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2010年5月21日 (金)

團菊祭夜の部@松竹座

520日團菊祭五月大歌舞伎(大阪松竹座)夜の部
番付(筋書き)に舞台写真が入っていてラッキーscissors
大阪のお客さんはとても反応がよくて、たくさん笑いが起きていた。「本朝廿四孝」でも時々控えめながら笑いが湧いた。
「本朝廿四孝」
最初に勝頼(錦之助)が舞台に現れた時、そのあまりの若さにびっくりすると同時に、一瞬隼人クンかと思った。もちろん錦之助さんとわかっていたけれど、あまりに似ていて、しばらくじ~っと見つめてしまった。勝頼というのは史実でいえば武田家を滅ぼしたダメ武将だと思うのだけど、この芝居ではそういう面はまったくわからない。むしろ上品で芯の強さを感じる。錦之助さんの二枚目役は久しぶりかしら。階段に片方の脚を出してじっと構える姿勢はつらいだろうなと、この場面を見るといつも思う。
さて、この芝居はたいていどこかでダウンしてしまい、いつもなんとなくよくわからないまま物語が進行している。今日は一生懸命目を開いてがんばったせいか、少しはわかったような気がした。
時蔵さんの八重垣姫はいかにも深窓の令嬢らしい気品と一途さ(最近ちょっと思うのは、赤姫って深窓のお嬢様だからこそ積極的で一途なんだわ)が美しい。とくに、勝頼と思って恋心をぶつける相手が「自分は花作りの蓑作だと」言い張るため、自らの振る舞いを恥じるところが時様独特の愛らしさがあって、思わず微笑みたくなる。
菊之助さんの濡衣(濡衣って、何て名前なの?)はしっとりと美しく、夫を失った哀しみをその身に纏っていた。とてもいい濡衣であったと思う。もしかしたら、いつもは濡衣がなんとなく理解できないために物語全体がわからなくなっていたのかもしれない。ところで濡衣は八重垣姫より年上なのだろうか。少なくとも八重垣姫より人生経験は豊富であろう。一途な姫の心も自分の悲しみも胸の中に呑み込んだ大きさみたいなものも感じられる。その濡衣を菊ちゃんが、そして八重垣姫を時様が演じているのが面白い。
謙信(團蔵さん、こういう役もどんどんやってほしい)の命を受けて勝頼を討ちに行く白須賀六郎と原小文治の対比も面白かった。六郎は萬太郎クンで勢いのよさが力強く若々しい。対して権十郎さんの小文治の力強さには老獪さがあり、謙信が六郎のサポートとして小文治を送り出すのがわかるような気がした。
前半の女の恋心中心のお話が最後はこんな急展開になるんだったっけ、と忘れていたラストシーンは、謙信を中心に縋り付く八重垣姫、武田側のスパイであることを謙信に見抜かれて引き立てられようとする濡衣の3人の決めを見て記憶が甦ってきた。
「京人形」
5
年ぶりに見る「京人形」。文句なく楽しめた。
夫が遊女に入れあげているのに鷹揚な奥さん、「本妻はお前なんだよ」と言われて「わかってるわよ、そんなこと」と懐の深い奥さん、今から遊女(の人形)と酒宴を始めるから仲居役をやってくれと言われて機嫌よく引き受ける奥さん、そんなシュールでかわいい奥さんに萬次郎さんがぴ~ったり。だから最初っから楽しめたのだ。
そして人形である菊ちゃんとその作者・甚五郎の三津五郎さんの踊りの楽しさ、三津五郎さんの踊りのまろやかさ。男から女へ、また男へ、菊ちゃんお得意の変化は、今度は鏡のあるなしがきっかけとなる。鏡って人間の魂を象徴するものなのだろうか。「人間豹」でも鏡が人形に魂を入れなかったっけ?
「京人形」もまた、前半の楽しい酒宴が急展開を告げる。甚五郎夫妻が匿う井筒姫(巳之助)の存在が松永大膳(!! ご執心は雪姫だけじゃなかったのかいっ)にバレたのだ。
ここからは甚五郎と大工たちの大工道具を使った立ち回り。この立ち回りがよくできていて、お客に大ウケ。私もウケた。「京人形」のこの展開もすっかり記憶から消えていたわ

