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2010年7月 2日 (金)

絶対おススメ、巡業中央コース

71日 松竹大歌舞伎巡業中央コース(大田アプリコホール)
先日、久しぶりに山手線に乗ったら池袋止まりだったが、今日京浜東北線に乗ろうとしたら、なんと神田駅での人身事故の影響で止まっているというshock
JR
を使わずに行くことも考えたが、並走する山手線に乗ればどこかで京浜東北も動き出すだろうとハラを括り、駒込から山手に乗った。そうしたら、いきなり田端で京浜東北が滑り込んできたので乗り換えた。ところが快速運転をやめ各駅だというではないか。かなり焦ったけれど、早めに出ていたため、けっこう余裕で間に合ったcoldsweats01
「廓三番叟」
舞台には鶴が描かれた豪華な打掛が掛けられているだけで、人はいない。やがて正面の障子が開き、長唄連中の姿が現れた。そしてしばらくすると下手の襖が開いて、翁にあたる傾城、千歳にあたる新造が登場する。傾城は時蔵、新造は梅枝。時様のあでやかで美しいこと、ため息が出る。梅枝クンがまた開きかけの蕾のような初々しさ瑞々しさで、これまたため息。
筋書きには三番叟にあたる太鼓持ちが一緒に登場することになっているが、実際には10分ほどしてから1人で現れた。萬太郎クンは初めての巡業初日で多少緊張があったかもしれない。童顔でちょっと損しているかなと思うが、これからどんどん成長していく予感。
三番叟モノというと、とくに翁と千歳の舞には緊張感が漂うが、「廓三番叟」は厳かながら華やかで、さほど緊張せずに見られた。でも萬屋親子3人の舞だけに、誰を見たらよいやらhappy023人それぞれに目を移しながら楽しんだ。
「一條大蔵卿譚」
菊之助さんのお京、松緑さんの鬼次郎という若々しい夫婦がいい。常盤御前や一條大蔵卿の本心を隠した言動を見抜けぬ若さが違和感なく共感できる(若くなくても見抜けないかもしれないけれど)。菊之助さんは、重大な任務を心に秘めたという覚悟を感じさせる。常盤御前に対する怒りを込めたセリフも、悔しさ情けなさが感じられる。
檜垣茶屋の場でぱっと門があいてちょこまか飛び出してきた菊五郎さんのなんと若いこと。作り阿呆が品よく程よい(やりすぎていない)。本来の姿になって登場し、自ら傷を負わせた八剣勘解由をぐっと睨む迫力(私、この眼光にしびれましたsmile)、「今明かす本心」のぶっ返った時の嬉しげな表情、こういう姿を見ると、時が熟すまではぐっとガマンの阿呆を装う一條大蔵卿の気持ちが切なく伝わってくるような気がする。
大蔵卿が観客の見えないところで八剣を長刀で突き、ついにその息を止め、布に包まれた首を抱えて出てきたら、客席から笑いが起こった。タイミングが早すぎたのかしら。
時蔵さんの常盤御前は凛として意志の強さを感じさせた。鬼次郎と八剣の立ち回りが始まった時にはちょっと心配そうな表情で覗きこむような感じだったのが印象的だった。
團蔵さんの八剣、秀調さんの鳴瀬ともに手堅く、さすがベテランの味わいが深い。いい役者さんが揃っている。

