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2010年4月 8日 (木)

四谷怪談忠臣蔵

46日 「四谷怪談忠臣蔵」(新橋演舞場)
奇想天外、「四谷怪談」が忠臣蔵外伝だとは知っていても、こんなふうに物語をつなげるなんて、驚いた。あの民谷伊右衛門が…shock
右近さんが座長にふさわしい貫禄とうまさを見せた。猿之助さんの芝居を覚えていない私が言うのもなんだが、猿之助さんに似せようとするあまり芝居が小さく面白くなくなってしまうところのあった右近さんが、最近そこから脱却しているように思う。この芝居では、新田義貞の霊、暁星五郎、直助権兵衛、天川屋義平の4役をやっており、とくに直助権兵衛が非常にしっくりきた。右近さんは本来陽の人だと思うのに、陰のある人物がよく似合う。初めて見る十段目の天川屋義平もまたよい。しかし、義平の男気を試すこの段は物語としてちょっとヒドい。それに討入の合言葉を「あま×かわ」にしようという強引さには笑った(これがどうやって「やま×かわ」になったの?)。
暁星五郎の宙乗り、この芝居に寄せる私の
3つの楽しみのうちの1つである。これを見たいがために取った座席は宙乗り小屋のすぐ脇。隅田川上空に何発もの花火が打ち上げられる中、スッポンから吊られて宙でぶっ返り、悠然と引っ込む姿をたっぷり楽しんだ。宙乗り小屋からば~っと銀紙が吹き出たが、これは下へ落ちるものが大半で、私は3階からちょっと張り出した部分に落ちたものをこっそり身を伸ばして23枚いただいたbleah
猿弥さんが高師直と宅悦というまったく異なる役をうまく演じていた。師直に新田義貞の霊が乗り移った理由はわかるが、物語としてそれが生きているのかどうかよくわからなかった。師直のいじめは執拗で、本家「仮名手本」に比べて明らかに悪人である。宅悦は本家「四谷怪談」ではもっとどろどろした底辺の小悪党という印象をもっていたが、ここではそれは薄く、好人物の面が強く見えた。猿弥さんという人は悪役好人物、どちらも見事にハマるからすごい。
笑也さんの判官とお袖。笑也さんのもつ透明感が生きたのではないだろうか。澤瀉屋の3人の女方を考えると、お袖は笑三郎さんでも春猿さんでもなくやっぱり笑也さんだろうと思える。久しぶりに笑也さんの女方を「見た」という感じだ。
刃傷の場は、仮名手本とは反対に、師直は上手へ逃げる。判官の刀も上手へ向かって投げつけられる。

大星(彌十郎)の館外での悲しみは好きな場面の一つだが、ここで大星が懐から取り出す先端に血のついた九寸五分は、判官の形見の品として渡されただけのものなので、「仮名手本」で判官の指を11本はずしていくときの感動が省略されてしまい、感情移入がしづらい部分もある。しかし家臣をまとめ、無念を晴らさんとする思いを胸に固く抱いた大星の気持ちは十分伝わった。2回しか出てこない大星だが、彌十郎さんの存在感は大きい。
最近、門之助さんが端整でいいなあと思う。佐藤与茂七、天川屋義平女房、どちらも門之助さんの役だ。
右近さんの4役、猿弥・笑也・門之助さんの2役のように、1人の役者さんがいくつかの役を演じ分けているのが、荒唐無稽・奇想天外さだけでなくこの芝居のもう一つの面白さだ。
笑三郎さんがお岩、小仏小平、一文字屋お軽と3役やっているのも面白い。お岩さんと小平は丁寧な演技でこの女性の哀れさを見せ、お軽は積極的に男に入れあげ。あのお軽がshock
さて、先述した3つの楽しみの残り2つは、春猿さんの斧定九郎と、復帰第1作の段治郎さんの民谷伊右衛門である。
斧定九郎は、「仮名手本」とはまったく異なる人物造形が施され、物語全体の中でもちょっと異彩を放っているような気がした。ビックリしたが、これが実に面白く、春猿さんの新しい面を見た気がした。どの場面だったか、肩に斧、裾に猪が描かれた衣裳をつけていたのがニクい。
段治郎さんの色悪は、まさに「待ってました!!!」 段治郎さんが舞台に出ると、身長の高さ以上に、大きさを感じる。判官の切腹に際し、家臣一同が足利に対していきり立つ中、我らが路頭に迷うのは判官の短慮ゆえと席を蹴る伊右衛門の言葉は、感情的な是非は別として理屈ではある。この言葉を聞くと、伊右衛門がああいう男であることが何となくわかるような気がする。
澤瀉屋の役者さんのニンを十分に生かした配役、2度の口上で物語の展開をわかりやすくする工夫、本水を使った最後の戦いと切口上、よく工夫された芝居で大変楽しめた。

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コメント

お久しぶりです。 歌舞伎座の熱気に押されて空席も目立つweep演舞場ですが, とっても見どころ満載の舞台
になっていますよね。

宙乗り、本水などケレンに注目されがちですが、「三角屋敷」「天川屋義平」の場が面白いなあと思いました。

笑也さんのお袖がニンにあって久しぶりによかった(失礼!) 地獄宿(凄いネーミング)の娼婦なれど、元武家の娘として
品もあり退廃的な匂いを出しつつ、最後は哀れで。

でも、一番興奮したのは約1年ぶりに復帰した段治郎さんです。heart04
多くの浪士を後にしてひとり花道を歩く姿、隣家の娘さんが横恋慕するのも無理からぬ色悪ぶりscissors

でもこのお芝居ちょっと筋がややこしいのが難かしら?

投稿: maroon6 | 2010年4月 9日 (金) 16時31分

maroon6様
こんにちは。
皆さんニンに合った役どころで、実力が十分に発揮されましたね。
段治郎さん、ブランクがあったなんてとても思えないほどの見事な色悪ぶりで、私もこんな伊右衛門ならモテてしかるべきと思いました(席を蹴った場面、かっこよかったぁ)。
笑也さんは、ただのお姫さまより陰のある役(「極付森の石松」のおゆうもよかった)に独特の透明感が生きるような気がします。
「三角屋敷」は「四谷怪談」ではクライマックス的な場面なのにあまり上演されないことが不思議です。
初めて見る「天川屋義平」も、面白かったですねnotes

投稿: SwingingFujisan | 2010年4月 9日 (金) 18時40分

笑也さんといえば、扉座歌舞伎「神崎与五郎東下り」(座・高円寺)に出演されますね。
5月20日~5月30日の公演で作・演出は横内謙介さん。
市川笑也のほかは六角精児・岡森諦・杉山良一・中原三千代ら(私にとっては懐かしいメンバー)の出演。
扉座と言えば、「善人会議」の頃は何回か拝見していましたが、ご無沙汰です。
行ってみようかな。

投稿: うかれ坊主 | 2010年4月10日 (土) 13時58分

うかれ坊主様
情報、ありがとうございます!!
扉座は、去年「どろろ」を見ましたが、それが私の扉座デビューでした。今TVで大活躍の六角さんがメンバーであること、横内さんがスーパー歌舞伎とも縁が深いこと(「新・水滸伝」、「雪之丞変化2006」など、それと知らずにというか意識せずに見ておりました)を知ってビックリしたものです。「善人会議」の名前は聞いておりましたが、それが扉座の前身ということも昨年知りました。
「神崎与五郎東下り」、面白そう。明日発売なんですね。これから日程チェックをして…

投稿: SwingingFujisan | 2010年4月10日 (土) 21時10分

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