「髪結新三」
江戸っ子ってなんてカッコいいんだろうheart02とつくづく思った。
この芝居は、話としてなんとなく納得いかない部分もあるのだけれど、江戸の風情がよく表れていて、江戸の市井が生き生きと浮かび上がる。見終わったとき「ああ面白かった~」と心から思ったし、大阪のお客さんから一際大きな拍手が寄せられていた。
ただ、大詰に入る前、定式幕が引かれるために終わりだと勘違いして席を立つ人が多々いたためにちょっと空気がダレたかも(気がついて戻った人も多々いたと思う)。もっとも團十郎さんが花道から登場して緊迫感が高まったけれど。

悪党の新三だが、菊五郎さんがあまりに粋でかっこよくて惚れ惚れする。ちょっと立っているだけの姿が色っぽくていなせで。
男の子菊之助の勝奴(EXILETAKAHIROに似てない?)もまた粋だ。新三との関係がシャレていて好きだ(最後に、手にした13両のうち3両を新三が勝奴に放り投げてやる場面、大好き。2人の関係がよくあらわれている)。菊ちゃんは1月の国立でもなかなかいい体であることを見せたが、今日もこの体でよくあのしとやかな女姿になれるなあと思った。
團十郎さんの弥太五郎源七だって(あれだけの親分にしては情けないけれど)最初はかっこいい。でも新三に恥をかかされてからは、あの大らかな團十郎さんが暗い恨みを胸に抱いた表情を見せたのには驚いた(いい意味で)。
菊十郎さんの鰹の売り声が江戸情緒を感じさせて胸に迫った。鰹を捌く場面ではずいぶん笑いが起きていた。
時蔵さんの手代・忠七はきれいで、いかにもお店のお嬢様に惚れられそう。あら、そういえば時様と梅枝クンと親子で恋人をやるのは初めてだったかしら。梅枝クンは恋心の表現がうまいと思う。
菊三呂さんの下女・お菊は、前半、お店に恩義を感じている下女としての分をわきまえた演技でとてもよかったのに、だんだん前に出すぎている感じを受けたのがちょっと残念。
秀逸なのは三津五郎さんの大家。一筋縄ではいかない新三を老獪さでやりこめ、まんまと15両プラス家賃2両をせしめるやりとりの可笑しさ。ここは何度見ても面白い。客席も大いに湧いていた。どの場面だったか、菊ちゃんが思わず吹き出して立ち上がり後ろを向いて笑っていたが、これは決められた演技だったのか、本当に吹き出したのか。後でももう一度吹き出す場面があって、それは演技なんだとわかったんだけど。
ここでも三津五郎さんと萬次郎さんは夫婦で、でもこの奥さんは「京人形」の奥さんとは大違いで、やたらがめつい。
弥太五源七の歯が立たなかった新三、新三の歯が立たなかった大家、その大家が泥棒に入られ、そのあたりが物語としてよくできているではないか。
松竹座に漂った江戸の空気、おおむね好評のうちに受け入れられたのではないだろうか。だとしたらとても嬉しい。
個人的には團菊の切り口上に、幸せと贅沢感、何とも言えぬ感慨を覚えた。
<上演時間>「本朝廿四孝」50分(16:15~17:05)、幕間20分、「京人形」30分(17:25~17:55)、幕間30分、「髪結新三」130分(18:25~20:35)

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

昨日は短い時間でしたが、お話ししながら美味しいビールが飲めて楽しかったです。
帰りのバスが名神高速集中工事のため、迂回したので(行きもですが)東京着が予定時刻より30分程遅くなり、ちょっと疲れましたdown
もしかしたら、SwingingFujisan 様のことだから、観劇記書いていらっしゃるかなと思っておりました。思い切って松竹座遠征観劇して良かったです。又お会いできる日を楽しみにしております。

