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2010年8月24日 (火)

第16回稚魚の会・歌舞伎会合同公演千穐楽A班:イヤホンとともに

823日 第16回稚魚の会歌舞伎会合同公演千穐楽A班(国立劇場小劇場)
818日に始まり、19日のみを除いた5日間の三宅坂通いも今日で終わり。ほっとしたような、寂しいような。本当はこんなに暑くなければ今日のB班も見たいところだったけれど…。
泣けるところもあったのだけど、全体として緊迫感に引き込まれて気がついたら泣くのを忘れていたといった感じでしょうか。
A班については初日にイヤホンガイドの割引券を忘れたので今日借りた(ケチでしょ)。そこで、出演者の抱負ご紹介とともに感想を(イヤホンでは役者さんの素顔が垣間見られる。みどりさんと吉六さんのコメントには笑っちゃった)。ボールド体の文字はイヤホン部分です。
尾上辰巳(早野勘平):B班の左字郎さんもだったが、どうも勘平の抱負は聞き逃す。一番に登場して、イヤホンを耳に入れたときにはもう終わってるんだもの。辰巳さんのも「よろしくお願いいたします」だかなんだかの最後の一言だけしか聞けなかった。ので、辰巳さんについてはイヤホンに関係なく感想を述べる。
初日のこちらまでドキドキするような緊張も解け、すっかりこなれていた。5段目では、斧定九郎から金を奪って逃げるように立ち去る足取りがうまいと思った。6段目では、おかやに責められ、血のついた財布を投げ出し頭を抱えワ~ッと身を投げ出して泣く瞬間に、苦しい思いが噴出してとてもよかった。全体に、呼吸が上手だと思った。
訪ねてきた千崎と不破に応対するために身づくろいを整え刀を差して出ようとしたところでおかやに止められ「情けない」と嘆くあたりから仁左様の雰囲気が漂ってきた。B班の左字郎さんは顔も柔らかい卵型で、菊五郎さんにそっくりなイメージがあったが、辰巳さんは顔が骨ばっているからだろうか、初日は指導者である菊五郎さんの陰が多々みられたのに、今日はそうでもなかった。声といい顔といい、むしろ仁左様を思い出させたのである。
中村京珠(お軽):B班のときに紹介したが、玉朗さんと一緒のイヤホン出演である。karaoke「今回のチームはみんな仲がよくて、全員で食事に行ったこともある。お軽はしどころの少ない役だが、籠で引っ込むときに見せたい」(というようなことだったと思う。はっきり覚えてなくてごめんなさい、また違っていたらごめんなさい)。karaoke6段目は、お軽が勘平と一緒になれて幸せな日を送っている。そういう面を出したい」(と語ったのは京珠さんだったか玉朗さんだったか。これもごめんなさい)。
memo確かにしどころは少ないのだけれど、帰ってきた夫への細やかな愛情、別れの悲しさ、思い切りなど、複雑な心理を表現する大切な役。そういうものがきちんと伝わってきた。別れの場面は泣けた。
中村梅之(おかや):karaokeおかやは老け役の大役である。もっと年配の人がやってしかるべきで、30歳になったばっかりの自分がやるのは早すぎるかもしれないが、将来もう一度やる機会があれば、その時のためになる。上方式には2度出たことがあるが、56段目は上方式と江戸式では全然違う。次の若い人い伝えることができたらと思って勉強している。
memo夫婦・母娘の別れの場面は悲しい。しかし娘が籠で連れられて諦めをつけた母親の心境はもっと悲しかった。夫が殺されて、その犯人であると思い込んでいる勘平しか自分のそばにはいない。その勘平も自害してしまった。これまで地道に暮らしてきた農家のばあさま、急に襲われた哀れな境遇の悲しさ、それでも生きていかねばならぬおかやの厳しさがよく伝わってきた。実は私は未だ未練たらしく、梅之さんは二枚目でこその華と思っている部分があるのだが、いやいやこのおかやで考え方を変えなくては。次は梅之さんの尾上とか見てみたいかも。
尾上みどり(一文字屋お才):karaokeいきなり「ンフンフンフ~」。「人間、思い込みが激しいと真実が見えないものです」古畑任三郎が「山崎街道殺人事件」についてお才に事情聴取をしているのであるもちろん、みどりさんは古畑とお才の12役。「容疑者早野勘平は犯人ではなかったんです~」。(古畑、よく似ていましたよsmile
karaoke初日、ちょっと意地悪そうに見えてしまったみどりさんだが、今日は全然そんなことはなく、堂々とした貫禄としたたかさが見え、大店の女主人らしさが感じられた。

