつないだりしても、見とれちゃって、笑いがおきてても気にせずうっとり♪
(ただ、例の場面は私はニガテです…)
後半特に敵討ちと忠義に盛り上がり、染さまの身体をはったターザンからの階段落ちにドキドキし、愛さまの涙に泣かされましたわ~!
私ももう一回見るのが楽しみです!
ところで、猿三郎さん?のブログで土曜日の夜の部に猿之助さんがいらしていた、とか。ほかにも吉弥さんや芝のぶさんのことなど書いてあって、二倍楽しみました。
話は違いますが、歌舞伎座ラストのラスト、スペシャルイベント発表されましたね~!私はどこからも情報は入っておりませんでしたが、絶対あると確信してました!休みが取れるか?ですが、その前にチケットですね!五月の松竹座遠征計画中でして、チケット代によってははなみずきさまではないですが、私もラストイベント不戦敗かもです(涙)そしたらSwingさまのほうへ気を送りますね!!

投稿: 七子 | 2010年3月15日 (月) 08時04分

七子様
「そめさま」(すっかり、そめさまになってしまいましたcoldsweats01)、お気に入られたようで嬉しいです。私自身は松竹座のときに比べて満足度が低かったのですが、こういう演目の掘り起こしや新しい試みはもっとやってほしいので、今回初めてご覧になる方はどういう印象をもたれるのかなと気になっておりました。あの濡れ場は、染・愛の遊び心かしらなんて…。

猿三郎さんのブログ、時々拝見するのですが、ここしばらく伺うのをお休みしていました。早速訪問。いいお話ですね。芝のぶちゃんの写真も嬉しい!!

ラストイベント、七子さまからも気をいただいたら、ますます責任重大ですわね。頑張りまっすsmile
5月の松竹座は私、まだ迷い中。演舞場一筋でいくかも…。
松竹座にいらしたら、ご感想聞かせてくださいませね。

投稿: SwingingFujisan | 2010年3月15日 (月) 08時51分

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