« 第8回亀治郎の会初日・2 | トップページ | 第16回稚魚の会歌舞伎会合同公演・B班 »

2010年8月21日 (土)

第16回稚魚の会歌舞伎会合同公演・A班

820日 稚魚の会・歌舞伎会合同公演A班初日(国立劇場小劇場)
私にとって今年で5回目の合同公演。どの研修所卒業生も応援しているけれど、今回はとくに応援している梅之さんと辰巳さんが大きな役に挑戦している。長時間の蹲踞に耐え、日本一の(世界一だったかな)トンボを切りたいと疲れた身体にムチ打って見事なトンボを披露していた辰巳さんが勘平!! 嬉しい。
初めて合同公演を見たとき、梅之さんは「修善寺物語」の頼家で美しい貴公子を演じていた。その後女方に変わり、びっくりさせられたが、日々勉強に暇のない真面目な梅之さんがおかや!! 嬉しい。
プログラムとは別に仮名手本忠臣蔵の物語の概要、人物関係図が書かれたプリントがあり、初心者にもわかりやすくなっているのが合同公演らしくていいなと思った。
「仮名手本忠臣蔵5段目・6段目」
幕が開いて、勘平役の辰巳さんが緊張いっぱいの面持ち(胸のうち、想像できるよねえ)でいるのを見た途端、こちらにも緊張がうつり、親戚のオバサン気分ではらはらしてしまった。
勘平はしどころがたくさんある。小道具の扱いも大変だ。辰巳さんはまだ手順を丁寧に追っているようなところがあってぎこちない。こちらも、火縄の火はちゃんとつくかしら、火縄に点った小さな炎(ぶんぶん回して明かりがわりにする、あの炎)は消えないかしら、お財布は胸の中に入っているかしら、などと一つ一つが気になってしまう。そのせいか、役の心になかなか思い入れするに至らなかったが、これが勘平が刀を腹に突き立ててからは俄然変化した。
本当に刀が刺さっているかのような息遣いにセリフ、自業自得とはいえこれまでの日々の辛さと討入への執念、こうなってしまった運命への諦めなどなど、複雑な気持ちが伝わってきて、うるうるした。菊五郎さんの指導を受けたそうだが、面白いものでちょっとした仕草や目の遣り方に時々菊五郎さんが重なって見える。
辰巳さんってずいぶん身体が大きいんだなと思った。華があるのがよい。
一方の梅之さんはおかるの母・おかや。6段目はある意味おかやの物語でもあり、非常に重要な役である。幕が開いたとき、おかやがずいぶん小さくてビックリした。私の中では最初はあまり小さくないが、過酷な出来事にどんどん小さくなっていくような気がしていた。でも考えてみれば、娘が身を売るなんて、母親としてどんなに辛いことか。最初から小さいのだ。そして夫が婿に殺されたことでおかやは大きくなっていく。最後、それが誤解であったことがわかり、おかやはまた小さくなってしまう。

梅之さんの場合はしどころよりもセリフを忘れたらどうしよう、なんて心配したが、落ち着いていて、セリフがとてもよかった。ちんまりした老婆の悲しみが心を打った。おかやの指導は東蔵さんらしいが、こちらは東蔵さんに重なることはあまりなく、吉之丞さんに近いような気がしたのはこれまた面白い。
斧定九郎(錦二郎)は人間の冷たさは感じられたものの、もう少しスゴ味がほしい。あと、水のしたたる感じももっと出るとよくなると思う(髪のしずくを払う仕草、着ているものを絞る仕草、これって難しいんだなあと思った)。
お軽(京珠)は寂しげで可愛らしかった。勘平との別れの場面は胸を打つ。
一文字屋お才(みどり)は前半、ちょっと意地悪な印象を受けてしまった(ごめんなさい)。セリフは悪くないのだから、表情や立ち姿などに少し工夫がほしいかも。
千崎彌五郎(吉二郎)、不破数右衛門(蝶八郎)は役の心を摑んでいたように思う。判人源六(吉六)は愛敬もあり、のびのびと演じていたと思う。
全体にみんな、セリフがよかった。回を重ねるごとに手順もしっかり身につき、さらにいい芝居になること、大いに期待できる。
「道行」
秘かに喜昇ファンの私、踊りに見入った。やわらかい動きが母親らしい。喜昇クンっていいよねえ、と思わず心の中で呟く。
美形の京由さんは娘らしい愛らしさがいじらしい。母子の細やかな愛情が2人から伝わってきた。
奴可内(吉二郎)は剽軽な味が出て、楽しかった。
<上演時間>5段目」26分(11301156)、「6段目」86分(115913:25)、幕間30分、「道行」31分(13:55~14:56)

