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2010年5月 6日 (木)

五月花形歌舞伎初日昼の部

54日 五月花形歌舞伎初日昼の部(新橋演舞場)
染五郎、松緑、海老蔵ってはとこ同士なんだったわ(それぞれの祖父さまが兄弟)、ということ、海老ちゃんがセレモニーで言うまですっかり忘れていた。その3人プラス中村屋兄弟というめったに見られない顔合わせだもの、盛り上がらないわけがない。でも、私は櫓立てにエネルギーを使っちゃって、本番は少し眠かった(危惧したとおりdespair)。

「寺子屋」
う~む…まだ劇場の空気がなんとなく「寺子屋」に馴染まないという感じだろうか(私の偏見かな)。役者さんにも気概がみられたが、それだけにもう少しタメがほしいというような場面が何回かあった。
海老蔵さんの松王は前半の咳がすごかった割に元気そうだったし、後半の男泣きするところは泣くに至る感情の起伏が爆発的で、そういうのもいいかもしれないと思いつつ、私はあまり泣けなかった。でも泣いている人もけっこういるようだったから、これはあくまで私のほうの事情だろう。次回見るときは泣きたい!!
首桶は自分で開けるのでなく(松王は開けるのを躊躇う。そこで焦れた玄蕃が蓋を取り、小太郎の首を差し出した)、首を見るときに刀を抜いていた(刀身に映して首を見ていたのだと思う)。これは成田屋の型だそうだが、初めて見たような気がする。
松王再登場のとき、源蔵の家の玄関扉がちょっとはずれてしまい、海老ちゃん苦労して開け閉めしていたが、扉ごと倒れるんじゃないかとヒヤヒヤした。
染五郎さんの武部は、小太郎を認めるところにもう少しタメがほしいような気がしたが、ちょっとしょぼくれていて、悩んでいる空気は十分。菅秀才の無事に安堵する場面なんか共感を覚えたし、松王夫婦の話をうなだれて聞いているところには源蔵のつらい気持ちが表れていて、この夫婦も一生言わねばならぬ十字架を背負ったのだと思った(十字架っていう表現もおかしなものだが)。
七之助さんの戸浪も、勘三郎ほどの存在感はなかったが、丁寧な演技で地道な生活感が現れていて、好感がもてた。いろは送りにもう少し情感がみられるといいかなと思った。
この夫婦の場面でおや、と思ったのは、菅秀才を隠す場面と源蔵が水を飲む場面。これはむしろ、先日の歌舞伎座の千穐楽での「おや?」である。歌舞伎座千穐楽では菅秀才は押入れでなく奥の小部屋に匿われ、源蔵は戸浪にもってこさせるのではなく自分自身で水を飲んだ。確かその前に見たときは押入れと戸浪だったぞと思ったけれど記憶に自信がなかったのだ(今でも自信はないけどcoldsweats02)。
一番よかったのが勘太郎さんの千代。演技が細やかで、子供を思う情に溢れ、覚悟と悲しみと…千代には泣けた。
そのほか涎くりの猿弥さん(とても自然で、猿弥さんのキャラが生きる。でも、ひときわ体がデカいsmile 吾作・寿猿さんとの花道のおんぶの入れ替わりが、ちょっともたついた)、春藤玄蕃の市蔵さん(「忠義忠義とかざしながらいざとなると我が身がかわいい」の嫌味なんか、ほんと憎らしいっ)がさすがにうまかった。
ちなみに、菅秀才が手習いをしている最初の場面、先月の金太郎ちゃんは同じところを何度もなぞっていたが、今回の子役ちゃんは色々な文字をなぞっていた。猿弥さんは本当にへのへのもへじを書いていた。

「吉野山」
食後でもあり、眠気のピーク。福助さんはきれいだったし、勘太郎さんは人間忠信は武士らしく、狐忠信は鼓に対する思いでやわらかく、とメリハリがあったし、猿弥さんのも軽妙だったのにbearing
ラスト、勘太郎→猿弥(逸見藤太にぴったり)の笠投げはナイスキャッチというわけにはいかず、ジャンプしても猿弥さんの指先を掠めて舞台奥へ飛んだ笠を猿弥さんが追いかけ ま、これは日によってそういうこともあるでしょう。
「魚屋宗五郎」
国立で松緑さんが見事な宗五郎を演じて以来もう一度松緑さんで見たいと思っていたのだ。それがここで実現したのは嬉しい。おまけに、おはまに芝雀、父親に市蔵とくればこれは安心して見ていられる(三吉の亀寿さんも国立メンバーだったし)。演目としても、「寺子屋」より演舞場の空気に合っているような気がした。だんだん酔っ払っていくあたりは、かつてのホームコメディーを見るようでもあり、可笑しい。芝雀さんははじめ宗五郎のおっかさんに見えないこともなかったが、次第に夫婦らしく見えてくるから不思議だ。
七之助さんのおなぎが、自分がもってきた酒のせいでとんだことになってしまったとまどいを見せて、そうだろうなあ立場ないよなあと同情したsmile

