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2010年7月 6日 (火)

七月歌舞伎夜の部・1

75日 七月大歌舞伎夜の部(新橋演舞場)
観劇中に雨が降った形跡があったが、往復とも傘は不要。帰路はとくに豪雨の時間帯であったようなのにラッキーだった。被害に遭われた方、ごめんなさい。お見舞い申し上げます。
「暫」
大薩摩の三味線が演奏されるだけで、もうワクワクする。
しかし鶴岡八幡宮の社頭が現れると、やはり演舞場は狭い。とくに奥行きのなさが歌舞伎座でないことを改めて実感させる。
それでも「暫」は何を見ても嬉しい。社頭にずらりと並んだ面々を見るだけでも嬉しい。揚幕の中から「しばらく~しばら~く~」と言う権五郎の声が聞こえるだけで嬉しい。そして、まったく馬鹿馬鹿しいほどデカい素襖を見るだけで嬉しい。團十郎さんのものすごく立派な見た目(大変な体力が必要だろうなあ)と稚気たっぷりな中身のギャップが嬉しい。その後も何から何まで嬉しくてしょうがない。
権五郎のつらね、「歌舞伎座建替えのため演舞場にまかり出でたるは鎌倉権五郎」では客席から笑いが湧いた。
段四郎さんの清原武衡が大きくてとてもよかった。セリフもちゃんと入っていたし、あの場にふさわしい公家悪であった。
腹出しの中では市蔵さんの構えがやはりいつもどおり一番腰が入っている感じで私は好きだ。
「傾城反魂香」
吉右衛門さん渾身の演技に泣いた。私はどちらかと言うと、こういう役の吉右衛門さんはあまり好きではない(頼り甲斐のある武士のほうが好き)けれど、又平の苦しみ・絶望感がこちらも苦しくなるほどに伝わってきて、泣いた。最後、土佐の名前を許されて裃を着た姿は立派で、ほっとした。
しかしこの芝居は何と言っても芝雀さんである。芝雀さんのおとくには「こまやかさ」がある。又平の世話をするにも愛情のほかに「こまやかな」配慮が感じられる。自害しようと刀に手をかける又平を止めるおとくに、どっと涙が出た。自画像を描くときの三味線の連れ弾きが悲しい情感を誘って、また涙が出る。

歌六さんの土佐将監――師匠には師匠の葛藤があることが見てとれる。本当は又平のことを気にかけていたのであろうことも、又平の絵が石灯籠を抜けて反対側に滲み出したときの様子がそれを物語っていた。
土佐将監の奥方がまたよかった。又平の訴えを身を乗り出すようにして聞き、同情心から夫に何とかしてほしいと思いながら、出すぎたことは一切せず、又平に何もしてやれないつらさが感じられる。又平の見事な筆を心から喜んでいる様子がその微笑みに表れていた。また又平の着替えのときの嬉しそうな表情に気持ちがとても和らいだ。この奥方は吉之丞さん。さすがである。
種太郎クンがずいぶん成長したなと思った。逸る気持ち(虎出現に騒ぐ百姓たちを叱ったり、虎を消すのを自分にやらせてほしいと申し出るなど)が若々しく、セリフもよくなった。
歌昇さんの狩野雅楽之助も勇ましく、見ていて気持ちがよかった。

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コメント

久しぶりに歌舞伎にもコメントさせて下さいませ。コクーンとかも見に行ってたのですが、なんせW杯に気を取られすぎてまして…coldsweats01

「暫」は出オチといいましょうか、もう出てきただけで充分な満足感heart01今回は2階右袖から花道にいる姿を真正面に遠目で見たのですがやはりデカい!!ばかデカイ!smile3人分ぐらいありますね。團十郎さんだとあの大きさに負けない立派な顔で、やはり成田屋の芸とゆうか、うまい事産まれついたものだなぁとヘンに感心。海老蔵に團十郎さんの大らかさはないから、やはり團十郎さんだけにしかない大きさですね。60kgもある衣装で1ヶ月間もちと心配ですが、いつまでもお元気な舞台姿を見たいです。