投稿: とこ | 2010年5月21日 (金) 11時55分

こんにちは♪いいですね~。大阪での團菊祭!うらやましいですっ。

「本朝廿四孝」、けっこう上演されているわりに私も最初から最後までちゃんと眼を開けて見たことがないかもと思いました。今度はしっかりストーリーが掴めるようにしないと。。。

「京人形」は、想像するだけで楽しくなります。人形は扇雀さん、芝雀さんでも見ていますが、それぞれの個性があっておもしろいんですよね。

1番見たい「髪結新三」!七代目さんの新三、菊ちゃんの勝奴、成田屋さんの弥太五郎源七、大和屋さんの大家、時さまの忠七・・・と素晴らしい配役。おっと忘れちゃいけない菊十郎さんの「かっつおっ」。菊ちゃん、お芝居じゃなくって笑っちゃうこと、けっこうありますよね。その素のお顔もまた、かわゆらしい。

切り口上までつくとは、贅沢ですね~。今日も楽しまれているのでしょうね~。私は明日は4時起きで名古屋に行ってきま~す!

投稿: aki | 2010年5月21日 (金) 14時59分

とこ様
お疲れ様でした。
やはり予定以上の時間がかかると疲れが増しますよね。今日はゆっくりお休みになれましたか。

私も松竹座に遠征してよかった!!と思いました。

無理にお付き合いさせたみたいで申し訳なかったですが、お話ができて、beerも美味しくて、楽しかったですわ~。ありがとうございましたhappy01

投稿: SwingingFujisan | 2010年5月21日 (金) 21時05分

aki様
明日、4時起きshock それではもうおやすみになられたかしら。レスが遅くなってごめんなさい。

團菊祭、素晴らしかったですよ~。大阪のお客さんもたくさん拍手をしていらっしゃって、嬉しく思いました。

「本朝廿四孝」はやはりaki様もsmile お仲間がいると、ほっとします。

菊ちゃん、大活躍でと~っても素敵でした。1回の観劇しかできないのが残念。もう一度見たいものばかりです。

明日はお気をつけて行っていらっしゃいませね。名古屋レポ楽しみにしております。

投稿: SwingingFujisan | 2010年5月21日 (金) 21時11分

SwingingFujisan様
 大阪遠征ご苦労さまです。楽しくレポ拝見しております。今回の狂言建ては、すっきり(一番目、所作事、二番目の順)していますね。東京だと大入り間違いなしの魅力的な演目ですね。それに比べて、7月の演舞場の狂言建ては、何なのでしょうか。時代物、世話物の順番をひっくり返し、役者のわがままそのものですね。うるさ型の批評家なら、観客の観劇の生理を無視すると、以前は厳しく文句が出たものですが・・・。
 関西では、以前は黙阿弥狂言はあまり受けない(あっさりしすぎている?)と言われていました(昔の京都顔見世は義太夫狂言が3連続出たりしました。)時代が変わってきたのでしょうか。今回の演目の中では、三津五郎の「京人形」を観たかったですね。大和屋の所作事は楷書の芸ですが、今が旬、何をやってもいいですね。東京でも、「馬盗人」や風俗舞踊の小品も悪くはないですが、「船弁慶」「連獅子(息子さんと)」「鏡獅子」など大曲を出してほしいものです。

投稿: レオン・パパ | 2010年5月22日 (土) 19時54分

レオン・パパ様
コメントありがとうございます。
松竹座の狂言建ては、私も非常に好ましいと思いました。観客の観劇生理に合っているのですね。それも好評を呼んでいる一因でしょうか。大阪のお客さんが声をあげて笑ったり、腕を伸ばして大きく拍手したりしていたのがとても嬉しかったです。黙阿弥の痛快さがとてもウケていたようですよ。
演舞場の狂言建てはやはり…ですのね。私は歌舞伎は基本昼夜2回ずつ見るのですが、7月は今のところ1回ずつかなぁと思っています。実際に見てよかったら考え直しますが。

三津五郎さんはとても器用な役者さんだと思いますが、器用貧乏にならないところがすごい。まさに今が旬、油が乗っていますね。そういう役者さんは、観ていて気持ちがいいです。

投稿: SwingingFujisan | 2010年5月22日 (土) 22時14分

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