海老ちゃんの磯部の殿様は癇性なところも感じられ、わずかな出番ではあったけれど存在感を見せた。亀蔵さんの岩上典蔵、左團次さんの浦戸十左衛門が脇を締める。
「お祭り」
染五郎さんに絡む錦成クンがあまりに細くて(脚のほっそいこと)、はじめは頼りない気がしたが、どうしてどうして決めもよいし、軽妙さもあってなかなかしっかりした踊りを見せてくれて嬉しくなった(私は錦成クンファンなのだ)。
ここの染五郎さんの粋は、仁左様の粋に通じるものがあるような気がした。ただ、江戸前のカッコよさというと、私にはやっぱり松緑さんなんだなぁ。
辰巳さんの無音トンボ、獅子(獅子舞も中の2人の息が合って見事)越えトンボが楽しませてくれて見ごたえがある。だんだんつらくなってくるかもしれないけれど、頑張って
染五郎さん、最後花道の引っ込みで、片肌脱ぎの腕をしまおうとしてなかなか袖が通らず、見ているこちらのほうが焦った。
<上演時間>「寺子屋」85分(11001225)、幕間30分、「吉野山」55分(12551350)、幕間20分、「魚屋宗五郎」80分(14101530)、幕間15分、「お祭り」15分(15451600

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

こんにちは!
演舞場,NHKで鏡開きと寺子屋の首実検あたりを
ほんのちょこっとだけやってました。
わたしは中日ごろに観にいくので今から楽しみです♪
寺子屋の涎くり,先月の高麗蔵さんも
へのへのもへじをほんとに書いてましたよ。
うまく描くなぁ~と変なところに妙に感心してしまいましたcoldsweats01

明日の夜,御園座に向けて出発です。
愛之助さんの団七姿を想像するだけで針も振り切れんばかりのわたしです…。

投稿: あねご | 2010年5月 6日 (木) 12時55分

あねご様
演舞場にはかなりの報道陣が来ていましたからねhappy01 私は翌日のズームインで「助六」をちょこっとだけ見ました。猿弥さんが海老ちゃんをさかんにいじっていました。ほとんど寝ぼけ眼だったのでよく覚えていませんが、麻央さんのことを「家では何て呼んでるの?」とか。海老ちゃんは思わず笑っていましたっけ。

高麗蔵さんも実際に書いていらしたんですね。あの時は金太郎ちゃんばかり気になってしまって(何十回も同じところをなぞっているんですもの)。しかし涎くりって、大人に演じさせるうまい役どころだなあと思います。

いよいよ御園座ですか。
あねご様の目いっぱい触れている針に刺激されて、私も見たくなってきましたcoldsweats01
気をつけて行ってらしてくださいね。

投稿: SwingingFujisan | 2010年5月 6日 (木) 18時08分

SwingingFujisan様
 初日のレポ、鏡開きの件も含め楽しく拝読しました。Fujisanさんのおっしゃる通り、演舞場と歌舞伎座では歌舞伎を見る雰囲気も違いますし、役者の気持ちの入れ方も違いますね。これは、国立と歌舞伎座についても言えることですね。
 私は昼の部、昨日(二日目)観てきました。やはり安定感があるのは、松緑、芝雀の「魚屋宗五郎」です。国立で観た時も思ったのですが、役の設定年齢が、松緑の実年齢が近いこともあり、強くリアリティを感じました。特に、酒樽を持って暴れまわる様子は、年配の俳優では感じられないほどの暴力性を感じました。年配の役者は、下座音楽に上手く乗る感じがあります。
 「寺子屋」は海老蔵以下、若手の義太夫狂言のコクのなさをを痛感しました(月の後半になると見違える場合が多いのですが)。海老蔵は「無礼者め」の見得の凄みは期待どおりですが、子供を犠牲にする、父親の苦衷の感情の連続性にかけるようです。他ではFujisanさんご指摘の勘太郎が、加役めきますが、感情を抑えた、嫌みのない、いい千代です。千代という役に関し、忘れられない批評家の言葉に、「寺入りをすませ、戻りの間、千代は京都郊外山里の畑道にぼんやり座り、どのような気持ちで時間を過ごしていたのだろう」との批評があります。このやるせない辛い時間の経過を感じさせたのは、歌右衛門であり、梅幸でした。その点、玉三郎はこの優独特の生活感の無い特性が邪魔をするようです。ともかく、この役は出番は短いながら、屈指の立女形の役なのでしょう。