吃又は前半の悲しさ、悔しさと後半の喜びの対比が見事で、さすがでしたね〜!吉乃丞さんは品よく、出しゃばらず、情に溢れていて私も素晴らしいと思いました!歌六さんとステキなご夫婦でしたねconfident

そして馬盗人は大好きでもう笑いの連続で本当に楽しませてもらいましたnotes
私ももう一回見たいなぁ。

投稿: 林檎 | 2010年7月 7日 (水) 12時34分

林檎様
歌舞伎にもコメントくださって、ありがとうございます。
海老ちゃんには枠にはまり切らない良さがありますが、團十郎さんは枠の中で思い切り大きい、いや枠を中からどんどん大きくしていくという感じかな。
成田屋さんは、体の大きさ、そして目の大きさですよ!! 海老蔵さんも麻央さんも目が大きいから大丈夫でしょうが、まさにうまいこと生まれつく必要がありますよねsmile
一時は生命の危機にさえあった團十郎さんが、弁慶にしても権五郎にしても、こうして演じられるようになったのは本当に嬉しいことです。

吉之丞さんはとても好きな役者さんです。きっとご本人も温かいお人柄なんでしょうね。

「馬盗人」の馬は、身体能力の高さ、演技力の確かさが必要とされますから、誰でもできるというわけではないでしょう。八大さん、大和さんは見事にその要求に応えて素晴らしかったですね。大熱演に胸が熱くなりました。

投稿: SwingingFujisan | 2010年7月 7日 (水) 21時32分

SwingingFujisan様
おはようございます。昨日、夜の部観てきました。夜の部のほうが、昼の部よりも、疲れない割には大変充実していました。演舞場が歌舞伎座の控え櫓としての格を示した公演でした。
「暫」成田屋の家の芸を堪能。団十郎が健康そうで何よりです。権十郎、市蔵、門之助等々が、昼夜これ一役というのも贅沢です。段四郎も、顔が立派ですし、セリフも明確でした。
 「ども又」は、同じ顔ぶれで、暫く前に観ていますが、一層練り上げられていましたね。吉右衛門が、素に近い顔のつくり、無駄のない動きながら、逆に迫真のドラマを作り上げていたのは今が盛りの芸の力の故でしょう。手水鉢に絵を描くところの気迫が凄いです。加えて、芝雀も、衣裳がお白粉で色が変わるほどの熱演、情愛の細やかさが胸を打ちます。前は、夫婦の見た目の年齢の違いが気になりましたが、今回はほぼ釣り合ってみえたのは、芝雀の芸の格が上がってきたからでしょう。
 ところで、播磨屋の型は、幕外の夫婦の引っ込みがなかったですかね。
 「馬盗人」は、2度目ですが、たわいがないとはいえ、民話調の筋に決して無理がなく、楽しめました。長唄が美声で、言葉が名跡で分かりやすいのが、何より。また、囃子方の珍しい打楽器に興味津々でした。三津五郎、歌昇ともに、踊りが、やはり上手です。手を上げて踊る、ちょっとした振りですら、楽しさ横溢でした。

投稿: レオン・パパ | 2010年7月11日 (日) 08時09分

レオン・パパ様
おはようございます。
コメントありがとうございます。
夜の部のほうが疲れない割に充実していた--まったく、その通りだと私も思います。「暫」は贅沢な配役ですし、何と言っても荒唐無稽、稚気たっぷりの荒事は見ていて楽しいです。
吉・芝の「ども又」は私も以前に見ておりますが、今度のほうがずっと感動が深かったように思います。おっしゃるとおり、吉右衛門さんの芸は今が盛りなのでしょう。芝雀さんについてもご同様に感じます。
幕外の引っ込みは、ご指摘されてみればあったかもしれないと思いますが(2人が花道を引っ込む様子が目に浮かぶんですけれど)、残念ながらよく覚えておりません。
「馬盗人」も楽しかったですねえ。夜の部は終演時刻が早いので、できたらもう一度見られるといいなと思いますが、幕見がほしいですねえ。

投稿: SwingingFujisan | 2010年7月11日 (日) 09時14分

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