「棒しばり」
菊之助・松緑の太郎冠者・次郎冠者。夜の部はこれが逆になるとのことで、昼夜通しで見たかったなあ。
とにかく楽しくて楽しくて。
團蔵さん(大名・曽根松兵衛――っていう名前だったんだ)の踊りは初めて見るような気がする。初めてでないにしても、あまり見た記憶がない。ちょっと緊張していたようでもあるが、飄々とした味わい十分。つい先ほどの憎らしい八剣を演じていたのと同一人物とは思えない。
菊ちゃんの「酒飲みたい」企み顔の嬉しそうな表情にはついついこちらもつりこまれて笑ってしまう(こちらも、先ほどの重大任務のお京と同じ役者さんとは…)。松緑さんと2人、いかにも酒が好き、ああ飲みたくてたまらん、ともに手が使えず動きが不自由だからこそ、余計飲みたくなる、酒もうまい、酒宴も楽しいという前向きな気持ちが小気味よい。こちらも2人の動きに合わせて、手を使わずに杯に口をつけているような気分になる。
松緑さんの棒術はきりっとメリハリがあって、もっともっと見ていたい。
脚だけで踊る菊之助さんの体力はすごい(夜は、これが松緑さんになる)。一踊りしたあと、松緑さんの踊りを眺めている時には肩を大きく上下させている姿がその動きの激しさを物語っているのに、セリフはまったく乱れないのが不思議なくらいである。
観客が舞台と一体になって酒宴を楽しんでいる空気が漂う。棒に縛られた松緑さんが、後ろ手に縛られた菊ちゃんに杯を持たせようとすると、客席から「ああ」と合点の声が。つまり、菊ちゃんに持たせた杯に松緑さんが口をつけて飲むという企みに観客が「あ、そうか、わかった」という声をあげたのだ。そしてうまく飲めると、思わずといった感じの拍手が起きた。
抜け目のない2人の従者の逞しさ、からっとした明るさ、知恵…息の合ったコンビの楽しい楽しいひと時だった。でも、初日からこの飛ばし方、菊ちゃんも松緑さんも、体には気をつけてくださいね。
先月14日以来久しぶりの歌舞伎でもあり、また豪華な巡業でもあり、大満足。ご覧になる予定のない方、とても贅沢なこの巡業は絶対おススメです。
おまけ:藤間勘十郎さん、坂東亀三郎さんheart04、尾上右近クンがいらっしゃいました。

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

おはようございます。ワールドカップも終わって(あ、終わってないのかbleah)、さあ歌舞伎sign03の今月、いいスタートが切れましたね~。
私は八王子に行く予定なので、もうすぐです。レポを拝読すると、もう早く見たくてたまりません。「棒しばり」は狂言でも人気演目で、私は歌舞伎で生の舞台を拝見したことがあったかしら。若い2人のコンビにわくわく。配役発表のとき、太郎冠者次郎冠者が「交互」とのみあったので、当日行くまでわからないのかと思っちゃいましたよ。そんなことはなかったですが・・・。

ところで水曜日に池袋に行った帰り、ホームにいた山手線に乗ろうとしたら、「池袋始発の山手線」でした。で、座ったとたん「隣のホームに来る電車が先に発車してその後に出ます」、とのこと。別に急いではなかったのに、せっかく座ってたのに、やはり早い電車の方にしちゃいました。1分でも早く、というのが染みついてしまって嘆かわしいのか、立っていけばいいと思えるのは元気な証拠と喜ぶべきか、はてさて。

投稿: きびだんご | 2010年7月 2日 (金) 09時02分

おはようございます。昨日は夜の部を拝見しました。私からも「絶対おススメ!!!」です。

萬屋さんの美しさにウットリし、七代目さんのちょこまか歩きにニヤニヤし、棒しばりのおふたりと一緒にほろ酔いに。菊之助さんの次郎冠者も素晴らしかったです!次回はうまいこと松緑さんの次郎冠者を見られるので楽しみです。あぁ、何度でも見たいです。康楽館は断念したので、北とぴあまでお預け~。

投稿: aki | 2010年7月 2日 (金) 10時46分

Swinging Fujisanさま
こんにちは。
巡業公演、楽しそうですね。
私は明日の立川市市民会館に行きますが、巡業も立川も初めてで、遠足気分です。上演時間なども詳細に教えていただき、有難うございます。

実は「一條大蔵卿譚」は演目自体、初めて見ます。「棒しばり」は赤坂歌舞伎で勘太郎君と七之助君のおどりを見ました。中村屋兄弟の踊りも素晴らしく、カーテンコールがありましたが、今回の菊之助さんと松緑のコンビもワクワクします。

投稿: Mickey | 2010年7月 2日 (金) 14時10分

きびだんご様
こんばんは(になってしまいました。ごめんなさい)。
ワールドカップも終わり--はわかりますよ。多くの日本人の中では終わっているのかもしれません。まだまだこれから、と考えている私(今日はブラジル×オランダですよ!!)、でも、一つ何かが終わったような気がしますもの。