中村吉六(判人源六):判人は現代にはない職業だからと、判人の説明が最初に入った。芸人や遊女の請け人として連判を押したので判人と呼ばれたのだそうだ。karaoke職業周旋人のうちで女衒は犯罪などに関わることが多かったため特別視された。そう言うと源六は怖い人間のようだけど、お才に頭のあがらない愛敬のある人物である。また文楽にはない歌舞伎オリジナルの役である。この役は大先輩の坂東橘太郎さんに稽古をつけてもらった。源六が勘平にハラを立てた後「ええい、しゃくにさわるなあ」というセリフがあるが、それを言ったら橘太郎さんが大笑いして「それじゃあ、トラさんだよ」とダメ出し。「男はつらいよ」が大好きな自分はなかなかトラさんが抜けず橘太郎さんを呆れさせてしまった。あとは江戸訛りに苦労した。
memoそう言われれば、たしかにあちこちにトラさんが入っている? でも「しゃくにさわるな」は大丈夫でしたよ。初日も感じたことだが、とてものびのびと楽しんで演じているようだった。
松本錦二郎(斧定九郎):karaoke勘平の悲劇を引き起こすための記号(って言った?)としてやりたい。塩冶判官の刃傷がなければ定九郎も山賊なんかしていなかっただろうし、与市兵衛も殺されず、勘平も死ななくてすんだ。塩冶判官の未熟さが巡り巡って家臣の人生を狂わせた皮肉だと思う。斧定九郎は動きで表現するので難しいが、歌舞伎らしい役である。非常につたないと思うが一生懸命務める。
memo顔が優しいので凄みにはどうしても欠けるが、非常に美しかった。初日はやはり少々ぎこちなかったが、美しく見せようという進歩が見てとれた。
中村吉二郎(千崎弥五郎、奴可内):karaoke2役は大変だが、ありがたい。千崎はアツい男である。涼しい国立でアツさを感じてもらえたら幸いである。奴はお気楽酔っ払いの心で務めたい。
memoアツさと優しさが込められたいい千崎であった。
奴は、ちょっと真面目すぎるんじゃないのと思ったが、見ているうちに何となく可笑し味が感じられて、しっとりした道行に楽しい味わいがついた。
中村蝶八郎(不破数右衛門):karaoke音羽屋さんの指導を受けたが、普段一緒にいる機会のない者にとって非常に勉強になった。この一座では年長だがまだ若輩者の自分にできるかどうか不安である。B班では与市兵衛役とその死体を運ぶ役をやっている。将来のための勉強である。
memo落ち着いた大きさが感じられ、厳しさの中にあたたかみもあり、私はこの不破数右衛門は好きだ。吉二郎さんの千崎とともに、心打たれた。
坂東翔次(与市兵衛、猟師):翔次さんのイヤホンはあったのかな? 聞きそびれたのかもしれない。ということで、こちらも感想のみで。
B
班もそうだったが、与市兵衛とその死体を運ぶ猟師を同じ役者さんがやるというのが面白い趣向だ。実は初日、与市兵衛が翔次さんだって全然気づかなかった。老け役がそれほどしっくりきていたのかもしれない。心優しく頼もしいじいさまだったのに
翔次さんはB班では、A班の吉六さんとは全然味の違う判人源六で大活躍。
市川喜昇(戸無瀬):karaoke母であり武士の妻であり、人生経験豊富な役である。振り付けの勘祖師に、踊りより芝居の要素が強い、娘と心を合わせることが大事と言われた。京由さんと協力していきたい。
memo母親らしい細やかな愛情・気遣いと、女2の道中で娘を守ろうとする気概が感じられた。と同時に、母娘2人旅の楽しさもまた伝わってきた。
喜昇さんは、開場のとき受付にいて、あら、時間は?と心配したが、出演までは2時間半あるから大丈夫だったのね。素の喜昇さんはとても礼儀正しい好青年だった。市川右近さんheart04が一番後ろの席で愛弟子の踊りを見ていた。
中村京由(小浪):karaoke25歳になって友人の結婚式に出るようになり、嬉しい表情を見る。そういう顔を大切にしたい。喜昇さんと一緒に表情で見せられる舞台を作りたい。
memoぱっと花が咲いたような美しさ愛らしさ。京由さんの美形ぶりは歌舞伎界の中でも12を争うのではないかと思う。娘らしい恥じらい、母を慕い頼る表情がいじらしい。喜昇さんの踊りには澤瀉屋の味を、京由さんの踊りには京屋の味を感じた(具体的にどうって言えないんだけど、「ああ、澤瀉屋だなあ」「ああ京屋だなあ」って思ったンだもの)。

猪さんが引っ込む場所を間違えてしまったcoldsweats01 。それが、猪役の難しさ(きっと外が見えない。それで猪らしく走る)を教えてくれた。

A
班中心になってしまったけれど、B班もほんと、もう一度見て詳しく感想を書きとめておきたかったわ~。

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コメント

お疲れ様でした! この時期は、国立劇場への定期券が欲しいくらいですよね(笑)。

SwingingFujisan様の記事を拝見しながら、また感動が蘇ってまいりました。皆さん、短い4日間の間に、驚くほど成長されていらっしゃいましたよね。(25日間公演できる幹部さん方はいかばかりか!)

私も、イヤホンガイドを借りたことがありましたが、休憩中はついつい食事やお喋りに夢中になっており、肝心のインタビューをほとんど聞き逃しておりましたので、インタビュー報告も、大変ありがたかったです! 私も、みどり丈の古畑さんには大ウケでした!!

投稿: はなみずき | 2010年8月24日 (火) 20時19分

はなみずき様
コメントありがとうございます。
又々コメントのニアミスだったみたいですねsmile 私もたった今(はなみずき様からいただいたコメントを拝見する前に)はなみずき様のところにコメントをお送りしたのでしたhappy01

国立通い、楽しかったです~。やや燃え尽き症候群気味だった歌舞伎熱がまた甦ってきました。

芸はやはり舞台の上でこそ進化するものだと思います。常々そう感じておりましたが、まさにこの4日間はそれを実感させてくれるものでした(私はA班のみ2回観劇でしたけれど)。そして緊張しながらも生き生きと大きな役を演じられる若い役者さんを目にして、歌舞伎愛がフツフツと湧いてくるのでした。

イヤホンはインタビューを聞きたくて借りました。なのに勘平さんを両班とも聞き逃すなんてweep みどりさんの古畑、ちょっと前かがみになって額に指を当てている姿が目に浮かぶようでした。今年のメンバーは結束力が非常に強かったそうですが、こうやってみんなの緊張をほぐしてくれそうな仲間がいるってステキだなあと思いました。

投稿: SwingingFujisan | 2010年8月24日 (火) 20時45分

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