投稿: レオン・パパ | 2010年5月 6日 (木) 19時47分

レオン・パパ様
コメント、ありがとうございます。
「魚屋宗五郎」はよくかかる演目ですのでこれまでにずいぶんたくさん見てきましたが、松緑さんの若さが活きるお芝居ですね。国立を見て、宗五郎が松緑さんの持ち役になるだろうと確信したのは間違いではなかったと思いました。いずれ「芝浜」なんかも松緑さんで見てみたいものです。
「寺子屋」に物足りなさを感じたのは、そうか義太夫狂言のコクの問題でしたか。タメが足りないと私が思ったのはそういうことだったのかもしれません。
千代の気持ち、そのように考えたことがありませんでした。今、あの間の千代の心思い、たまらない気持ちになりました。千代が小太郎と別れるとき、いつになく後を追うのを叱ったといって嘆く場面があり、いつもそのセリフにぐっとくるのですが、千代のほうこそ別れ難いのを耐えていたのだと思うと、それだけで涙が出てきます。そしてあの後、どんな気持ちで時間を過ごしていたのか…そこに注目すると、確かに千代役に対する見方が変わってきますね。歌右衛門、梅幸が名優だと言われるのは、そういう機微を表現できたからなんですね。

投稿: SwingingFujisan | 2010年5月 6日 (木) 21時26分

知っている限りでは皆さん、へのへのもへじは書かれていると思います。
私も千代が一番でしたね。源蔵が一度刀に手をかけると気配を察して二人が気味合いの笑いになります。ここで千代は小太郎の死を確信するのですね。その心持が全身に滲み出る演技でした。泣かせる演技でした。海老蔵は立派でしたが、台詞術を勉強ですね。また門口の咳の仕方など藝になっていないようです。首実検は七代目團十郎以来のお家芸ですので大切に演じていたように思いますし、ここはなかなか面白かったです。お父さんでも観ていますが、首桶の中が息子の首ではないかと思えば思わず咳払いし、躊躇もしてしまうところがよくわかる演技でした。それを観ている玄蕃が苛立って首桶を取り上げることになるわけですから。(源蔵も東京式の今回のものより、松嶋屋さんの型の方が好きです。)

投稿: うかれ坊主 | 2010年5月 7日 (金) 21時35分

うかれ坊主様
へのへのもへじは、これまで気がつきませんでした。猿弥さんの手元を何となく覗いて「あら!」と思ったものですから。皆さん、ちゃんと書いていらしたんですね(毎日書いているのですから、1枚くれないかなあcoldsweats01)。
勘太郎さんはどんどんうまくなっていきますね。あの若さであれだけの千代が演じられるとは大したものです。
海老蔵さんの咳は(感想はオブラートに包んだのですが、本当は)ちょっといただけないなあと思いました。セリフはいつも言われますよね。
首実検の場面、私は初めて見ましたが、成田屋さんの型のほうが父親の気持ちとして自然なように思います。おっしゃるとおり、ここはなかなか面白かったです。
2回目の観劇の際にはどう進化しているか、楽しみです。

投稿: SwingingFujisan | 2010年5月 7日 (金) 21時55分

SwingingFujisanさまfuji

私は昨日、昼の部一回目を3階から見てまいりました。
Swingさまのレポとレオン・パパさまやうかれ坊主さまのコメントで少しお勉強してから見ることができて、よかったです!!
歌舞伎を見始めた頃は(今でもですが)ミーハーで役者さん綺麗~素敵~くらいしか感想がなかったのですが、だんだん少しずつ、歌舞伎の深さみたいなものがわかり始めてきたようで、嬉しいです。
私も(影響されていたかもですが)勘太郎さんの千代、泣かされました。レオン・パパさまのコメントの「寺入りをすませ、戻りの間、千代は京都郊外山里の畑道にぼんやり座り、どのような気持ちで時間を過ごしていたのだろう」というのを読んでいたので、今までよりもぐっときたのかもですが…。

魚屋宗五郎、よかった(お話の最後は釈然としないのですが)ですよね!!松緑さん、最近、すっかりファンになってきてしまいましたheart02
戻りが出てましたので、次回はかぶりつきで松緑さん宗五郎を味わってきま~すlovely
七之助さんはうまいとか下手とかそういう次元で見れたことがなく、いつもドキドキしてしまうので、遠くから見るのもいいもんですね!

