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2010年3月27日 (土)

そめさま千穐楽:鑑賞篇

326日 「染模様恩愛御書」千穐楽(日生劇場)
今日は千穐楽のせいか、さかんに掛け声が飛んだ。それも女性の声が多かった。なんたって、観客の9割以上は女性だったもの(多分)。幕開きには講談師の旭堂南左衛門さんにも若い女性の声で「なんざえもんっ」
今日は前方席(松島屋と高麗屋の後援会席に1人紛れ込んじゃったような気分)だったので、2階からは気がつかなかったことが見えた。たとえば、最初の料亭の場面。障子の桟か窓枠か、喜昇さんがすっと人差し指でなでる。客が入る前に仲居が部屋を点検する、あるいは埃に気づいたという細かい演技に感心した。
横山図書は侍たちに妻・いよを褒められて得意げでもあり嬉しそうでもある。それが根も葉もない不実を吹き込まれると、表情が怒りに変わっていく。それなりに妻を愛していたんだろうなと思った。でも妻より作られた噂を信じたところに図書の人間性が表れている。後にきくを折檻するのも図書の人間性として一貫している。印南数馬の父を殺した以上に、このときの図書は憎らしい。いじめられる芝のぶちゃんの姿に涙が出た。
友右衛門と数馬のラブシーン――濡れ場だけでなく、見つめ合ったり、ラブレターを渡したり、手をつないだり――には「え? なんで?」と驚くほど笑いがよく起きていた。そんなに可笑しい? と私には笑いがよく理解できなかった。でも、決してイヤな笑いじゃなくて、もしかしたらいつもよりアツかったかもしれないラブシーンに染五郎さんの確信犯的なところが見えた染ファンの共犯的な笑いだったのかも。
帯くるくるの場面では笑いだけでなく拍手まで起きていたし、友右衛門が数馬の部屋に忍び込んだのを見届けたあざみが「え~、悔しい!!」と身を捩ったときでさえ笑いが湧いた。
ラブシーン以外にも、細川公が袖助を武士に取り立てることにしたらどっと笑いが起きた。この場面、お取り立てを辞退する袖助を説得した時の門之助・細川公の嬉しそうだったこと。門之助さんの演技にも力が入って、私はなんてステキな殿様なんだと、これまでにも増して好もしく思った。
めでたしめでたしの第一幕ラスト、あざみ1人がやりきれない思い、悔しさ恨めしさを表情にのせていたのが印象的だった。第二幕では、とかく目が行きがちな火事で大騒ぎしている人たちではなく、あざみに注目してみた。すると、その心情がひしひしと伝わってきて涙が出た。あざみ自身のセリフにあるように「恋に迷いし身の因果」、春猿さんがめちゃくちゃ綺麗で、それだけに哀れさが募った。

二幕目の欣弥さん、今日はギャグが増えていた。Wエンジンの「惚れてまうやろ~」(欣弥さん、ちょっと噛んでたかも)と、ザブングルの「悔しいですぅ!」。図書が自宅にいたのに悪口を言ってしまい大慌てで退散するときにはちょっとすべりながら「私のギャグも滑る」に続けて定番「イナ・バウアー」が出た。
これまで触れなかったかもしれないが、猿三郎さんのチンピラ悪役宅助がよい。うまく表現できないが、正統派というか楷書というか、そういうチンピラであるように思った。

近くで見る愛之助さんはとても美しく、とくに濡れ場以降はきらきらと輝くばかりであった。ラスト、かきつばたの花を胸に抱いて友右衛門を偲ぶ数馬の姿が瞼に焼き付いている。
また、自ら命を絶って数馬に抱かれる友右衛門の安らかな顔は本当にきれいで、染五郎さんって何て整った顔立ちをしているんだろうと惚れ惚れした。死んで横たわっている染五郎さんの胸からがおなかのあたりが、それまでの動きの激しさを物語るように呼吸で少し上下していたのがたまらなく愛おしい気がした(友右衛門の奮闘と染五郎さんの奮闘が重なる)。これもラスト、数馬の心の中に生きている友右衛門の姿の実にかっこいいこと。こちらも瞼に焼き付いている。

ほんと、このお芝居が終わってしまって寂しい。

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