今回の巡業は、巡業という限られた条件の中で、とてもいい狂言立てだと思います。
あら、きびだんご様は歌舞伎の「棒しばり」は初めてでいらっしゃいましたか? 三津五郎×勘三郎、中村屋兄弟で演じられていますから、ご覧になっていらっしゃるのではないかしら。
今回は珍しい交互配役ですが、よく見たらプログラムにどちらが次郎冠者をやるか出ていました。八王子も昼夜ありますから、交替になりますね。お楽しみのためにヒミツにしておきましょうかsmile

始発で座っていくか、座れなくても早い電車にするか--迷いますねえ。急いでいなくて乗車時間が長ければ始発を、というところでしょうか。昔、都電やバスが道路事情で2台続けて来た時、私はたいがい後のほうに乗ったものです(若かったのにcoldsweats01)。後から来るほうがすいているってわかってるのに、みんなどうして混んでいる先発を選ぶのかなあと不思議でした。

池袋止まりがあれば、池袋始発もあるんですねsmile

投稿: SwingingFujisan | 2010年7月 2日 (金) 22時01分

aki様
こんばんは(になってしまって、ごめんなさい)。
昨日は、すれ違いでしたのね。

とっても贅沢な巡業ですよね。ちょこまか歩き、ああいうところにお茶目な菊五郎さんの真髄があらわれていますね(^^)
棒しばり、私は北とぴあでも松緑さんの次郎冠者です(夜の部、ご一緒ですね)。もちろん、もう一度でも二度でも拝見したいのですが、せっかくのダブルキャストですから、菊ちゃんのもぜひ見たい。
ということで、北とぴあを昼夜見るか、前日の越谷に行くか、考慮中です。
康楽館、断念されましたか。行ったことのある方にお聞きしたら、と~ってもいいところだそうです。菊五郎さんも康楽館をかなり楽しみにされているようですよ。今回行かれないのは残念ですが、私もいつか必ず行こうと思いました。

投稿: SwingingFujisan | 2010年7月 2日 (金) 22時10分

Mickey様
こんばんは。お返事が遅くなってしまってごめんなさい。
明日いらっしゃるのですね。バランスの取れた演目と豪華な出演者で、きっとご満足いただけると思います。
立川市民会館って、アミュー立川のことですよね。私はもう何年前になるでしょう、1度だけ行ったことがあります。立川駅からけっこう歩いたような…。
巡業は、各ホールで舞台の大きさが違うため大道具のサイズ合わせが大変なようですが、昨日見ていて、うまく作ってあるなあと思いました。また、巡業の場合、普段歌舞伎をご覧にならないお客様もたくさんいらっしゃるので、客席の雰囲気もちょっと違って、それもまた一つの味わいだと思います。
「一條大蔵卿」は鳴瀬の秀調さんを除くと、配役が昨年南座の顔見世と同じようで、「ああ、だから」と納得しました。
赤坂の「棒しばり」、私も見ましたよhappy01 この踊りこそ、息がぴったり合わないとできませんよね。松緑さん、菊之助さんも見事なコンビネーションを見せてくれます。お楽しみに!!

投稿: SwingingFujisan | 2010年7月 2日 (金) 22時32分

SwingingFujisan様
 本日の立川公演、昼の部観てきました。昨年も思ったのですが、このような多目的ホールでは、ホールの残響時間が長いため、セリフが歯切れが悪く、籠って聞こえるのが難です。今回は、発売初日に予約したので、前から三列目で、その弊害はありませんでした。で、肝心の感想ですが、どの出し物も、菊五郎一座のチームワークがよく、大変楽しめました。一条大蔵の御殿で、秀調と団蔵が出てくると、舞台に厚みが出るのがよくわかり、歌舞伎の脇役の大切さを再認識しました。菊五郎の大蔵卿は、吉右衛門、猿之助等と比較すると、うつけと正気の差がそれほど際立たないやり方のように思えましたが、柔らかみのある芸質が役にはあっていて悪くはありません。最後、首をボールのようにもてあそばない大人しい型ですが、このほうが、グロテスクでなくて良いのかもしれません。
 あとは、松緑の次郎冠者が、何とも漫画チックな表情ながら、闊達な踊りで熱演でした。扇子の曲どりはいつもハラハラさせられます。

