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2010年4月 3日 (土)

4月歌舞伎座初日第一部・2

42日 四月御名残大歌舞伎初日第一部(歌舞伎座)
華やかな舞台から一転、次は悲劇の世界へ。
「熊谷陣屋」
熊谷夫婦の間に通う情のようなものが、今回はじめて強く感じられた。
相模(藤十郎)が熊谷直実(吉右衛門)の陣屋にやってきて、留守だった直実を迎える。相模をエスコートしていた堤軍次(歌昇)が熊谷の命で相模から離れなくてはならなくなる場面は、2人になると熊谷に怒られるのが怖い相模と熊谷の板挟みになる軍次と熊谷夫婦のやりとりが面白い。
軍次が下がってからの夫婦の関係怒ったってなんだって、あなたは私にかつて言い寄ったんじゃないの、という相模の媚がなんとも微笑ましい。媚というよりは、女の強さかもしれない。その辺の機微を漂わす藤十郎さんの演技は絶妙。
吉右衛門さんの熊谷はもちろん素晴らしかったが、私はむしろ藤十郎さんの母親としての悲しみに強く胸を打たれた。首を打たれたのが自分の息子ではなかったと知る複雑な心境の藤の方(魁春)の後姿も心に残る。梅玉さんはやはり義経役者だと思う。そして、弥陀六の富十郎さん、そこにいるのがかつて自分が救いそのために平家を没落させたと思っている義経であることを知った体の震えが見事だった。
「連獅子」
中村屋の人気はすごい。拍手の大きさが全然違う。その拍手が表す期待、人気を裏切らない素晴らしい迫力・気力に満ちた舞いだった。
子獅子の舞いを見守る親獅子は、そのまま勘太郎・七之助兄弟を厳しくあたかたかく見守る勘三郎さん自身に重なった。兄弟はともにきびきびとした動きだが、勘太郎さんのほうがやや動きが大きく荒々しい印象を受けた。勘三郎さんのソロ(?)では大変にむずかしそうな足の動きがあり、一見楽々とこなす姿に感動のため息が出た。
後見に小山三さんの名前があったが、先月みたいに千穐楽だけかもと、あまり期待しないでいた。ところが、途中で舞台に現れ、差し金の胡蝶を舞わせたではないか。しかももう1羽の胡蝶を扱うのが鶴松クン。恐らく中村屋の最長老と最若年のコンビではないだろうか。嬉しくて胸がどきどきしてしまった。鶴松クンは筋書きには後見として名前が出ていなかったが、かなり最初からずっと舞台に控え、じっと3人の踊りを見つめていた。一生懸命吸収しようとする鋭い目がとても印象的だった。

狂言師から獅子に変身した3人は、いったん登場した花道を後ろ向きに引っ込む。そのスピード。裾を踏みつけて転ばないかとハラハラするほどの早さだった。勘三郎、勘太郎、七之助の順で姿を見せた1回目と違い、2度目は勘太郎、勘三郎、七之助と、父親を真ん中にして本舞台へ。毛振りは回数を数え忘れたが、最後の10回くらいはものすごいスピードアップで客席が大いに沸いた。ところどころ細かい動きのズレはあったものの、さすがに中村屋親子、息の合った舞台に大喝采が送られた。第一部はもう一度見るが、「連獅子」だけ千穐楽に幕見で見たくなった(多分、入れないだろうな)。
<上演時間>「だんまり」20分(11001120)、幕間15分、「熊谷陣屋」86分(11351301)、幕間30分、「連獅子」54分(13311425