投稿: 七子 | 2010年5月 9日 (日) 10時19分

七子様
「寺子屋」はあんな悲劇なのに、なぜか子供の頃から好きでした。どこかで子供心に響くものがあったのでしょうね。
お芝居は先入観なしに見るほうがいい場合もあるかと思いますが、色々な方のご意見を伺うのもとても楽しみ!! さらに深い観劇ができるように思います(私もたいがいミーハー的観劇ですからcoldsweats01)。
七子様はお名前からもすぐわかりますが、本当に七之助さんがお好きなんですねhappy01 私は気が多くて、最近、七子様のようにうまいとか下手の次元で見られないくらい好きな役者さんっているのだろうか、と考えてしまいました。
次回はかぶりつきで松緑さんですか。松緑さんのすぱっとした感じ、姿のきれいさ、私も大好きです(ほら、こうやって気が多い)。
ところで、ふふふ、七之助さんもかぶりつきでご覧になれますね~smile

投稿: SwingingFujisan | 2010年5月 9日 (日) 11時03分

そうそう!寺子屋のあの場面は「押入れと戸浪」ですよね?!
私も確信はできないのですが、大切なお主を押入れに?!と思った覚えがあり、戸浪もお水を飲んだ気がするのですが。。。

まだ見に行っていないのですが、Fujisan様や皆様の感想を拝見して海老蔵の松王は予想通りといいましょうか。。。coldsweats01
でも、成長を見たいという気持ちもあるので(生意気ですが。汗)楽しみ♪
演技や踊りのウマさで好きな役者さんも沢山いますが、私はウマイ、ヘタを超えて大好きです。成田屋親子heart02

投稿: 林檎 | 2010年5月 9日 (日) 13時28分

林檎様
ええ、なぜか歌舞伎座の千穐楽だけ、そこが違ったように思います(戸浪もお水を飲んでいましたね)。押入れに隠すのは、大事な方をまさかそんなところには入れまいと敵側が考えるのを欺いて…だと思います。

海老蔵さんはきっと成長していますよ。そう確信しております。

成田屋親子、私も大好きです。海老蔵さんはもちろんんのこと(海老蔵見るなら花道脇、と教えてくださったのは林檎様ですhappy01)、團十郎さんの豪放さもとても好き。

投稿: SwingingFujisan | 2010年5月 9日 (日) 14時43分

おはようございます。
毎度の遅いコメント、失礼つかまつりますm(_ _)m

昨日昼の部を見てまいりました。一番楽しめたのは『魚屋宗五郎』でした。過去1度だけ見たと思うのですが、誰だったのかまるで記憶にない(^_^;。家に戻って調べたらどうやら2007年の歌舞伎座、勘三郎さんでらしい(錦之助さんの襲名興行)。
もともと松緑さんが好きなので贔屓目で見てしまうのですが、すぱっとした感じ、まさにその感じが大好きです。そして見てもいない辰之助さんが浮かんでしまうのですわ(脳内再生をしています)。芝雀さん、いいですねぇ(^_^)。気持ちがストレートに伝わってきます。海老蔵さんは、ああいうお殿様役が一番はまっているように私には思えました。

『寺子屋』は女房2人の出来がよいように思えました(えらそうでごめんなさい)。松王丸&源蔵はう~~ん、かな。まぁ先月と比べてしまうのは酷というものでしょうね。

昨日は3階でおくだ健太郎さんとすれ違ったからつぎでした。

投稿: からつぎ | 2010年5月14日 (金) 10時43分

からつぎ様
コメントありがとうございます。いつでもご感想を伺うのは楽しみです。
勘三郎さんの宗五郎では時蔵さんがおはまだったんですよねえ。あのコンビ、今でも覚えています。
松緑さん、同感。まさに江戸っ子の代表のような気がします。去年国立で見た宗五郎がとても見事で今後持ち役になるだろうと思いましたが、早くもそれが実現したようで嬉しいです。松緑さんは立ち姿の決めもきれいで江戸っ子らしくすっきりしていて好きです。
私は丑松の印象が強すぎて辰之助さんの宗五郎が頭に思い浮かばないのですが、辰之助さんで見たかったですねぇweep

そういえば、千代と戸浪は兄弟だったんですね(変な言い方coldsweats01)。勘太郎・七之助さんの出来がよかったというのに同感です。海老蔵さんは松王が合いそうでそうでもないんだなと思いました(おっしゃるとおり、磯部の殿様が似合っていました)。来週2回目の昼の部で感想が変わるかもしれませんがsmile

投稿: SwingingFujisan | 2010年5月14日 (金) 13時21分

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