おまけ:歌六さん、歌六夫人、米吉クンのご一家、吉右衛門夫人、東蔵さんをお見かけした。

|
|

« 第8回亀治郎の会初日・2 | トップページ | 第16回稚魚の会歌舞伎会合同公演・B班 »

歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

近年では、稚魚の会・歌舞伎会合同公演は、毎年の夏のイベントになってきてます(笑)。役者さんの一生懸命お役に取り組む姿に心打たれますし、普段はスポットライトがなかなか当たらない役者さんたちの晴れの舞台姿には、目が潤んでしまいます。名題下さん、名題さんがいらっしゃらないと歌舞伎の「華」は完成しないと思いますので、こういった役者さんたちのご活躍、心から嬉しく、また応援したい気持ちで一杯で居ます。

本当に本当に、勘平って難しいお役と思います。短いお稽古期間で、スゴイ!!と感動いたしました。

投稿: はなみずき | 2010年8月21日 (土) 14時29分

はなみずき様
コメントありがとうございます。
8月といったら合同公演ですよねhappy01  私の合同公演歴はまだまだ浅いのですが、やはりとても楽しみなイベントになってきています。 
名題下さん、名題さんがいらっしゃらないと歌舞伎の「華」は完成しないと思います--まったく同感です。次のエントリーで触れるつもりですが、この役者さんたちがただ立っているだけでも座っているだけでも絵になるということが重要なんですね。そしてそれは付け焼刃的には絶対無理、ということです。
私も、そういう役者さんたちをできるだけ応援していきたいと思っています(はなみずき様のようには、なかなかお名前とお顔が一致しないんですけれどcoldsweats02)。

この会の前は巡業だったりそれぞれの公演中、師匠のお世話だけでなくご自分の出番もあったりして、お稽古時間はそんなに取れなかったのでしょうに、見事な演技でしたねshine

投稿: SwingingFujisan | 2010年8月21日 (土) 21時18分

辰巳さんが勘平役と発表になった時から、親戚のオバサン気分でした。
昨日も幕開きのお顔を見たら、私も緊張してしまいましたが、辰巳さんは見事に勘平さんでした。
幹部役者だけでは成り立たない歌舞伎を支えている名題、名題下の役者さんを、私も応援していきたいです。

投稿: とこ | 2010年8月21日 (土) 22時09分

とこ様
コメントありがとうございます。
昨日は初日でしたし、勘平は大きなお役の上に最初の登場人物ですものね。辰巳さん、喉から心臓が飛び出しそうな気分だったのではないかしらなんて勝手に推察してドキドキしてしまいましたcoldsweats01 とこ様は私以上に親戚のオバサン気分だったでしょうねwink

私たちの応援を励みに思ってもらえるよう、力を込めて拍手を送ります。

投稿: SwingingFujisan | 2010年8月21日 (土) 22時56分

A、B班ともに一部分寝てしまってごめんなさーいな私です。特にB班は勘平の見せ場に沈没orz

A班の方が経験豊富なメンバーでしたよね。
梅之さん、喜昇さんがよかったです。梅之さん、おかやってむずかしくて大変そう、っておもってたんが、気持ちの変遷が適切で、ぐんぐん引き込まれました。それにつれて辰巳さんの勘平に感情移入する、って感じでした。

猪も新人さんのようで、ほほえましかったです。
23日なんて引っ込む場所間違えそうになってました(見えないんでしょうね)

投稿: urasimaru | 2010年8月24日 (火) 01時49分

urasimaru様
昨日、いらしていたのですか!! 気がつきませんでweep

梅之さんの老け役、私も親戚のオバサン気分でずいぶん心配したのですが見事でしたねえ。ほんと、ぐいぐい引き込まれました。これで終わっちゃうのがもったいないくらいですが、梅之さんにとってかけがえのない糧になったでしょうね。

猪さん、そっか新人さんなんですね(たしかにちょっと動きがぎこちなかったかもcoldsweats01)。見えない状態で的確に走るって難しいことなんだ、とあらためて認識しました。そういうことだって芸のうちなんですよね。

投稿: SwingingFujisan | 2010年8月24日 (火) 09時34分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1083822/36278322

この記事へのトラックバック一覧です: 第16回稚魚の会歌舞伎会合同公演・A班:

« 第8回亀治郎の会初日・2 | トップページ | 第16回稚魚の会歌舞伎会合同公演・B班 »