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コメント

SwingingFujisan様
 歌舞伎座第1部のレポ楽しく拝読しました。私は中日頃、1,2部続けての観劇で楽しみです。歌舞伎座はあと2回(3部は千秋楽)だけとなり、寂しさを感じはじめております。3部制を引いていることで得をしたと思ったのはのは、開演30分前の「着到」の下座が聞けたことです。本来は幕内の方へ知らせる意味合いのものらしいのですが、これから歌舞伎が始まるのだという期待感をいだかせますね。t
 ところで、今日は、演舞場昼の部へ行ってきました。今回の「四谷怪談忠臣蔵」は初見です。いかにも、猿之助歌舞伎の見どころたっぷり、エネルギッシュ、スピーディーな展開です。逆にスローフード的なコクがないのが欠点かもしれません。いつも見慣れた場面は端折りすぎて物足りない一方、通しだと省略されがちな、「三角屋敷」「十段目」を丁寧に演じるのは、猿之助一流の見識でしょう。もともと駄作の評価のある「十段目」はともかく、上演時間の都合であまり上演されない「三角屋敷」(私は実に数十年ぶりです。)は、四谷怪談屈指の名場面だと認識も新たにしました。右近、笑也、門之助が若いながらよくやっています。
 それにしても、澤だか屋一門のみで、「忠臣蔵」「四谷怪談」を曲がりなりに上演できるのはたいしたものです。どの役者も欠点はあるものの、若く勢いのある演技で楽しませてもらいました。

投稿: レオン・パパ | 2010年4月 3日 (土) 19時14分

レオン・パパ様
いよいよ4月の興行が始まって、1日1日経過するごとに、寂しさが募りますね。カウントダウン時計の数字が減っていくのを見ると、より実感します。今日はWeb松竹の公演一覧に閉場式が出ましたね。加速的にその日が近づいているような気がします。

3部制というと、私はつい1部、2部3部というふうに分けて見てしまいますが、通すなら1部2部のほうがいいかもしれませんね。2部3部はさすがに疲れますもの。しかも、今月は3部終わりが10時近くですから…。

演舞場は来週第1回の観劇に参りますが、もちろん初見ですし、本家「仮名手本」と外伝「四谷怪談」をどのように組み合わせたのかと考えるだけでも楽しみ、さらには猿之助歌舞伎のエッセンスが詰まっているのが楽しみに拍車をかけます。「三角屋敷」はレオン・パパ様が数十年ぶりというのに、私は勘三郎さんがコクーンで「東海道四谷怪談」の通しをやった時に見ました。
猿之助歌舞伎は、海老蔵さん、亀治郎さんが挑戦しており、猿之助門下の若手もうかうかはしていられないでしょう。それぞれが努力をして歌舞伎の面白さを伝えてくれていることが嬉しいですね。今回の演舞場は、どの役者さんも楽しみなんですが、とくに段治郎さんの復帰と春猿さんの斧定九郎にミーハー的な期待を寄せておりますcoldsweats01

投稿: SwingingFujisan | 2010年4月 3日 (土) 22時35分

SwingingFujisan様
 演舞場、追加のコメントです。春猿の定九郎が、なんとも、洒落た定九郎です。この作品、原作と離れた役ほど、面白く仕上がっています。乞うご期待ください。
 あと、右近の宙乗り、期待どおりです。今回は3階下手1列目でしたので、迫力の宙乗りを心行く(三階は宙乗りが最後まで見られるので、得ですね)まで堪能しました。海老蔵の狐忠信も同じ席で見たいものです。
 Fujisanさんの、演舞場、詳細レポ楽しみにしております。

投稿: レオン・パパ | 2010年4月 4日 (日) 13時09分

レオン・パパ様
追加コメント、ありがとうございます。
本日歌舞伎座2部・3部を見たので、遅くなりました(2・3部の通しは予想どおり、かなりキツイです)。
斧定九郎は「仮名手本」でしか知りませんので、どんな定九郎になるのか、想像もできません。大いに期待しています。
宙乗りをご覧になるのに最適のお席だったようでよかったですね。「ヤマトタケル」の右近さんの美しい瞳が忘れられず、私も宙乗りのあるときは、絶対3階席を狙います。まあ、皆さん同じ気持ちでしょうから、3階下手は争奪戦がきびしくなりますね。かつては宙乗り小屋にすぐ近い席が割と楽に取れたのに、最近けっこう苦労します。でも今回はバッチリですscissors 

投稿: SwingingFujisan | 2010年4月 5日 (月) 00時20分

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