投稿: レオン・パパ | 2010年7月 3日 (土) 19時00分

レオン・パパ様
コメント、ありがとうございます。
おっしゃる通り、巡業で使われるホールには音響の面で厳しいものがありますね。でも、それでも蒲田ではお客さんの反応はよく、大変嬉しく思いました。
大蔵卿は、私は猿之助さんのを見たことはありませんが、亀治郎さんが猿之助さんの型を受け継いでいたのでしょうね。吉右衛門、勘三郎さん、亀治郎さんと比べると、確かにうつけと正気の差は目立ちませんでした。差が大きいほうが客は喜ぶのかもしれませんが(私もその1人です)、菊五郎さんの大蔵卿は程よくて、私は好きです。それぞれの役者さんの個性と考え方で違ってくるものなんですね。
松緑さんの太郎冠者も見てみたいです!! 何とか日程を合わせられるよう、考えています。扇子の曲取り、初日はかなり気合を入れてからやっていました。今まで失敗したのを見たことがありませんが。しかし日本舞踊はパワーがいりますね。

投稿: SwingingFujisan | 2010年7月 3日 (土) 22時31分

コメントが遅くなってしまって、ゴメンナサイ! こちらにもお邪魔いたします。

>夜の部はこれが逆になるとのことで、昼夜通しで見たかったなあ。

「昼夜通しで見てよかった!」、はい、胸を張って申せます(笑)。

実は、昼の部を見た時点で、「満足感」で満ち溢れ、この嬉しい気分のまま帰ろうかな~、なんて思ったりもしたんです。でも、せっかくなので、夜も見て帰ろう!と決意して、ほんとに良かったです。1日のうちで両方堪能できましたから!(松緑丈も菊之助丈も、1回目で見比べることができました。)

蒲田のお客さん、大入りということもあって、割と反応がよく、楽しめましたね。暑い中での巡業、旅の安全をお祈りしたいです。

投稿: はなみずき | 2010年7月 5日 (月) 14時22分

Swinging Fujisanさま
一昨日の松竹大歌舞伎の巡業は、演目のバランスが良く、楽しかったです。このところ、歌舞伎に限らず、少々重い舞台を見るのが続いたのですが、見終わって楽しかったと思えるのが一番ですね。
『棒しばり』、私が見た回は、菊之助さんが次郎冠者で、棒に縛られていました。菊之助さんは涼しげなお顔で、最後まで疲れを見せずに踊っていましたが、お顔はかなり汗をかいていたもよう。松緑さんと2人、若々しい踊りで、会場中笑いに包まれました。
アミュー立川は、歌舞伎小屋とは雰囲気も違って、近隣の方が多く見に来ているようでした。銀座とは違って普段着感覚で、年配の方も多かったです。遠出が難しくなっても、こうして年に1度くらい、地元で歌舞伎公演を見れたら嬉しいだろうな、と思いました。

投稿: Mickey | 2010年7月 5日 (月) 15時08分

はなみずき様
こちらにもありがとうございます!!
夜の部当日券に並ばれた甲斐があってよかったですねsign03 別の日に見るのもいいけれど、1日のうちに両方、は格別贅沢ですよねhappy01 私も今さらながら通しで見ればよかったと後悔しております。
たくさんのお客様が大喜びしていらっしゃるのを見ると、嬉しさが倍加しますね(^^)
ほんと、巡業の皆様の道中の安全をお祈りしたいです。

投稿: SwingingFujisan | 2010年7月 5日 (月) 22時35分

Mickey様
ご感想、ありがとうございます!!
巡業は色々な条件の制約がありますから、演目を選ぶのも難しいかと思いますが、この巡業は狂言立てがとてもいいと私も思いました。
「棒しばり」は太郎冠者も次郎冠者も、本当は大変な肉体労働ですよねcoldsweats01 それを気取らせずに、楽しそうに酔っていくのですから、こちらも一緒に酒を飲んでいる気分でどんどん楽しくなります。ああいう菊之助さんはめったに見ることがないので、余計楽しめました(^^)

巡業には巡業のよさがありますよね。私などは歌舞伎座地元圏だと図々しくも思っているのですが、本当の地元に歌舞伎が来てくれると、それだけで嬉しくて仕方ありません。年に1度の巡業を心待ちにしている方も大勢いらっしゃるんでしょうね(私もその1人です)。

先日はお名前の大文字と小文字を間違えてしまってごめんなさい。大変失礼いたしました。遅ればせながら訂正いたしました。

投稿: SwingingFujisan | 2010年7月 5日 (月) 22時47分

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